ツンデレのエロパロ5
1 名前: 名無しさん@ピンキー 投稿日: 2007/05/17(木) 01:00:29 ID:MHt9sJhN
ここはツンデレのSSを書くスレです
SS職人さんによるSSの、二次創作なんかも随時募集中です
GJなSSには素直にGJと言いましょう。職人さんたちのやる気の糧になります
そしてみなさん、和の心を大切に
2 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:01:20 ID:MHt9sJhN
初代スレ
ツンデレにこれって足コキだよなって言ったら
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123282035/
ツンデレのエロパロ
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148839761/
ツンデレのエロパロ2
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156287579/
ツンデレのエロパロ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1162741169/l50

前スレ
ツンデレのエロパロ4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172665361/l50

3 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:04:40 ID:r3yl0EQo
助かった!!
>>1 乙!!!!

さて、続き投下します
4 名前: 『ツルとカメ』×38 [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:06:02 ID:r3yl0EQo
「わたしのことは、構わないで下さい」
 そうもいかない、チーちゃんは大切な恋人だ。
「ありがとうございます。でも、無理しないで下さいね」
 無理をしているのは、チーちゃんだろうに。
 それでも体は正直者で、次第に射精感が沸いてくる。
 もう、出てしまいそうだ。
 慌てて引き抜き、白く綺麗な腹の上に精液を放出した。
「その、ごめんな」
「わたしはカメさんが応えてくれただけで充分です。いつまでも甘えてはいられませんし、
辛いですけど、これからは元の、只の幼馴染みの関係に戻ります」
 シンデレラの魔法は解けました、などと洒落た台詞を吐きながらチーちゃんは服を着る。
一枚着衣が増す度に今までのものが崩れ、チーちゃんらしいチーちゃんに戻ってゆく。
「もし、さ」
 付き合ってたら。
 その言葉を言い掛けて、止めた。
 下手な言葉を投げて蒸し返すよりも、このままの方が良いかもしれない。本人の中で、
決着と言うか区切りが付きそうになっているのだ。押し留めるよりも、背中を押してやる
のがチーちゃんの為だろう。それが僕に出来る、唯一のことだ。
「辛いことがあったら、いつでも甘えて良いから」
 結局無難な言葉に落ち着き、我ながら馬鹿だと溜息を吐く。
「自惚れないで下さい、自分のことくらい自分で出来ます。それとも世話にかこつけて、
またわたしの体を貪るつもりですか? とことんエロいですね、この性欲魔人」
 口は悪いが、僕のことを気遣ってくれたのだろう。
「ありがとう」
 それに答えることなはく、チーちゃんは部屋を出ていった。
5 名前: 『ツルとカメ』×38 [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:07:41 ID:r3yl0EQo
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は二枚の葉書と五つのレスをご紹介!!」
亀「ゲストは多分二度目のチーちゃん」
千「何故多分なんですか?」
亀「作者がアホで忘れたから」
千「酷い話ですね」

>>465
亀「多分ネタさえあれば書くだろう」
水「文字数も少ないから楽だしね」
千「今回も本来はおまけがあったらしいのですが?」
亀「アズサ先生のあの後の話だな。でも知り合いにイメージが被ったらしくてな」
水「悲惨だね」
千「まぁ、独身女のやさぐれ私生活の話なので書くまでもないですね」
亀「それもあるな」

つ[]ホウオウコンビの〜
水「はいカメ」
亀「昔は週一、今は週に三回らしい」
千「何で普通に答えられるんですか?」
亀「聞いたから」
千「そうじゃなくて」
水「ほら、カメは頭が」
千「納得しました」
亀「失礼な。幸せカップルの話をしただけだ」

>>467
亀「普通のマゾはどうだか分からないけどな」
水「あの人は特殊だしね」
千「カメさんにも多分才能がありますよ」
亀「ねぇよ」
千「普段から殴られても平気なのは、痛みに強いという設定があるからです。つまり他人
よりも痛みを捉える力が弱い。人は基本的に痛覚神経と熱神経ばかりで、快楽は痛覚神経
が弱い刺激を受けたときに発生します。つまり人が痛いと思うこともカメさんは」
亀「もう言わなくても良い」
千「そうですか?」

つ[]カメはツルを〜
千「どうなんですか?」
亀「基本的にはツル一人で」
水「応用的には?」
亀「おっぱいがいっぱい」
水「貧乳も居るけど?」
亀「水樹とか?」
水「うわ墓穴掘ったぁ!!」
千「水樹さん、楽しそうですね」

>>469,470,472
亀「良い流れだ」
水「作者は駄洒落が大好きだしね」
千「オッサンですからね。しかも書くのは糞駄洒落」
亀「仕方ないな、オッサンだし」
水「そんなにオッサン言わない方が、まだ二十代前半だし」
亀「そうだな、アズサ先生より若い」

水「あ、終わった。今回は結構巻いてたね。『ツルとカメ』でした、来週も見てね!!」
6 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:09:34 ID:r3yl0EQo
今回はこれで終わりです

ホスト規制でスレ立てれないし、マジで焦った
重ねて >>1 GJ!!
ナイスアシスト、助かりました!!
7 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:19:23 ID:MHt9sJhN
>>6
GJ。
最初は連投規制かと思ってたけど、まさか容量オーバーとは・・・
やっぱりこのスレは密度が濃いね。
ただそれだけロボ氏の投下が大半を占めているということで。
つまりなにが言いたいかというと、もっと他の人も投下してー!
8 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 01:41:53 ID:48un/f7g
>>6毎週ご苦労様ですand神GJ!!
これだけのしんみり話鶴亀じゃめずらしいな・・・
たっく・・・亀は超絶・最凶・激烈・異常性癖所持ド変態のくせにこういう時はかっこいいよな。

つ[]亀は何人の処女を奪ったら気が済むんですか?
9 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 10:58:29 ID:Pv3FuVRF
1レス1kbペースで次スレとか凄いなここ…

それにしてもGJ、最近シリアス度が上がってきていて個人的に嬉しい。
チーちゃん健気すぎて泣いた。


>>8
俺はカメに処女奪われるぐらいなら水樹か一真に奪われたい。
10 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 12:57:03 ID:3WugYS31
急に思い出したけど一真って童貞も処女もカメに捧げたことになるよな?
哀しすぎだろwwwwww
11 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/17(木) 16:07:37 ID:n/eoM3Tu
カメは桜井舞人の域に達していると確信
12 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/18(金) 02:43:16 ID:HZYBWXqn
>>6
遅ればせながらGJ!
なんだかカメがどんどんシリアスになっていってて凄まじい違和感。
ド変態思考とキチガイ行動さえ取り除けば、カメってある程度まともな人間なんだな。
もっとも、取り除いた物って単なる残りカスだけど。
13 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/18(金) 16:45:25 ID:I1Rwq99l
クリスマスで上がったカメの株が一気に堕ちてるなwww

でもツル一筋故の結果だし、チーちゃんが良かったからGJ!
正直な話、こんなに良キャラになるとは思わんかった
何か萌えると言うより惚れた
カメが要らないって言うなら、俺が嫁に貰う
14 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/18(金) 19:42:16 ID:u4RGmm+n
>>6
GJ
泥沼なようで周囲がギリギリな境界線で囲まれてるカメがなんだかんだで幸せそうだ


ところでロボ氏の他のSS(エロ以外も歓迎)って何処を探せば見つかるだろうか…
方法があれば是非(ノ_・。)
15 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/18(金) 19:51:12 ID:jbGIORSg
>>14
自力で探すのが最善かと思われ。
合う・合わないもあると思うし、自分が普段出入りするスレになければ
ロボ氏の作品でも肌に合わない可能性がある。

まあ、栄えているスレに行けばきっと見つかるさ。
16 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/18(金) 20:23:20 ID:u4RGmm+n
>>15
それもそうか…
コテ同じなら偶然見つかるかもだし探してみる
17 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/19(土) 23:35:21 ID:Wmo/yyKq
ふむ……チーちゃんをどうにかLovely endにできないものか……
そして神作品GJ!!
いやぁシリアスなふいんき(なぜryは苦手だねぇ……
チーちゃん頑張れ


[]アズサ先生マダー?
18 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/20(日) 07:59:48 ID:EY/zJWaW
テラGJ!(古語


つ[]<個別ルートにはいつ入りますか?
19 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/05/23(水) 02:45:44 ID:s4mkYxbN
落下早いな〜
アゲ
20 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:13:18 ID:W5wyUWf6
投下しますよ
21 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:14:27 ID:W5wyUWf6
「そろそろ蕎麦茹でるか。ツルは天ぷらと油揚げ、どっちが良い?」
「卵がそろそろ期限だから月見にする。それよりもこっち見てよ、本当に下らないわ」
 数分前までは紅白歌合戦を見ていたようだったが、テレビのチャンネルが今はローカル
局の織濱超放送へと回されている。演歌の部分に入ったので変えたらしい。僕は嫌いでは
ないが、ツルは聞いていて苛々するという理由で嫌っている。
 代わりに画面に映っているのは竹槍で武装した巫子服レポーターの姿で、テロップには
『対決!! 神道の力は大蛇に勝てるのか!?』という文字が書かれている。確か彼女の家は
地方でも有数の大きさを持つ寺だと先日の深夜特番でやっていたような気がしたのだが、
こんなにも堂々と他の宗教の格好をしても良いのだろうか。それに大晦日が神道の行事と
いう理由で大蛇と戦うなんて、正気だろうか。
 そんなことを考えている間にも、レポーターは果敢に森の奥へと進んでゆく。周囲から
光が消えてゆくにつれて及び腰になっているが、大丈夫だろうか。
『い、今見えました! 大蛇が居ました!! 無理です勝てませんグロいしデカいし人間が
勝負を挑むのが間違ってます!!!! え、嘘!? いやぁァ、来たぁァ!!!!』
 泣きながら大蛇を突きまくっているレポーターの姿は、壮絶の一言に尽きた。凶悪に目
を鈍く輝かせ、唾液を垂らしながら気持ち悪く舌を動かす蛇も酷い。見ているだけの僕も
恐くなった程だ。だがそれ以上の形相で眉間を一突きにし、喚きながら既に死んでいる蛇
に追撃を加える姿は鬼そのものだ。思わず蛇の方に同情したくなる。
『勝ちました!! ついに神道が、日本が勝ったのです!! 大日本帝国万歳!!!!』
 危険思想だな、と思いながら蕎麦の茹で具合いをチェックする。少し柔らかい方がツル
の好み、卵にもよく絡む。一本すすって丁度良いと判断し、ザルに麺をぶちまけた。湯気
が周囲に広がり、温泉のようだとなんとなく思う。
「どう、良い感じ?」
 寄ってきたツルを見て閃いた。
「一緒に風呂入ろう、ビバ混浴!!」
「いつものことじゃない。週一で足りないの?」
 足りない、出来れば週に十回のペースが良い。
「それに、今年最後だし」
 仕方ないわね、と溜息を吐きながらツルが丼を並べる。
 食後が楽しみだ。
22 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:15:56 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

 爆発音が響き、コイは頭を抱えた。
「何でこうなるのよ」
 カップの蕎麦にお湯を注ぐだけだった、それだけなのに失敗したという事実に落ち込み、
溜め息を一つ溢す。傍らに立つ女性、コイの姉であるアイも苦笑をするだけだ、これには
フォローの仕様が無いのだから。リビングに居る両親や弟も同様の反応だった。
 喜ぶべきは被害が騒音だけだったことと、体にお湯がかかって火傷をしなかったこと。
そうポジティブに思考を切り換えて、コイは飛散したお湯を拭う。
「しっかし、コイも頑張るねぇ。あれか、やっぱりカメ君の為か」
「まぁね、手料理とは言わなくても結果は出したいし」
 お熱いことで、とからかうように言うアイの言葉を追うように、リビングからも家族の
煽る声が聞こえてくる。そのことに顔を赤らめ、コイはそっぽを向いて雑巾をシンクへと
投げ捨てた。元々、褒められたり囃されたりするのが好きなタイプではない。
「でもよ、コイ姉。まずは口を直さないと駄目なんじゃね? たまにカメ先輩と話してる
ところ見るけどさ、何か腐れちんことか変態とか言ってんじゃん。嫌われるぞ?」
 う、と小さく呟いて、しかし次の瞬間には笑みを浮かべていた。視線を回してカメ達の
家へと目を向けると軽く何度か首を振り、弟へと戻して鼻を鳴らす。どこか誇らし気な、
自分の意見を確信している表情だ。
「大丈夫よ、カメはそんな上っ面だけで判断するような馬鹿じゃないし」
「それ、本人に言ってあげたら喜ぶわよ?」
「そうだよな。じゃないとせっかくカメ先輩好みのデカい乳なのに、無駄になっちまう」
 その発言で思い浮かんだのは、カメと何度か重ねた行為だ。コイは顔を瞬間沸騰させて
手元にあったものを全力投球、それは見事に弟の顔面へとヒットした。
「ギャァ、熱い痛い!!」
 熱湯の染み込んだ雑巾の二枚目を投げ付けられ弟は悶絶するが、既に日常となっている
行為なので全員が無視をする。口に入ったなら即病院直行だが、この程度ならば気にするまでも無い。
「さて、もう一頑張りするか」 気合いを入れてエプロンの紐を結び直し、コイは本日五度目のヤカンに火をかけた。
23 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:17:38 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

「はい、ありがとうございましたー」
「また来るのじゃぞー」
 新年を数時間後に控えた『SHOPオリハマ』の中は、夜中という時間でありながらも少々
混雑していた。大量の酒を買う者。これから神社に行く予定なのだろう、友人達と携帯で
連絡を取り合っている者。年越し用にカップの蕎麦を買う者。つい先程はアズサとエニシ
も来ていたことを思い出し、ミチルは一人笑みを浮かべた。
「人の世界は、楽しいのう」
 今までの人生を振り替えってみれば、有り得なかったことだ。カメに拾われるまでは、
今のようなことになるとは夢にも思っていなかった。ミチルにとっては新しいこと、新鮮
なことの連続である。それは半年以上経過した現在でも変わっていない。寧ろこちらでの
知識を身に付け体験することによって、益々それは広がってきていた。
「でも良いの?」
「何がじゃ?」
 小首を傾げるミチルに、円は自宅の方向を指差した。正確には円の自宅ではなく、その
隣の家の方向。ミチルが現在住んでいる、阪田家の方向だ。
「カメ君達と一緒に年越ししたかったんじゃない?」
「せっかくの年越しなんじゃ、恋人は二人きりにしてやらんとな。それに儂は、働くのが
とても楽しい。新しい商品を見たり、それを買う者と接したりするのがな。働いて稼いだ
金で飯を買うことも楽しみじゃ。他にも楽しいことばかり」
 だから心配は要らん、と言ってミチルは雑誌のコーナーに向かう。未成年なのにエロ本
を立ち読みしている者が居たからだ。ミチル自身は構わないと思っているが、これも人の
世界での決まりである。カメのように何人もの女と関係を持つ者が居る中で、こうして本
で楽しむ者も居る。不思議なものだ、と思いながらもミチルは客にバックドロップ。店内
にかかっている販売促進ソング『衝動買いサブリミナル』に混じって鈍い音が響いた。
「エロ関係は大人になってからじゃぞ? 良いな?」
 正座して何度も頷く学生を見て満足した顔で数度頷き、レジへと戻る。
「ミチルさん、カップ麺が切れそうだから補充お願いしまーす」
「今やるぞ。全く、忙しいのう。……じゃが」
 快い。
 客に爽やかな笑みを向けながら、軽やかな足取りでミチルは倉庫へと向かった。
24 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:19:24 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

 暗い部屋の中、ボタンを連打する音と連続する破壊音が響いていた。
「せめて、今年が終わる前に全クリしマスよ!!」
 緩いウエーブのかかった金色の髪と青い瞳、白い肌に豊かな胸。それを引き立てる均整
の取れたスタイル、どれもが男を引き付けるものだ。だが今は目の下に出来た濃いクマに
よって、全てが台無しになっていた。普段の素朴であどけない表情は部屋に負けない程に
暗いものへと変わり、大きく可愛いらしい二重の目も、瞼が降りて半目となっていた。
 原因は、センスの隣に詰まれたシューティングゲームの山だ。数にして十五本程だろう、
センスは昨日から年納めとしてこれまでに買ったもの全てをプレイしていた。勿論途中で
投げ出すことは無く、風呂と食事を除けば不眠不休での総プレイである。それとて空腹や
不衛生が不快になり、腕が鈍るからという理由でのものだ。
 その甲斐もあり進みは好調、クリアバーをくぐり、
「やりまシタ、次でラストデスよ」
 画面が暗転し、切り替わる。
 映っているのは無骨な巨大装置、自分の操る魔法幼女の十倍以上の大きさを持つものだ。
その下の会話バーでは全年齢対象とは思えないような、制作者の正気を疑うような発言の
羅列が並んでいた。よく発禁にならなかったものだ。
「皆サン、力を貸して下サイ」 ラストの一本でのラスボス、つまりは全体でのラスボスになる。映っている巨大な装置
は画面全体の弾幕と威力が高い上に広範囲の拡散レーザーを数秒毎に使用してくる強敵だ。
これまでの戦績は3対7で敗けが多いが、負ける訳にはいかない。
 栄養ドリンクを三本一気に飲み、会話を進めて戦闘に突入する。時計を目の端で確認、
今年は残り一時間といったところだ。これまでの戦闘時間を思い出し、
「余裕デスね」
 軽快にボムを数発、無敵時間を利用して敵のレーザーを回避する。
「今のわたしは無敵デスよ!! As you Fuckin', Son of a Bitch!!!!」
 今まで誰も見たことが無い程狂暴な目付きで歯を剥き、普段の姿からは考えられない程
に口汚く画面の向こうの相手を罵倒する。何も知らない他人が見たならば、多重人格障害
か別人だと思うだろう。そんな自分の変化も気にせず、センスは怒濤の連射を開始した。
25 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:21:10 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

「家はキリスト教なのになぁ」
「その前に日本人だから良いんじゃないですか?」
 一真と千歳は呟き、織濱超放送を見ながら蕎麦をすする。両親は既に就寝しているので
起こさないように配慮して静かなものだが、寂しい空気ではない。どこにでもある兄妹の
穏やかな一場面、落ち着いた雰囲気のものだ。
「そう言えば兄さん、知ってましたか? あのエロ本墓場、もう無くなったんですよ」
「あ、マジか?」
 残念な話です、と呟いて鰹の匂いの濃い汁をすすり、千歳は目を伏せた。先日にカメと
行ったデートの帰り、何気無く寄ったのだが、そこは開発されて幾つかの事務所があった。
「時間が経つのは早いですね」
「そうだな。お前が親父達と戻ってきてから、もう結構だしな。文化祭の後くらいから、
もう3、4ヶ月か。もうクラスには大分馴染んだだろ」
「今更ですよ」
 それより兄はどうなのだろうか、と思う。外見がヤンキーだし、どこか浮いているし、
しかも空気キャラになっているような気がする。
 電子音。
「お、カメからメール来た」
「見せて下さい」
『十二時は混むから今の内に「あけましておめでとう」、年が変わったらまた開いてくれ。
一真もチーちゃんも、来年もよろしく。そして僕はこれからツルとイチャ付くから妬め』
 残酷ですね、と苦笑する千歳に一真は眉根を寄せた。
「カメに想いは伝えたのか?」
「何度も伝えて、何度も振られました」
「カメはツル一筋だからなぁ。まぁ、俺は大切な妹を応援するが」
 憎き恋敵の姿の幼い姿を思い浮かべ、千歳は力強く頷いた。こんな場所では負けてなど
いられない、来年こそは振り向かせてみせると。そう決意して、残った蕎麦を一気に口の
奥へと流し込み、白い喉を鳴らして飲み込んでゆく。
「兄さん、ピザ頼みましょう。来年は太く短くです!!」
「いや、そりゃあ、あれも極端に短い円柱と言えなくもないけどよ」
 こんな時間に食ったらカロリー以外の部分でも大変なことになるぞ、と気遣うような兄
の声に千歳は一瞬躊躇うが、しかし手は既に近所のピザ屋の番号を呼び出していた。
 注文をしながら、千歳は思う。
 明日からが、真の本番だと。
「あのロリなんかには、絶対に負けません」
「明日初詣行くけど、ニキビ出来るぞ」
 失念していたことを思い出し、千歳は慌ててキャンセルをした。
26 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:22:50 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

 安いアパートの洋式トイレ、そこには二人分の人影があった。一人は黒のショートヘア
に縁無し眼鏡をかけた黒いジャージ姿の女性、もう一人は厚手のシャツにデニムのロング
スカートを着た黒いロングヘアの女性だ。
 エニシはアズサの背を擦りながら、ミネラルウォーターを口に流し込む。つい十分程前
からずっと、今のような状態が続いていた。理由は言うまでもなく、いつもの酒である。
一人で年越しは寂しいからとエニシを強制的に連れ込んで酒を浴びるように飲みまくった。
恋人の一人も居ないままに年を越えるという事実が泣き上戸の心を暴走させて酒は進み、
例の如く吐いたのである。明日の初詣は大丈夫だろうか、とエニシは頭を掻いた。
「うぅ、カメは、カメはどこだ?」
「居ないわよ、カメ君は呼んでないでしょ?」
 肩を貸して立ち上がらせながら、ベッドに向かって歩いてゆく。その途中でなんとなく
テーブルを見れば、視界に入ってくるのはカップ麺やコンビニで買った惣菜の残骸の山。
随分と色気の無い光景だ、と切ない気分になる。
「カメは、何をしてるんだ?」
「だから、居ないわよ。多分今頃はツルちゃんと年越しセックスの準備でも」
 言ってから失言だと気付き、エニシは慌ててベッドに倒れたアズサを見た。最初は、は、
という発音の小さな声。それが、あ、というものに変わり、やがて長く連続したものへと
変わってゆく。アズサは枕に顔を埋め、背を震わせて泣いていた。
「カメの」
 一拍。
「馬鹿あぁァッ!!」
 叫ぶ。
「そんなに独身が悪いのか!? 干支だってギリで一周してないのに、それでも年上は駄目
なのか!? それとも乳か!? えぇい、エニシ、お前の乳を半分寄越せ私はボインになる!!」
「壊れないで」
 いつもよりも激しく暴れる親友の頭を撫でながら、強く抱き締める。酒さえ入らないの
なら立派な人間なのに、この悪い癖は治らないのだろうか。これではいつか出来るだろう、
未来の恋人が大変だ。そう考えながら、一人の少年の名前を小さく呟いた。
「全く、罪な男よね」
「うあぁ、カメぇ!!」
「はいはい、明日神社で会えるわよ。ついでに一発やりましょうね」
 ぐずるアズサをあやしながら、もう何度目かになるか知れない溜息を吐いた。
「本当、カメ君アズサを貰ってくれないかしら?」
27 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:24:46 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

 ホウオウコンビは年越しパーティの会場を抜け出して、テラスで夜風に当たっていた。
煌びやかなドレスをなびかせる空気は冬の温度に冷やされ、澄んだもの。それがワインで
火照った体から熱量を奪ってゆくのを快いと感じながら、ホウは大きく伸びをした。
「気持ち良いですわね」
「……はい、とても」
 嬉しそうにホウを見ながら一歩近寄り、
「……今年も、終わりますね」
 手を繋ぐ。
「とても早い一年間でしたわね、でも」
 充実してましたわ、と言って軽いステップを踏む。会場から微かに聞こえてくるワルツ
のリズムに合わせ、1・2・3の動きでオウをエスコートしながら浮かべるのは無邪気な
笑みだ。作法も少し無視した動きで、はしゃぐように踊ってゆく。ホウは金の髪を翻し、
オウは銀の髪を揺らしての、テラスという場所の狭さを感じさせない動きでだ。
 鈍音。
 動きが止まる。
「あいたたた、肘が……」
「……大丈夫ですか?」
 数秒。
 肘を押さえて辛そうな表情をしていたが、顔が笑みに変わる。最初は小さく吹き出して、
やがて大きな笑い声に。そして最後にはオウも珍しく、小さくではあるが声を出しながら
笑っていた。その表情のままに互いに手を伸ばして、再び舞踏を開始する。今度は先程の
ものとは違って落ち着いた、穏やかで滑るような動きのもの。
「いつまでも、続くと良いのに」
「……ボクも、そう思います」
 ずっと踊り続けていたい、と思いながらホウは腰を大きくグラインド、腕をオウの腰へ
回して大幅なステップを踏んだ。それが数度続いて、一曲目が終わる。
 数秒。
 二人で息を吐くのまで同時にして、唇を重ねた。それに合わせるように二曲目が始まり、
良い雰囲気だ、とホウはオウと手指を絡めて強く握る。私は幸せ者ですわ、という呟きは
果たして聞こえただろうか。
「……ホウ様」
「このまま、どこかに逃げてしまいましょうか?」
「……ホウ様が望むなら」
 でも、と体を回しながら、
「……まずはこの曲が終わってからですね」
 ターンを見事にキメて微笑み、踊り始めた。
28 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:26:15 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

 水樹は夜の街を歩いていた。先程までは家業である歌舞伎の演習の手伝いをしていた為、
女性物の着物の上にジャケットを着ているという奇妙な格好になっている。更に彼を妙に
見せているのは左右の手に提げられた巨大な紙袋、中に入っているのは大量のバーガーや
ポテト、フライドチキンなどだ。明日からの講演では水樹は出演しないが、その代わりに
演じる者達への労いの気持ちを込めたものだ。
「この新発売の豚トロバーガー、クドいけど明日もたれないかなぁ?」
 何故か殆んどの者が頼んできた新商品の味を思い出し、軽く悩む。一口食べた瞬間に口
の中に肉の脂が広がり、そのまま染み付いた濃い味は数時間もの間消えることは無かった。
それをおかずに丼で白米を食い、無理矢理に口内の味を消した程だ。祖父などはとうとう
惚けてしまったのか数日経った今でも味が残っていると言っているし、母が一口食べた後
庭で飼っている犬に与えたところ、急激に動かなくなった。
「後で散歩させなきゃ。と、この辺りかな? 優さんの車どこだろ?」
 電話で指示された場所に着いたのだが周囲に車の影が見当たらず、取り敢えずベンチに
座り込んだ。こちらは目立つ格好をしているし、何か勘違いがあってもすぐに電話をして
場所を教えれば見付かる筈だ。ならば下手に動くよりも、じっと待っていた方が良い。
「それに、お腹も空いたし」
 紙バッグからフランクフルトを取り出し、アルミホイルを剥いてかぶり付く。粗引き肉
なので肉を食べているという感じが強く、それなりにボリュームもあるので好きなのだ。
最初は何も付けず、次にケチャップ、最後はマスタードも付けて三段階で食うが水樹流。
「やっぱり美味し、大きいし。この肉汁も良いよね。うわ、口の周りがベトベトに」
 ヤバい発言を無自覚にしながら食べていたが、不意に一人が近寄り、
「よぅ姉ちゃん。俺のフランクフルトも食ってくれよ」
「残念だけど、あたし男だよ。それにフランクフルトなら『串』を刺すよね?」
 その水樹の笑みを浮かべての残酷発言に、周囲で眺めていただけの男達が一歩引いた。
「このまま皆離れて、来年は痴漢が無かったら良いなぁ」
 串を隣接するゴミ箱に投げながら、水樹は溜息を吐いた。
29 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:30:11 ID:W5wyUWf6

 ◇ ◇ ◇

 時計を見ると時刻は11時40分、もう暫くで除夜の金が鳴る時間だ。今年も残りが僅かと
思うと、妙な考えが沸いてくる。本当に色々あった、楽しい時間だった。
「もう、8ヶ月も経ったんだな」
「何よ、その半端なカウントは」
「いや、ツルと付き合い始めてからな」
 顔を赤らめて横を向くツルが可愛くて、思い切り抱き締める。キスを重ねつつベッドへ
一緒に倒れ込むと、ボディソープの甘く良い香りが鼻孔を擽った。
「ちょっと、嗅ぎすぎよ」
 いかん、つい愛しかったもんだから。
「で、話を戻すけど。今年ももう、終わりね」
「そうだな」
 鈍音。
 除夜の鐘の音が聞こえてきた。
「そう言えばこれって、煩悩を消すのよね」
「いつも清く正しくいやらしく生きている僕には関係ない話だ」
「まぁ、無限から百八個を抜いただけじゃね」
 どうやら今年も僅かなのに新しい問題が出てきたようだ、残り十数分で誤解を解くのは
不可能だろうか。出来れば楽しく誤解を解きたいものだが、どうすれば良いのだろうか。
 考えて、結論する。
 煩悩浄化するまで今を貫いていたら、逆説的に清いということになるだろう。我ながら
素晴らしい考えだと思う。鐘の音に合わせて突いたら、もっと説得力は増すか。
「ほら、時間が少ない。もう残りは百を切った」
「え、あ、うん」
 瞬間的にツルを全裸に向いて、胸に口付ける。今年最後のツルの味は少し甘いものだ。
来年にも期待しようと思いながら乳首を舌で転がして、最近発見したツルの性感帯、膝の
裏を撫でてゆく。どこまでも沈みそうな程に柔らかい肌の感触を堪能しながら脇腹を通り
臍まで唇を移動させ、臍を舌先でこじるように舐める。そのまま下に唇を動かして、股間
の割れ目に舌を潜り込ませた。
30 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:31:28 ID:W5wyUWf6
 急いだせいか、まだ濡れが甘い。クリトリスへと目を向けて、指先でこね回す。快感が
強すぎるらしいので普段はあまり使わないが、今はそうも言っていられない。皮を向いて
外気に晒しただけでも気持ち良かったのか小さく身を震わせたが、僕は追い討ちをかける
ように充血した肉芽を唇で挟んで刺激する。時折、歯まで立てながら周囲をなぞるように
舐め、湧き出す蜜を擦り付けて動きを加速させる。
「や、ちょ、いつも、よりも」
 抵抗するように顔を太股で挟んでくるが、僕にとっては気持ち良いだけだ。細く肉付き
が少ないが、すべすべとした柔らかなもので挟まれると気持ち良い。つい一時間前、一緒
に風呂に入ったときも素晴らしい感触のあまり撫ですぎた程だ。キレたツルが全開熱湯を
股間に浴びせてきたときは死にそうになったが、それだけのリスクを犯しても不満は無い
と思ってしまう。今年の最後まで魅力的なんて、何て素晴らしい娘だろうか。
「や、駄目、だってば」
 これが最後の大掃除、ツルの魅力を全て僕が頂いてしまおう。
「やめ、やめて」
 そして十分後には新鮮なクリーンツルを堪能する。
「や、やだぁ」
 泣きそうな声で我に帰り、ツルを見た。股間は既に洪水になっていて、割れ目の入口は
痙攣をしていた。どうやら達しているのに気付かず愛撫を続けていたせいで、相当酷い状態になっていたらしい。呼吸に
合わせて動く大平原はの先、荒い息を漏らす口の端からは唾液が垂れ、頬には大粒の涙が
流れていた。目はひたすらに虚ろで、ぼんやりと天井を眺めている。
「大丈夫か?」
「死ぬかと、思った」
 は、と息を吐いてこちらを睨む姿も可愛い。
 いつもならば少し休息を入れるところだが、悠長に回復を待つ時間などは無い。それに
何より、こんな姿を見せられては我慢が出来なかった。竿を取り出すと割れ目に押し当て、
一気に奥まで押し込んでゆく。子宮が降りてきているのか普段よりも浅い部分で止まって
根元を残す状態になったが、先日のホウ先輩の中を思い出すような強い締め付けのお陰で
いつもの数倍も気持ちが良いと思えるようなものになっていた。
31 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:33:01 ID:W5wyUWf6
 鐘が鳴り、それに合わせて引き抜いて強く打ち込む。恐ろしく敏感な状態になっている
らしく、それだけで再び達してしまったようだ。殆んど泣き声に近い声で喘ぎながら悶え、
強くなった痙攣の動きでひだが動き、先端に絡み付いてくる。初めてのときも締め付けが
強く気持ち良かったが、膣内が慣れた状態でのこれは、今までで一番具合いが良い。
「も、カメ、激し」
 鐘が鳴る。
 また強く突いて、次の鐘が鳴るのを待った。腰を動かしていなくても、入れているだけ
でも達してしまいそうだ。鐘が鳴るのが待ち遠しくもあり、このままで居たいとも思う。
 鐘が鳴る。
 頭が痺れるような音と、脳を染める快楽。もっともっと、初めてではないのに、まるで
性行為を覚えたての子供のように、貪欲にツルの体を味わいたくなってくる。この鐘の音
が煩悩を消すと言われているが、まるで呼び水のようにさえ思えた。
 鐘が鳴る。
 鐘が鳴る。
 もう残りは一回だけ、次に突けばラストになる。必死に堪えていたものが出せるという
ものもあって我慢が効かなくなり始め、急激に強い射精感が背筋を走ってくる。
「ツル、もう、出る」
 丁度最後の鐘が鳴ると同時に根元まで埋めるように突き、射精した。
 時計の針が12時を指すのを見ながら引き抜き、ぐったりとしているツルの髪を撫でる。
ティッシュで溢れ出してきた精液を拭って、ふと気付く。これが今年の初後処理だ。更に
言うならば、これからすること全てが今年の初物になる。
「なぁ、ツル」
「ん、何?」
 軽くキスをして頷き、
「初キスだな」
「そうね、何だか不思議な感じ」
 言った直後、ツルはくしゃみを一つ。
「いかん、初風邪を引くぞ。ほら早く今年の初パンツと初ブラを着ろ。大丈夫、しっかり
初着替えを見ててやるから。あ、場所は箪笥の一番上の引き出しだからな」
「初変態発言してんじゃないわよ!!」
 股間に初打撃を受け、初絶叫と初悶絶をした後、初蹲りをした。
32 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:34:33 ID:W5wyUWf6
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は三枚の葉書と八個のレスをご紹介!! 何だか多いね」
亀「ゲストは一真!!」
一「また野郎三人か」

>>7
亀「そうだよな、他の人のももっと読みたいよな」
一「ぶっちゃけスレ内でも『ツルとカメ』自体のレスが一番多いしな」
水「言ったら駄目だってば」
亀「皆も書こう!! 君なら出来る、君だから出来る!!」
一「懐かしいな、スターワインダーか」
水「またそんなマイナーゲームを」

つ[]亀は何人の処女を〜
水「随分嫌われたね」
一「どうなんだ?」
亀「ツル一人居れば」
一「だがチーの処女も」
亀「知らない設定の筈だぞ?」
一「うるせぇ、これは外の話だから良いんだよ」
水「まぁ、最後で全て解決するということで」

>>9
亀「何でもかんでもシリアスに書こうとするのは作者の悪い癖だな」
水「だから今回はこんな内容だったんだ?」
一「息抜きみたいなもんだな」
亀「それに前から書きたかったみたいだしな。趣味丸出しだ」
水「ノリノリだったみたいだしね」
一「今の時代はノリノリなんて言わんぞ?」
水「え!? 嘘!?」

>>10
水「あーあ」
亀「言わなきゃ気付かなかったのに」
水「でも最初が3Pだったから勝ち組?」
亀「デフォルトの性別を考えなければ」
水「言ったら駄目だよ!!」
亀「一真、静かだな」
一「なぁ、死んだら人はどうなるんだろうな?」
水「き、キリスト教では自殺は地獄行きだよ!!」

>>11
一「懐かしいな、これも」
亀「あぁ、眼鏡の先輩は攻略不可と聞いて作者は買わなかったやつだな」
水「そんな事情はどうでも良いよ」
亀「そうだな」
一「中身は知らないが、どの辺りが似てるんだろうな?」
亀「多分性別」

>>12
水「うん、頭がおかしいのさえ無ければね」
一「でもよ、それって間違ってる部分を抜けば全部間違ってないってことだろ?」
水「言葉のトリックだね」
亀「それよりも、僕は頭が」
一「水樹が「あたし男だよ」って言うのに似てるな」
水「あたしは男だよ!!」
33 名前: 『ツルとカメ』×39 [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:35:54 ID:W5wyUWf6
>>13
一「駄目だ、出直してこい」
亀「いきなりだな」
水「実はフランチェスカ並にシスコンという裏設定が」
亀「その外見でチーちゃんの振りか……ホラーだな」
一「一部にしか分からんネタは止めろ。とにかく、チーに近付くのは皆害虫だ」
水「カメは?」
一「チーが好きだから仕方ない」

>>14
亀「作者は嬉しさのあまり小踊りしたらしいな」
水「ファンになってくれてる人はありがたいね」
一「そうだな」
亀「でもまぁ、書いたSSの殆んどは他のスレの話だからな」
水「うん、この辺りで自重」

>>15
亀「結構濃いシチュのスレで書いてるから、合わないかもな」
水「たまに酷いもの書いてるしね」
一「それに賑やかなスレだが、今は一旦書くのを止めてるしな」
亀「これ以上は言えない」

つ[]アズサ先生〜
亀「最初はおまけでアズサ先生の話を書くつもりだったらしいな」
水「でもネタが浮かんで今回の内容になったんだよね」
亀「丁度3クール終了だしな」
水「作者ご満悦だね」
一「残りは3ヶ月だから、ペースは良いな」
亀「全員シメに入ってくるんだな」

つ[]個別ルート〜
亀「それは……分かりにくいけど、取り敢えず全員進めてるみたいな?」
水「じゃあ個別ルートは無いの?」
亀「ぶっちゃけ無い」
一「チーもか?」
亀「無い。個別ルートは作者が大好きなツルが連続で振られるから。それに今までツルを
贔屓してきたのが急に崩れると違和感もあるし、それは避けたいらしい」
水「でも、今度は他の全員が振られるよね?」
一「難しいな」
亀「とにかく、最後までは決まっているらしいから。まぁ、プロット通りに」
水「他のキャラ好きな人は辛いかもね」
亀「仕方ない」

水「さて今回も終わり、少し豪華版でお送りしました」
亀「次回のヒロインは、引き続きツル!!」
水「イベント事だしね」
亀「ツルで楽しく姫始め、着物のツルがまた見れる!!」
水「活字だから映像は無いけどね。それではまた来週、『ツルとカメ』でした!!」
34 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:37:02 ID:W5wyUWf6
今回はこれで終わりです

クリスマスと違って、書き漏らしは無し!!
35 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 00:45:51 ID:0surV7nS
>>34
一番槍GJ!
ツルの反応がいちいち可愛いなあ。
桃髪ツンデレの最新刊も読んだし、俺はらいっぱいだ。
36 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 01:35:17 ID:y56OllgW
これはもう神とか超越してる。
素早いとしか言葉がない。
37 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 01:51:02 ID:IMPWOz/y
全知全能のロボ氏の実力に神GJを!
毎週最高の作品が投下されるのは幸せとしか言い表せない。

てか随分コイ見てなかった気がする・・・・気のせい?
無 論 ツ ル カ メ が 一 番 だ が。
つ[]亀は自分の変態スキルを受け継いだ子供ができたら嬉しいですか?
38 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 04:18:13 ID:TNh4Pd1h
小躍りしてもらった事に感動した人がここに。

っと
カメとツルの話と思ってた分他の人の状況も見れて得した感が沢山あってGJです
センスはきっちりクリア出来たんだろうかw

何度か検索かけても見つからなかったんですがもう一度探してみます

39 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 06:25:34 ID:yjQLALnp
GJ! こういうシチュエーションが脳内映像化できるの大好きだ。
大勢のキャラをそつなく書ききる才能が羨ましいですなあ。

…PC購入できたら一度ぐらいは投下したいな…


あれ?
変態の遺伝子って…カメの親も持ってるって事か?
つーか従兄妹って事はツルにも多少はその遺伝子が(撲殺
40 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 14:28:17 ID:jHBnwvmX
>>34
GJ。
水樹の串になら挿されても後悔しません。
41 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 23:51:04 ID:+6bdzS9L
>>34
GJ。
新参者なんですが、このスレって保管庫はないんですか?
前の作品とか見てみたいんですが…
42 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/24(木) 23:53:27 ID:0surV7nS
ttp://tundereeroparo.web.fc2.com/index.html
43 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/25(金) 14:31:53 ID:5Xp4EzSu
GJ!
お湯沸かすだけでカップ麺が爆発、コイの手はその内食べ物に分類されるものに触れるだけでカオスな物が出来上がるんじゃないかと思う
あ、でもそうしたらコイが食事できないのか…無念

つ[]カメが貰わないなら俺がアズサ先生を貰う!ってか下さい
44 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/25(金) 15:33:35 ID:LkMYVLBY
どこからコイマジックが起きるか実験してみたいな

粉ジュースなら、器は他の人に持ってもらって、蛇口を捻るのだけコイに、とか
逆も考慮して
45 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/25(金) 15:50:09 ID:5eb0LdyN
コイはきっと機界新種なんだろう。
46 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/26(土) 03:44:53 ID:p9nd+MWE
>>42パソぶっ壊れたから携帯からみてるんだが、文字化け(?)みたいでみれないんだが。
後更新されてないの?
47 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/05/26(土) 22:36:27 ID:4+I5f9d9
仕事/(^o^)\オワンナイ

今週もヘドロ無理です、すみません

>>42
ttp://fileseek.net/proxy.html
これを使えば携帯でも見れます
48 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/26(土) 22:38:12 ID:4+I5f9d9
うへぇ、安価間違えた
>>46だった
49 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/26(土) 23:37:38 ID:I9/1Ogav
久々に保存庫見てきたがロボ氏のSSがないような…初期の頃のが読みたくなってしまった…
他に保存庫ないのかな?てか見落としてるたけなんだろうか?うむむ…
50 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/27(日) 23:31:26 ID:EUZHxY34
ロボ氏サンクス。
直るまでまたまだかかりそうだからそれ使わせていただきます。
51 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/28(月) 17:13:04 ID:xF/KYH2O
ロボ氏GJ!!
まったく君は最高だな
掘ってあげよう



[]>>43アズサ先生は俺のものだ
52 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/28(月) 23:16:50 ID:bwqezZDU
ここってオリジナルOK?
53 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/28(月) 23:51:26 ID:EWH9tI86
>>52
OK
寧ろオリジナルしか無い
ロボ氏のツルとカメも、前に連載してた79氏という人のもオリジナル
二次は該当スレで、みたいな流れになってる
54 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/29(火) 00:00:20 ID:bwqezZDU
>>53
Thanks
ちょっとネタ思いついたんで書いてみる。
いつになるかは未定。下手くそなので期待はしないで。
55 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/05/29(火) 03:15:24 ID:sMWKPDRW
wktkアンド期待アゲ
56 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:03:04 ID:1yanxNr6
投下しますよ
57 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:05:38 ID:9HyouwZw
 見渡す限りの人の山、神社の境内は参拝客で溢れていた。男は基本的に洋服だが、逆に
女は殆んどが着物姿である。この光景を見ていると体に刻み込まれた日本人の文化が意外
と根深いものであるということが分かる。正月だな、と改めて実感した。着物から浮いた
パンツの線チェックも気が抜けない、これも毎年恒例のものだからだ。これを欠かしては
新年が始まったとは言えないのである。中にはノーパンなのだろう線が見えない人も居り、
それを見ていると幸せな気分になってくる。
 だが一番幸せなのは、
「カメ、エロい目で何やってんの?」
 やはり着物姿のツルを見ることだ。
 二時間にも及ぶ僕の必死の説得により、今のツルはノーパンである。何て素敵なのか、
この着物の下はそのまま股間が全開状態なのだ。薄布一枚隔てたそこは正にパラダイス、
このまま放っておいて僕の理性は正常を保っていられるのだろうか。
「否、無理だ!!」
 我慢出来ずに股間に頭を突っ込もうとしたが、
「止めんか、せめて家でやれ」
 首を掴まれ、阻止された。
 誰だろうかと思って振り向けば、視界に入ってきたのは袴の鮮やかな朱色。目線を上に
上げれば豊かに膨らんだ胸元があり、それは白い着物によって覆われていた。更にその上
にあるのは見慣れた和風美人の顔、呆れたようなミチルの顔である。巫子の格好の理由は
言うまでもない、労働大好き亀となってしまったミチルは正月であるにも関わらずバイト
をしているのである。忙しくなる、と言っていたときの笑顔はとても眩しいものだった。
 今もそうなのだろう、呆れた中にも嬉しそうなものを見せながら、
「他の客に迷惑じゃ、エロいことは他の場所で頼む。それとどうじゃ、似合うじゃろう?」
 胸を反らし、自慢気に見せ付けてくる。
「巨乳巫子か」
 何だろうか、この不思議な感覚は。やけに似合っていることは否定出来ない。出来ない
のだが、本来の意味とは逆のイメージが沸いてくる。巫子は清らかな存在というイメージ
があるのに、ミチルが着ると妙にエロく見えてくるのだ。このまま境内のどこかで性交を
していたとしても何の違和感も無い、寧ろそちらの方がしっくり来る。
58 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:08:16 ID:9HyouwZw
「ん? どうした?」
「いや、何でもない」
「何だかイメクラみたいね」
 こら、ツル。言ったら駄目だろう。
「それよりも良いの? 油売ってて」
「今は休憩時間じゃ」
 丁度タイミングが良かった訳か、今年の幸先は良さそうだ。
「む、いかん。そろそろ時間じゃ。それではの」
 行ってしまった。
 ここで立っているのも良くないので、おみくじ売り場に向かう。迷子にならないように
と手を伸ばせば、ツルは頬を染めてそっぽを向きながらも握り返してきた。もう少し素直
な反応でも嬉しいが、これはこれで可愛いので良い。年始めからこんな姿を見れるなんて、
僕は宇宙で一番の幸せ者だ。八百万の神も僕には敵うまい。否、寧ろツルこそが八百万の
神の頂点に立つ存在なのだ。天照大御神と同等、それより上だと言っても過言ではない。
「さぁ、股間の天の岩戸を……」
「あ、カメ。あれアズサ先生達じゃない?」
 僕の言葉を遮って指差した先、そこにアズサ先生が倒れていた。隣で慰めているエニシ
先生もそうだが二人とも珍しい着物姿、どちらもしゃがみ込んでいるせいでパンツの線が
丸出し状態である。エニシ先生は胸の谷間も見えているので、とても幸せだ。
「あ、カメ君。あけましておめでとう」
「あぁ、カメか。見てくれ、この結果を」
 アズサ先生から渡されたおみくじに書かれていたのは中吉の文字、悪くはない結果だ。
「ほらカメ、この恋愛運のところ」
「あ、なるほど」
 ツルの示した部分、そこには細かな注意書きは存在せずに『無理』とだけ書いてあった。
結婚とまでは行かなくても、男を見付けることに躍起になっているアズサ先生のことだ。
いきなりこれを見せ付けられたのでは、それはもうショックも大きなものだっただろう。
アズサ先生は青くなった顔でこちらに振り向き、
「カメ、頼む。慰め……ぬあぁ!!」
 頭を抱えてのけぞった。
「手なんか繋いで、そんなにイチャ付きを見せて楽しいか!?」
「テンション高いですね」
「うるさい!!」
 目に涙を浮かべ、逃げていってしまった。エニシ先生も慌ててそれを追い掛ける。
59 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:09:50 ID:9HyouwZw
 後で何かフォローをしておかなければいけない、と思いつつ僕とツルもおみくじを買う。
開けてみればツルは大吉、逆に僕は凶だった。ツルとのこれからが気になるので恋愛運の
部分を見てみれば、何故か文字ですらない、髑髏のマークが書かれていた。これは一体何
を意味しているのだろうか、恐ろしい。
 それを近くの木の枝に結び、新しくおみくじを買う。
 今度は大凶、恋愛運のところには赤い色で鋏のマークが書かれていた。不吉なんてもの
ではない、具体的に結果を知らされたような気がして思わず股間を押さえた。そう言えば
ミチルとツルとの3Pの直前に鋏で予告のようなものをされたし、初めてツルにフェラを
されたときも浮気をしたら食い千切ると言われた。もしかして、これからチョキチョキと
されてしまうのだろうか。待て、流石にそれは無いだろう。
「あら、結構当たるのね」
 今のは幻聴だろうか。
 恐る恐る振り向くと、ツルは久し振りに残酷な笑みを浮かべて左手をピースにしていた。
人差し指と中指を開いたり閉じたりしているのは、どのような意味を持つのだろう。
「良いじゃない、腐ったちんこにお別れできて。次は脳?」
 この酷い言い草は、コイか。
「お前も結構着物似合うな、巨乳なのに」
「随分気持ち悪い褒め言葉ね」
 でも、ありがと。と頬を若干染めて小声で呟き、手に持った甘酒を煽る。
「美味そうだな」
「飲む?」
 と紙コップを差し出されたが、僕は断った。僕は間接キスにこだわるタイプの人間では
ないけれど、コイの手を経由されたものを素直に飲もうとする程命知らずな野郎ではない。
クリスマスのときの水樹と一真は、コイが注いだウーロン茶を飲んだだけで花畑の世界へ
トリップしたのだ。その尊い犠牲を無下にすることなど出来やしない。
60 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:11:19 ID:9HyouwZw
「ま、良いわ。今はツルと二人で仲良くしてるみたいだし、変に混ざりたくないもの」
 新年だからだろうか、どこか柔らかい。いや、これはサバけたと言うのだろうか。理由
は分からないが、どこか変わったような気がする。大雑把に言うのなら、身に纏った空気
が変わったという感じだ。今ならば乳を揉んでも何も言われない気がする。
「よし」
 試しに揉むと、
「何が『よし』なのよ!?」
 良いビンタをされた。
「相変わらず脳が腐ってるわね、この変態」
「ツル、僕は変態か?」
「ごめん、これはフォロー無理」
 どうやらツルはフォロー無理らしい。
「ま、良いか。減るもんじゃないし。それじゃ、またね」
 手をひらひらと振りながら、コイは屋台の方へと向かっていった。最後に素直になった
のが少し気味悪かった、何か悪いものでも食ったのだろうか。例えば、自分で年越し用の
カップ麺でも作ったとか、その辺りで。ツルも同じような考えらしく、複雑そうな表情で
コイの無意味にエロい後ろ姿を見ていた。
「あ、カメさん。あけましておめでとうございマス」
 今度はセンスか。
 挨拶を返そうとしたが、言葉を失ってしまった。ツルも左手を鋏の状態にしたまま頬を
引き攣らせ、困ったように僕を見上げてくる。だが、僕にも何が原因で今のような状態に
なっているのかが分からない。ただ困惑するだけだ。
 この、目の下のクマには。
「何があったのよ?」
「徹夜でゲームしてマシて、もう二日間一睡もしてないんデスよ」
 通りでふらふらとしている訳だし、メールにも返事が無かった訳だ。しかし、一通りの
クリアは出来たのだろう。頼り無さげな中に一欠片、清々しい空気のようなものが漂って
いるような気がする。特に少しはだけた胸元辺りから、そのような空気が。
61 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:12:24 ID:9HyouwZw
「カメ?」
 先程のツルのジェスチャーを思い出し、一歩後退した。
 直後。
 低い声を漏らして、センスは豪快に倒れ込む。仰向けにしてみれば安らかな顔、恐らく
二日振りの睡眠を取っているのだろう。天使のような寝息と共に口汚いスラングが唇から
溢れているものの、何の問題も無さそうだ。こちらの世界では作者の趣味丸出しなレイプ
が出てくる可能性も無いだろうし、放置していても安全だ。いざとなったらミチル辺りが
適当に片付けておいてくれるに違いない。
「あ、今回は乳揉み式心臓マッサージはしないんですね」
「僕とツルとちんこで三位一体だからな。ちんこと別れたくない」
 今度はチーちゃんと一真、水樹も居る。後はホウ先輩とオウ先輩が来ればコンプリート
になるのだが、今朝届いたメールで来れないと言っていたので無理だろう。残念な話だ、
ホウ先輩達は尊敬しているので是非とも生で挨拶をしたかったのだが。
「カメさん、おみくじは引きましたか?」
「結果は最悪だった。かなり当たるらしいし、正直泣きたい」
「嘘でしょ!?」
 水樹が泣きそうな顔をして、おみくじを見ていた。運勢は末吉だが、何故か細かい運勢
の部分には太い文字で『痴漢に要注意』とだけ書いてあった。痴漢されることの専門家と
なっている水樹のことだ、今朝もされてきたのだろう。それだけに精神的にキツいものが
あったらしく、その場へと崩れ落ちる。しかしこの神社はサービス精神というものは無い
のだろうか、さっきから残酷な結果ばかり見ているような気がする。
「カメ、何だかここに居ると疲れるし、さっさとお参りしましょ?」
「そうだな」
 水樹も無惨なことになっているが、センスと同様に心配をしなくて良いだろう。一真と
チーちゃんも居るし、フォローは完璧だ。
 僕は溜息を吐くと、行列の後ろに並んだ。
62 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:14:20 ID:9HyouwZw

 ◇ ◇ ◇

「何か、たった十分くらいでエラい遭遇率だったわね」
「そうだな、と僕らの番だ」
 人が動き、賽銭箱の前に押し出された。財布から景気良く千円札を取り出すと、ツルの
胸元へと突っ込んだ。暖かく、柔らかい感触がとても気持ち良い。もう少し入れても良さそうな気がしてきた。
「場所が違うでしょ?」
 いかん、ご利益がありそうだったから間違えた。
 改めて割れ目へと千円札を入れてやる。普通のものよりも大きい金額だが、いとも簡単
に飲み込まれてしまった。既に中はかなりのもの詰め込まれているが、これだけでは満足
出来ないらしい。傍らで控えていた巫子さんも、更に入れてと求めてくるような、貪欲な
視線でこちらを眺めてきた。卑しい女とは思わない、これも人の性なのだ。期待に応えて
やるように先程よりも大きなものを入れてやると、頬を染めて嬉しそうな声を漏らした。
流石に一万円札を入れようとすると気が引けたのか慌てて首を振るが、瞳はどこか期待の
色が滲んでいるようにも見えた。その反応が可愛いらしいのでからかいたくなり、入るか
どうかのところでモノを行き来させてやる。すると、我慢が出来なくなってきたのか身を
乗り出して食い入るように割れ目と手に握ったものを見つめてきた。
「何やってるの?」
「何でもない」
 残念そうな吐息が聞こえてきたが、これ以上すれば鋏である。後ろにも人は大勢並んで
いるし、まだ続けてみたかったという欲求を抑えて柏手を打った。願いは無論、今年一年
ずっとツルと仲良く一緒に居られるようにというものだ。横目でツルを見れば、目を閉じ
必死に願い事をしている姿が目に入る。聞耳を立てれば聞こえてくるのは、
「カメの変態が治りますように、カメが浮気をしませんように、出来れば背も乳も大きく」
 流石に三つは頼みすぎではないかと思った。
 だが本人は必死なのだろう、高速で同じ言葉を何度も呟いていた。
「ほらツル、行くぞ」
「うん」
 丁度十回繰り返した辺りで満足したのか、手を引いてやると素直に着いてくる。
63 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:16:16 ID:9HyouwZw
 しかし慣れない下駄のせいか、それとも欲張ったのが駄目だったのだろうか、突然ツル
の体が宙を舞った。元日からの大ドジは、僕が体を抱き留めたことと地面が砂利ばかりで
泥が跳ねなかったことが幸運にも合致したことで事なきを得た。流石大吉と言うべきか。
着物も汚れていなければ、特に怪我をしている様子もない。
「良かったな」
「うん、でも下駄が」
 見れば鼻緒が切れている。
 直せるかは分からないが、無視をしておく訳にもいくまい。僕はツルをお姫様抱っこを
して、どこか人の少ない適当な場所を探した。その間に尻を撫でるのは忘れていないが、
暴れると落ちてしまうので悔しそうに黙って僕の首に手を回していた。
「ん?」
 うろうろと歩いていただけだったが、かなり奥まで来てしまっていたようだ。手入れも
あまりされていない祠が一つ、周囲から隔離されたように鎮座していた。
「すみません、少し場所を借ります」
 僕はそれ程信心深いという訳ではないが、最低限の礼儀はあるつもりだ。積もった埃を
ハンカチで払い、小さな賽銭箱に千円札を入れる。取りにくる人は居ないと思うが、これ
は神社の人にではなく名も知らない神様に渡す為のものだ。惜しいと思う気持ちは無い。
 自分なりにケジメを付けると、ツルの右足を取った。足袋を脱がせて何度か足首を回し、
きちんと確認する。怪我は無さそうだと思っていたが、油断は出来ない。捻挫などをして
いたら後々大変なことになるし、下駄を直しても意味は無い。
「よし、大丈夫そうだな」
「ありがと」
 どういたしまして、と顔を上げると素晴らしい光景が目に飛び込んできた。足を見る為
に股間は軽く開いたようになっており、そのせいで前の布も若干捲れている。そのお陰で
奥まで全て見える状態、つまりは股間が丸見えの状態なのだ。もっと詳しく説明すると、
今のツルはノーパン。ピンク色の縦筋を惜し気も無く晒しているのである。
64 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:17:10 ID:9HyouwZw
「え、何見てんのよ!?」
 衝撃。
 股間を下駄で蹴られ、激痛が走った。
「あ、ごめん」
 ごめんで済めば医者は要らない。
「舐めて、治療、してくれ」
「意味分かんない!!」
 もう一発来た。
 だが当たり所が悪かったらしく、逆にツルがダメージを受けたらしい。左の足首を手で
押さえながら、抗議するように涙目でこちらを睨んできた。ここは責任を持って僕が治療
するしか無いだろう。先程舐めて治療と頼んだからには、僕も舐めるのが筋というもの。頷き、左の足袋を脱がせてゆく。
 なぞるように丁寧に足首に舌を這わせ、たまに甘噛みしながら一周。アキレス腱の辺り
を軽く歯を立てて噛み、そのまま下って足の裏にキスの雨を振らせながら足の指まで到達
する。指をしゃぶり、指の間を舌でなぞり、足の甲にも連続でキスをする。
「や、何だか、変態臭い」
 失礼なことを言う娘だ。
 だが、どれ程罵られようともツルの健康には代えられない。僕は黙って脚を舐め続けた。
どうやらツルは親指と人差し指の間が弱いらしく、そこを重点的に舐めると細く甘い声が
漏れてくる。袖を噛んで必死に堪えている姿が何とも言えず、わざと音をたてて舐めたり
吸ってみたりした。ふくらはぎや太股を撫でると一瞬だけ指が硬直したが、連続で揉むと
指が口の中で暴れ回る。それを抑え込むように舌で潰せば、また黄色い悲鳴が響いた。
「カメ、ちょっと、止め」
「我慢しろ、大事なことだぞ!!」
 筋を痛めているかもしれないので、先程揉んでほぐしておいたふくらはぎや太股にも唇
を這わしてゆく。特に声が激しい太股は念入りに舐め、膝裏も念の為に舌で揉んでおく。
 一通りの治療を終え、もう大丈夫だろうかとツルを見れば、
「これは一体!?」
65 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:18:20 ID:9HyouwZw
 何故か、割れ目から透明な汁が溢れてきていた。僕は脚の治療をしていただけなのに、
これはどういうことだろうか。ツルは敏感だがホウ先輩と違ってマゾではないので痛みで
濡れるなんてことは有り得ないし、命の危険に晒されている訳でもないので性欲が急激に
増したという線も考えられない。ならば何故だろうかと考え、僕は今居る場所に気付いた。
 ここは神社の敷地内、霊が溜ると考えられる。様々な霊が居るからには、当然、悪霊の
ようなものも居るだろう。祠はあるが手入れをされておらず、神パワーによる清めの力が
減っていることも論理的には筋が通る。それを総合して考えれば、ツルにエロ系統の悪霊
が取り付いたと結論するのが妥当だ。
 ならば、どうするか。
 清めで最初に思い付いたのは破魔矢だが、残念なことに僕はそれを買ってきていない。
だったら何か代用品が必要だ。破魔矢は矢という文字があるが、基本的には矢の機能など
持っていない。言うなれば清の力を持つ、根元に毛の生えた棒だ。
「これしか無いか」
 僕は自分の股間を見る。
 射精も精液も、どちらにも清の文字が付く。その清の力を中に直接打ち込めば、間違い
なく悪霊は消え去るだろう。新年早々、何とも頭が冴えている。しかしこれは、きっと僕
一人の力では思い付けなかっただろう。そこの祠で奉られている神様が僕に知恵を貸して
くれたに違いない。ならば後は、その意思に従うだけだ。
66 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:19:34 ID:9HyouwZw
「入れるぞ」
 僕は竿を取り出すとツルを寝かせて脚を割り開き、先端を股間に当てた。神様パワーの
お陰だろうか、それは難無く根元まで飲み込まれ、全体を程良く締め付けてくる。清める
という意味も持った姫始め、ツルもそれを感じているのか首に腕を絡めながら、盛大な声
を出して喘いだ。今の一突きで達したらしく、僕の清棒を痙攣する膣が刺激する。
「だめ、人が、来ちゃう」
 今のペースでは時間がかかりすぎる、ということか。
 僕は腰の動きを深さよりも早さを重視したものに変えると、奥の辺りを何度も突いた。
こりこりとした固い子宮口の感触が鈴口に当たり、擦ってくるので堪らない。僕のものに
よく馴染んだ膣内だけでなく、人に見られるかもしれないという緊張感が普段よりも強い
快感を脳髄に伝えてくる。ツルも他人の目に晒されることを危惧してか、普段と違い声を
比較的抑えている。それが自身の快感を高めているのだろう、途中からイキっぱなし状態
なのはいつものことだが、痙攣がいつもよりも強い。腰に脚を絡め、抱き付いてくる力も
普段のものよりも強く、腰を動かすのも大変な程だ。
 不意に、背後で音がした。
 振り向けば雀が草むらから出てきただけだということが分かったが、目を閉じて堪えて
いるツルには分からなかったらしい。それが決定打となり、ツルの理性も飛んだようだ。
本当に境内の人に聞こえるのではと思う程の音量で声を出し、入口の部分は根こそぎ竿を
食い千切ってしまいそうなくらいに強い締め付けを与えてくる。
 それと同時に、僕もツルの中へと清を放出した。
 白く染まる思考の片隅、その冷静な部分で、鋏という記号の意味を考えながら。
 引き抜くだけでも再び達したのか、未だ痙攣しているツルの割れ目から白濁とした粘液
が溢れ出してくる。取り敢えず当初の目的は果たすことが出来たから、
「これで清らかに」
「ンな訳ないでしょ馬鹿ぁ!!」
 叫びと共に、下駄を握った拳で頭を打ち抜かれた。
67 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:21:10 ID:9HyouwZw
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は十個のレスと三枚の葉書を御紹介!!」
亀「ゲストは輝くスーパーヒロイン、ツル!!」
鶴「最近出番が多いわね」
亀「メインヒロインだしな」

>>35
亀「だろ!?」
鶴「そんな、可愛いとか。お世辞言っても何も出ないわよ?」
亀「もっとツンデレっぽく言ってくれ」
鶴「馬ッ鹿じゃないの!?」
亀「それっぽいな」
鶴「え?」
水「天然なんだね」
鶴「え? 何が?」

>>36
亀「言い過ぎだな、神を超越とかは」
水「そうだね」
亀「寧ろツルが神を超越だよな」
鶴「何の神よ? それより、素早いって?」
亀「さぁ、何だろうな?」

つ[]亀は自分の〜
亀「その辺りは気にしない」
水「意外と冷静だね」
亀「ツルとの間に子供が産まれたら、それで」
鶴「何を言ってんのよ、馬鹿」
水「ツルはどうなの?」
鶴「変態なのは遠慮したいわね」
亀「大丈夫、ツルの子供だったら可愛いさ」
鶴「もう、馬鹿」

>>38
亀「クリアは出来たみたいだな」
鶴「でもダウンした後、夜中まで寝てたみたいよ」
水「壮絶だね?」
亀「SSはヒントだけ。『とらとらシスター』か『甘獄と青』でググルと良い」
鶴「後はたまに武者修行で二次スレに出てるわね」
水「はいオシマイ」

>>39
亀「これだって携帯で投下されてるから、PCじゃなくても別に」
水「このSSの中身も文が上手い訳じゃないし、大切なのは気合いだしね」
鶴「それより、私にも変態の遺伝子がどうとかって……」
水「ほら、カメの両親はまともでしょ? 変態レベルの−が掛け合ったから+に」
鶴「安心したわ」
亀「おい」
68 名前: 『ツルとカメ』×40 [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:24:27 ID:9HyouwZw
>>40
亀「だってさ」
水「『尿道』に『フランクフルトの串』を刺すけど良いんだね?」
鶴「残酷ね」
水「ツル程じゃないよ」
亀「でも、それもOKだったら?」
水「そんな変態はちょっと勘弁」

>>41
鶴「新しい住人が来ると嬉しいわね」
水「そうだね」
亀「残念なのは、過去の話が見れないことだな」
水「前のスレも落ちたしね」
鶴「悲しい話ね」

つ[]カメが貰わないなら〜
亀「前回も似たような展開になったな」
水「で、どうするの?」
鶴「カメの好きにすれば?」
亀「僕はツル一直線で」
水「という訳で、貴方のものに」
鶴「心はどうか分からないけどね、『無理』だったし」
亀「残酷だな」

>>44
亀「それは次回で」
水「あ、次のヒロインはコイなんだ?」
鶴「また浮気?」
水「まぁまぁ」
鶴「浮気?」
亀「それは次回のお楽しみ」
鶴「チョッキン」
亀「ごめんなさい」

>>45
亀「機界?」
水「ロレイラルしか思い浮かばなかったみたいだね、作者」
鶴「何の話?」
水「槍好きと機械人形萌えでクノンばかりを使ってたね」

つ[]>>43アズサ先生は〜
亀「アズサ先生大人気だな」
鶴「こっちではモテないのにね」
水「残酷なこと言うね」
鶴「事実よ」
亀「それに一真の次に壮絶だしな」
水「カメがそれを言ったら……」
亀「黙れ」
鶴「でも本当に酷い話ね。次元の壁は残酷だわ」

>>52,54
水「期待してるよ」
鶴「職人さんが二人も来るなんて、嬉しいわね」
亀「前にも書いたけど、上手い下手は関係無い。一番大事なのは投下することだしな」
水「そんなこと言ったら、作者は……」
鶴「実際、ヘドロを……」
亀「待ってるゾナ!!」

亀「さて次のヒロインはコイ。コイ編ラスト、果たして最後にまともな料理になるのか!?」
水「カメとの間にも最終決着!! それでは、『ツルとカメ』でした!! 来週も見てね!!」
69 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 00:26:35 ID:9HyouwZw
今回はこれで終わりです


大変申し訳ないのですが、次のヘドロでは質問コーナーはありません
そうです、メモを取る前に前スレが落ちたのです
なのでリクがあったら、おまけのコーナーで何か書きます
70 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 01:03:21 ID:tPa1KpA6
>>69
一番槍GJ!

機界新種・・触ったもの全てを絶縁体にしてしまうという恐ろしい能力を持った生物。
         ちなみに主人公の恋人が素体になってます。
71 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 02:11:48 ID:ATf+/6jI
週一の楽しみにGJ!


カメいっその事ちょっきんされちまいなwww
でもそれだとツルカメが成り立たない・・・・
それは絶対嫌だから、カメ女体化で許してやるww
そしたら少しは変態もマシに・・・・なるわけがない!!むしろ拍車がかかるorz
つ[]カメは後ろの穴プレイに興味はありますか?
ちなみにあると答えたらド変態から究極完全変態淫乱タートルの称号をくれてやる。
72 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/31(木) 18:43:39 ID:9s6xJZo6
ホウオウコンビがいなくてフルコンプできず…残念だ
だがその分を他のメンバーが頑張ってたからGJ!
と言うかセンス、眠いなら寝てれば良かったのにw

つ[]ミチルはバイトいくつ掛け持ちしてるんですか?

次回のコイの料理が今から気になる…
73 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/01(金) 00:50:44 ID:GvEEVmIL
ロボ氏GJ!!
次でコイは最終回か……哀しいような切ないような



つ[]水樹、結婚してくれ。いやむしろ俺と結婚しろ
74 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/01(金) 15:18:56 ID:hbhM5IYM
つ[]マコちゃんに突っ込んでる水樹にカメが後ろから突っ込む
  という電波は受信しなくても結構です
75 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/01(金) 16:12:27 ID:++E7UBNM
>>69
GJ!
携帯からなら、「書」か「設」の「●ログイン」をクリックすれば、過去スレも読めますよ。
書き込みやコピーはできませんが、それなりに利用価値はあります。

つ[]<水樹のフランクフルトを下さい。
76 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/01(金) 16:20:38 ID:++E7UBNM
>>75
追記。
ログイン中は書き込み不可なので、書き込む時はちゃんとログアウト推奨。
PCなどでも使えないので、ファイルシーク経由でコピーしようとしてもできません。
77 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/02(土) 20:42:14 ID:lv6RzYYq
そういえばここ保管庫ってある?
78 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/02(土) 23:51:25 ID:si8iy1Rb
ちょwwwおま、>>77www
79 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 00:52:45 ID:r1i2etGs
投下しますよ
80 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 00:54:13 ID:r1i2etGs
第10話『交わらぬ色』

 キッチンからは二つの音が響き、異なる種類の香りが届く。片方はカレーを鍋で煮込む
音と、独特のスパイシーな香り。もう片方は麺と野菜を炒めるもので、焦がしたソースの
香りのは待つ者達の食欲を刺激してくる。キッチンに立つ者は二人、カレーを作っている
リリィと、ヤキソバを作っているリィタだ。
「楽しみだねー。リリィお姉ちゃんのカレーも、リィタちゃんのヤキソバも、大好き!!」
「そうだな」
 虎蔵は膝の上で楽し気に笑うサユリを濁った瞳で見つめ、軽く頭を撫でた。
 あの告白以来、リリィは頻繁に訪れるようになった。最初は週に二日というペースで、
次第に三日四日となり、三ヶ月経った今では殆んど毎日となっている。虎蔵は構わないと
言っているが、流石に泊まるのは気が引けるらしく夜には帰っているものの、それは寝る
為だけのもの。言うなれば半同居状態となっているのだった。そのことにしても、管理局
の局員は全員宿舎に住んでいるので大した違いにはなっていない。意識とケジメ、モラル
の問題のようなものだろうと虎蔵は思う。
「しっかし、リリィも」
 ヤキソバを皿に盛り付けながら、リィタは鍋を見た。
「他のものを作ろうとしませんね」
 良いですか、と姉に菜箸を突き付けて、
「通い妻やってる今だったら、それで済むかもしれません。得意な料理を作って喜ばせる
のは悪くない作戦です。虎蔵さんもサユリちゃんもリリィのカレーが気に入っているのは
私も認めます。ですが、もう三ヶ月ですよ? 三ヶ月!! 飽きますよね?」
 突然振り向かれ、虎蔵は言葉を詰まらせた。
 どう言って良いのか悩み、
「取り敢えず箸を下げろ。サユリの教育に悪い」
「誤魔化さないで下さい!!」
 ぴしゃりと言われ、ぐうと声を漏らす。
81 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 00:55:54 ID:r1i2etGs
 そう、いつかは立ち向かわなければいけない問題なのだ。それは分かっているのだが、
なかなか言い出すことは出来なかった。自分を慕ってくれている娘が喜ばせようとして、
得意な料理を一生懸命に作ってくれている。それ自体は嬉しいことでもあったし、否定を
するどころか幾らでも受け止めてやろうと思っていたのだ。だが一つ残念なことがあると
すれば、そのレパートリーの数だった。リリィの出来る料理は一つだけ、カレーだけなの
である。キャンプのときにリィタが言っていたことだけならば、冗談や、時間の隔たりに
よる認識不足というもので片付けることが出来た。だがこの三ヶ月間、カレー以外の料理
を作っている様子を見たことが無いことが、何よりの事実を証明したのである。
 リィタの忠告を聞くか、それともリリィにもう少しの自由を与えるか。
「仮に虎蔵さんと結婚しても、毎食カレーだけじゃサユリちゃんが悲しみますよ」
「サユリちゃんを引き合いに出すのは卑怯です。それにリィタだってヤキソバ以外は」
「私は他のも作れます。最近はレパートリーが三桁になりました」
 妹の思わぬ進歩を聞かされ、リリィは虎蔵に猜疑の視線を投げ掛けた。どう声をかけて
良いのか分からず、虎蔵は言葉を発せずに頷く。リリィが来るのは仕事が終わった後のみ
なので知らないだろうが、守崎家の朝食はリィタが作るようになってから、殆んど被った
ことが無い。一人で暮らしていたときには味わうことが出来ない、自分以外の者のために
作る料理の楽しさというものを知ってからというもの、リィタのレパートリーはヤキソバ
とコンソメスープの二種類のみから飛躍的に増しているのだ。
「そんな、だって、リィタも昔は」
「あのね、あたしもお料理出来るよ!! 卵焼きと目玉焼き!!」
 二種類。
 数にして、二倍。
 それを聞き、リリィはとうとう膝から崩れ落ちた。
82 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 00:57:13 ID:r1i2etGs
「幼女に負けるなんて、私はどうしたら……仕方ないじゃないですか。だって普通に料理
しているつもりなのに、何故か墨や毒物になっちゃうんですよ。無理なんです。最初は、
確率システムが誤作動してたと思ってたんですよ。でも違うんです、どこにもバグが無い、
極めて正常な状態だったんです。つまり才能の話になるんですよ。これはもう、どうにも
出来ないじゃないですか。生まれ持ったものだし、変えられないんです。はい、私なりに
頑張りましたよ。でもね、新しい調理機械を作ろうとしても、あの憎き大罪人がですね、
文明のレベルを固定しちゃったじゃないですか。どうやらそれに触れるらしくて、作る度
に制御機能が発動して壊されてしまうんです。もうお手上げですよ、お手上げ」
 一体誰に語りかけているのだろう、虚ろな瞳で空中を見上げ、リリィは呪いの言葉でも
吐くように言い訳とも独白ともいえる言葉を長々と紡いでゆく。得体の知れない妙な何か
を感じたのかサユリは虎蔵に強く抱き付き、血を分けた実の姉妹であるリィタも目を背け、
一歩後退した。リリィを大切にしたいと思い、先程まで擁護をしていた虎蔵ですら直視を
することが出来ずに窓越しに外に視線を向けれてみれば、
鴉が集団で飛び交って黒のカーテンを作っているのが見えた。近所の犬や猫も不穏な空気
を察知したらしく大声で鳴きわめいているし、これは正に本物の地獄だ。
 だが、それよりも恐ろしいのは、
「カレー以外の料理なんて、この世界から消えれば良いのに」
 真顔で意味の分からないことを呟いているリリィだ。
 こんな小さな音量なのに、何故他の音よりも強く聞こえるのか。
「聞いてますか?」
「勿論、聞いてる。大丈夫、ゴミでも何でも俺が食ってやる」
「それ誉めてないですよ!?」
 呪いあれ、とリリィが叫んだ直後。
 衝撃。
 大きく地面が揺れ、停電が起きた。
「え!? まさか、そんな呪いとか非科学的な!?」
 本人も現実になると思わなかったのだろう、暗闇に支配された部屋の中に驚くリリィの
声が響いた。軽くパニックになっているらしく、振り回された拳が虎蔵の頬に直撃した。
83 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 00:58:54 ID:r1i2etGs
 轟音。
 窓の外を見て、虎蔵は先程の喧騒の理由を理解した。
「どうなってやがる」
 隕石が降ってきている。
 それも片手の指で数えられるような数ではない、雨の如く降り注いでいるのだ。動物は
世界の異常を感知する力を持つと言われているが、その通りだった。犬や猫が反応をして
いたのは精神が暗黒面に突入しかけていたリリィなどではなく、これに対するものだった
のだろう。先刻までは予兆すら感じなかった明らかな異常、それは射線上にある建築物を
ことごとく破壊し、侵食していた。
「ぱぱ、怖いよぅ」
「大丈夫だ、俺が居る」
 原因は何かと考え、一瞬の内に結論が出た。このような異常事態を起こすことが出来て、
更に明確な理由が存在する者は虎蔵の知るところでは一人しか居ない。
 答え合わせをするようなタイミングで、部屋の中に一つの明かりが浮かぶ。
『諸君!!』
 自動的に点けられたテレビ。
『絶望しているかね!?』
 画面の中には見慣れた老人。
『悪役が来たぞい!!』
 高笑いをするDr.ペドが映っていた。
『儂は決めた、いや覚悟を決めた!! これから全勢力を持って世界を滅ぼすと!! 画面の
前の幼女の皆は安心しておくれ、君達は殺さん!! ただし、それ以外!! 具体的には十歳
以下の女の子以外の存在は、ことごとく滅ぼしてくれるわ!!』
「本格的にボケたか、糞爺」
『儂は神になり、桃源郷を作る!! 因みに桃源郷の桃は、幼女の尻じゃ!!』
 意味はないと分かっているが舌打ちを一つ。画面を睨み、ふざけるな、と毒づいた。
「こんな馬鹿な理由で、世界を潰させるかよ」
『特に虎蔵君、怒っているかね? 今は好きなだけ怒れば良いじゃろう、もうすぐ死体に
なるのじゃからな。生きている間に、思う存分苦しむのじゃからな!!』
 カメラが引いたのだろう、Dr.ペドの異様な姿が映されると共に、背後の光景が明らか
となった。どこかの格納庫のようで、仄暗い白色が全体に渡って続いている。内部は広く、
その空間の端は映しきれていないが、それよりも目を引くものは、
『これを止めきれるかね!?』
84 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 01:00:02 ID:r1i2etGs
 白の空間に彩りを示す幼女達、機械人形の群れだ。こちらも部屋の奥行き同様に、端を
見ることが出来ない。千単位で構成された集団は数だけでも力を表し、画面の向こうだと
いうのに強い圧力を与えてきた。
『数にして一万二千五百三十七。この大軍勢は、明後日零時を持って総攻撃を仕掛けると
宣言しよう!! まぁ、それまでは先鋒の娘達の攻撃にせいぜい逃げていることじゃな!!』
 最後に再び高笑いを残し、唐突に画面はブラックアウト。一瞬だけ静寂が訪れるものの、
再開された隕石の轟音により周囲に崩壊の音が満ちてゆく。
「ごめんな、サユリ。仕事が出来た」
 時計を見ると午後六時三十分、Dr.ペドが告げた時刻まではニ十九時間と三十分だ。
 虎蔵は目に涙を浮かべたサユリを一度抱き締めた後、携帯を取り出した。手慣れた操作
で呼び出したのは薫の番号、待ち構えていたかのように2コール目の途中で繋がった。
「分かってるな、サユリを頼む」
『えぇ、これから迎えに行くわ。ついでに敵のポイントも割り出しておくわ』
「助かる」
 短く言葉を交わし合い、通話を切った。
「サユリ、これから薫が迎えに来る。ちゃんと言うこと聞くんだぞ?」
 ねぇ、と不安そうな色を瞳に浮かべ、虎蔵のシャツを掴んだ。
「ぱぱは居なくなったりしないよね?」
 心臓に、鈍い痛みが走った。
 相手に勝てる保証などは、どこにもない。寧ろ勝てないと考えた方が普通だ。『D3』
は『N.E.E.T.』時代ですら単体でも一個中隊並の戦闘力を持っていて、今ではそれよりも
遥かに高い力を持っているのである。それが一万三千弱、考えすら及ばない数値だ。
 だが、負けられない。
「心配すんな、俺は死なねぇ」
 歯を剥き、瞳の濁らない笑みを見せて、
「これが終わったら、一緒に旅行にでも行くか。セリスの生まれたところによ。初めての
海を体験させてやるよ。景色も綺麗で最高だぞ、楽しみにしてろ」
 一拍。
「うん!!」
 サユリは元気に返事をした。
85 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 01:03:57 ID:r1i2etGs

 ◇ ◇ ◇

「待たせたな、変態人形」
 荒れ果てた公園の中央、ジャングルジムの上に立つ幼女は虎蔵の姿を見るなり口の端を
狂暴に歪め、飛び降りた。身に着けていたものはワンピースのようだったが、違うらしい。
それは小さな粒の砂の群れで、幼女の動きに追随する形で纏わり付いてくる。数秒かけて
服の形になったが、先程のものとは若干デザインが違うものになっていた。砂鉄を操る力
『MetalWoulfeChaose』の改良版のようなものだろう、と虎蔵は考える。
『漸く来たか、待ちくたびれたぞ。この都市は広いから、暇潰しには困らなかったがな』
 小馬鹿にしたように笑い、幼女は宙に浮かび上がると、
『俺はクウ、幼女四天王の一人だ。まぁ、名乗りの意味は無いかもしれんがな。貴様達は
今ここで、俺に殺されるのだから。せいぜい俺に倒されたことを冥土で自慢しな』
『DragneelSystem:Enter;』
『HolyStone:Open;(流星群展開!!)』
 クウの叫びと共に、遊具が浮かび上がった。それらは空中で不可視の力によって曲がり、
圧縮され、鉄球へと姿を変えた。これが隕石の正体だったのだ、と理解する。
「こっちも全力でいくぞ、リリィ、リィタ!!」
『FullmetalTiger:Enter;』
『MoonBrea:Enter;』
 鉄球が襲いかかる僅かな瞬間に虎蔵達は変身を完了。
『Type-P:Enter;』
 リィタが持った巨大盾が無数の攻撃を防いだ。
 だがクウの表情に驚きは見られず、それどころか楽しんでいるようなものすら見える。
愉快そうな表情のままクウは胸元からタクトを形成すると、鼻唄を歌い始めた。作法など
最初から頭に無いのだろう、気まぐれに紡いでゆくジャズのようなリズムに合わせて適当
にタクトを振り、それに合わせて鉄球が揺れる。不規則な軌道で揺れるそれらはぶつかり
合い、鈍く硬質な協奏曲を奏でていた。
『どうだ? 良い音だろ?』
「うるせぇ!!」
 叫び、虎蔵は大剣を一閃。
 機械仕掛けによる高速移動する刃は、しかし空を切った。
『そんな大振りな攻撃、当たる訳が無いだろう』
 衝撃。
 飛来した鉄球は脚を擦るのみで終わったが、相手は質量が百sを越える鉄の塊だ。
86 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 01:06:09 ID:r1i2etGs
 脚部バーニアは砕かれ、小さな体は吹き飛ばされる。残った左足のものを全力でふかし、
大剣を地面に突き立てて辛うじて姿勢を整えたが、間を置かずに第ニ波が来た。
 虎蔵は舌打ちを一つ。
 迎撃の為に構えようとするが、
「何だ!?」
 抜けない。
 固定された刃を見ると、盛り上がった地面が根元付近にまで絡み付いていた。
『ここら一帯は俺が支配した。良いよなあ、コンクリートとかで舗装されてない場所は』
 虎蔵は柄から手を離すとパワーアシストのアームを全力で起動、至近距離にまで迫って
いた鉄球を強引に受け止めた。片足のバーニアでは出力が足りずに吹き飛ばされ、アーム
も砕けてしまったことに苦い表情を浮かべ、背後に控えたリィタとリリィを見る。
 問題は自身の装備が砕けたことではなく、使えなくなったということだ。戦うだけなら
他の装備でも出来るし、それにより突破口が見付かるかもしれない。だが今の矛盾装備を
解除すればリィタのものも解かれてしまう。リィタの他の装備では、鉄球を避けることは
可能だが代わりにリリィを守れなくなってしまうのだ。
 悩んでいる間にも鉄球の勢いは加速し、周囲の建築物から集めてきたのか数も増加して
きている。今はまだ幾らか隙間は存在するが、空を埋め尽くす程になってしまったら到底
避けることは出来なくなる。その前に倒さなければいけない。
「私に構わないで下さい」
 唐突に、リリィが盾から身を出した。
「私は」
 轟音。
 襲いかかってきた鉄の雨をリィタが防いだが、それが間に合わなかったら今頃リリィは
肉片になっていた。しかしリリィは怯むことなく、目に強い意思を浮かべて前進する。
「私は例え、殺されても構いません。ですが、守られるだけなのは絶対に嫌です!!」
 一歩。
 また、一歩。
 破壊の豪雨の中を抜け、とうとうリリィは虎蔵の元へと辿り着いた。安堵の息を溢した
後に笑みを浮かべて、ほら見たことですか、と薄い胸を反らして叫ぶ。
「あんな幼女の攻撃なんて、全然余裕です」
 だが、虎蔵は気付いた。
「足、震えてるじゃねぇか」
87 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 01:07:35 ID:r1i2etGs
「でも!!」
「私からもお願いします。それに私はノーマル状態でも、パワー重視なので幾らかは防ぐ
ことが出来ます。だから虎蔵さんは、自分のことを考えて下さい」
 リィタすらもしてきた無茶の肯定に、虎蔵は頭を掻いた。思い出すのは亡きセリスの姿、
命を張って無茶をしてくるところが嫌になる程に似ていると思う。外見も違うし、性格も
全然違う。本来ならば似ている部分などはどこにも無いというのに。
「どうして、俺に惚れる女は皆馬鹿なんだろうな?」
「それは虎蔵さんが馬鹿だからです」
「違いねぇ」
 しかし虎蔵の思考は、そこで止まらない。
「だが、リリィの馬鹿はリリィだけのもんだ」
 思うことは二つ。
 似ていてもリリィはリリィであり、セリスではないと。
 そして、そのリリィは絶対に死なせないと。
「見ててくれ。俺が、こいつを倒すところをよ」
『Type-F:Enter;』
 空間に展開した重装甲は、虎の叫びに似た音をたてて瞬時に合致。堅牢な要塞のように
すら思える姿をした虎蔵が長杖を構えると、先端部のドリルは回転を始めた。
 限界までスラスターを稼働させ、虎蔵は先程のリリィのように前へと進む。装甲の頑丈
さを頼りに鉄球をその身で受け、向かう先はクウの真正面だ。突撃兵の持つ目的と役目は
等しい、ただ相手に向かい槍を突き立てるだけだ。それ以外のものは無い。
 だから、虎蔵は前へと進むことだけを考える。
「くだばれ!!」
 背後のことなどは全く気にする必要は無い。リィタはリリィを守ると約束し、リリィは
自分に対して平気だと言ったのだから。力は無いが、意思と覚悟を持って敵に立ち向かう
馬鹿であると。守られるだけの状態が嫌な馬鹿であると、そう宣言して隣まで歩いてきた
者なのだから。後は、自分がそれを信じるだけだ。
「この、性悪人形!!」
 叫び、長杖を突き出す。
 音速超過の衝撃波によって衣服を構成していた砂が消し飛び、
『馬鹿な!!』
 先端が、クウの中心を貫いた。
「馬鹿だよ、だが馬鹿だから強いんだ」
 そのまま体をぶち抜き、虎蔵は姿勢を整えながら振り返る。
 視線の向かう先には、満面の笑みを浮かべたリリィとリィタが立っていた。
88 名前: □ボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 01:09:32 ID:r1i2etGs
今回はこれで終わりです

時間が無くて、おまけは書けませんでした
すみません
89 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 12:09:31 ID:vkoGGRm+
久々にGJ!!
このクライマックス感が実にたまんねぇぜ。

…って、リリィもコイと同類だったのかよ!!wwwww
もしかしてロボ氏の真の好みってこっちの属性なんDEATHか?
90 名前: 名無しさん@ピンキー 投稿日: 2007/06/03(日) 16:14:39 ID:rOuwsfeX
GJ!自分の意見がSSで書かれるって本当に嬉しいことだな。


次のよ う じ ょはカレー焼きそば使い・・・・いやいや冗談ですよ?
えーっと・・・相手の精神を自由に操れるスピリチュアルコントロールで。
これなら服を脱がせて全裸にry

いやいや俺やばい性癖なんて持ってませんよ?変態アイデア出してるけど変態じゃないよ?ツンデレ住人なら信じてくれるよな?な!?

【無駄な抵抗はやめろ!幼女1000人を解放して出てこい!】
ん?近くで事件でも起きてるのか?物騒だなぁ。
91 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/03(日) 22:09:45 ID:O0TGJAZm
>>88
GJ!
そうか、コイの末裔はリリィだったのか……!

つ[]<「信仰伝導士天道太子幼女。手に持つ筆で特定の模様を描く事で、森羅万象を操る法力を使う。」
つ[]<「炎の花火師幼女タマヤ。武器は爆薬と手榴弾。」

いや、さっきまで大神やってて……
92 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/06(水) 19:27:05 ID:av8KSrSd
今夜か。
93 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:04:10 ID:pGbzSFXa
おや?
94 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:16:01 ID:mRz5LQ6m
投下しますよ
95 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:17:21 ID:mRz5LQ6m
 電子音。
 チャイムを鳴らすとテンポの早い足音が聞こえてきた、そんなに急がなくても良いもの
だと思うが俺を呼び出した主は待ちきれなかったらしい。ドアが開くと、エプロンを身に
着けたコイが出迎えた。顔には無愛想な表情が浮かんでいるが、瞳には若干の喜びが見て
取れる。これは多分、気のせいではないだろう。
「いらっしゃい。取り敢えず上がって」
「おう」
 今日はコイに呼ばれ、こうしてお宅にお邪魔している訳だが、
「何か後ろめたいなぁ」
「何よ、まさかエロいこと期待してる訳? あーやだやだ、これだから腐れちんこは」
 のっけからこの発言、帰ってやろうかと思ったが腕を物凄い握力で掴まれた。そのまま
コイは僕を引きずるように大股で歩き、キッチンへと向かってゆく。
 僕が呼ばれた理由は他でもない、コイの料理を手伝う為だ。どうやら年末にカップ麺を
作ることが出来るレベルまでは成長したらしく、本格的に料理を作りたいと思ったらしい。
本当ならばツルも呼ばれていたのだが、久し振りに叔父さん達が帰ってきているので家族
皆で過ごすことを優先させ、僕だけのお呼ばれとなった訳である。後ろめたい、と考えた
のはツルを抜かして、つまりコイと二人で会っているからだ。コイが言ったようにエロい
ことを考えている訳ではないが、どこか気不味いものがあるのだ。
 告白を断ったが、それでも諦めないと言ってきたのだから。
 勿論なびく訳がない、僕はツル一筋だしコイも理解をしている筈だ。だが理解した上で
僕に好意を寄せてくれているコイの存在は、あまり悪く言いたくないが、軋みを生むもの
であることは間違いないのだ。気持ちは嬉しいが、受け止めればツルを裏切ることになる
のだし、どちらも誤魔化して生きるなんて器用で卑怯な真似など出来る筈もない。コイも
僕と同様だ。親友であるツルの前では僕にそんなそぶりを欠片も見せず、二人のときのみ
無器用な好意を寄せてくる。どこもかしこも不自然で、だからこそ軋む。
96 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:19:34 ID:mRz5LQ6m
 沈黙。
 言葉に出来ない妙な空気が周囲を包み込む。一旦黙ってしまえば言い出すタイミングが
上手く掴めず、さっきとは違う意味で気不味くなった。何か話題があれば良いのだが残念
なことに、こんなときに限って思い浮かばない。エロい話題は絶対に禁止だ、更に空気が
重くなる。ツルのことや告白のことについても同じ、と言うか何故こんなことばかり思い
浮かんでくるのだろうか。朝から緊張していたのでニュースも頭の中に入ってこなかった、
そもそも高校生が楽しく会話をする上でふさわしくない。趣味の話題はどうかと思ったが、
僕とコイでは全く被らないことに気が付いた。
 もしかして、コイとはきちんと会話が出来ないのだろうか。
 思い返してみればコイと二人の状況は、怪我で保健室に運ばれる以外では殆んど無い。
思い出せるのは家庭科室でフライパンを洗っているコイを慰めたときくらいで、何の気も
無しに会っていたこと自体は無いのだ。それ以外では常にツルや他の誰かが居た、純粋な
状況など全くと言って良い程に無いのである。
「ほら、これ飲んで」
 軽音。
 静寂を破るように珈琲が置かれた。珈琲を煎れていたことに気付けない程、考え込んで
いたらしい。コイの動きに何の注意も出来なかった辺り、失礼という以前に馬鹿だ。
 大人しくマグカップを口に運ぼうとして、しかし動きを止めた。
「何よ? 毒とかは入ってないわよ?」
「いや、それ以前に」
 これはコイが煎れたものだ、果たして口にして良いのか。香りは良いし、色も普通だ。
しかし、だからと言って油断出来ないのがコイ食物の恐ろしいところである。
97 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:21:01 ID:mRz5LQ6m
「あぁもう、じれったい!!」
 僕が動きを止めていたのが気に食わなかったのか、コイはマグカップを奪うと豪快に喉
を鳴らして飲み始めた。拳で口元を拭いつつ、まるで義兄弟の証杯のように突き出された
マグカップの中身は残り半分程になっている。
「ほら、平気。これで良いでしょ?」
 迫力に押され僕も飲み始めたが、とても美味い。粉ジュースすらまともに作れなかった
女の子の煎れたものとは思えない程。いや、インスタントでここまで出来るのかと思える
程だ。シンクの横に置かれた瓶のラベルを見たが、家にも置いてある安いものだ。なのに
どうして、ここまで差が出てくるのか不思議でならない。
「驚いた?」
 大きな胸を強調するように背を反らし、得意そうな表情を浮かべ、
「コツがあるのよ」
 コツも何も、粉にお湯をかけるだけだろう。その単純な作業の中に変化を入れる部分は
存在しないと思ったが、こうまで自信あり気に言うのなら存在するのだろう。
「あのね、良い角度があるのよ。カップ麺にお湯を入れるときに、いつもは爆発すんのよ」
 それはまた、物凄い現場もあったものだ。
「でもさ、指にお湯がかかりそうになって避けたとき、爆発しなかったの。」
 普通にコイは話しているが、さっぱり意図が掴めなかった。日本語で会話をしている筈
なのに普段の生活が違いすぎるので、頷ける部分が極端に少ないのだ。僕とて、ミチルと
いう同居亀のお陰でファンタジーじみた非日常をたまに味わっている。だから論理的抗体
が幾らか減ってきているのだが、流石にコイには着いていけなかった。
 だがコイは構わずに話を続ける。
「そのときね、考えたのよ。もしかしたら、上手くいくかもって。ほら、あたしが料理を
するとき大小なり被害に差が出るじゃん。だから、その小さい被害を極めれば」
 普通になる、という寸法か。
98 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:22:46 ID:mRz5LQ6m
 よく思い付いたものだ、と思うが悪い考えではないかもしれない。物事を成功させる為、
取る方法は二種類ある。一つは良い部分を伸ばして悪い部分すら補ってやることだ。だが
コイには悪いが、良い部分は無いので使えない。これはコイも分かっているので、さっき
のような説明をしたのだろう。つまりコイの取ったのは二つ目の方法である、出来るだけ
失敗を無くすというもの。僕には理解出来ないが、角度などを調節して、まともな状態を
連続させていくといったものだ。この珈琲も、その方法で煎れたのだろう。
 そこまでは分かったが、疑問が沸いてくる。
「何で僕を呼んだんだ?」
 鈍感、とコイは半目で睨み、
「見ててほしいからよ。その、さ、親友と好きな人に」
 最後の部分だけはそっぽを向いて呟くように言う。普段のコイらしくない、だが僕だけ
は知っている表情を浮かべて。こんなにも乙女らしい、照れが前面に出てきた表情をする
など、誰も思わないだろう。皆が見ている、僕に対してやけに口の悪い娘は、こんなにも
可愛いらしい仕草をするのだ。特権と言ったら思い上がりのように聞こえるかもしれない
けれど、それを見せてくれたことに、僕はとても嬉しくなった。
「ま、親友は残念なことに居ないけど」
 あんたが居るから良いわ、と言って冷蔵庫を開く。
 そこには想像を絶する光景が広がっていた。
「何を作るつもりだよ?」
「え? 炒り玉子だけど?」
 それを作るのに、どれだけ失敗を重ねるつもりなのか。冷蔵庫の中にあるのは見る限り
の卵パックの山、見ているだけでコレステロールの過剰摂取になりそうだ。隙間無く詰め
込まれた中に申し訳程度に調味料などが置かれているものの、何の慰めにもなっていない。
99 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:23:35 ID:mRz5LQ6m
「他の食材は?」
「冷凍庫だけど?」
「卵の消費期限はすぐに来るが、余ったらどうする?」
「冷凍庫に入れるわよ?」
 駄目だこの娘は、何も分かってない。何でもかんでも冷凍庫で凍らせておけば良いなど、
いつの時代の人間だろうか。そんな簡単に凍らせて溶かしてを繰り返していたら、美味い
食材も不味くなるというのに。この料理下手には、そんな基本的な知識も無いらしい。
「因みに幾ら遣った?」
「一万くらい?」
 人が仕送りの中でエンゲル係数を気にしながら暮らしているというのに、どれだけ好き
放題に金を使うのだろうか。いつか、じっくり話して聞かせてやらねばなるまい。しかし
一万ということは、卵が一パック百五十円として単純計算で六十六パック、恐ろしい数だ。
こんなに使うのか、使いきれるのか。確か卵は冷凍庫禁止だったような気もする。
「大丈夫よ。あたしは五人家族だから、一人一食で三個食べて、一日で四十五個でしょ?
 今日で半分使うから、残りの三百個くらいは一週間で消費出来るし」
 アホな理論を言いながら卵を割ろうとするが、電子レンジに入れてもいないのに超爆発。
成程、このペースで進めるのならば確かに消費しきることも出来そうだ。
「ん?」
 卵を割っては揺れているコイの乳を見て、気付く。殻を割らずに三日間程酢に浸けると、
柔らかく面白いものになる。殻を構成するものが同じである以上は、それがダチョウの卵
でも同じ筈だ。なので、もしかしたらコイの乳もダチョウの卵も同じではないのだろうか。
 試しに割ろうと鷲掴み、
「何すんのよ!!」
 何故か顔面に卵をぶち込まれた。
「あ、爆発しない!! この角度!!」
 喜ぶコイを見て、反応に困った。
100 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:26:05 ID:mRz5LQ6m

 ◇ ◇ ◇

「出来たぁ!!」
 使用した卵は数えて数百以上、その膨大な数の末に完成した炒り玉子が盛られテーブル
の上に置かれた。見たところ何もおかしな部分はない。奇妙な造形や色をしていたりする
ことも無ければ、異臭を放っていたりすることもない。どこからどう見ても完全な、ただ
卵を炒めただけのものだ。先程までのパターンから考えれば、紛れもない成功作となって
いるだろう。二時間もかかったが、それだけのものがあったということだ。
 良くやった、と褒めてやりたいが、しかし声を止める。それは食ってからの方が、喜び
が強いだろうと思ったからだ。味を見ずに誉めるのも良くない。
「あ、ちょっと待ってて」
 何だ、と思ったところに赤い色彩が入ってきた。
 黄色い色の上に描かれたのは、
「ハートマークだと!?」
 驚きにコイの顔を見たが、浮わついた絵とは対照的に表情は真剣そのものだった。
「これが、あたしの全力の気持ち。しょぼいかもしれないけど」
「そんなこと無いだろ」
 確かに、一般的な目から見たら滑稽なものだろう。長い時間をかけて、子供でも出来る
ような料理を出した。つまらない、貧相、馬鹿みたい、何だそれはとヤジを飛ばし笑う者
が居るかもしれない。だが僕は絶対に笑わない、言う奴が居たら片っ端から殴り倒す。
 どんなに無様でも、どんなに不格好でも、コイが全力で頑張った結果なのだ。
 息を飲むコイに一度頷きを返してから、一欠片を口に運ぶ。
「美味い」
 それが、僕の正直な感想だった。
「何だよ、美味いじゃん。やれば出来たんだ!!」
 感極まったのかコイは目尻に涙を浮かべ、抱きついてきた。普段はクールでひねくれて
いるだけに、この意外な部分は心に響くものがある。それに二の腕で感じる、柔らかかつ
程良い弾力を持つ二つの幸せな感触は、
「おい、乳が当たってるぞ。もっとやれ!!」
 叫ぶとコイは頬を染め、腕で胸を隠して離れた。
「でも、信じらんない。これを、このあたしが」
 一口含んだ直後、
「え?」
 コイの体が、小さく震えた。
101 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:27:40 ID:mRz5LQ6m
 まさか、と思う。
 この後に及んで、この展開は流石に無いだろうと。
 だがコイは目を潤ませ、熱い、と言いながらシャツのボタンを外し始めた。熱いも何も
今は真冬、暖房が効いているにしても暑いとは思わない。それに襟元をはだけさせたり、
目を潤ませたりなどといった行為の原因になるとは思えない。
 つまり、これは、
「失敗したのか」
 あんなに上手く出来たと思ったのに、何てことだ。
「上手く出来たから」
 コイは耳元に唇を寄せ、
「ご褒美、頂戴よ?」
 囁き、舌で軟骨をなぞってくる。
 頬を経由して唇に辿り着いたコイのそれは、柔らかく重ねてくる。口内に広がるのは、
甘いものではなく市販のケチャップの味。塩味と酸味が混じった唾液が流れ込み、呼吸が
出来なくなって思わず飲み込んでしまう。
「おい、やめろ」
「これも駄目か」
 こいつは今、何と言った?
「あーもう、自己嫌悪しちゃうわ。何で料理は上手くいってんのに、こっちは上手いこと
いかないかなー。いっつも性欲全開な癖に、妙に義理難いっつうかさ」
「演技だったとな!?」
 コイの料理は失敗ではなく、今のコイも素面。
「でもさ、少しくらいは相手にしてよ。駄目?」
 悲しく切ない顔が、心を揺さぶる。
 いかん、意識した途端に。
「ツル、すまん」
 今頃コタツで雑煮でも食っているだろう恋人へ向け謝り、
「本当に、これで最後だからな」
 コイに自分から唇を重ねた。
 不誠実であろうとは思わない、思う人間なんて居ない。だが今だけは許してほしいと、
身勝手な衝動が沸いてくる。コイも傷付ける結果になるかもしれない、ツルは間違いなく
泣くだろう。不名誉の泥を被った駄目人間を、罵るだろう。
 でも、手を差し延べずにはいられなかった。
102 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:28:47 ID:mRz5LQ6m
 プライドの高い娘が僕の為に醜態を晒し、ここまで尽くしてくれたのだ。だったら次は
僕が何かをしてやるべきだ。例え悪いことだと知っていても、分かっていても。
 腰に腕を回し、結び目をほどいてエプロンを脱がせ、
「何だ?」
「いや、やっぱり裸エプロンにするんだな、ってさ」
 当然だ、これはコイの成功の証のようなものだからだ。それに、あくまでも後付け的な
ものとして僕の趣味のようなものも入る。あくまでも後付けだ。過去に一度、ツルと実際
にしてみたことがあったのだが、とても楽しめた。胸を揉もうとすれば手を差し込まなけ
ればならず、しかも入れにくい。穴に入れるときも前掛けの部分が当たってきて良いもの
ではなかった。だが、それを補って余りあるものが存在したのも事実だ。制服でプレイを
したときも同じような感覚だったが楽しめたのだし、個人の感覚かもしれない。
 無駄な方向に飛びそうになった思考を元の方向にシフトさせ、スカートも降ろす。
 だが僕は、重大な問題に出会した。
「勝負下着か」
 これを脱がせなければ裸エプロンは完成しないが、これを脱がせるのは勿体無い。この
優美さを無駄にすれば、それこそ罰が当たるというものだ。勿体無いオバケが出てきて、
ちんこをもぎ取られてしまう。それだけは避けなければいけない。
 悩み、考え、結論する。
 ブラだけを引き抜き、下半身の下着はそのままに手を滑り込ませる。胸部分の前掛けを
ずらして左右の乳房に挟ませるようにしてやると、予想以上の光景になった。大きい胸で
なければ出来ないことだが、これが裸エプロンの醍醐味というものだろう。胸は間に物が
挟まっているという状況でより大きく張りがあるように見えるし、背後から見ると無防備
な下半身は辛うじて隠されている。コイのように凹凸の強い体だとそれは顕著で、僅かに
はみ出した尻の肉や太股がより一層劣情を煽ってくるのだ。
103 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:30:43 ID:mRz5LQ6m
 それを楽しむ為に胸に手を伸ばしたとき、
「ただいまぁ。コイ、居るぅ?」
 いきなり胸に顔を押し付けられた。布の上からとは明らかに違う、すべすべとした感触
に頬が緩みそうになったが、こちらに向かう足音で一瞬で我に帰る。何度か会って聞いた
ことがある、この声は確か姉のアイさんだったか。乳が小さくて不思議に思ったものだ。
 コイはこんなにも大きいというのに。
「だ、駄目!!」
「何がよ?」
 いかん、気付けば揉んでいたらしい。
「今、友達と料理してるから!!」
 その発言で足音が止まり、
「怪我しないようにしなさいよ。じゃ、あたしは逃げ……二階で休んでるから」
 高速で遠のいてゆく。身内であるが故にコイの行動に対する反応も容赦無く、また恐怖
も知り尽くしているので逃げることに何の躊躇いも無かったらしい。
「危なかった、何してんのよ!!」
「いや、すまん」
 怒っているのは分かっているのだが、頬を染めたまま言われても可愛くしか見えない。
 心の赴くままに胸を掌で擦り、揉むと顔は益々赤くなる。家族が居る手前声を出したく
ないらしく、必死に堪えているのか肩や膝が小刻みに震えている。
 大丈夫か、と問う前に脱力しきってしまったらしく膝から崩れてしまった。倒れた際に
前掛け部が捲れ、愛液が伝う太股が直に視界に入ってくる。家族に見られるかもしれない、
という気持ちがそうさせたのだろうと思う。本やビデオなどでたまに見るものだ。焦りの
ようなものがあるらしく、自ら下着を降ろして、早く、とせがんてくる。下着と割れ目の
間にかかった透明な糸が、もう準備が完了していることを告げてきた。
104 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:32:11 ID:mRz5LQ6m
 いつもならば愛撫を重ねるところだが、いかんせん見られたら不味い。
「入れるぞ」
 あまり負担にならないように四這いになりながら体を重ね、取り出した竿の先端を入口
に触れさせる。僕の下で潰れた胸の弾力が気持ち良いが、それをきちんと味わう前に別の
感触が来た。コイが脚を腰へと絡め、自分から腰を突き出すようにして挿入を進めてくる。
指を噛んで声を殺しているのが、何ともいじらしい。
「動くぞ?」
「うん、お願い」
 少しだけ奥へ進めただけなのに、強い快感が走る。コイの家、それも家族が居る状況で
というのは僕にとっても危険なものだ。だからこそ、ここまで興奮するのだろう。コイは
僕よりもその気持ちが強い筈で、そのせいなのか少し大きめの声が漏れた。
 僕はコイの指を外すと唇を重ね、お互いの声を殺す。代わりに耳に入ってくるのは舌が
絡む水っぽい音。ケチャップの味が消えた、コイの味が口の中に広がってゆく。本来なら
無味無臭の筈のものだが何故か甘く感じ、もっと欲しいと思ってしまう。
 唇や唾液だけではない、コイの全てを味わいたい。珈琲や炒り玉子も美味かったのだが、
それ以上。コイの全てが、体全体で味わう極上の料理のようなものだ。瑞々しく柔らかな
、きめの細かい白い肌。その中でも尚際立つ、豊かな双丘と尻たぶ。とろけるように僕を
包み込んでくるゼリーのような女性の証、それらから発せられる甘い香り。麻薬のように、
終わらなければいけないと分かっているのに、終わらせることが出来ない。
 だが自分でも驚く程に早く、限界が訪れた。
 コイもそれを察したのか、より強く脚を絡め、自らの腰の動きも激しいものにする。
「すまん、中に」
 放出し、そこで漸く体が解放される。
 コイは寝そべったままの姿勢で、椅子の足にもたれて休む僕を見て、は、と吐息を一つ
溢した。そして今まで見たこともないような笑みを浮かべ、
「カメ。セックスは最後って言ったけど、料理は食べてくれるよね? 次はもう、土下座
しちゃうくらい美味しくて完全なものを食べさせるから。だから、待ってて」
「期待してる」
「そしてカメを、あたしの虜にしてみせるから!!」
 ツル、重ねてすまん。
 僕は不覚にも、今のコイにかなりときめいてしまった。
105 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:34:01 ID:mRz5LQ6m
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は五枚の葉書と三つのレスでナンタラカンタラ!!」
亀「ゲストは巨乳なのに空気キャラのコイ!!」
恋「ブッ飛ばすわよ?」
亀「すまん。でも使いにくいのは事実」
恋「嘘でしょ!?」

>>70
亀「具体的にどうなるんだろうな?」
恋「さぁ?」
水「電子の動きが不可能になって原子レベルで崩壊するとか?」
亀「作者が馬鹿だと理論が分からないから困るな」
恋「そうね」
水「恋人が素体ってのはエグいね」
恋「『ツルとカメ』、関わった者全てが馬鹿になってセクハラされる。変人が素体とか」
亀「何だよ」
恋「別に」

つ[]カメは後ろの穴プレイに〜
亀「する方なら少々」
水「質問的に、される方じゃないの」
亀「興味なし」
水「でも二穴プレイのときはノリノリで」
亀「黙れ、男と女じゃ違う。それに水樹こそ尻穴オナニー設定が」
恋「ごめん、キモいから黙って。マジ引いた」
水・亀「ごめんなさい」

つ[]ミチルはバイト〜
亀「朝は新聞配達」
恋「へぇ」
亀「学校終わったらファミレスとか喫茶店とか交互に」
水「凄いね」
亀「夜はコンビニの夜勤とか警備員とか」
恋「嘘でしょ?」
亀「合計5つだな。そして休日は僕の精液を吸ってエネルギー補給」
水「ちょっと待った」
恋「仕方ないわよ、カメのペットだし」
水「何か納得した」
亀「どういう意味だ?」

つ[]水樹、結婚してくれ。〜
水「あたしはまだ16だから無理かな」
亀「男だしな」
恋「そんな問題なの?」
水「因みに、男同士は結婚無理だよ? 幾ら馬鹿な世界でも法律はあるし」
恋「やけに冷静ね」
水「今年は強く生きることにしたの」
亀「いつまで続くんだろうな?」
恋「どういう意味?」
亀「次回のヒロインが……」
水「え?」
106 名前: 『ツルとカメ』×41 [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:35:08 ID:mRz5LQ6m
つ[]マコちゃんに〜
水「本当にしなくて良いよ」
亀「それも作者は考えたらしいがな」
恋「最低ね」
水「何か、ゲストがまともな人だと有難いね」
恋「うわ、泣かないでよ」
亀「でもな、マコちゃんネタは使い回し出来ないから無理だと結論したらしい」
水「何で何事もなかったみたいに話を進めるの!?」
恋「つうかマコちゃんって誰よ?」
水「聞かない方が良いよ」
亀「でも水樹はネタが幾つかあるらしい」
水「慣れたよ、もう」
亀「荒んだな」

つ[]水樹の〜
水「ごめん、あたしの家はバイト禁止なんだ。バーガー屋さんで今度働くみたいだから、
ミチルに頼んだらどうかな? 美味しいよ?」
亀「凄く理論的に誤魔化してるな」
恋「って言うか、いつもこんなホモセクハラばっかりなの?」
亀「ホ……まぁ、そうだな」
恋「今回が最後で良かった」
水「あたしは最後まで出るの?」
亀「他に誰がMCやるんだ? 一人は無理だ」
水「酷い!!」
亀「酷くない!!」
恋「アホらし」

>>75,76
水「大変申し訳ございません。作者に変わって御詫び申し上げます」
亀「要は、さっぱりだったんだな」
恋「駄目ね」
水「すみません!! でも、教えてくれてありがとうございました!! 時間が出来たら必ず
使い方をマスターしてみます!! それまでご勘弁!!」

亀「さて、次回のヒロインは水樹」
水「は?」
亀「いや、だから水樹」
水「は?」
亀「女体化も無し」
水「は?」
亀「もうエロシーンは書いたから変更不可能」
水「は?」
亀「『ツルとカメ』でした、来週もよろしく!!」
水「嫌だ!!」
107 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:38:35 ID:mRz5LQ6m
今回はこれで終わりです

今朝、夢の中にアニメ化したツルとカメが出てきました
OP曲はLOVESHINE/小坂りゆ
興味があったら聞いて下さい、個人的には『ツルとカメ』に合うと思いました
108 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 01:40:15 ID:7EqZoXnr
>>107
1番槍GJ!
これでコイとの決着は一応付いたのか。
なんだか次週が凄いことになりそうなんですけどw
109 名前: 名無しさん@ピンキー [sage具体的セクハラ] 投稿日: 2007/06/07(木) 02:21:19 ID:pGbzSFXa
>>107
二番GJ!
もう15分待ってりゃリアルタイムだったのか……!

つ[]<「水樹の股間にぶら下がった、一定以上の刺激を与えると白濁色の汁を発射するフランクフルトをください。汁が黄ばんでいれば嬉しいです。それがダメならお腰につけたきびだんごを。」
110 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 03:05:16 ID:4N/0WKTh
コイは新手のMPLSか
111 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 07:28:49 ID:ccRql6eq
ちょwwwwww不気味な泡に消されやしないかwwwwwwwww
112 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 11:15:25 ID:2bozO8xk
GJだぜ
だが一ついいか?
パ イ ズ リ は ど う し た ?


[]水樹と結婚したいなら同性結婚おkなとこいけばいいと思うよ
113 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/07(木) 17:35:13 ID:0Sb3E1xq
ロボ氏GJ!
これがコイ編ラストだったのか。


っ[]<次回、ついに水樹がカメの子どもを妊娠(ry
114 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/08(金) 02:50:34 ID:LdcjZ0cu
pervert!
115 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/09(土) 16:59:21 ID:Z16hqyWZ
GJ!

つ[]料理下手でもいいからコイを嫁に下さい。水樹はカメにあげるから
116 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/09(土) 18:56:08 ID:uK3newxx
LOVE SHINEに食いついた俺

ならこれもどぞ
つHONEY♂PUNCH/小坂りゆ
117 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/13(水) 05:08:51 ID:tQYInVcT
>>116
んじゃコレも
つCANDY/小坂りゆ
118 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:14:04 ID:BT0QGXrs
投下しますよ
119 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:15:11 ID:BT0QGXrs
 電車の扉が開き、そこに乗る人の流れが出来る。それらを構成するのは会社へと向かう
サラリーマンや、学校に向かう若い男女だ。前者は皆、スーツに身を包み、後者は様々な
学校の制服を着て乗り込んでゆく。どこにでもある、朝の風景だ。
 その中で、一際目を引く者が居る。
 織濱第二高校の女子制服に身を包んだ、艶やかで長い黒髪と大きな瞳が特徴的な者だ。
漆黒の髪とは対照的な、きめの細かい、白滋と見間違えんばかりの肌や、薄く薔薇色へと
染まった頬、肉付きの薄い桃色の唇。手元に視線を移せば白魚のように細くもたおやかな
手指が見え、もう少し目を下に動かせば、ミニスカートの中から太股が惜し気もなく顔を
出しているのが見える。どれもが、その存在を美少女たらしめていた。
 しかし惜しむらくは彼女、ではなく、彼の性別だろう。水樹と友人に呼ばれる存在は女
ではなく男。これは彼が性同一障害という訳ではなく、女形という家系に生まれ、家業を
幼い頃より手伝い続けた結果だ。外見こそは凡百の女性では敵わないものの、意識では男
という非常にアンバランスな存在へと育っていったのである。
 しかし重ねて言うが彼の外見は美少女であり、更に言えば水樹が居る場所は満員電車の
中である。そうなれば必然起きてくるのが痴漢で、水樹はそれの常習被害者だった。だが
それでも電車に乗ることを止めないのは、単に真面目な性格だからだ。家族が公演をする
際には必ず手伝いに行き、夜遅くまで付き合っているのだ。法律の関係もあり出演こそは
出来ないものの、家族だけでなく他の団員も頑張っている中で自分だけが休むなどという
真似は出来なかった。そして全ての後始末が終わるのは深夜にまで及んで、会場の近くの
ホテルに泊まることになる。その結果、こうして電車での登校になるのだ。
120 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:17:13 ID:BT0QGXrs
 昨日もその例外ではなく作業は深夜の二時にまで及び、その眠気で閉じかけている目を
擦ったとき、唐突に尻へと固い感触が来た。
「うひゃぁ!!」
 奇声に周囲の視線が集まり、水樹は耳まで赤くして俯いた。
 鞄が偶然当たっただけ、そう自分に言い聞かせて爪先に体重をかけ、僅かに移動する。
目を向けていた者達もそれきり興味を無くしたらしく、新聞を読んだり広告を眺めたりと
元の行動に戻った。人が多い中での接触事故など、珍しいものでもない。そう判断したの
だろう。事実、水樹もそう思っていた。
 しかし、再び鞄の感触が来た。
「あ、すみません」
 限界まで体を移動させるが、
「え?」
 先程よりも更に強く、押し付けると言うよりも食い込ませると言うような圧力が来る。
電車が揺れるリズムに合わせているのだろうか。緩急を着けて尻の肉へと押し当てたり、
谷間をなぞったり、太股の間へと割り込ませて擦り上げてきたりもする。
 痴漢。
 その一語が脳裏に浮かんで助けを呼ぶ声を出そうとしたが、それは口へハンカチが当て
られたせいで不可能に終わった。強い力で固定されているせいで振り向くことも出来ず、
目尻に涙を浮かべて、ただひたすらに細い体を硬直させる。
 その間にも、痴漢の動きは続いていた。
 鞄を床に降ろしたのか軽い音がして、その後でスカートの上から尻を掌が撫でてくる。
最初は指先で擦るように、しかし水樹の抵抗が少ないと判断したらしく次第に撫でる動き
へと変わり、露骨に全体を掌で擦ってくる。
 その内に飽きるよ、と小さく呟いた声は聞こえただろうか。だが、聞こえていなくても
構わないと水樹は思った。どうせ今までの痴漢と同様、自分が男だと知ったら即座に手を
引くと思い、されるがままになる。声を出せなくても充分だと前向きに思考を切り替えて、
じっと耐える。年の初めに絶望的なおみくじの結果を見てから、そうしていこうと決めて
いたのだった。今こそ、それを実行するときだ。涙を拳で拭い、歯を食い縛る。
121 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:18:30 ID:BT0QGXrs
 痴漢の手はスカートの中へと潜り込み、大胆にも下着の内部へも入ってきた。固い掌と
対照的に柔らかな尻の肉の感触を堪能するように揉み、撫で、犯してくる。再び涙が溢れ
そうになったが、もう少しの辛抱だと水樹は耐える。このまま前に手指を伸ばし、そして
ショックを受ければ良いと思いながら、耐え続けた。
 漸く痴漢も尻だけでは足りなくなったのか、前部へと手を伸ばし、
「え?」
 驚きの声を漏らしたのは、痴漢ではなかった。
 男の象徴を触れば手が止まると思っていたし、実際、過去の痴漢は全てがそれで終わり
だったのだ。しかし今回の痴漢は動きを止めず、竿を指先で弄ってきた。下着を軽く下に
ずらして竿を取り出し、柔らかく包んで扱き上げてくる。
 呆然としたのも一瞬、我に帰った水樹はそこで抵抗をしようと決めたが、今の自分の姿
を見て出来ないと悟ってしまった。口を塞ぐハンカチは緩んでいるものの、声など出せる
筈もなかった。女の格好をしている、それだけならば意味はない。しかし今の自分は竿を
立たせ、しかもそれを露出するような状態なのだ。こんな姿を他人に見られたらそれこそ
変態のレッテルを貼られてしまうし、痴漢が逃げたら、例えどのような言い訳を並べたと
しても軽蔑の情を含んだ失笑や嘲笑が返ってくるだけだろう。
 その無慈悲な結果を理解しているのか、水樹をまさぐる手の動きはいよいよ激しくなる。
乱暴とも言える速度で竿を扱きながらも、動きは相手を追い詰めるツボを押さえたもの。
こねるように巧みに運指を繰り返し、時折掻くようにしては刺激を強くする。鈴口からは
透明な液が溢れ、それを塗り広げるように亀頭を愛撫されて、意に反して声が漏れそうに
なる己の浅ましさを自覚した。
 違う、と声に出さず、胸の中で水樹は叫ぶ。
 この人が上手いから、だから、こんなに情けない姿を晒しているのだと。
122 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:20:10 ID:BT0QGXrs
 その言葉が示す意味を知らずに耐えていると、不意に愛撫の動きが止まった。水樹自身
を責めていた手が引き抜かれ、そして口元のハンカチまでもが消えてゆく。助かった、と
いう気持ちと、何故、という疑問が混じる中で、取り敢えずは安堵の吐息を一つ。
 しかし、それは一気に消し飛ばされた。ハンカチと唇の間に細い糸が架っており、自分
がどれだけ乱れていたのかを知ったのだ。だらしなく快楽に翻弄されていた証拠、それが
物理的な形を持って存在を示してくる。
 上手いから、と先程の自分は考えた。
 それはつまり、本能に抗えなくなり、まるで獣のように欲に塗れた自分を人混みの中で
露呈させられていたということだ。自分で発した言葉の意味を理解し、痴漢をされている
ときとは違う屈辱に涙が溢れてくる。
「いや……!!」
 認めたくない、こんなものは自分ではない。
 自分で肯定していたようなものだが、プライドと理性が拒否をしていた。目を背けよう
とするが、顎を摘んで固定されたせいで否が応にも視界に入る。せめて目を閉じて抵抗を
しようとするが、そこに別の感覚が入り込んできた。
 微かに塩の味がする太く固い指、それは自分を責めていたものだと理解する。口の中に
広がる独特の味とぬめりは、自分が出していたものだろう。そのようなものを、汚物とも
とれるようなものを舐めさせられるなど敗北以外の何物でもない。しかし度重なる行為に
よって火照った体は自らの意思とは無関係に、まるで男性そのものを舌で愛撫するように
丹念に舐め取っていた。痴漢された痕跡を消すため、痴漢されていない過去を作るため、
などと自分でも無理のあると思う理屈を立てながら、水樹は指をしゃぶる。とうに痕跡は
消えているにも関わらず、止めずに、何度も何度もだ。今や痴漢の手を濡らしているのは
水樹の唾液のみだった。
 それが引き抜かれ、
「嘘!?」
 異物感が下半身を襲った。
 下着を僅かにずらして露出した肛門に、痴漢の指がゆっくりと入ってくる。通常ならば
入口をこじるだけで終わった行為だが、快楽に緩み、また水樹自身の唾液を潤滑油として
いたせいで簡単に指を飲み込んでしまう。挿入が止まったのも、単に指が根本まで至った
からだ。それが無ければ、もっと奥まで来ていただろう。
123 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:21:31 ID:BT0QGXrs
「や、やめ」
 身を捻って抜けようとしたが、
「ッ!!」
 菊座に差し込まれた指の先端が内部の粘膜を掻き、抵抗する力が一気に抜けた。吊革に
掴まらず手摺を利用していたのが、せめてもの幸運だった。いきなり倒れるような真似は
しなかった、それだけが救いだと思う。ここで人に見られてはいけない、注目された場合、
そこで変態決定なのだ。それだけは避けようと、脅迫観念のようなものすら出てきていた。
だが感情が強ければ強い程に、今の状況が強い快楽を呼ぶ。
 誰が見ているかも知れない人混みの中で、浅ましく快楽に溺れ、尻を掻き混ぜられては
喘いでいる自分。最後の力を総動員させて声を出すことだけは堪えているが、逆に言えば
それだけのことなのだ。もう体は抵抗の意思を殆んど無くしているし、思考の大半も今の
状況によって白く染め上げられている。
 軽音。
 視線を下に向ければ、唇の端から垂れた唾液が床に小さな円を作っていた。こんなとき
こそハンカチが当てられていたら、どれだけ良かっただろうか。その願いは叶えられずに、
連続して極小の水溜まりは作られてゆく。
「も、駄目、や、止め」
 とうとう声に出したとき、望んだ布が来た。
 しかしハンカチは唇を拭うことはなく下腹部へと移動し、
「や、やだぁ!!」
 先端を包み、扱きだす。
 敏感になっている先端へ綿のざらついた強い刺激が与えられ、一瞬で絶頂する。先端を
ハンカチで押さえられていたので精液が飛び散ることは無かったが、痙攣する度に細かな
振動が更なる快楽を呼び、水樹の体力や気力を奪っていった。
 そのまま膝から床に崩れ落ちるのと同時に、電車は駅に着いたらしい。自動ドアが開き、
中に居た者達は一斉に外へと流れてゆく。痴漢も多分、そうだろう。だが視界に入る者の
姿が多すぎる上に、射精直後のぼやけた思考では、犯人を特定出来る筈もなかった。
「学校、行かなきゃ」
 呟き、立ち上がる。
 ホームに降りたとき、耳元で小さな笑い声が聞こえたような気がした。
124 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:23:14 ID:BT0QGXrs

 ◇ ◇ ◇

「って夢を見たんだ、今朝」
「やめてよね、そうゆうの」
 水樹は本気で嫌そうな顔をして僕を睨み、コップに入った日本酒を一気に煽る。着物の
胸元に唇の端から溢れたものが垂れるが、それもお構いなしで喉を鳴らし、数秒もしない
内にコップの中身は空になってしまう。ビールならまだしもアルコール度数が高い日本酒
である、大丈夫なのかと声をかけようとしたが、
「何さ?」
 鋭い目で射抜かれ、言葉が消えてしまった。
「こんな嫌な話、まだ続きがあんの?」
「ありません、それに不愉快な話をしてすみませんでした」
 今の夢の話を思い出したのは、ほんの偶然なのだ。絡み酒、と言うのだったか。水樹は
アルコールを飲むと愚痴を言う悪癖がある。しかし基本的に日常に不満のない水樹が言う
愚痴というものは大体決まっていて、その殆んどが痴漢行為をされたことだ。それ以外は
完璧なのに、何とも不敏な話である。そして僕の方も、アルコールで思考が鈍っていたの
かもしれない。その愚痴を聞いている内に記憶の彼方にスッ飛んでいた今朝の夢の内容を
思い出し、つい話してしまったのだ。水樹が普通に暮らしていたならば笑い話として流す
ことが出来たのかもしれないが、残念なことに冗談では済まない内容なのである。
「全く、カメってば。反省してる?」
「すまん」
「謝んないでよ」
 どうしろと言うんだ。
「それにさ」
 不意に、股間に足が当たった。
「ここを、こんなにして」
 コタツ板の上に顎を乗せながら、足で竿を撫でてくる。視線は責めるようなもののまま、
その中に少々の嗜虐的な色を混ぜてだ。どこで覚えたのか、その動きは素人とは別物だと
思える程である。酔えば酔う程にエロくなる、のはセンスか。
125 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:24:51 ID:BT0QGXrs
「どうしたの? あたし男の子なんだよ?」
 分かっている、分かっているのだが、
「あ、ビクッてなった」
 口の端を吊り上げて笑う水樹の言葉に反論出来ない。
 不意に刺激が止まり、水樹が立ち上がる。
「カメって、相手が男の子でも良いんだよね?」
 思い出すのは、初めて水樹と関係を持ったときのこと。あのときも水樹は酔っていて、
痴漢の愚痴を溢していて、そして男の体のままだったのだ。
「落ち着け!!」
「駄ぁ目」
 胴体を跨いで股間の上に尻を乗せると、楽しそうに声を漏らす。尻をキツくなった股間
の上に擦り付け、ジーンズの上から刺激を加えてきた。固い布越しだというのにはっきり
と分かる柔らかな肉の弾力は、まるで本物の女を相手にしているような錯覚を起こさせる。
「違う、こいつは男こいつは男こいつは男こいつは男」
「そうだよ、男の子だよ」
 妖しく笑い、後ろ手にジッパーを下げてきた。
「うわ、凄い。もうガチガチだよ?」
 ガチガチらしいです。
「それに、凄く熱い」
 それに、凄く熱いらしいです。
 そう他人事のように考えていても、僕が勃起している事実には変わりない。しかし僕も
僕で色々と不味いが、水樹のキャラが変わりすぎだろう。いつもの水樹は痴漢に遭って
半ベソで愚痴を溢すタイプなのに、これは一体どういうことだ。
「男なんて、馬鹿ばっかりだよね。男なんてさ」
 水樹も男だろ、と突っ込もうとしたが、不意の感触に遮られた。するり、と竿を下着の
中へと滑り込ませられ、直の肌の感触が伝わってくる。胸の感触にも似ているが、しかし
それよりも強い弾力を持つ尻肉は強い圧迫感を与えてきた。着物のせいで中を見ることは
出来ないが、それが寧ろ視覚的に興奮させてくる。
126 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:25:51 ID:BT0QGXrs
「カメもやっぱり、あたしを見て興奮するんだね」
 心を読んだかのように言われ、黙り込むと唇を重ねられた。普段の大人しさとはまるで
対照的に乱暴に、激しく口内を貪ってくる。思考の中に広がってゆくのは酒の味と匂いと、
水樹の匂いだ。いつも着けている柑橘系の香水の爽やかな甘い匂いが鼻孔から侵入して、
脳をとろけさせてゆく。口を始点にして一体化をしてゆくような、温い湯の風呂にも似た
イメージ。自分と他人の境界線が曖昧になり、大気に溶けていきそうになる。
「いただきまぁす」
 耳元に熱い吐息がかかり、股間がぬめりに包まれた。
「ほら、見て。あたしの中に、カメのが入ってる」
 腰を浮かせて裾を持ち上げた下半身の景色の中心。本物の女性よりも女らしい太股や、
それと対照的な男の象徴の向こう側で、僕のものが飲み込まれていた。
 そこで、堪えていた何かが切れてしまったらしい。
 水樹の腰を掴み、本能のままに突き上げる。過去に何度も、男の体のときでも一度して
しまったのだ。今更出来ないなんて言えないし、男同士という忌避の感情よりも、水樹を
求める気持ちの方が強かった。目の前の綺麗な存在を思う存分堪能したい、頭に浮かんで
くるのはそれだけだ。相手も望んでいる、何の問題も無い。
 僕が腰を上げると水樹は重力に従って深く腰を下ろし、こちらが引けばしなやかな脚を
使って体ごと腰を跳ね上げさせる。可憐な唇から漏れてくる声は高く楽しみに満ちたもの。
幼子の発する無邪気なものにも聞こえるし、娼婦が奏でる淫らな歌にも聞こえてくる。
 やがて限界に達したのか入口が強く締まり、水樹の出した精液は水樹自身の顔や髪へと
降り注いで白く染めてゆく。赤い着物に白く華が咲いたように見え、一つの幻想的な絵画
とも言えるような光景を作り出していた。
「ほら、カメも、出して」
「ッ出る!!」
 一拍遅れる形で僕は根元まで突き入れ、放出する。
 僕のものを引き抜き、膝立ちになった水樹が目を細めて見下ろしてくる。肛門から白濁
した液を垂れ流し、指で拭った己の精液を舐め取る姿は、ひたすらに綺麗に見えた。
「カメ、まだまだ、これから……」
127 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:27:03 ID:BT0QGXrs

 ◇ ◇ ◇

 電子音。
「良かった、夢か」
 二重夢オチなんて、今時流行らないにも程がある。しかし今だけは、さっきまでの行為
が夢で良かったと心から思った。それにしても水樹に対してすらあんな夢を見るなんて、
僕は余程疲れていたらしい。ホモになる、とは違うが、流石に不味すぎる。
「どうしたの? 何か唸されてたけど」
 横から掛けられた声に振り向くと、そこに寝ているのは全裸のツルだ。マコちゃんでは
なくて安堵する。これで横に居るのが男だったら、それこそ発狂するか現実不信になって
いたに違いない。マコちゃん自体は嫌いじゃないというか非常にツボを突いた存在だが、
男男のコンボは辛すぎる。いくら乳がでかくても、代えられないものはあるのだ。
「ツル、水樹やマコちゃんよりも愛してる」
「何か疑問を覚える言い方ね? て言うかマコちゃんって誰よ?」
「気にするな」
 ふと、一つの疑問が沸いてくる。
 果たして今は現実なのだろうか。
 試しに尻を撫でると、普段から触り慣れた感触が帰ってきた。肉付きの薄さによる軽い
沈み方や、それでも指を必死に包もうとする幼い弾力。冬の気温によって冷えてはいるが、
平均よりも若干高いものをキープしている体温は紛れもなくツルのものだ。
「間違いない、これは現実だ」
 自信が付いたが、直腸検査的に調べれば更に正確に体温が分かって完全なものとなる。
どんなことに置いても、証明するものはなるべく多い方が良いだろう。なので僕は更なる
証明を手に入れるべく肛門に指先を当ててこじると、
「何を朝からトチ狂ってんのよ!?」
 脇腹にフックを叩き込まれた。
「この痛みも、リアルか」
 いかん、何故か急激に睡魔が襲ってきた。

 ◇ ◇ ◇

 最初に戻る。
128 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:28:33 ID:BT0QGXrs
亀「…………」
水「…………」
亀「『ツルとカメ』質問コーナー」
水「今回は六枚の葉書と四つのレス」
亀「ゲストは無しで」
水「うん、逆にありがたいね」
亀「…………」
水「…………」

>>108
亀「凄いこと、か」
水「凄いこと、だね」
亀「まさか大半を痴漢で」
水「そっちじゃないでしょ?」
亀「良いんだよ」
水「そうだね」

つ[]水樹の股間に〜
亀「笑えないな」
水「そうだね、ちょっと今回は」
亀「それに、ぶっちゃけ僕も引いた」
水「カメが引くなんて、かなりだね」
亀「どういう意味だ?」
水「客観的な視点って難しいね」

>>110
亀「やっと別の話題が来たか」
水「懐かしいね」
亀「ある意味では正解だな」
水「ある意味?」
亀「裏設定になるけどな」
水「何それ?」

>>111
亀「不気味な泡、か」
水「漫画版が大好きみたいだったらしいね、作者は」
亀「それとブギー繋がりで、昔の月刊ジャンプに乗ってた漫画を思い出した」
水「何てマイナーな」
亀「月刊ジャンプ、休刊か。寂しいな」
水「ちょっと……」
亀「クレイモアはウルトラジャンプに移籍すれば良かったのに、違和感ないし」
水「いや、それは……」
亀「どうせ毎回何か休載があって読み切りで埋めたりしてるんだから、代わりに入れても」
水「それ作者が言いたいだけでしょ!?」

つ[]水樹と結婚〜
水「そうだね、はい次」
亀「早いな」
水「うるさい。それよりも上の部分が」
亀「あぁ、余裕がなくてな」
水「時間があったらやってた、みたいな言い方だね?」
亀「うるさい、はい次」
水「早いね」
129 名前: 『ツルとカメ』×42 [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:29:43 ID:BT0QGXrs
つ[]次回、ついに〜
水「無いよ」
亀「無いな」
水「て言うか、男の体のままでって書いてたのにね。男の体のままで、か……死にたい」
亀「死ぬな」
水「だってさ、あたしさ」
亀「僕には水樹が必要だ」
水「カメ……うん、ありがと!!」

>>114
亀「と、まぁ、さっきperventしかけた訳だ」
水「何なのさ、この流れは!?」
亀「本編でも、こうして道を踏み外しかけ」
水「学がない作者は一生懸命辞書を引いたみたいだね」
亀「いや、社会人になると覚えた英単語なんか片っ端から」
水「それも作者が言いたいだけでしょ!?」

つ[]料理下手でも〜
水「いや、だからね。あたしは基本的にノーマルだし」
亀「水樹、愛してるよ」
水「や、やだぁ、そんな///」
亀「まぁ、このくらいの小芝居で良いだろう」
水「そうだね」
亀「コイは、まぁ、穴Vをフルコン出来るようになってから出直してコイ」
水「だから、糞駄洒落は(ry」
つ[]HONY♂PUNCH
つ[]CANDY
亀「どんな曲か分からんちん」
水「何さ、そのキショい言い方は」
亀「なんとなく」
水「それに分からないんだったらゲーセンで調べれば?」
亀「いや、恥ずかしいだろ」
水「かもね。サントラは?」
亀「注文も恥ずかしい」
水「うわ、チキン」
亀「と、こんな流れが作者の脳内で行われました」

亀「さて、次回のヒロインはアズサ先生!!」
水「どんな話?」
亀「アズサ先生編の最後だから、取り敢えず良い話。やっぱり酔ってゲロ吐くけど」
水「それは決定なんだ?」
亀「個性の一つだからな。あと、まともな服も着る」
水「さっぱり内容が分からないね」
亀「ネタバレは避けるが基本」
水「そうかもね。それじゃ『ツルとカメ』でした、次回も見てね!!」
130 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 00:30:58 ID:BT0QGXrs
今回はこれで終わりです

これからは殆んど真面目な話になるので、息抜きみたいな感じで
131 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 01:57:26 ID:cWB0Hv4X
>>130
誰GJ!
何重夢オチだよww

つ[]<アズサ先生、俺が嫁になってあげるよ。
132 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 18:23:43 ID:f6Hjt1YF
ツンツンしてないのでこいつは没収します
 _,、_ サッ
( ゚Д゚)
 GJ⊂彡
133 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/14(木) 21:00:21 ID:PzZigeyv
VのAnother?楽勝だぜ

DDRのだけどな
134 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:00:21 ID:TJiY1ZJ5
CJ!!

ちんこ立ったところで水樹が女体化をしてないことに気付き、
三秒後にはそれでも良いと思った俺は間違いなく勇者

つ[]アズサ先生はエニシ先生と付き合えば?

鳳凰コンビという前例があるから問題ないはずだ
135 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:27:19 ID:Jb1ZsiKQ
投下します。3ヶ月以上あけてて、覚えている人がいるか不安ですが。
136 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:28:25 ID:Jb1ZsiKQ
 藤森家には、男が1人、女が2人住んでいる。

 藤森家長男のはじめと、自称家政婦の藤森やよいと、自称メイドの古畑マナの、3人である。
 ちなみに彼女たちの自称が違うのは、
「はじめくんは家政婦という古風な言い回しのほうが好きそうだからです」
「はじめはきっとメイド萌えなのよ。間違いないわ」
 というそれぞれの理由からである。それ以外に理由は無い。
 しかし、はじめは家政婦という言い回しが好きなわけでも、メイド萌えなわけでもない。
 メイド属性を持っているのは、彼の友人の卓也だけである。

 ほんの数ヶ月前まで、3人は同じ家に同居しているだけの関係だった。
 しかし、ある事件――というよりは、身内が男達をけしかけて起こした茶番劇がきっかけで
その関係は劇的な変貌を遂げた。
 具体的に言えば、男女の関係に変わった。

 やよいは従妹でありながらも、はじめに強い恋慕の情を抱いている。
 マナは幼馴染であるが、はじめのことを身を焦がさんばかりに想っている。
 はじめは2人のことをわけ隔てなく、大切に想っている。
 しかし、彼はどちらかを選ぼうとはしない……というか、選ばない。
 2人ともが女性としての魅力を等量に持ち合わせているというのもある。
 が、それだけではなく2人の間に『2人』ではじめを所有しているという相互理解、
または協定が結ばれているように思えるからだ。
 そのことを知っているからこそ、はじめは2人のうちのどちらかを選ばなかった。

 結果、彼の心身――主に精力――はかなり磨り減ってしまった。
 原因は、1日交代でどちらか1人と体を交し合ったり、3人で一晩中まぐわったりしていることにある。
 自業自得である。
 
 ここ数ヶ月の間に変わったことと言えば、もうひとつある。
 今年の3月にはじめは高校を卒業し、4月に大学へ進学した。
 ちなみに、はじめの友人の卓也も同じ大学へと進学した。
 成績において、2人が足並みを揃えたようなレベルだったということもあるが、
2人はどこか言葉にできない部分でウマが合っている。だから同じ大学に進むことに決めたのだ。
 しかし、当然であるがアッチの趣味は二人とも持ち合わせていない。
 もしそんなことになったら、やよいとマナの手によって卓也の身は危険にさらされるであろう。

 だが実際には卓也が危険な目に遭うことはなく、またソッチの世界にいくこともなく、
はじめと卓也は親友であり、卓也は相変わらずやよいとマナの2人に冷たくあしらわれる、
といういたって良好な関係を築いている。

 しかし、はじめと卓也にとっては大学という場所は新天地である。
 高校とは違い、制服がなければ時間割もない。
 また、同い年、年上、社会人、初老の教授……色々な人達と出会うことができる。

 そして、新しい人間関係もできる。
137 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:29:56 ID:Jb1ZsiKQ
「迷子のお知らせをします。町内にお住まいの大石様。お連れ様を受付にて……」

 町を歩く人達が半袖の服を着て歩き始める、6月。
 藤森はじめと彼の友人の卓也は、隣町の市民会館に来ていた。
 彼らがなぜここにいるのかというと、はじめが数日に渡って開催される模型の展示会に
参加したためだ。卓也ははじめに誘われてここまでやってきた。

「うわ、すごい……どうやったらこんなリアルな錆が作れるんだろう」
 壁際の机の上に置かれた、朽ちた自動車の情景模型を見てはじめは立ち止まった。
 作品に触れることは許されない決まりになっているので、はじめは観察することで
必死に技術を盗み取ろうとして目を凝らす。
 車体の縁から赤茶色に錆びているその車は、長い間そこにいたかのような存在感を持っている。
 これからもずっとここに居続けるのではないだろうか、とはじめは思った。

 はじめの趣味は模型を作ることである。
 数ヶ月前まではプラモデルだけを作っていたが、最近では情景模型も作り始めた。
 1つの情景に溶け込んでいくように模型を作るというのは、はじめはやったことがなかった。
 プラモデルのキットに色を塗り、組み立て、仕上げるのとは難易度が違う。
 はじめの性格は、難関は必ず乗り越えてみせるという前向きなものだ。
 もっとも、その前向きさは趣味以外に発揮されることがないのだが。

 ともあれ、趣味のレンジを広げたはじめは最近、暇さえあれば一心不乱に模型を作っている。
 しかし、寝る間を惜しんでまでは作らない、というか作れない。
 その理由は、はじめの眠そうな顔にあらわれている。
「大丈夫か、はじめ。めちゃくちゃ眠そうだぞ」
「ああ、平気平気。歩くだけならできるって」
「とてもそうは見えないんだけどな……」
 眉をしかめた微妙な顔をしているのは、はじめの親友の卓也である。
 はじめが模型を観察しながら船をこぎ始めた。
 倒れる寸前、卓也ははじめの肩を揺すって起こす。
「馬鹿、起きろ! 模型がぶっ壊れるぞ!」
「ん……ああ、悪い、卓也」
「やれやれだ……」
 うつろな目をした親友を見ながら、卓也はため息をついた。

 展示会の会場に入ったところからはじめはこんな調子である。
 歩きながら目をつぶって寝そうになったり、階段を踏み外しそうになりながらも、
はじめは展示された模型を観ることをやめない。
 そのたびに卓也ははじめのフォローをする。
 はじめが人とぶつかりそうになったらはじめの代わりに謝り、はじめが机に手をついて
体重をかけて机をひっくり返しそうになったら必死で支える。
138 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:31:39 ID:Jb1ZsiKQ
「はじめ。今夜はやよいさんの料理をご馳走してもらうからな。じゃないと割りに合わない」
「うん……ああ、ごめんやよいさん。もう、僕は無理……」
 苦悶の表情を浮かべたはじめを見ながら、卓也は同情すると同時に嫉妬した。
 はじめがここまで眠そうにしている理由を、卓也は知っている。
 おそらくは昨晩、はじめは同居している家政婦かメイドとまぐわっていたのだろう。

 はじめとやよいとマナ。3人が深い仲にあることを卓也は承知している。
 なにせ、3人がまぐわっているときの声を卓也は間近で聞いてしまったのだ。
 付け加えるなら、当時の卓也はやよいとマナに惚れていた。
 彼が受けたショックがどれほどのものだったのかは、本人にしかわからないだろう。

 卓也は携帯電話を取り出して、時刻を確認した。午後3時30分。
 展示会最終日の今日は早めに片づけをするらしく、午後4時には閉会する。
 周りを見ると、いくつかの作品は作成者の手によって片付けられている。
「はじめ、そろそろ俺らも片付けしよう」
「あ、もう3時半か。早めに片付けたほうがいいかもね。帰りのバスは混むかもしれないし」
 はじめは今日、バスで隣町の市民会館まで来た。
 マナにバイクで送ってもらうことも考えたが、なんとなく乗るのが怖いのでやめた。

「帰りは俺の車に乗っていけよ」
「車? 卓也、車を買ったのか?」
「そんなわけないだろ。親の車を借りたんだよ」
「ふーん……でもなんで車で?」
「ちょっと野暮用があってな」
 それだけ言うと卓也は口を閉ざし、はじめの作品が展示されている方向へ歩き出した。
 卓也の背中に隠れるようにして、はじめは歩く。
 もし1人でこの場に来ていたらまっすぐ歩くこともかなわないかもしれない。
 親友がいるというのはすばらしいことだ、とはじめは思った。

 はじめがぼんやりしながら歩いていると、立ち止まった卓也の背中にぶつかった。
 いつのまにか自分の作った作品の展示場所に来ていたらしい。
「卓也、どうかしたのか?」
 はじめが卓也に問いかけても、返事はない。
 卓也は1人の女性を見つめていた。つられてはじめも同じ人物を見る。

 女性の身長ははじめと同じくらいで、体は全体的にフラットだった。
 服装は下がジーンズ、上が襟付きのカットソー。
 地味に見えないのは足がかなり長いせいだろう。
 黒い髪は短く、耳を少し過ぎたあたりまでしか伸びていない。
 横から見た顔つきは精悍で、なんとなく話しかけにくい。
 はじめは女性に対して、やよいや父に似たものを感じた。
 他人に隙を見せようとしない、もしくは他人に弱い部分をさらさない、という空気だ。
139 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:33:32 ID:Jb1ZsiKQ
 女性ははじめが作った作品の前でじっと立っていた。
 まばたきをすることを忘れたように、はじめの作品を見ている。
 時々首を動かすと、はじめの作品を別の角度から見ようとする。
 あれを見たら誰でもそうするだろうな、とはじめは思った。

 はじめの作った作品は、家族のふれあいをテーマにしたものだった。
 家族の構成は父親と母親、そして一人娘。舞台は春夏秋冬に別れている。
 春は花見。ビニールシートの上に家族がいて、桜を見ながら弁当を広げている。
 夏は花火。壁に描いた花火を家族が見上げている。娘は人差し指で花火を指している。
 秋は焚き火。一箇所に集めた落ち葉の前では父親が火をつけようと苦心している。
 冬は雪の街。両親の手にぶら下がりながら娘が笑っているのが正面から見てもわかる。
 作品は4つのシーンに分かれているので、長机の3分の1を占拠するほどに大きい。
 はじめが家族をテーマにした理由は、くじ引きによるものだ。
 テーマがあまりに多すぎて、くじ引きで選ぶしか方法が残されていなかったのだ。

 女性がいつまで経っても動こうとしないので、はじめのほうから声をかけた。
「あの、すいません」
「えっ、あ……すいません、なにか御用でしょうか」
「いいえ、そろそろそれを片付けようかと思って。僕がそれを作ったので」
「え、あなたがこれを……」
 女性ははじめの顔と模型を見比べるように顔を往復させた。
 何度かその動きを繰り返し、はじめの顔を見てようやく動きを止めた。
「すばらしい作品です。綺麗で、繊細で、言葉まで聞こえてきそうでした」
「あ、と……そうですか。ありがとうございます」
「この家族は本当に、幸せそうに見えます」
 はじめは恥ずかしくなり、女性から顔を逸らした。
 ここまで褒められたことは、はじめにとっては初めてのことだ。
 友人からプラモデルを代理で作って渡しても、上手だ、リアルだ、という感想しかなかった。
 母親に見せても友人と似たような反応だったし、父親はプラモデルを見ても無関心。
 はじめの父にとっては、弟子になるはずの息子をとった模型に対してリアクションをとりにくいのだ。
 父の考えを知らないはじめにとっては無関心なようにしか見えないのだが。

 女性ははじめにまた何か言おうとしたが、はじめの横にいる卓也を見て表情を変えた。
 なんとなく不機嫌そうな顔をして、女性は口を開く。
「卓也、お前、その男の人と知り合いか?」
 女性の卓也に対する反応を見て、はじめは疑問を持った。
 結構厳しそうな性格の人だけど、卓也ってこんな人が好みだったか?
 確かにやよいさんやマナにひどいことを言われてもこたえてないみたいだけど。
 はじめは視線に疑問を乗せて、卓也に送った。
「誤解のないように言っておくけどな。こいつは俺の彼女でもなんでもないぞ。
 いたいけな俺をいたぶろうとする、最悪の女で――」
140 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:35:03 ID:Jb1ZsiKQ
 卓也の台詞は、女性の拳によって遮られた。
 みぞおちを直撃され、呼吸もままならず卓也は床にしゃがみこんだ。
 はじめに助けを求めようとして手を伸ばすが、距離を掴めずに空気を切る。
「いたぶっているわけじゃない。これはスキンシップだ」
「あの……あなたは一体?」
 女性は卓也から目線を外すと、はじめのほうに向けた。
「……卓也の知り合いなら、かしこまる必要も無いか。
 私の名前は酉島千夏だ。お前の名前はなんと言う?」
「藤森はじめです。えーっと、酉島さん、あのさ」
「なんだ?」
「卓也が気絶してる」
 卓也ははじめの足に手を伸ばした状態で、床に脱力して倒れていた。
 頭は千夏の方に向けられていて、ひれ伏しているようにも見える。
 実際にそうなのかもしれない。
 先ほどのやりとりでは、卓也は千夏に頭が上がらないようにしか見えない。

 はじめにとって、卓也と仲のいい女性がいることは意外に思えた。
 前置きなくボディブローをすることが仲の良さを証明するのかはわからないが、
もしかしたら本当にスキンシップなのかもしれない。
 こんな友人関係もいいものだ。

・ ・ ・

 帰りの車では、3人一緒に帰ることになった。
 卓也の野暮用というのは、千夏のことだったらしい。
 近くの高校で空手の大会があり、千夏はスタッフとして参加することになっていた。
 千夏は交通費を浮かせるため、卓也に送り迎えをするよう頼んだ。
 卓也ははじめと市民会館で会う約束をしていたので、ついでに千夏を送っていくことにしたのだ。

 はじめは後部座席から、助手席に座る千夏に話しかけた。
「酉島さんは空手をやってるの?」
「ああ。いずれは父の跡を継いで道場の師範をつとめるつもりでいる」
「へー……すごいな」
 はじめにとって、父の跡を継ぐというのは特別な意味を持つ。
 本当はやよいではなく、はじめが父の跡を継いで料理人になるはずだった。
 はじめの手先の器用さは父親譲りのもの。
 遺伝した能力は料理の道に生かされるはずだったが、はじめが拒んだことで道は閉ざされた。
 だから、千夏のような人を見るといつも思うのだ。
 この人が自分の代理として、父の意思を継ぐことになったのではないだろうか、と。

「すごいなんてもんじゃないぞ。こいつがあの鬼道場を継いだら、さらに恐ろしいことに」
「黙って運転しろ」
 千夏にすごまれて表情を固くする卓也。
 なんだかんだ言って、この2人は仲がいい。
 はじめは2人にわからないよう、少しだけ笑った。
141 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:36:33 ID:Jb1ZsiKQ
・ ・ ・

 はじめが家に帰り着いたとき、玄関にはやよいとマナが立っていた。
「お帰りなさい、はじめくん」
「おかえり、はじめ」
 車から降りて、はじめも挨拶を返す。
「ただいま、2人とも」
 はじめはやよいとマナの手を借りて、玄関に模型の箱を置いた。
 玄関の前までたどり着くとはじめは眠たくなったが、卓也と千夏に別れの挨拶をするために
もう一度車のほうへ戻った。

 そしてはじめは、少しの違和感を覚えた。
 卓也はマナにいつものように愛想よく話しかけていた。
 マナは卓也にいつものように薄い反応を返していた。
 それ自体はいつもの見慣れた光景だった。

 はじめが違和感を覚えたのは、やよいと千夏に対してだ。
「はじめくんを送ってくださって、どうもありがとうございました」
「いや、気にしなくてもいい。私たちが帰るついでだったしな」
 2人の会話にも、おかしい点は見当たらない。
 結局、はじめに違和感の正体はわからなかった。

「卓也、帰るぞ。私は早く帰って稽古をしなければいけないんだ」
「お前は走って帰れよ。俺は今からやよいさんの料理を食べないといけないんだ」
 卓也の反抗は、千夏にとって不快なものだった。
 千夏は卓也の左手首を握ると、強く握り締めた。数秒のうちに、卓也の手が紫に染まる。
「あっ――ちょ、てめ、やめろ……」
「とっとと発進しろ。私は暇じゃないんだ。お前と違ってな」
 千夏の手から開放された卓也は、震える手でシフトノブを1速に入れた。
 あの手で運転して事故に遭わなければいいんだけど、とはじめは思った。

「はじめ。今日はありがとう。久しぶりにいい思いをしたよ」
「……ありがとう。それじゃあ、酉島さん、また」
「ああ。また会おう」
 はじめと千夏の挨拶が終わったところで、卓也は車を発進させた。
 車はのろのろと路地を進んで行き、徐行する教習車よりも遅く角を曲がり、見えなくなった。
142 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:37:37 ID:Jb1ZsiKQ
「あの女性は何者ですか、はじめくん」
「卓也の友達らしいよ。恋人じゃないみたいだけど」
「それは見ていてわかります。私が言っているのは、あの女性――酉島さんの正体です」
「正体って言っても……空手道場の跡取り娘ってことぐらいしかわからないけど」
 はじめの言葉を聞いて、やよいは顎に手を添えた。
 考えるように空を見上げ、呻いてから視線を下ろす。
「酉島道場。聞いたことはありませんが、調べておくとしましょう……」
 やよいはぶつぶつと呟きながら、家の玄関へと向かって行った。

 はじめがやよいの後を追おうとしたら、マナがはじめの手を掴んだ。
 半眼の、不機嫌そうな瞳がはじめに向けられる。
「はじめ。いい思いって……どういうことかしら?」
「ああ、なんだか僕の作った模型を見て感動したみたいで――」
「そうは見えないわね。あの目を見ている限りでは。
 まあいいわ。今日は私の番だから、後でゆっくり話しましょ」
「……なあ、今日は休養日にしないか?」
 はじめは精一杯の笑顔を作ってマナに言った。マナも、負けじと満面の笑みをつくる。
 その笑顔を見て、よかった今日は休める。とはじめが思ったのもつかの間のこと。

「だめ。昨日は私、休養日だったから。また新しいやつを考えたから、試させて」
「待ってくれ、本当に僕は……」
「何も言わなくていいわよ。私に任せておけばいいの」
 そう言うと、マナははじめの手を引いて玄関へ向けて歩き出した。
 かすかに眠気の残った頭は、早足で歩くマナの速度に合わせて足を動かさない。
 ハミングしながら歩くマナの体力は、自分の何倍残っているのだろう。
 現状で既にグロッキーである自分の体力を情けなく思いながら、はじめは思った。

 今夜は何時間眠れるだろう。
143 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 02:40:06 ID:Jb1ZsiKQ
今回は投下終了です。
自分で納得のいくまで話を書くつもりでいますので、それまでお付き合いください。
144 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 09:05:36 ID:I5nlPZw3
>>143
一番槍wktk!
待ってました!
145 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/16(土) 13:44:15 ID:8XM31CO6
>>143
三人のラブラブっぷりがヒシヒシと伝わって来たぜ!!
GJ!
146 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/06/17(日) 09:05:31 ID:k8wSPNks
>>143しぼられはじめ君に萌え!GJ!
たまにははじめにも攻めさせてやってください。



保守
147 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/17(日) 23:59:22 ID:5Q+3/9KP
あれ?ヘドロさんは?
148 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/18(月) 00:25:31 ID:9206oCd0
すいません、今週のヘドロさんは休みです
来週からは暇が出来そうなので、連続で書きます
149 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/18(月) 01:31:01 ID:4tbqGcJG
>>148よっしゃああああ!!!
楽しみにしてますよ。
150 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/18(月) 16:07:26 ID:1vAgOpf1
79氏の、特に終盤の作品ってどこに保管されてるかご存知のかたは居ませんか?

保管庫には初期の方しか載ってなかった気がするんですが・・・
151 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/18(月) 22:36:14 ID:g8YB8QZy
にくちゃんねるで過去ログ取るのが手っ取り早いじゃないかな。
152 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/06/20(水) 00:37:51 ID:m4fdxEOW
さてツルカメまであと少しアゲ
153 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/20(水) 12:11:36 ID:EwGxRAAU
おや?
154 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/20(水) 19:31:16 ID:uWSD51l6
>>153
どうしたんだい先輩?
155 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/20(水) 23:39:17 ID:EwGxRAAU
>>154
いや、ツルカメ来ないからさ。
つか、茶畑出身?
156 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/20(水) 23:44:40 ID:JvdQpVhi
ツルとカメって水曜の深夜24:00前後じゃないか?
157 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:24:23 ID:YiNUxwJX
24:00を大幅にオーバーしましたが、投下しますよ
158 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:25:20 ID:YiNUxwJX
「どうも……何だかいつもと違いますね」
 今日も毎回の如くアズサ先生に呼ばれて飲みに来た訳だが、随分と驚かされた。
「似合わんのは分かっている」
 アズサ先生の服装が違う。学校で見ている黒いパンツスーツでも、飲みに誘われたとき
いつも着ている黒いジャージでもない。アズサ先生が着ているのはオレンジ色のニットの
セーターと、デニムのロングスカート。煙草の匂いもしない、代わりに甘い香水の匂いが
鼻孔を擽ってくる。いつもと変わらないのは、険しい目付きと眼鏡くらいだ。
 部屋に入ると、また驚かされた。
「綺麗になってますね」
 出されずに部屋の片隅に置かれていたゴミの袋は完全になくなっているし、どのように
消臭したのか分からないが煙草の匂いも消えている。コタツに乗っている肴なども、店で
売っている出来合の惣菜などではなく、手作りらしいのが見て分かった。出来立てなのか、
どれからも良い匂いが漂ってくる。唐揚げなど、かなり旨そうだ。
「ボサッとするな、飲むぞ」
 言葉を挟む暇もなく席に着き、グラスにビールを注ぐ。アズサ先生は織濱食品の新商品、
辛口焼酎『家の嫁』の水割りを。これは癖が強くツルが飲んで悶絶していたがアズサ先生
は平気らしい、一気に喉に流し込んでゆく。
「貴様も飲め」
 言われるままにビールを煽ったが、何が不満なのか鼻を鳴らして目を反らされた。
159 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:27:04 ID:YiNUxwJX

 ◇ ◇ ◇

 飲み初めてから、かれこれ一時間。
「あれ?」
 一つ、違和感があった。
「酔ってないですね?」
 おかしい、いつもならば今頃はトイレで吐くアズサ先生を介抱しているのだが、何故か
頬が仄かに赤いだけで殆んど素面に近い。泣くことも喚くこともせず、普段教室で見せて
いるクールな顔のままで静かにグラスを傾けているだけだ。
 他の皆が見たら、アズサ先生は酒を飲むときもクールなのだと思うだけだろう。
 だが僕の知っているアズサ先生は、こんなものではない。男が出来ないと愚痴を溢し、
煙草と酒に溺れ、弱さを丸出しにした悪い意味での『大人の女』なのだ。そのダメ人間と
言うべき、僕から見たらアズサ先生らしい部分がまるで無い。
「あの、大丈夫ですか?」
「何がだ? ゲロでも吐いたのなら分かるが、今の私はどこもおかしくないだろう」
 冷たい目を一瞬だけ向けて、すぐに反らす。取り付く島が無いというのは正にこのこと
を言うのだろう。しかも、いつもなら冷たいなりにも気遣いのようなものが見えるのに、
今回はそれすらも無いのだ。関わるな、と言っているようにすら見える。
 沈黙。
 グラスの氷が無機質な音をたてて、側面を滑る。その音はつまらないもので、この重く
沈んだ空気を変える程のものでもない。相変わらず部屋に響くのは真面目に働く時計の針
の音だけで、まるでこの部屋だけが世界から隔離されているようにすら思えた。せっかく
着ている暖色のセーターも色味を失い、いつも着ている黒い服装よりも暗く見えてくる。
 どこかに何か大切な何かを忘れてきたような、どこまでも空っぽの印象だ。
160 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:28:32 ID:YiNUxwJX
「さっき、私に大丈夫かと言ったな?」
「あ、はい」
 突然の言葉に驚いて視線を向けたが、相変わらず顔は背けられたまま。
「それは、何に対してだ?」
「そりゃ」
 言って良いものなのか、少し悩み、
「いつもなら泣いたり吐いたりエラいことじゃないですか?」
 ふ、と小さく唇の端を歪め、煙草をくわえた。今になって気付いたが、僕が来てからは
まだ一本も吸っていなかった。これも今の状況に何か関係があるのだろうか。
「格好悪いものだな、心配されるなんて。馬鹿らしい話だ」
 僕は、どう反応したら良いのだろうか。
「この前な、妹の結婚式に行ってきた」
 こちらを見もせずに、グラスを煽りながら呟くように言う。小さく漏らした言葉だが、
音が殆んど存在しないこの部屋の中、はっきりと耳に届いてきた。
「姉妹が居たんですか」
 どう返したものかと考え、出てきたのは無難な質問。
「二人姉妹だ。その唯一の妹が結婚し、大学の同期もエニシ意外は皆結婚してしまった。
エニシは仕方ない事情があるから例外、つまり本格的に嫁き遅れになってしまった訳だな」
 先を越されたのか、それは辛いだろう。
「焦るのはもう止めたが、せめて変わろうと思ってな。この服がその例だ。妹から貰った
という理由もあるが、まずは見た目から変わろうと柄にもなく着てみた訳だ」
 そんな理由もあったのか。
「酒も控えるようにした、煙草も減らすようにした」
「眼鏡はコンタクトにしないんですか?」
「あんな怖いもん、着けれるか。目に直接レンズを入れるなんて正気とは思えん」
 センスが最近視力が落ちてきたというのでコンタクトを買うようなことを言っていたが、
今の言葉を聞かせてやったらどんな反応をするだろうか。
「まぁ、下らない話は置いておいてだ。変わろうと頑張って、それで心配されるなんてな」
161 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:30:02 ID:YiNUxwJX
 漸くこちらに向いた顔に浮かんでいるのは、自虐的なものが混じったもの。鋭く意思の
強かった目は弱気に細められ、滲んだ涙が蛍光灯の光を反射して輝いている。眉も垂れ、
いつもはっきりと物を言う唇は開きかけのドアのようになっていた。
 酔っている、のだと思う。
 体ではなく、心が現実という強い酒に溺れている。
 ならば、
「そんなに、変わりたいですか?」
 高慢かもしれないが、
「そんなに自分を変えたいですか?」
 その酔いを覚ましてやるのは、僕の役目だ。
 近くに居るときしか出来ていないが、酒で潰れたアズサ先生の世話をしているのは僕だ。
 しかし逆に言うならば、せめて近くに居るときは世話をしているのだ。今は酒と現実と
いう違いがあるが、構うものでもない。目の前で苦しんでいる弱い女性を、僕は純粋に、
ただ助けたいと思っただけなのだから。
 向けられた目を見つめ返し、僕は疑問を繰り返す。
「変わる必要って、あるんですかね?」
 と。
 違う自分を演じ続けた結果、いつかは定着していくだろう。他人から見たイメージも、
それと本人の心にも。しかし所詮は作られたもので、それは本当のアズサ先生ではないと
思うのだ。変わろうとすることも変わることも、悪いことではないと思う。泣き虫だった
ツルは、もう最近は殆んど泣く姿を見せない。コイは一生懸命料理が出来るようになろう
と頑張っているし、ミチルは労働を楽しんでいる。ホウ先輩とオウ先輩は、二人で人生を
歩んでいくことを決意した。どれもこれも、良いことばかりだ。
 だがそれは、どれもこれも彼女達らしいものの上に成り立っているのだ。
 ツルは僕と一緒に幸せになりたいと思って、泣くことを控えている。
 コイはツルへの思いと僕への想いの葛藤の結果、導き出した料理を頑張っている。
 ミチルは今までに足りなかったものを埋めるため、そして楽しむ為に働いている。
 ホウ先輩とオウ先輩は自分達の人生を納得させる為に、二人三脚で行きている。
 だがアズサ先生のそれは、アズサ先生自身を変えるというもの。それは何かが違うのだ。
162 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:31:11 ID:YiNUxwJX
「変わらなくても良いんじゃないですかね?」
 少なくとも、僕はそう思う。
「僕は、いつものアズサ先生が好きです」
「な!? 好きって、お前」
「冷たくて無愛想な顔で、辛辣な言葉を吐くアズサ先生が好きですよ。いつも酒と煙草の
匂いを撒き散らしているアズサ先生が好きです。黒いスーツとかばっかりのアズサ先生が
好きです。二人のときは駄目な大人になる、そんなアズサ先生が大好きです」
 言葉を紡ぐ度にアズサ先生の顔は紅潮し、ついには茹で蛸のようになった。
「その意外に純情なところも良いですよ?」
「う、うるさい!! 大人をからかうな!!」
 また先程のように顔ごと背けられた。
「それがアズサ先生で、僕はそこが好きなんですよ」
 鈍音。
 どうやら僕の熱烈なラブコールに、容量がパンクしてしまったらしい。顔を赤く染めた
まま、コタツに突っ伏してしまった。板に派手に頭をぶつけたようだったが、それも全く
気にならないらしい。唇から煙草が溢れて板の上を転がるが、火は点いていなかったのが
幸いか。煙に塗れている方がアズサ先生らしいが、今だけは減煙運動に感謝した。
「カメよ?」
「何ですか?」
 体を動かさないまま、アズサ先生は声をかけてくる。
「それは私と付き合……結婚しても良いということか?」
 何故言い直して、しかも超飛躍させたのだろうか。
「式は洋風が良いな、小さな丘の上の綺麗な教会で純白のウエディングドレスを着るのが
小さい頃からの夢だったんだ。ブーケを投げるのが、とても楽しみだ」
 何と乙女な人だ。
「そうじゃなくてですね? これだけ僕が好きでいるんだから、他の人にも絶対に好いて
貰える筈なんですよ。素のアズサ先生を。これは僕が保証します」
 沈黙。
 一分程経っただろうか、アズサ先生は鼻を鳴らして口の端を歪めた。
「お前の保証、何を賭ける? 嫁に貰ってくれるか?」
 それは、無理だけど。
「冗談だ。さ、飲み直すぞ」
 微笑みを浮かべて、アズサ先生は豪快に焼酎をラッパ飲みを開始した。
163 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:33:15 ID:YiNUxwJX

 ◇ ◇ ◇

 三分後。
 う、と口を掌で抑えながらトイレへと向かい、
「ぎ、give」
 何故かネイティブな発音で胃袋の中身を派手にぶちまける。
 やはりと言うか、予想通りのオチだ。
「うぁ、エニシに借りた服がぁ」
「そこまでですか!?」
 いかん、予想外だ。
 どんな惨状になっているのか、見なくても大体想像が出来た。あまり見たくないのだが、
無視をする訳にもいかない。僕はコップに水割り用のミネラルウォーターを注ぎ、便器に
顔を埋めているアズサ先生の元へと向かった。
「一気に飲むからですよ」
「すまんな、毎度毎度」
 口をハンカチで拭い、水を飲ませる。
「なぁ、これ落ちるか?」
 指差した先は控え目な胸元の中央、褐色のゲロが幾つか染みを作っていた。これは少し
難しいかもしれない。固形物だったら被害が少なかったかもしれないが、結構深い部分に
まで染み込んでいる。色も目立ちそうな感じだ。
「取り敢えず浸け置きしますので、風呂場行きましょう」
 立ち上がるのも大変そうなので、抱え上げる。背負わなかったのは背中への乳当たりが
期待出来なかったからではなく、ゲロを浴びたくなかったからだが、それでも純情乙女の
心を持つアズサ先生は嬉しかったらしい。コタツ板のやりとりのときのように耳まで赤く
染め上げると、そっと首に腕を回してくる。密着したせいで強く感じる体温と香水の匂い、
それらがアズサ先生の女の部分を意識させてくる。
 いかん、介抱と染み抜きを考えなければ。
 脱衣所の扉を開いて風呂場へと直行、バスタブに背中を預けさせる。
「はい、万歳して下さい」
 セーターを脱がし、ついでにスカートも脱がす。吐いた物は下着にまで染み込んでいた
ようで、レース地の白いブラにも僅かに色が浮いていた。
164 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:34:36 ID:YiNUxwJX
 ついでに下も全て脱がそうか、どうせ体も洗わねばならない。濡れるのだったら同じだ。
「いつもはシャワー、何度くらいですか?」
「カメが来るときは三回は浴びる」
 嬉しい告白だが、今はどうでも良い。
「温度ですよ」
「43度だ……年寄りだから高いとか良いと思ったな?」
 深読みのしすぎです。
 設定を高めにして湯を浴びせかけ、まずは体を軽く流す。浸け置き洗いも最初は温度が
高い方が汚れが落ちやすいので手間が省けた。
 そして体を洗っていると、
「ちょっと、何してるんですか?」
「礼をしなければと思ってな。嫌ではないだろう、その証拠に大きくなっているぞ?」
 アズサ先生の裸を見て、しかも手で洗っていたのだ。大きくもなる。これは生理現象の
ようなものだ、逆に勃起しない方が男としておかしい。久々に見るが細く引き締まった脚
や腹筋のラインは変わらないし、しなやかで強い、全体的に豹を思わせるような造形は誰
でも心を奪われるだろう。
「安心しろ、今まで通り誰にも言わん。ただ、感謝の気持ちとして受け取ってくれ」
 襟元を掴まれ、唇を重ねられた。煙草の匂いはしない、するのはアズサ先生の匂いだけ。
冷静な部分が、うがいをさせておいて良かったと考えていた。
 その考えも、絡んできた舌
で掻き消された。
 僕も舌を伸ばしてアズサ先生の口内を貪り、胸へと手を伸ばす。ボディソープで摩擦が
消えたそこはよく滑り、不思議な感触を与えてきた。小さい代わりに張りが強く、上手く
掴めずに周囲を指で撫でる感じになる。結果的に全体を愛撫する形になり、アズサ先生は
気持ち良さそうに声を漏らした。ハスキーな嬌声は、酷く色気がある。
165 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:36:19 ID:YiNUxwJX
「ほら、お前も濡れただろ。脱げ」
「いや、そんなには……熱い!?」
 僅かに泡が着いていただけだったが、意地悪くシャワーを浴びせられたせいで濡れ鼠に
なってしまった。普段浴びているものよりも熱い上に、それを含んだ服が肌に張り付いて
酷く不愉快だ。シニカルに唇を歪めているアズサ先生から目を反らし、僕も全裸になる。
「すまんな」
 衝撃。
 ついさっきまで酔いどれグロッキーだったとは思えない程に強い力で押し倒され、それ
を意識したときには既に騎乗位の体勢になっていた。胸と同様に強い張りの尻が腹に乗り、
そのまま股間へとゆっくり移動していく。
「礼と言ったがな。実は私も洗って貰っている間に、すっかり火照ってしまったんだ」
 だから、と言いながら腰を浮かせ、
「遠慮は要らんぞ?」
 一気に腰を降ろしてくる。
 入れた途端に愉悦に顔を歪め、激しく腰を動かし始める。遠慮は要らないと言ってたが、
とんでもない。僕が何をせずとも、アズサ先生が充分に動いてくれている。シャワーの音
が消える程に喘ぎ声を響かせ、体重をかけて深いところまで呑み込んでくる。
 正直このままでも良いと思ったが、アズサ先生にばかり負担をかけるのも良くない。
「動きますよ」
 腰を掴み、突き上げる。
 それで達したらしく、一際高い声を漏らして背を反らせた。
 しかし動きが止まったのも僅かな時間、すぐに動きが再開する。達したばかりで動くの
は大変な筈なのに、もっと快楽を求めるように、達する前よりも激しくグラインドをする。
連続でイき続けているのか締め付けは強く、腰を動かすのもきつい。しかしアズサ先生は
重力と脚の筋力にまかせて強引に身を揺すり、抜き差しを休むときも前後や左右へと腰を
揺すって、動きを止めることはない。
166 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:38:40 ID:YiNUxwJX
 僕もそれに応えるべく、がむしゃらに腰を動かした。
 止まらない、のではなく、止められない。
「カメのが、中でビクビクしてるな。そろそろ、出そうか?」
 そろそろも何も、数分前からずっと出そうだった。
「私も、本格的に、限界が、近い。腰が……抜けそうだ」
 個人的脳内データバンクによれば今日は大丈夫だったような気がするが、中に出しても
良いのだろうか。そう考えて視線を送ると、頷きが返された。それどころかアズサ先生は
深く体を沈めた後、腰を掴んで深いところで固定してくる。膣内に出してほしい、でなく
膣内に出さなければいけないということか。
 そのまま全体を飲み込んだままの揺れ幅の少ない高速ピストンが連続し、一気に射精感
が近付いてきた。さっき言われた通りに、アズサ先生も潮時が近いのだろう。僕としても
これ以上は流石に大変だ、我慢出来そうもない。
「もう」
「良いぞ、出せ、出してくれ」
 堪えきれなくなって、射精する。
 それを受け止めた、溶けたようなアズサ先生の声が耳に長く残った。
「また随分出たな」
 言って腰を浮かせると、視界の中央にある割れ目から精液が溢れてきた。自分の精液を
浴びる趣味は無いので身を起こして避けると、受け皿を失ったそれは出しっぱなしだった
シャワーによって排水溝まで流れてゆく。
 意味もなしにそれを眺めていると突然頭を抱き締められた。
 そして頭上から響く、
「ありがとうな、カメ」
 とても暖かく穏やかな声。
「何がですか?」
「このまま、もう少し頑張ってみる」
 そう、それで良いのだ。今のようなことは勘弁だが、いつか、そのままのアズサ先生が
ちゃんと結婚出来るまでは支えてあげよう。幾ら駄目になっても、幾ら潰れても、自分を
貫いてゆけば本当の意味での幸せが訪れる筈だ。
 それまでは、
「応援します」
 風呂場でのリバーブが効いた、クールな笑い声が響いた。
167 名前: 『ツルとカメ』×43 [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:40:52 ID:YiNUxwJX
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は二枚の葉書と二つのレスで!!」
亀「ゲストはアズサ先生!!」
梓「宜しく頼む」

つ[]アズサ先生〜
梓「ほう、幸先の良いスタートだな?」
亀「地味に人気あるんですよね」
水「そうだね」
亀「分かった、愛情量保存の法則的なもので」
水「三次元での人気がある分、こっちの方が減ってるってこと?」
亀「つまり人気が出れば結婚出来ない」
水「悲惨だね」
梓「お前ら、期末テストは覚悟しろ」
亀「何でですか!?」

>>132
水「いや、そんなこと言われてもさ」
梓「確かにスレの趣旨と違うがな」
水「今更カメにツンツンする意味無いしね」
梓「そもそも、あれはカメの変態脳内ストーリーだしな」
水「最低だね」
梓「最低だな」
亀「作者が全部悪い!!」

>>133
梓「DDR?」
亀「簡単に言うとステップを踏むゲームです」
梓「ほう、今はそんなのがあるのか」
水「いや、結構前から」
梓「私は年寄りじゃない!!」
亀「誰もそんなこと言ってないですよ」
水「因みに作者は体力の問題でDDRが出来ません。酒と煙草で体がボロボロだからです」
梓「何故私を見て言うんだ?」
水「気のせいですよ」

つ[]アズサ先生は〜
梓「無しだろう」
亀「良いんじゃないですか?」
梓「エニシは結婚出来ない理由があると言っただろう。それは交際も出来ないからだ」
水「どんな理由ですか?」
梓「簡単に言えるものじゃない。知るときがあるとすれば、作者の気が向いたときだけだ」
亀「じゃあ殆んど無理ですね」
梓「そういうことだ」

亀「今回はこれで終わりだな。次回の登場人物はパイオーツ・オブ・レズビアン」
水「普通に言おうよ」
亀「ホウ先輩とオウ先輩」
水「それより、登場人物?」
亀「僕は殆んど絡まないし」
水「百合百合なんだ?」
亀「百合百合だ」
水「ふぅん。それじゃ、また来週!! 『ツルとカメ』でした!!」
168 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:41:36 ID:xY6PJoAP
さいそく
169 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:41:41 ID:YiNUxwJX
土曜日はヘドロさん、頑張るぞっと
170 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 01:56:03 ID:V3YdM0CY
>>169
百合百合はイイですネ。百合百合は。
171 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/21(木) 02:00:50 ID:sXM8WA4Q
ツルカメ神GJ!
もうカメと結婚したいやつは全員結婚させればいい。
一夫多妻万歳!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!

つ[]カメの優しさに惚れました。是非掘らせてください。
172 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/22(金) 00:46:12 ID:GPEUrnCN
ツンデレ女性キャラ 人気投票
ttp://www.vote5.net/anime/htm/1182230311
173 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/06/23(土) 03:33:41 ID:rwB8zzNc
ヘドロ待ち保守。
174 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:04:38 ID:WdayY4zc
第11話『砕かれし刃』

「よし、住人の避難は完了か」
 周囲を見渡し、虎蔵は頷いた。
 Dr.ペドが予告した時間までは残り十五分程、本当にギリギリだった。
 電子音。
 通信機に目を向けると、リィタという文字。
 空をリィタ、北をシオリ、東をミク、西をムツエ、南にある管理局を薫をそれぞれ担当
地区のリーダー役として、一時間ごとに総リーダーである虎蔵の居る中央地区へ定時連絡
が来る。これが最後の定時連絡になるのだが、これを最後の会話にしてはいけない。そう
思いつつ虎蔵はスイッチをオンへ。短い吐息の後に、こちら虎蔵、と低い声で言った。
『こちらリィタ、異常は……はいそこ、喧嘩しないで下さい。異常無しです』
 大丈夫だろうか、と首を傾げ、
「こちらも異常は無し、だが大丈夫か?」
『はい、大丈……そこ、喧嘩しないでと言っているでしょうが!? プリンぐらい私が後で
好きなだけ奢りますから、黙って殴り合いを中止しなさい!! 潰しますよ!?』
『『すいませんでしたぁ!!』』 連続する殴打の音の後、沈黙。
「しっかりやれよ」
 吐息を溢し、頭を掻く。
「リィタ、珍しく怒ってましたね」
「元気なのは良いことだ」
「そういうもので済むんですか?」
「済むんだよ」
 複雑そうな表情を浮かべるリリィの頭を撫で、リィタの居る空を見る。喧嘩は沈静化を
したようで、先程まで飛んでいた火花は消えていた。もう大丈夫だろうと通信機をオフに
して、煙草に火を点けた。
 電子音。
『こちらシオリ、異常は無しです』
『東区、異常無しでござる』
『西区、異常無しですよ』
『こちら管理局、異常無し。サユリちゃんの声を聞きたい?』
「いや、終わってから聞く」
 短く言って、通信機を切った。
「妙な所で真面目と言うか……良かったんですか?」
 疑問の視線を投げ掛けるリリィに濁った瞳を向け、
「溜め撃ちの方が強い」
 うわ駄目中年、と叫んで頭を抱えるリリィを尻目に、虎蔵は深呼吸を繰り返す。
 残り十分。
 こちらの総数は六万弱、二百ある管理局の中で戦闘経験のある者の殆んどが集まった。
人数は相手の約五倍だが、恐らく不利な戦いになるだろうと考える。
「いや」
 駄目だ、と首を振り、
「勝つぞ」
 低く、だが確かに呟く。
 残り五分。
 唐突に緊急信号が鳴った。
175 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:06:14 ID:WdayY4zc

 ◇ ◇ ◇

『五分前行動ですか!?』
 叫ぶシオリの前、無数の人影がある。
『DragneelSystem:Enter;』
『MetalWolfChaose:Open;』
 轟音。
 声と同時に半径300mの地面が破裂した。
『行きますよ!!』
 叫び、作り上げるのは巨大な砂嵐だ。
 虎蔵と戦ったときは公園という敷地の限界があり、また生真面目な性格が周囲の無関係
なものを巻き込みたくないと考えさせていたので行動に制限があった。しかしシオリが今
立っているのは人の手が殆んど加えられていない広野で建築物を壊す心配も無く、住人の
避難も完全に行われているので巻き込む心配も無い。虎蔵とのときも全力だったが、それ
以上の全力を持って戦うことが出来る。
 もっと、もっと強く。
 砂嵐は拡大してゆく。
「化け物かよ」
 直径500m、高さは3kmにも達した、巨大な塔のようにすら見えるものを見て局員の一人
が呟いた。悪気は無かったのだろう、シオリが振り向くと慌てて目を反らす。
『そこの貴方、化け物と言いましたね?』
「う、すまん」
『そうです、私達はある意味化け物です。人を簡単に殺せる力を持った、化け物です』
 ですが、と前置きして、
『今から戦うのは、その化け物達です。恐れないで下さい、するのは理解だけて充分です。
そして理解した上で前へと進んで下さい、未来を勝ち取る為に。貴方の大切な人を化け物
に殺されないようにする為に。信じれば、必ず出来ます』
「しかしよぉ」
『負けましたから、一度』
 砂嵐の中に槍や剣を生成し、迎撃の準備を完了させ、
『私は一度、負けました。前に進もうという強い意思を持った人間に。だから貴方達にも、
絶対に出来る筈です。恐れることさえしなければ、絶対に』
 そう言って、距離を詰めてきた幼女の集団に向き直る。
 自分を敗北させた者の信念を、大切に思っている場所を守るために。
 自分を救い、また大切に思っているものを守ってくれた、その恩義に報いる為に。
 実はひっそりと浮かんだ恋心を原動力にして、シオリは持てる力を行使する。
『虎蔵さん、今度デートして下さいね』
 仄かな想いを、轟音の中に紛れさせて。
176 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:07:41 ID:WdayY4zc

 ◇ ◇ ◇

『DragneelSystem:Enter;』
『HoryWorld:Open;(聖域展開!!)』
 着物を着た幼女は、手に持った短冊に文字を記す。
 雷。
 その一文字が書かれた紙は放り投げられると、空中に溶け込んだ。
『参ります』
 静かに告げられるのは開戦の言葉。
 筆を持つ手を優雅に振るうと筆の先端から大量の黒の飛沫が宙を舞い、それがムツエに
付着した直後、文字通りの変化が起きる。
 天から降り注いだ雷が、直撃した。
『これがわたくしの力、聖域でございます。改めて名乗らせて頂きます。わたくしは幼女
四天王の一人、信仰伝導子マナミでございます』
『ふん、これしきのことで某を倒せると思うな』
『あらあら、お元気そうで』
 避雷針代わりに地面に突き立てた刀を引き抜きながら、ムツエはマナミを睨み付けた。
とっさの判断、幸運だったのは既に体を戦闘用に切り替えていたことと、相手の攻撃が雷
だったことだ。そうでなければ今頃消し墨になっていた、と内心で舌打ちをする。
『お強いですのね?』
『貴様よりはな』
『あら、怖いですわね』
 分かりやすい挑発だがマナミは気分を害した様子もなく、それどころか微笑みを浮かべ、
小さく拍手を送る。そして下駄を鳴らしながら、しなを作り、マナミは懐から新しい短冊
を取り出した。するすると、文字を綴ってゆく。
 うたかたに 流るる時の 一欠片 貴方の瞳の 向く先は何処へ
 五七五七七で作られるものは、どのような効果があるのか。ムツエは警戒した。
 しかし、意外な反応が来る。
 それは宙にも溶けず、何も起きない。
 起きたのはマナミが頬を朱色に染めたことと、短冊を差し出してきたことだけだ。
『貴方の為に書きました。是非、伴侶になって下さいませ』
 数秒。
『無理だ、既に某にはミクが居る』
『はぁ、残念ですわ』
 だったら、と唇を歪め、
『殺すしかありませんわね。永遠に、わたくしのものにして差し上げます』
 常軌を逸した言動に、その場の全員が絶叫した。
177 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:09:05 ID:WdayY4zc

 ◇ ◇ ◇

 ミクの眼前、黒いローブを着た幼女は自らを幼女四天王の一人、ホリィと名乗った。
『オイラの力、見せてあげる』
『DragneelSystem:Enter;』
『HoryHeart:Open;(聖心展開!!)』
 抑揚の少ない声が響いた途端、周囲の者達の動きが変わった。乱戦なのは変わらないが、
決定的に違うものがある。明らかな異常、それを見てミクはホリィの能力を悟った。
 同士打ち。
 混乱によるものではない、何人かが自らの意思を持って味方を攻撃している。
『君の能力と少し被っているね。でもね、どっちもジャミングとハッキングの応用だけど
オイラのは少し違うんだ。オイラのは、心を操るんだよ』
 凄いでしょ、とホリィは感慨も無さそうな口調で言う。
 それに対し、ミクの表情は苦いものだった。
 こちらとホリィの能力の違い、それが理由だ。体を操るだけの能力ならば、幾らか抵抗
のようなものが出来る。運動制御系の回路に外部から命令を送っているものなので、その
信号よりも強い信号を送れば少しは意思の通りに動けるのだ。それを逆に利用したものが、
ムツエとの連携だった。また自らの意思で緊急信号を送り、体の機能を完全に停止させる
ことも出来る。だがホリィの能力の場合は、それが出来ない。思考そのものを操るからだ。
 それだけではない。
 敵に操られているだけなのが分かっているから、例え後で修理出来ると理解していても
攻撃の手が鈍ってしまう。元々は争うことが嫌いで『N.E.E.T.』から逃げ出してきた者達
なのである。そのような者達が味方を攻撃するなど、基本的には有り得ないことなのだ。
しかも記憶には『N.E.E.T.』の同胞と戦った辛い記憶がある、それを後押しするような形
で攻めてくる今の状態は苦痛でしかなかった。
『皆にはあまり使いたくなかったんですが、仕方ありません』
『PapetMaster:Open;』
 ミクの両手から銀の糸が伸び、操られている者達に繋がった。
『空前絶後の大人形劇、見せましょう。私の力と貴方の力、どちらが上か技比べです!!』
 優しく、そして厳しい乱戦は続いてゆく。
178 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:10:32 ID:WdayY4zc

 ◇ ◇ ◇

「やっぱりここが本命なのね」
 他の場所からの報告よりも、幼女の数は多い。レーダーで確認した敵の数は四千程だ、
約三分の一がこちらに責めてくるということになる。重要な拠点として数は多く配置して
いるものの、それでも心もとないというのが薫の感想だった。ここを責め落とされたら、
一貫の終わり。虎蔵には悪いと思うが、彼一人が殺されたところでDr.ペドのプライドが
満たされるだけだ。一人の管理局局員としての冷静な部分が、そう考えさせている。
「でも、負けないでね」
 背後に控えている五千人程の局員達、その後ろにある管理局を見て目を細めた。
「あなたには、待っている人が居るんだから」
 殆んどの住人は他の監獄都市に一時的に避難しているが、地下のシェルターにはここを
どうしても離れたくないといった者達が隠れている。その中の一人に、虎蔵の愛娘である
サユリが居た。幼いながらに分かっているのだろう、父が自分達を守る為に戦っていると。
だから逃げたくないと、幼さ故の強い意地を通して動こうとしなかった。
「虎蔵ちゃん、あなたは幸せ者よ」
 これだけ愛され、しかも強い意思はしっかりと受け継がれている。
 薫はレーダーを見る、敵との距離は残り500mを切っていた。そろそろ長距離での射撃が
可能な者が居るならば、攻撃の第一波が来る頃合いだ。
「遠距離班、構え」
 周囲の者が防御体勢に入ったことを確認し、薫も身構える。いつでも戦闘に入れるよう
指輪を起動させ、手に持った大剣の切っ先を前方へと向けた。
「さぁ、かかって来なさい」
 普段は穏やかに細められている瞳に険の色を強く浮かべ、眉間に皺を寄せて一歩前へと。
戦うという強い意思を前面に押し出した一歩を聞いて、他の者も同様に前進する。恐れる
意思を踏み潰し、それを乗り越えてゆく為に。
「ふふ、もしサユリちゃん達に手を出してみなさい?」
 一拍。
「ブッ殺すぞ!!」
179 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:11:50 ID:WdayY4zc

 ◇ ◇ ◇

『アンタがリーダーでヤンスね?』
 リィタは、一人の幼女と対峙していた。
 他の局員と乱戦している者は汎用型なのだろう。髪型や顔、槍や弓などの武装こそ違う
ものの、全てに翼と白いワンピースという共通項がある。それに対し眼前の幼女は武器を
持っておらず、武器も携えていない。姿も全く違う。下半身は普通のミニスカートだが、
上半身はサラシの上に直接法被を着るという大胆な格好をしていた。肌の色も他の者とは
対照的な褐色、惜し気もなく露出させているのはDr.ペドの趣味だろうか。共通している
部分と言えば、法被の背から突き出した翼くらいのものだった。
 派手さを重視した色物のような格好だが、油断は出来ない、とリィタは睨み付ける。
 他の者と姿が違うということは、それだけ特異性を強調されたということだからだ。
『DragneelSystem:Enter;』
『HoryFire:Open;(聖炎展開!!)』
 リリィの眼前の幼女が叫び、両腕を広げると同時に、周囲から爆音が響いた。
『どうもどうも、アチキは幼女四天王の一人。炎の花火師型幼女、タマヤでヤンス』
 炎色の髪を熱による気流に翻らせ、八重歯を向いた笑みを浮かべた。
『行くでヤンスよ!!』
 声と共に出てきたものがあった。
 花火。
 タマヤが袖を振ると、無数の球体が空中に散布される。直径五尺の小割物で、導火線は
短く、しかも既に火が点いていた。リィタは身を捻って回避をしようとしたが、
『無駄でヤンス』
 轟音。
 弾丸などのような点の攻撃でもなく、剣のような線の攻撃でもない。爆発という立体的
な攻撃範囲を持つそれらは、単体でも広い範囲を持つ。周囲の空間を埋めるようにして炎
が満ち、回避が間に合わずにリィタの体に直撃した。
180 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:13:13 ID:WdayY4zc
『小割物『鳳翼』、どうでヤンスか? そして本命』
 タマヤはステップを踏むように一回転、法被の背から出てきたものは五十尺の大割物。
 轟音。
『見事でヤンしょ? アチキの自信作、大割物『炎城』でヤンス……って聞こえてないか』
 全身を焦がし、落下するリィタを退屈そうに眺めて呟いた。
『あっけなかったでヤンスね』
 すぐに目を反らし、乱戦が続いている後方を見た。
『さ、行くでヤンスよ。この空はアチキのもの、見事絶景を演出するでヤンス』
「待ちなさい」
 静止の声。
 タマヤが振り向けば、飛来する白銀杭が見えた。
「誰の空、と言いましたか?」
 浮かんできたリィタの目に浮かんでいるのは、強い意思。
「この空は、誰のものでもありません!!」
 ガンドレットに新しく杭をセットしながら、叫ぶ。
「私のご先祖様、遥・ムーンブレアは誰よりも空を愛していました。それ故に空は誰かの
ものではないと知り、その空の自由を守り続けてきたのです。月のように太陽の影に隠れ
ながら、しかし暗闇の中で歩む者を助けるように。人は彼女をこう呼びました」
 周囲を一瞬だけ見て、頷き、
「空の騎士、と」
 負けられない、負けている場合ではない。
 自分の大切なものを守る為に地上では多くの者が戦っているし、自分が今存在している
空でも仲間が必死に戦っている。リーダーであり、何より空の騎士である自分が負ける訳
にはいかない。それが月の魔女の姓も持つ者の誇りであり、存在意義でもあるからだ。
 射出の準備が完了したことを確認、リィタは構えを取った。
「先祖代々受け継いできた誇り、ここで潰す訳にはいきません!!」
 ブースターを全力で起動。
「花火師と言いましたね? ありがとうございます、私にもすっかり火が点きました」
 定めたものは、貫通の意思。
「月よ。今一度、私と、そして共にある者達に御加護を下さい」
 大きく息を吸って。
「リィタ・ムーンブレア、行きます!!」
181 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:14:23 ID:WdayY4zc

 ◇ ◇ ◇

『こちらリィタ、敵の殲滅完了です』
『こちらシオリ、任務完了です』
『こちらミク、敵の姿は無し』
『こちらムツエ、敵を……こら!! そんなところ触るな!!』
 虎蔵の傍らに落ちた無線機から声が響くが、それに対する声は無い。
 勝負は一方の圧倒的な力により、完全に付いていた。
「そんな、嘘ですよね?」
 リリィは虎蔵に一歩近付き、震える声で語りかける。
「嘘だって言って下さいよ」
 声は、返ってこない。
「ほら、いつもみたいに憎まれ口を叩いて下さいよ」
 日常でなら、それはお前だと言い返していただろう。
 それは、叶わぬ願いだった。
 虎蔵の装甲は砕け、剣は粉々に散っていた。
 そこにある色彩は赤。
 虎毛色の波打つ髪も透けるような白い肌も、全てが鮮血の色に染まっていた。
 は、と吐息に似た声を溢しながら、リリィは虎蔵の傍らにしゃがみ込んだ。顔に浮かぶ
ものは無理に作ろうとして、しかし失敗した歪な表情。泣き顔という、負の表情だ。
「こちら、異常なし」
 通信機に細い声を出し、倒れている幼い体を揺する。掌に赤が付着していることなどは
気付かずに、ゆっくりと、赤子をあやしてやるような速度で。
「ほら、起きて下さいよ。死んだフリなんて、良いですから」
 何度も何度も、体を揺する。
『無駄じゃよ』
 もう一人、その場に居た幼女が呟いた。
『虎蔵君は、死んだ』
 それが、きっかけだった。
 ダムが決壊するように大粒の雫がリリィの目から溢れ落ちる。動きだした感情は止まる
ということをせずに、連続して涙を溢れさせる。
「嫌」
 汚れることなど構わず、虎蔵の体を抱き締め、
「嫌、嫌です」
 単純な言葉で構成された心を、ぶちまける。
「嘘です、嘘です、だって」
 ひ、と鼻をすすり、
「だって、虎蔵さん」
『もう一度言ってやろう、お嬢ちゃん』
 幼女は両腕を広げ、空を仰いだ。
 一拍。
『虎蔵君は、死んだんじゃよ!!』
「嫌あぁァーーッ!!」
182 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:16:31 ID:WdayY4zc
セ「『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』質問コーナー、今回は二つのレスと二つの葉書
を紹介します。ゲストはタマヤちゃん、よろしくね?」
タ『よろしくでヤンス』

>>89
セ「クライマックスだけど」
タ『タイトルのせいで変な感じでヤンスね』
セ「そもそも色物企画だったものね」
タ『作者は後悔しまくりでヤンスね、馬鹿でヤンス』
セ「語尾がヤンスの幼女が言うことじゃないけどね?」
タ『仕方ないでヤンス。花火で思い付いたのが、この語尾でヤンスから』
セ「大変ね」

>>90
セ「これがマナミちゃんの元ネタなのね?」
タ『でヤンス』
セ「実際は能力が少し違ったけどね」
タ『カレーヤキソバよりはマシでヤンス』
セ「そうね。て言うか、意味が分からないし」
タ『でも、Dr.ペドにカレーヤキソバ作ってたでヤンスよ?』
セ「そうなの?」
タ『それを食った後にデザートはマナミちゃんと言ってブッ飛ばされてたでヤンス』
セ「馬鹿ね」

つ[]信仰伝導士〜
セ「これがホリィちゃんの元ネタね?」
タ『そうでヤンス』
セ「この娘はどんなアホな使い方をされてたの?」
タ『強い風を起こして、数千体の幼女同時パンチラをしてたでヤンス』
セ「あらら、無駄な力の入れようね」
タ『アチキみたいなスパッツ派には雨を降らせて、濡れライン出しをしてたでヤンス』
セ「最悪ね」

つ[]炎の花火師〜
タ『これがアチキでヤンス』
セ「そうね」
タ『設定では四天王最強でヤンスよ?』
セ「ふぅん、凄いのね」
タ『負けたのは運が悪かっただけでヤンス』
セ「悔しいの?」
タ『悔しくなんかないでヤンス!!』
セ「はいはい、飴ちゃんあげるから元気出して」
タ『食べれないでヤンス!!』
セ「残念ね。あら、終わりだわ」

セ「残すところも後二回、これからどうなるのかしら? 虎蔵さんとリリィちゃんの変の
行方も作者の気分次第!! 貴方のハートを一刀両断、『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』
でした。次回も見てね、約束よ?」
183 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 02:18:33 ID:WdayY4zc
今回はこれで終わりです

‐お知らせ‐
来週の『ツルとカメ』はお休みです
代わりにヘドロさんが入ります
残りは二話、もう少し応援お願いします
184 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 05:00:34 ID:oSL0/lwc
一番槍GJ!今回もアイデア使ってもらえて本当に嬉しい。来週も使ってもらえたりするのかな?
ならば パラパラ(らき☆すた読)・・・
次 の よ う じ ょ は病弱で気弱だが、能力発動すれば良心が攻撃を許さないというある意味最強のようじょで。
しかもこれ見た目ももとからロリ。まさに完璧ッ!
185 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/24(日) 15:32:22 ID:A8jYfbp2
>虎蔵さんとリリィちゃんの「変」の行方
これは素ですか?それとも狙ってやったんですか?

つ[]<全てを壊す二丁拳銃Full Brake Grave Digger幼女。背中には重火器満載のゴツい棺桶。
from GUNGRAVE
186 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:05:08 ID:9vLBpZT6
投下します。
187 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:06:49 ID:9vLBpZT6
 カーテンで閉め切られた室内に電子音が響く。
 朝の独特の清らかな静寂を打ち破る音は、携帯電話から発せられていた。
 壁際に設置してあるシングルサイズのベッドの上で、はじめは目を覚ました。
 寝起きの頭にとって不快な電子音を止めるためにはじめはベッドから這い出した。
 机の上に置いてある携帯電話のアラームを止めて、今が朝の7時だと確認する。

 カーテンを開けると、朝の日差しが部屋に差し込んできた。
 一階にあるはじめの部屋の窓は出窓になっていて、身を乗り出せば庭の様子を観察できる。
 家は洋風なつくりをしているので、調和をとるように庭も洋風になっている。
 敷地は木柵と背の低い木で囲まれていて、芝生が広がっている。
 部屋の窓からは見えないが、玄関や家の裏手には母が趣味でやっているガーデンがある。
 藤森家の敷地は内外問わずマナが手入れをしているため、ガーデンの手入れもマナがやっている。
 同じ家に住んでいるせいで、はじめはマナが手入れをしている姿を何度も見たことがある。
 メイド服を着たマナが花の手入れをしている姿は絵になっていたが、
芝生を機械で刈っているときも同じ格好をしていたときは多少の違和感を覚えた。
 それでもしっかり手入れができているので、結果的には問題はないのだが。

 パジャマを脱いだはじめは大学へ通うための服に着替え始めた。
 6月の空気はすでに夏と変わらなくなっており、服の選択も軽装になる。
 下着を替えてから、2年ほど履き続けているジーンズと、カーキ色の半袖シャツを着る。
 バッグに必要な本と筆記用具を入れれば、出発の準備は完了する。
 しかし、はじめはまだ大学へは行かない。
 時間が早いというのもあるが、朝は他にやることがある。

 ドアの向こうから、コンコン、というノックの音。
 続いて、ドアの向こうからやよいの声がはじめの耳に届く。
「はじめくん、起きてますか? 朝ごはんできてますよ」
 朝にやるべきこと。やよいに起こしてもらうこと。

 今日のようにはじめはいい時間に起きることはあっても、寝坊することは少ない。
 例え肉体が相当に疲労していようとも、起きることはできる。
 それでもやよいには起こしてもらう振りをしている。
 なぜかと言うと、やよいが朝のあいだ不機嫌になってしまうからだ。
 同居してやよいの性格・行動パターンを少しだけ理解してからは、
やよいが起こしにくるまではじめは部屋から出て行かない。

 鍵がかかっていない――一度壊れてから鍵を取り外してしまった――ドアを開けて、
はじめはエプロンドレスを身に纏ったやよいと向かい合った。
「おはようございます、はじめくん」
「おはよう、やよいさん」
「昨晩は、よく眠れましたか?」
「ええ」
「そうですか……それは、よかったです。ふふふ」
 朝の挨拶を終えると、はじめは洗面所へ向かって歩きだした。
188 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:08:15 ID:9vLBpZT6
 はじめは顔を洗い終えて居間に向かうと、すでにテーブルの上には料理が並べられていた。
 今日の朝食は白米、味噌汁、塩鮭、青菜のお浸しだった。
 やよいとマナは、床に敷いたクッションの上で正座して、はじめを待っていた。
 部屋に入ったはじめに気づいたマナが声をかける。
「おはよ、はじめ」
「おはよう」
 はじめはマナの顔を見て返事をすると、自分の席に座った。
「なんだか眠そうね。どうかしたの?」
「どうもしてないよ」
 そう言いながらも、はじめは自分の頭に睡魔がまだ居座っていることを自覚していた。
 しかし、耐え切れないほど眠いわけではないので顔には出さない。
 ここ最近のはじめにとっては、昨晩の出来事は慣れたことだからだ。

「いただきます」
「はい、どうぞ」
 はじめは手を合わせると、味噌汁に口をつけた。
「どうですか? お味の方は」
「いつも通り美味しいですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
 やよいは嬉しそうに笑うと、箸を持って朝食を食べ始めた。
 他人から見てもわかるほどの上機嫌だった。

 マナは2人のやりとりを視界のすみに収めていた。
 青菜のお浸しを口に含み、味わうように何度も噛む。
「んー……悔しいけどやっぱり美味しいわ。なんでやよいの味には敵わないのかしら」
「マナも先生に弟子入りしてみたらどうですか?」
「いやよ。私にとっておじさまはおじさまのままだもの。先生じゃないわ。やよいが教えてよ」
「それはできません。お浸し一つとっても秘密のやり方があるんですから」
「けち」
 やよいは同居しているはじめはおろか、マナにも料理を詳しく教えない。
 一般的に知られている調理方法を教えたりはするが、美味しく作る方法のようなものは教えない。
 どうやらはじめの父に口止めされているらしく、どれだけ粘っても口を開かないのだ。

 はじめは朝食を残らずたいらげると、やよいが淹れてくれたお茶を飲んだ。
 安物の茶葉を使っているというのに、はじめが淹れたものとは別物だ。
 やよいの師匠の父が淹れたらもっと美味しいのだろうか、とはじめはなんとなく思った。
 はじめがお茶を飲み干して時計を見ると、すでに大学へいく時間になっていた。
「それじゃ、僕はそろそろ行くね」
「はい、いってらっしゃい」
 立ち上がったはじめを見て、マナが口を開いた。
「私、送っていこっか?」
「……いや、いいよ」
「そう? まあいいけど。いってらっしゃい、はじめ」

 はじめが玄関から出ると、朝の涼しい空気と日差しがすぐに感じられた。
 今日の天気予報は晴れ。降水確率は0%。
 雲は少しだけ空を覆っていて、降り出しそうな気配を見せていなかった。
189 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:10:22 ID:9vLBpZT6
*****

 はじめが大学の講堂に入って最初にやることは卓也を探すことだ。
 いつも卓也は入り口に近い場所で講義を受けるため、入ったらすぐ見つかる。
 今日もいつもと同じように入り口付近、廊下から見える位置に卓也は座っていた。
 友人の隣の席に座って、はじめは声をかけた。
「おはよ、卓也」
「おう」
「昨日はあれからどうした?」
「地獄を見る一歩手前だった。千夏のやつが道場で稽古していけって言い出しやがってな。
 千夏を車から降ろしたら、すぐに逃げてやった」
「それから?」
「バックミラーで後ろを見たら追いかけて来やがった。
 もし信号が道場の近くにあったらあいつにとっ捕まってたな。
 ま、そんなことになってたら今頃俺はここにいないけど」
「なるほど」

 卓也にとって千夏の家、酉島道場は危険スポットらしい。
 稽古を受けただけで大学にも来られなくなるかもしれないということは、
相当に厳しい稽古をさせられるということだろう。
 運動系の部活に所属したことのないはじめにとっては想像がつかないが、
苦い表情を作る卓也を見ていると恐ろしいものであるということはわかる。

 ここで、はじめはあることに気がついた。
「そういえば、どうして稽古が厳しいってことを知ってるんだ?」
 卓也ははじめの顔をちらりと見て、また顔を逸らした。
 教壇の方を見ながら、卓也は語りだした。
「昔の話だぞ。俺と千夏は小学校のころ喧嘩したことがあったんだ。
 最初は口喧嘩だったんだけど、次第にエスカレートして俺が手をだしちまったんだ。
 今思えば、あのやりとりが俺の人生を狂わせたんだと思う。
 学校が終わってから千夏の家に呼ばれたんだ。決着をつけようって言われて。
 んで、コテンパンに叩きのめされた。鼻血は出るわ口の中は切れるわ。
 翌日はひどい筋肉痛になって最悪だったよ」

 卓也は長い、かなり長いため息を吐いてから言葉を続けた。
「それからことあるごとに千夏の家に連れて行かれて、
 中学卒業するまで稽古と言う名の体罰を与えられた。今でも時々会うと稽古に誘われるんだ」
「じゃあ、卓也も空手ができるのか?」
「いや……真似できるだけだな。千夏とは比べることすらできない」
「でもさ、稽古に誘われるってことは、酉島さんは卓也に気があるんじゃないのか?」
「お前は何を言っているんだ。仮にそうだとしても断固拒否させてもらうぜ。
 それに、昨日の素振りを見ていたら……」
 卓也は何かを思い出すように視線を上に向けた。
 固まったまま口を開かない卓也に向けて、はじめは声をかけた。
「どうかしたのか?」
「……なんでもねえよ。ハア、なーんでお前ばっかりいい思いをするのかねえ」
 肩を落とすと、卓也は再びため息を吐き出した。
190 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:11:25 ID:9vLBpZT6
***** 

 大学からの帰り道。はじめと卓也は帰りがてら商店にある本屋に立ち寄っていた。
 卓也は書籍のコーナーへ向かうと、目を皿にして本棚を見始めた。
 背表紙を指で指しながら、横へ向かい、端にたどり着くと下の段で同じことをする。
「何の本を探してるんだ?」
「うむ。それはだな……おう、これだ!」
 卓也は一冊の本を指すと、本棚から抜き出した。
 本の表紙にはメイド服を着た女性が描かれていた。両手で箒を持ち、廊下にたたずんでいる。
 本のタイトルは『徹底図解 正しいメイド服の作り方』。

「そんなもの買ってどうするんだ」
「決まっている。俺達でメイド服を作るんだ」
「作って、自分で着るのか?」
「馬鹿を言うな、メイド服は男が着るもんじゃねえ! 美女が着るからいいんだ!
 やよいさんとマナちゃんにあげるに決まっているだろう!」
「ああ、そういうことね」
「というわけで、はじめも手伝えよ。お前裁縫も得意だっただろ?」
「それなりにね」

 藤森家に住む人間には役割分担がある。
 誰に言われたからというよりは、3人の得意分野が分かれているから分担されたのだ。
 やよいは当然、料理の一切を取り仕切っている。料理と力仕事以外はなぜか上手くできない。
 マナは几帳面な性格を反映し、掃除を全て1人で行っている。
 人手が足りないときははじめとやよいの手を借りるが、基本的に1人で掃除を行う。
 はじめが唯一任されているのは、裁縫や大工作業だ。
 他の家事をやらせないやよいとマナも、こればかりは率先してはじめに任せる。
 2人が着ているメイド服もはじめが作ったものである。

「それぞれの特徴に合わせたメイド服をプレゼントしたほうがいいと俺は思うんだ。
 マナちゃんはフリルをふんだんに使ったものにしてな」
「やよいさんは戦うメイドさんって感じ?」
「なんでそうなる。そんなイメージはちっともないだろうが」
 はじめは卓也の反応が意外なものに思えた。
 しかし、自分がさらわれた時にやよいが見せた戦いぶりを思い出し、すぐに思い直した。
 そういえば、卓也はやよいさんが戦ったときにいなかったっけ。
「そうだな……やよいさんは、料理が得意で……あと清楚な美人で……えーっと」
 卓也は腕を組んで、うんうんと唸っていた。
 せっかくのイメージをあえて壊すこともないだろう。
 はじめは新刊の本を手にとって、卓也が落ち着くまで立ち読みすることにした。
191 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:13:07 ID:9vLBpZT6
 はじめと卓也が本屋から出て駐車場を通りかかったときのこと。
 停めてある車と車の間から女性が出てきて、卓也の腕を掴んだ。
「た、助けてください……あ、の、変な……」
 髪の毛を三つ編みにしている、いかにも大人しそうな女性だった。
 息切れしているせいで、喋る言葉は途切れ途切れだったが、紛れもなく助けを求める声だった。
 卓也は女性の肩に両手を置くと、事情を聞くことにした。
「どうしたんですか。何か困ったことでも?」
「あの! 男の人たちがいきなり声をかけてきて!」
 女性は後ろを指で指した。彼女がやってきた方向から、数人の男がやってきた。
 全員がぶかぶかのズボンや大きめのブーツを履いて、いかにもガラの悪そうな男達だった。

「なんだお前ら、その女の知り合いか?」
 と、近づいてきた男の1人が口を開いた。
 卓也は女性を自分の後ろに隠しながら、返事をした。
「いや、知り合いじゃないけど」
「んじゃあ、さっさとその女よこせよ。その女、俺達にガンくれやがったんだからよ」
「……何をするつもりだ」
 男達は返事をする代わりに、仲間と顔を見合わせて、下卑た笑いをうかべた。
 はじめにも卓也にも、男達の目的がなんであるのか理解できた。
 2人は視線を交わし、とるべき行動を見定める。
 こういう場合は男達を相手にせず、逃げるのが得策だ。

 卓也は女性の手を握ると、全力で走り出した。
 はじめも2人の後ろにつくようにして走り出す。
「おい、待ておまえら!!」
 後ろから、男達の怒鳴り声と足音が聞こえてくる。
「おいコラ、今すぐ止まらねえとブッ殺すぞ!!」
 予想通りの反応。
 男達は熱くなり、はじめたちを追いかけることしか考えていない。
 追いかける対象がいれば、男達にとってはそれだけでいいのだろう。
 すでに女性のことは記憶から消えているはずだ。

 はじめと卓也と追われている女性はデパートの中へ入った。
 どこかの店に入れば男達も諦めるかもしれない、という考えからだった。
 入り口付近にあるエスカレーターに乗り込み2階へ上がる。
 天井に吊るされている案内を見てトイレへ向かう。
 女子トイレの前に来たら、息が上がった状態の女性をトイレへ押し込んだ。
「いいですか、ここでしばらく……何十分かじっとしていてください。
 俺達があいつらをどこかに連れて行きますから。その後で誰かに連絡してください」
「え……で、でも……。お、お2人が……危険な目に、会い、ますよ……」
「大丈夫ですよ。こんな経験は何度かしたことがありますから、な?」
 卓也の言葉に対して、はじめは頷くことで返事した。
 なぜか普段と変わらない卓也とは対照的に、はじめはすっかり息が上がっていた。
 はじめは運動オンチ、ついでに運動不足でもあった。

「それじゃあ、お元気で!」
「あ、あの……お名前は?!」
「名乗るほどのものじゃありませんよ。それでは、さようなら!」
 どこか芝居がかった口調でそう言うと、卓也はトイレから立ち去った。
 はじめは運動不足の自分を呪いながら、卓也の後を追った。
192 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:15:53 ID:9vLBpZT6
 1階に下りるまで、2人はガラの悪い男達に発見されなかった。
 2人は壁に隠れながら、これからどうするか対策を練ることにした。
「正面、裏口、どっちから出る?」
「たぶんあいつらは僕達がここに入るのを見ているはず。だとすると正面にいる可能性が高い」
「だとすると、正面から出なけりゃいけないな」
 男達を女性から引き離すためにはどうすべきか。
 あの手の男達は人の顔を覚えないから、女性の顔を覚えていない可能性もあるが、万が一ということもある。
 はじめと卓也が、男達をこのデパート離れさせないといけないのだ。

「よし、それじゃ正面から行くとしよう」
「うん。……はあ。なんで今日はこんな目に会うんだろ」
「知るか。メイド神様にでも聞け」
「……架空の神様を作り出すの、やめようよ」
 こんなときでも落ち着いている卓也を少しありがたく思いながら、はじめは嘆息した。
 卓也の後ろを歩きながら正面へ向かう。
 すると、正面の入り口脇に置いてあるベンチに座っていた男の1人と目があった。
 女性を追いかけてきた男達の1人だった。
「おい、いたぞ!」
 男の声を聞いて、周りにたむろっていた男達も顔を一斉に顔を上げた。

「はじめ、裏に回るぞ!」
 きびすを返した卓也の後を追って、はじめも走り出した。
 店内中央の通路を歩く人たちを掻き分けながら2人は突き進む。
 後ろから男達の怒号と、いろいろな非難の声が聞こえてくる。
 卓也は裏口の押すタイプのドアを突き破るようにして外に飛び出した。
 はじめも卓也に続いたが、前を見ていなかったせいで開いたドアの向こうにいた女性とぶつかってしまった。
 ぶつかった反動で、はじめは地面にしりもちをついた。
 女性は腕を盾にしていたようで、はじめのように倒れていなかった。
「ご、ごめんなさい!」
「ちゃんと前を見て歩け! いきなり飛び出してくるなんてなにを考えているんだ! ……ん? はじめか?」
「え?」
 はじめは女性に向かって下げていた頭を上げた。
 ぶつかった人物は、はじめと卓也の共通の知り合いだった。

「酉島さん!」
「やっぱりはじめだったか。まさか昨日の今日で会えるとは思わなかったぞ」
「うん、僕も……って、そんな場合じゃないんだ!」
「どうかしたのか? さっきは急いでいたみたいだったが」
 はじめと卓也の2人とは対照的に、千夏は落ち着いたものだった。
 少し前を走っていた卓也は、道を折り返して戻ってきた。
「今はお前の相手をしてられないんだよ! 行くぞはじめ!」
「……なんだその言い草は。また骨を折られたいか?」
「だから、それどころじゃ」
 その時。
「いたぞ!」
 卓也の声を遮る形で、追ってきた男達の声が割り込んだ。
193 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:18:17 ID:9vLBpZT6
「今度は一体なんだ。騒々しい」
 千夏はいかにも不機嫌そうな顔を作ると、男達に目をやった。
 飛び出してきた男の数は8人。
 はじめが本屋で目にした数よりも多くなっているように思えた。
 男達を見つめていた千夏は、後ろにいる卓也のほうを振り返った。
「お前、何をやったんだ」
「何もやってねえよ! こいつらが女の子を無理矢理どうにかしようとしたから逃がしただけだ」
「ほう、卓也にもそんな殊勝なことができたのか」
 感心したように千夏は頷いた。

「おいコラ、お前もこいつらの仲間か?!」
 千夏の態度が気に食わなかったのか、先頭にいた男がくってかかってきた。
 女性としては背が高い千夏と比べても、その男は大きかった。
 肩幅は千夏の1.3倍はあり、盛り上がった胸筋の位置は千夏の頭と同じ高さにあった。
 つまらなさそうな顔をして、千夏は口を開いた。
「ただの知り合いだ。だが、無視するほどに冷めた間柄でもない」
「ああ? 何言ってんだァ?」
「言葉がわからないのか? そうか、学が無いのか。そんな顔をしているものな」
「てめえ、舐めてんのか! 犯すぞクソアマ!」

 千夏は腕を組むと、男に向かってこう言った。挑発するように。
「できるのか? 見たところ、モノが小さそうだが」

 お前はただ体が大きいだけだ。そう言っているように、はじめには思えた。
 千夏の言葉を聞いた男は見る見るうちに怒りで顔を赤くすると、
わけのわからない言葉を叫びながら拳を握り、千夏に殴りかかった。
 男の右拳は千夏の左頬に命中した。後ろにいたはじめにも、殴る音が聞こえた。
 鈍い音が1回と、小さくて軽い音が、1回。

 千夏が殴られたときに逸らした目を千夏の後ろ姿へ戻すと、奇妙な光景が見えた。
 千夏の立ち位置が、殴られる前の場所からまったく変わっていない。
 男の拳は千夏の頭を殴ったときのまま変わっていない。
 変わっていたのは、男の頭の向きだった。
 顎が右側に移動していて、頭が斜めを向いている。
 男は千夏の前で膝をつくと、後ろに倒れた。

「どうしたんだ、人の顔を殴っておいていきなり倒れるとは」
 千夏は倒れた男を見下ろしながらそう言った。
 仲間で一番大きな男を倒された男達は、すでに及び腰になっていた。
「てめ……今何をしやがった!」
 痩せた顔の金髪の男が千夏に向かって怒鳴った。
 悠然と見返しながら、千夏は答えを返す。
「何も。だって、何か見えたか?」
 男達は何も言えなかった。千夏の言うとおり、彼らの目には何も見えなかったのだ。
 それが巨体の陰に隠されていたせいなのか、目で終えなかっただけなのかはわからないが、
とにかく彼らの目では何が起こったのか理解できなかった。
 同様に、目を逸らしていたはじめにも見えてはいなかった。
 だが、千夏が何かしたということはわかっていた。
 男が千夏を殴った音の次に聞こえた、軽い音。
 あれだ。あのときに酉島さんが男に向かって何かしたんだ。
194 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:21:31 ID:9vLBpZT6
「ち……くそったれ、帰るぞ」
 金髪の男が悔しそうに言うと、他の男達は千夏から目を逸らして立ち去ろうとする。
「ちょっと待て。こいつも連れて行け。お店の入り口に転がったままじゃ他の客の迷惑になるんだよ」
 千夏は倒れた男を指で指した。
 男達は2人がかりで倒れた男の肩を担いだ。
 脱力した男の体は2人でも持ち上げるのが難しいようで、何度も持ち直していた。
 金髪の男は最後までその場に残っていたが、唾を吐き捨てると千夏に背を向けた。
 地面についた唾を見た千夏は男に近寄ると、肩を掴んだ。
「待て、金髪」
「ああ?」
「謝れ」
「なんだと、てめ……」
 金髪の男の声は、千夏が手に力を入れることで止められた。
 千夏の指先が男の肩にめり込み、さらに沈み込んでいく。

「痛ってえええ! 放せよ、おい!」
「謝れ、と言っているだろう。私に不愉快な思いをさせたんだからな」
「くそ……わ……悪かったよ」
「ん? なんだ? 言葉遣いがなっていないな。謝るときは、ごめんなさいだろう?」
 千夏は指にさらに力を加えた。
「あ、あああああ! ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ!」
「……よし」
 謝罪の声を聞いた千夏は、男の肩を解放した。
 金髪の男は千夏を一度睨むと、肩を抑えて走って逃げていった。

 男達が全員立ち去る様子を千夏は見送っていた。
 はじめは千夏の背中を見ながら、あることを考えていた。
 以前、はじめの目の前でまたたく間に大柄の男3人を倒したやよいとマナ。
 たった今、殴られてもびくともせず何らかの方法で男を気絶させた千夏。
 自分の周りにいる女性は何ゆえにびっくりする人間ばかりなのか。
 何度考えても理由はわからなかったが、自分みたいな人間もいるんだろうなあ、
と他人事のように結論づけることはできた。


-----
次回へ続きます。
エロシーンは終盤になります。ですが必ず書きます。ご了承ください。
195 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/25(月) 02:50:02 ID:qFcm2Tjm
>>194
誰GJ!
戦う女性は、美しい。
196 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/26(火) 01:59:21 ID:nyRPZ7ve
メイド家政婦超絶GJ!
いやいや怖い女性ばっかりだなwww
三つ編み少女が卓也に関わってきそうな予感。
197 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/06/27(水) 02:43:54 ID:g3wPDK7Z
アゲ
198 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/06/27(水) 02:52:43 ID:g3wPDK7Z
アゲ
199 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:22:10 ID:Li07DTBm
投下しますよ
200 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:23:33 ID:Li07DTBm
第12話『金色の幼女』

 リリィの叫びから、十五分程前。

 ◇ ◇ ◇

「頑張ってるなぁ、オイ」
 虎蔵は煙草の煙を吐き、空を見上げて言う。シオリの居る方向には以前戦ったときより
遥かに巨大な砂の柱が立っているし、薫の居る管理局の方向からは砲撃音が響いてくる。
ムツエの居る方向からは無数の悲鳴と幼女の声での『愛しています』という声が聞こえ、
逆にミクの居る方向は異常とも思える程に静かだった。そしてリィタの居る空は、
「何だありゃ?」
 何故か局地的に花火が連発している。どれもこれも、普通とは言い難いものだ。
「しかし、不思議ですね」
「何がだ?」
 顎に手を当て、考え込むような仕草のリリィに目を向けると、こちらを見上げてきた瞳
と視線が合った。頬を一瞬だけ赤く染めたが、すぐに頭を振って表情を真面目なものへと
変えると周囲を視線で示し、
「ここだけ、別の世界みたいです。他の場所では皆戦っているのに、ここは静かで」
「気ィ遣ってるんだろうよ」
 リリィには言っていない、幾つかの事実がある。
 中央地区を虎蔵のみに任せるよう頼んだのは、他でもない虎蔵自身だった。理由は単純
なもの、この場所がDr.ペドとの因縁の場所であるというものだ。
 背後にある第5監獄都市のシンボル、二重螺旋を描いた塔のオブジェを見て吐息する。
くわえていた煙草の火を揉み消し、懐から次のものを取り出すと火を点けた。
「そんなに吸って……肺が真っ黒になりますよ?」
「今に始まったもんじゃねぇだろ」
 不味そうに煙を吐き出し、
「吸わねぇと、やってらんねぇよ」
 携帯灰皿に灰を落とし、もう何度目になるか知れない吐息。
「ですが、この戦いが終わったら」
 足音。
 二人が振り向けば、そこに立っていたのは小さな影。
『やぁ、虎蔵君』
 待機している虎蔵とリリィの前に、一人の幼女が現れた。
201 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:25:11 ID:Li07DTBm
 漆黒の長い髪を後頭部で軽く結わえ、また黒のウエディングドレスを着た彼女の姿は、
肌の白さにも関わらず見る者に黒のイメージを抱かせる。服装が特殊なことと、ソプラノ
を奏でる桃色の薄い唇が三日月の形に歪んでいることを見なければ、単に避難から漏れた
子供だと思っただろう。しかし見慣れた表情に、虎蔵は顔を強張らせた。
 まだ長い煙草の火を消し、灰皿を懐に入れて幼女を睨み、
「てめぇ、とうとう人間辞めたのか」
『よく気付いたね、虎蔵君』
「そんな気持ち悪い顔をするガキが居るかよ」
 幼女は軽く手を打ち、納得したというように何度も頷いた。
『それはそうと、実際に会うのは二度目だね、虎蔵君。前は……そう、あの年増を殺した
直後だったか。いやいや、そう考えると随分と久しぶりじゃのう』
 虎蔵は歯を噛み、幼女、正確にはDr.ペドの精神がダウンロードされた幼女型機械人形
を睨み付けた。頭の中で暴れているのは、記憶の中でも特に強いもの。血に塗れて伏した
セリスの姿と、その傍らに立つ白髪の老人の姿だ。
「虎蔵さん、落ち着いて下さい」
「分かってる」
 ここで感情に身を任せても意味が無い、前回はそれ故に逃がしてしまったのだから。
 奥歯が圧力に軋む痛みを自覚しながら、一歩前へ出る。
「新しい体はどうだよ?」
『最高じゃよ、文字通り儂と幼女が一身同体。幼女の体が儂で一杯じゃ、エロいのう!!』
 馬鹿が、と吐き捨てるように呟いて吐息を一つ。
「せいぜい満足してろ、また胴体を真っ二つにしてやる」
『出来るかのう?』
 寧ろそっちこそ、と目を細めてリリィを見て、
『また、守れないかもしれんぞ?』
 嘲笑するように、言う。
 その言葉に虎蔵はキレた。
 憎悪と怒りに顔を歪め、腕輪を起動させる。
『FullmetalTiger:Enter;』
 三人しか居ない静かな空間に、音が響いた。
202 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:26:46 ID:Li07DTBm
 虎の叫びを連想させる音と共に、虎蔵の体が変化してゆく。鍛え込まれた長身の体は、
細く幼いものへ。浅黒い肌は陶器のような白く滑らかなものへ。短い黒髪は波打つ金色の
長髪へと変わり、風に翻って夜の闇を照らすように輝く。身に纏うのは純白のワンピース、
空中に展開した桃色の装甲がそれを覆うように鈍い音をたてながら合致してゆく。
 虎蔵が空中に現れたステッキを掴み、構えると、極薄の単分子ブレードが伸びた。
『君の変身シーンは抜けるのう。もう一回、もう一回頼む!!』
 虎蔵とリリィは露骨に嫌そうな顔をした。
『無理か、仕方ない。だったら、殺して奪うかの』
『DragneelSystem:Enter;』
『HappyWeding:Open;(新世界展開!!)』
 Dr.ペドの叫びと共に、姿が変化した。
 最初に起こったのは翼、闇を凝縮したような二対の黒の大翼が背中から伸びた。次に左
の薬指に銀の指輪が装着され、瞳と唇が真紅に色付いてゆく。スカートの中から黒い薔薇
で構成されたブーケが四つ出現し、宙を舞った。最後に天空から降ってきた全長2m程の
黒いカッティングナイフを掴み、変化が完了する。
 全てが黒で構成された、黒の花嫁。
 Dr.ペドは歯を剥く笑みを見せ、
『どうじゃ、格好良いじゃろう? 儂は儂の嫁!!』
 意味の分からないことを叫んだ。
『行くぞ、虎蔵君。ケーキ入刀!!』
 翼が揺らいだと思った直後、一瞬で距離が詰まった。
 音速超過による衝撃波を撒きながら、Dr.ペドはナイフを振り降ろす。
 鋭音。
 刃を受け流し、その流れを利用しての斬激に移行しようとした瞬間。
 衝撃。
 血の飛沫で軌跡を描きながら、虎蔵の体が吹き飛んだ。
『我ながら素晴らしい性能じゃのう。その幼い体に穴を空ける……これもエロい!!』
 穿ったのは、ブーケから発せられたレーザーだった。貫くという意味では最も効率的な
それらは、虎蔵の体に無数の穴を刻んでいた。
 Dr.ペドの攻撃は、そこで終わらない。詰め寄り、レーザーとナイフで連打を叩き込む。
その度に虎蔵の装甲は砕け散り、体には赤の線と点が刻み込まれてゆく。
203 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:27:56 ID:Li07DTBm
『ぎゃはは、儂の勝ちじゃ!!』
 高笑いが響く中で、虎蔵の体が地に堕ちる。
『こちらリィタ、敵の殲滅完了です』
『こちらシオリ、任務完了です』
『こちらミク、敵の姿は無し』
『こちらムツエ、敵を……こら!! そんなところ触るな!!』
 虎蔵の傍らに落ちた無線機から声が響くが、それに対する声は無い。
 勝負は一方の圧倒的な力により、完全に付いていた。
「そんな、嘘ですよね?」
 リリィは虎蔵に一歩近付き、震える声で語りかける。
「嘘だって言って下さいよ」
 声は、返ってこない。
「ほら、いつもみたいに憎まれ口を叩いて下さいよ」
 日常でなら、それはお前だと言い返していただろう。
 それは、叶わぬ願いだった。
 虎蔵の装甲は砕け、剣は粉々に散っていた。
 そこにある色彩は赤。
 虎毛色の波打つ髪も透けるような白い肌も、全てが鮮血の色に染まっていた。
 は、と吐息に似た声を溢しながら、リリィは虎蔵の傍らにしゃがみ込んだ。顔に浮かぶ
ものは無理に作ろうとして、しかし失敗した歪な表情。泣き顔という、負の表情だ。
「こちら、異常なし」
 通信機に細い声を出し、倒れている幼い体を揺する。掌に赤が付着していることなどは
気付かずに、ゆっくりと、赤子をあやしてやるような速度で。
「ほら、起きて下さいよ。死んだフリなんて、良いですから」
 何度も何度も、体を揺する。
『無駄じゃよ』
 もう一人、その場に居た幼女が呟いた。
『虎蔵君は、死んだ』
 それが、きっかけだった。
 ダムが決壊するように大粒の雫がリリィの目から溢れ落ちる。動きだした感情は止まる
ということをせずに、連続して涙を溢れさせる。
「嫌」
 汚れることなど構わず、虎蔵の体を抱き締め、
「嫌、嫌です」
 単純な言葉で構成された心を、ぶちまける。
「嘘です、嘘です、だって」
 ひ、と鼻をすすり、
「だって、虎蔵さん」
『もう一度言ってやろう、お嬢ちゃん』
 幼女は両腕を広げ、空を仰いだ。
 一拍。
『虎蔵君は、死んだんじゃよ!!』
「嫌あぁァーーッ!!」
204 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:29:38 ID:Li07DTBm

 ◇ ◇ ◇

「嘘……」
 無線から響いた声に、リィタの思考は白く停止した。
「そんな、虎蔵さんが……」
 下を見下ろしたが距離があるせいで何も見えない、事実を伝えてくるのは無線の声のみ
だった。しかし姉の叫びが、視覚よりも強い力で情報を与えてくる。
「待って下さいよ」
 まだ、足りない。
「せっかく、家族が出来たのに」
 思い返すのは、出会ってからの日々。
 虎蔵は、月のように表に出ることなく過ごそうとしていた自分を救ってくれた。決して
二度と過ごすことは出来ないと思っていた、姉との生活を与えてくれた。失っていたと、
そう思っていたもの全てを与えてくれた。
 そしてこれからも、様々なものを与えてくれると思っていた。
 家族というものの温もりや、大好きな虎蔵自身の体温。サユリと一緒に学校に行ったり、
もしかしたらリリィを母として複雑な日々を送るかもしれない。どれもこれも欲していた
ものだし、きっと与えられるものだと思っていたのに、そんな期待に満ちた未来が頭の中
で音をたてて崩れていった。
「死んだ?」
 未来の中で一番大切な虎蔵が死んだ。
 命を失った。
 二度と、戻らない。
 冷たい言葉が、思考を蝕んでゆく。
 数年前にもリィタとリリィは家族を失ったが、今はその比ではなかった。
「何で、こんな……」
 頬に、涙が伝う。
「せっかく、頑張って敵を倒したのに」
 これでは、意味がない。
「誉めて下さいよ、頭を撫でて下さいよ。いつもみたいに!!」
 声は返らない、返ってくるのはDr.ペドの笑いだけだ。
「許せない!!」
 周囲を見ると、あるのは敵だったものの残骸だけ。もうこの区域に縛られることも無い
だろう、そう判断してブースターを全開に、リィタは中央地区へと向かった。
205 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:30:58 ID:Li07DTBm

 ◇ ◇ ◇

「嘘でしょ、虎蔵ちゃん」

 薫は地下に降りるエレベーターの中で、リリィの悲鳴を聞いた。
 一人しか乗っていない鉄の箱の中では声がよく響く。それ故に虎蔵の敗北を必要以上に
意識させられ、膝から崩れ落ちた。薫は立ち上がろうと手摺に指をかけるが、立ち上がる
どころか足に力を込めることすら不可能だった。
「どうすんのよ?」
 パネルを見れば表示されているのは地下十階の文字、あと十数秒もすればサユリの居る
地下三十階に辿り着く。そのことに頭を抱え、薫は細い声を漏らした。
「どうやってサユリちゃんに会えば良いのよ?」
 悩み続け、時間が経ち、エレベーターは到着を知らせる軽い電子音を無慈悲に鳴らした。
「おかえりなさい」
 ドアが開いた直後、見えたものがある。
 絵だ。
 暇を持て余さないようにと虎蔵がサユリに新しく買い与えたクレヨンとスケッチブック
のセット、それをふんだんに使ってサユリは絵を描いていた。描かれていたのはドラゴン
と戦う男の姿。きっと虎蔵のことだろう、と薫は思う。
 それを見て言葉を詰まらせたが、薫はしゃがみ混んでサユリと目線の高さを合わせ、
「サユリちゃん、もし虎蔵ちゃんが負けたら」
「ぱぱ、大変なんだ?」
 返ってきたのは、残酷な一言。
 数秒。
 言葉を完全に失った薫に対し、大丈夫、とサユリは胸を張った。
「ぱぱは負けないよ、だって格好良いもん」
 意味の通らない理屈を、瞳を輝かせてサユリは言う。まるでそれが世界の真理だとでも
言うように、疑うことすらしない強い意思を含めてサユリは言い放ったのだ。
「そうね、そうよね」
 サユリを抱き締め、薫は呟く。
「ほら気合い入れなさいよ、虎蔵ちゃん。貴方には待ってる素敵なレディが居るんだから、
こんな変態相手に殺されてる場合じゃないでしょ?」
206 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:33:37 ID:Li07DTBm

 ◇ ◇ ◇

『さて、まずは非幼女一人目を殺すかのう』
 泣き叫ぶリリィに、Dr.ペドは一歩近付いた。
『全く、惜しいのう。あと五歳若かったら』
 また一歩。
『殺さずに済んだのにのぅ?』
 また一歩。
 二人の距離は1mを切った。
 ナイフの一振りで首を跳ね飛ばせる距離だ。このままDr.ペドが無造作に腕を振れば、
リリィの命は簡単に断たれるだろう。この光景を思い浮かべ、リリィは目を閉じる。
『サラバじゃ、少し年増のお嬢ちゃ……』
「待て、よ」
 細く、枯れた声。
「人の、連れを、勝手に」
 だが力強さを感じさせる声。
「殺そうと、してんじゃねぇよ」
 それは、紛れもなく虎蔵の唇から発せられていた。
 最初は、指を軽く動かしただけだった。
 次に小指を丸め、薬指、中指と拳を握り込んでゆき、
「おらよ!!」
 地面を殴り、それを反動にして一気に立ち上がり、
「俺を勝手に死んだことにしてんじゃねぇ!!」
 天を仰ぎ、叫ぶ。
 途端にバランスを崩しかけたが、とっさにリリィが体を支えた。その顔には満面の笑み
が浮かび、開いた唇から溢れ出してくる言葉は、
「馬鹿!! いつまで寝てるつもりですか!! 危うく死ぬところだったんですよ!?」
 いきなりの罵倒だった。
「随分な言い草だな、俺は死にかけだぞ?」
「うるさいです、この駄目中年!! 虎ぞ……ヘドロさんのアホぉ!!」
「何か久々に聞いたな、それ」
「私を悲しませた罰です、不名誉なあだ名くらい我慢して下さい!!」
 悲しんでくれたのか、と虎蔵が呟くと、リリィは頬を赤く染めてそっぽを向き、
「別に、悲しんでなんかいないです」
 戻ってくるって分かってましたから、と小さく言った。
207 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:35:16 ID:Li07DTBm
 自分で言って照れたのか、リリィは虎蔵を押し倒すと馬乗りになって連打を繰り返す。
その度に虎蔵は悶絶し、傷口からは大量に血が溢れ出した。
『お嬢ちゃん、お主今現在進行形で虎蔵君殺しかけとるぞ?』
「わぁ!! 死んだら駄目です虎蔵さん!!」
 何故かリリィは連打の勢いをアップさせる。
 虎蔵は目をヘドロのように濁らせ、
「セリス、何か元気そうだな?」
「昔の女は忘れて下さい!! 悪霊退散悪霊退散!!」
「痛ェ!?」
『そこのアホップル二人、そろそろ儂攻撃したいんじゃが』
 虎蔵とリリィは小芝居を止め、立ち上がり、Dr.ペドから距離を取った。
「ちょっと待ってろ!! おい、何か良い方法はねぇのか?」
「有るには有りますが」
 言い淀み、
「それは」
「あるなら使おうぜ、いや寧ろ使え」
 更に表情を曇らせる。
「でも、これを使うと命が」
「構わん」
 絶句するリリィを見た後、Dr.ペドを睨み、
「使わなかったら殺される、だったら俺は戦って死ぬ」
 お前はどうだ、と言って言葉を待つ。
 一秒。
 二秒、三秒。
 四秒目で漸くリリィは唇を開いた。
「分かりました」
 頷き、リリィは両の手を振るう。
 左右の手指、計十本全てに指輪が填められ、
『InfinitKey:FullOpen;(無限鍵盤大展開!!)』
 起動の和音が鳴ると同時に空中に光で出来たキーが出現した。
 七つの白鍵と五つの黒鍵をワンセットとした、それらが成すのは格段二十セット、高さに
して五段、計七百もの鍵盤の配列による超巨大な光のオルガンだ。
 それを高速タイピングしながら、歌を紡ぐようにリリィは唱える。
『SunshineHeartTiger:Enter;(金色の虎大展開!!)』
 砕かれた装甲が飛散し、代わりに現れるのは純白の装甲。その表面に刻まれた溝に光が
流れてゆき、それは数秒をかけて全体に満ちた。虎蔵の体が、金色の光に包まれてゆく。
例えるなら、人を照らし出す太陽のように。
 閃光。
 虎蔵を包んでいた光が弾け、その姿が明らかになった。
 金色の鎧に、黒い溝が走るそれは正に虎。
 見る者へ恐怖よりも強さと誇りを感じさせる、勇壮な騎士の姿がそこにあった。
「持って三分です、その間にカタを着けて下さい」
「そんだけありゃあ充分だ。覚悟しろ変態爺、第2ラウンドだ!!」
 戦闘が始まった。
208 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/27(水) 23:38:02 ID:Li07DTBm
今回はこれで終わりです

すみません、明日が仕事早いので質問コーナーは無しで

次回(土曜日投下)が最終回なので、そのときにまとめて書きます
209 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/28(木) 00:08:49 ID:WdIYA+I1
熱くなって参りました!
1番槍いやっほぅ!



リリィに免じてこれをお渡しします
(´∀`)つ「GJ!」
210 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/28(木) 02:11:50 ID:v95Mebru
GJ!!
虎降臨か……

終わりとは寂しいものだな、何事も
211 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/06/28(木) 21:47:45 ID:aPboTRJS
>>208
GJ!
BGMは「太陽は昇る」from大神推奨で。
212 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/06/30(土) 22:20:20 ID:l7xXQxFE
すみません
仕事の関係で投下出来るのは来週の水曜日になりました
水曜日こそは絶対に投下出来ますので、待って下さい
本当にすみません
213 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/01(日) 01:09:45 ID:rQN9QWPy
>>212
了解しました。
お仕事頑張ってください。
214 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/01(日) 07:26:34 ID:EA36+iPh
>>212待ってます。
保守
215 名前: 無題 [sage] 投稿日: 2007/07/02(月) 02:27:09 ID:lLTYlgan
「ねえ、そこの君ちょっといい?」
「俺?」
「そう、君」
みんみんとセミ達が元気に騒ぎ立てている夏休み最後の朝。そんな日の俺も生まれついての無計画さがたたって宿題を片付けるため図書館へと向かっていた。
え?なんでわざわざ図書館に行くかって?そりゃ家にいたらもろもろの誘惑に負けるからな。
とまあそんなわけで図書館に向けて歩いていた俺なのだがその道中でどうわけだか女の子に呼び止められた。
「え〜と、何?」
「え、っと凪乃丘高校ってここからどう行けば分かりますか?」
どうやらそういうことらしい。ショートヘアに整った顔立ち、キリッとした目つきと俺の好みでドキッとした自分が馬鹿みたいだ。
「ああ、そこならあそこにあるバス停から凪乃丘郵便局前までバスで行ってそこから2つ目の信号を右に行ったら坂があるからそれを上ればいけるよ」
「ん、ありがとうございます」
俺が行き方を教えると女の子がそれをメモしてバス停へと歩いていった。
そして俺はまた図書館に向けて歩き出すわけで。そういえばあの子うちの高校の制服だったな。
それにしてもうちの高校にあんな子がいたとは知らなかった。まあ同じ学校に通っているならそのうちまた会うだろ。
「しかし、自分の学校の場所を聞くとはどういうことなんだか」


そして翌日。徹夜して宿題を終わらせた俺は首をかくかくさせながら歩いていたわけだが・・・
「あっ!!」
ドンッ・・・
そんなことして歩いていると当然のごとく角から来た人とぶつかったわけだ。
「痛って・・・」
ぶつかり倒れた俺が目を開けるとそこには黒い布とすらりと伸びる白い足があった。
「早くどいくれない・・・?」
相手の声で我に返る。
「て、あ・・・」
そして俺は飛び起きる。どうやら倒れた拍子にぶつかった人のスカートのなかに顔を突っ込んだらしい。
「ご、ごめんなさい!」
俺は飛び起きるなり相手に頭を下げる。ぶつかった相手が起き上がると俺は恐る恐る頭を上げる。
「「あ・・・」」
そこには昨日のあの少女がたっていた。
「あ、昨日の・・」
「昨日の嘘つき!」
俺が言い終えるよりも早く少女が声を上げた。
「う、うそつき?」
「しらばっくれる気?君・・・わたしに嘘ついたじゃない。」
「いや何のことだよ」
「しかも痴漢だし・・・」
再開を果たした(?)少女が冷たい目で俺を睨みながらを罵る。事故とはいえ最後のはあながち嘘でもないが・・・
「ちょっと待て、嘘って何のことだ」
「何のって・・・昨日君わたしに間違った道案教えたでしょ。2つ目の信号左じゃなくて右だった。あのあと学校探し回って昼まで歩き回ったんだから」
そう言うと少女が昨日のメモ帳を見せてくるそこには確かに左と書いてある。
「いやいや、俺は右って言ったぞ。しかもあそこで左に行っても坂なんてないから分かるだろ」
「嘘!絶対左って言った」
「「・・・・・・」」
ぶうううん
少女と俺がお互いに引かずに睨みあっていると横をバスが通り過ぎる。
「「・・・あ」」
そして俺と少女がそれに気づいて走り出す。このバスに乗れるか乗れないかで学校前の坂を歩いていけるか走るはめになるかが決まるからである。
「とにかく後で謝りなさい」
先に走り出した少女が叫んだ・・・
216 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/02(月) 13:43:28 ID:kqrF/vMi
…続く…のだろうか?
217 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 00:39:32 ID:9jjQbfnr
wktkして待つ
218 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:09:55 ID:bFdMd0Jq
投下します。第3回です。
219 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:10:58 ID:bFdMd0Jq
「さて、その女の子のところに案内してもらおうか」
 不良たちを追い払った千夏は、振り向いた途端に切り出した。
「このデパートの中から出てきた、ということは建物の中に女の子を隠してきたんだろう」
「ああ、まあな」
「どこだ?」
「女子トイレ」
「まあ、無難なところか。じゃあ、さっさと行くぞ。案内しろ」
「へいへい」
 千夏に顎で促され、卓也はデパートの裏口へ歩き出す。
 はじめも2人についていこうとしたが、足が言うことを聞かないため、動けなかった。

「どうした、はじめ? 顔が汗だらけだぞ」
「……もうちょっと、休んでからにしようよ」
 千夏の言うとおり、はじめは顔だけでなく体中汗まみれだった。
 久しぶりに走り回り、たった今緊張の糸が切れたせいで足が言うことを聞かなくなっていた。
「膝が笑っているぞ。怖かったのか?」
「そうじゃ、なくて。筋肉が痙攣を……」
 壁に手をついて膝を揺らせるはじめを見て、千夏は肩を軽く落とした。
「まったくだらしのない。模型ばかり作っているからそうなるんだ。
 たまには外で元気良くマラソンでもしてきたらどうだ」
「……考えてみるよ」

 はじめは頷けなかった。
 はじめがマラソンでも始めようものなら自宅に住まう家政婦の目に留まり、
興が高じれば筋力トレーニング・水泳までさせられかねないからだ。
 そのため、家政婦の目に留まらぬよう、室内で運動を行わなければならない。
 しかし、室内でできる運動をはじめは長く続けられたためしがない。
 作りかけの模型を見ているうちにいつのまにか机に座り、目と腕と指を動かす作業に没頭してしまう。
 はじめが運動不足になるのは必然のことだった。

「こういうものはきっかけが大事なんだ。やるのなら今日からがいい。
 ……そうだ。はじめ、うちの道場に来い、今から」
「いや、僕に格闘技は向いていないよ」
「心配ない。空手に限らず武道というものは武を通して道を学ぶためのもの。
 心と体の両方を鍛えることこそが目的。武術ではないのだから」
「はあ……」
 武道と武術の違いが、はじめにはいまいちわからなかった。
 家に帰ったらやよいさんに聞こう、とはじめは思った。
220 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:12:17 ID:bFdMd0Jq
「千夏、はじめまで毒牙にかけるつもりか」
 今の話題を聞きとがめたのか、卓也が2人の会話に割り込んだ。
「人聞きの悪いことを言うな。私ははじめのためを思って言っているんだ」
「お前の親父さんにしごかれたらはじめが死んじまうぞ」
「む……それはまずいな」
 千夏は顔をしかめてうめいた。
「ならば……父の興味がはじめに移らなければいい……。
 そうだ。卓也、お前も一緒にくればはじめは無事だぞ」
「俺は絶対に行かないぞ」
「薄情な。親友を見捨てるというのか、お前は。
 お前には人の道というものを教えてやらなければいけないな」
「お前が教えられるのは鬼の道だろうがよ」
 ぴくり、と千夏の眉が上に動いた。
「ほほおう、言ったな……」

 千夏がゆらりとした動きで卓也に近づいていく。
 危険を察知して、卓也は身構えた。
 左手を前に、右手をみぞおちの近くに置く、見様見真似の空手の構え。
 千夏はにやりとした笑顔のまま、鏡が向かい合うように同じ構えをとった。
「卓也、腰が引けているぞ。誰にそんな構えを教わった?」
「たった今、俺の目の前にいる女に殴られているうちに覚えたんだよ」
「まだまだ私の構えもなっていないな。自分がこんなに情けない構えをしていたとは……」
「ああ、全くお前は情けない女だよ」
「だとしたら、卓也はさらに情けない男だな。私に一度も勝ったことがないのだから」
 卓也と千夏の2人があやしい声で笑い出した。
 くっくっく、というどちらから発せられているのかわからない笑い声をはじめは聞いた。
「2人とも落ち着いてくれ。ここはデパートの入り口だし、人の目もあるし」
 制止するはじめの声を聞いて、2人の声が止まった。

「はじめ。さっきの女の子に、もう大丈夫だって言ってきてくれ。
 俺は、この女を今日こそぶちのめしてやるんだ」
 そう言って、卓也は首を回した。
 首が左右に倒れるたび、骨の鳴る音がする。
「正直言ってこんな男の相手をするまでもないんだが……戦いを挑まれては仕方がない。
 助けた女の子とやらによろしくな」
 千夏は握り締めていた両手を開いた。
 再び両手が握られたときはメキメキ、という思わず心配になる音がした。
221 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:15:01 ID:bFdMd0Jq
 にらみ合いを止めない2人を見て、はじめが裏口へ向かったとき。
 裏口のドアを開けて、勢いよく飛び出してくる女性を見た。
 はじめが何か声をかけるよりも早く、女性は口を開いた。
「あ、あの……ハァ、私、その……けほっ……お2人が、心配で……」
 言葉の途中で荒い息を吐きながら、女性は言った。
「大丈夫ですよ、僕も卓也も無事ですから」
「あ……そう、でしたか」
「はい」
「あの、もう1人の男性の方は……」
「ああ、そこにいますよ」
 振り向くと、女性がやってきたことにも気づかずにらみ合いを続ける卓也と千夏がいた。
 まだ2人のにらみ合いと罵声の応酬は止まっていなかった。
 もう少し時間がかかりそうだとはじめは判断した。
 はじめが再度女性の方を振り返ったとき、女性の表情は一変していた。
 怒りの表情である。
 さっきまで大人しそうだった女性の顔だとはとても思えない。
 女性は怒りを込めた眼差しを、千夏に向けている。

 女性はすたすたと歩き出すと、千夏の後ろで立ち止まった。
「あの」
「ん、誰だ。君は」
「さっき、そこの男性に助けてもらった者です」
「ん? ……ああ。卓也が助けた女の子というのは、君だったのか」
「はい。それで、あなたは彼の――卓也さんの何なんですか?」
「いや……何と言われても……」
 女性に押しやられるようにして、千夏が下がった。
 はじめには返答に困って下がったというより、表情の迫力に負けて下がったように見えた。
 卓也は空手の構えのまま、口を半開きにしている。
 目の前で千夏が押されていることが信じられないようだった。

「もしかして、恋人ですか?」
「ぶっ!?」
 女性の発言を受けて、卓也と千夏は同じタイミングで息を噴き出した。
「あの、誤解の無いよう言っておきますが、このサバイバルナイフみたいな女は俺の彼女じゃありません。
 こんなのを彼女にするぐらいなら、丸一日車のトランクに詰め込まれているほうがいいです」
 そのたとえはあんまりだろう、とはじめは思った。
「君の目は節穴か? こんな冴えない、だらしない、強くない男に引かれるわけがないだろう」
 卓也の暴言に負けないくらいひどいことを言う千夏。

 今の発言を受けてもっとも反応したのは、怒りの顔をした女性だった。
「冴えなくもだらしなくも弱くも無いです! 訂正してください!!」
 目の前で大音声で叫ばれて、千夏は一歩さがった。
 はじめと卓也は、突然大声を出した女性に意表を突かれていた。
「弱い人だったら、私を助けたりしません!」
「あ、ああ。……確かに君の言うとおりだ」
「今までの人生で、ここまで必死になって私に接してくれた人は見たことがないです!
 こんな、素敵な人……今までいませんでした」
222 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:16:24 ID:bFdMd0Jq
 ……え?
 素敵な人?誰?
 はじめと千夏は顔を見合わせた。
 しかし、会話の流れからいって、誰のことを言っているのかはすぐにわかる。
 数秒見つめあった2人の視線は、卓也の顔に固定された。
 卓也は何を言われたのか理解できていないようだった。
 顔全体で疑問をあらわした卓也が、女性に声をかける。
「あのー……素敵って……」
「もちろん、あなたに決まって…………あァッ!!」

 女性の最後の声は裏返っていた。
 自分の発言を思い出して、女性は小刻みに体を動かす。
 視線は3人の間をさまよう。はじめ、千夏、卓也の順で。
 女性の視線が、卓也の顔で止まった。
 卓也が苦笑いをすると、女性の顔が真っ赤に染まる。
「あわわわわわわ……わ、私なんてこと……。
 ごめんなさい! さっきは助けてくれてありがとうございました! さようならーー!」

 女性は深く頭を下げると、背中を見せて走り出した。
 はじめは女性の後ろ姿を目で追った。
 数メートルおきに走ったまま振り返り、こちらに頭を下げる。
 そして前方を向いて、コンクリートの壁にぶつかった。
 女性は頭を押さえながら慌てて立ち上がる。
 またこちらを振り返りお辞儀をして、どこかへ向かって走っていった。
 
「なんだったんだ、あの子……」
「なんだったんだ、あの女は……」
 はじめも、2人とまったく同じことを思っていた。
 大人しい女性かと思いきや、千夏を批判するほどに豪胆な人だった。
 女性の言葉を整理してみると、卓也に惚れているということはわかった。
 おそらく一目惚れというやつだろう。それも、かなり惚れ込んでいる。 
 痴れ男から守るというのは、女性の心を射止めるには絶好のシチュエーションだということなのか。
 それとも単純に卓也に備わっているなにかに惚れ込んだのか。
 相変わらず首を捻り続ける親友を見ていても、はじめにはわからなかった。
223 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:17:54 ID:bFdMd0Jq
*****

 はじめと卓也と千夏は、デパートから離れて喫茶店に入った。
 さっきの騒ぎのせいで、デパートの裏口は人の目に留まった。
 当然、騒ぎの中心にいたはじめ達は注目をあび、離れざるをえなくなった。
 結果、近くの喫茶店に収まることになったのだった。

「まったく、無駄なエネルギーを使ってしまった。お前達2人にあったせいでな」
「ごめん、酉島さん」
「別に謝る必要はない。結果的にはさっきの女は助かったわけだしな」
 千夏は注文していたコーヒーを一口飲んだ。

「いや、でも助かったぜ。あのまま逃げ続けてたらはじめが捕まってたかもしれないし」
「そんなことになったら、卓也が身を呈して守れ」
「……そりゃ、見捨てたりはしないけどな。お前みたいには上手くやれないよ」
「仮にもうちの道場に出入りしたことのある人間だ。あいつらを蹴散らすぐらいなんとかなるだろう」
「あんな漫画みたいなこと、俺ができるわけあるか」
「手加減はしたつもりだぞ。あの大男、今日一日は足腰が立たないかもしれないが」
「……お前、トラかオオカミだよ。もしくは熊か」
 卓也はそう言って、ストローでコーラを飲んだ。

「だいたい、空手の技は素人に向けて使っちゃいけないんじゃないのか? ばれたら親父さんに怒られるぞ」
「状況が状況だ。お前達2人を見捨てるのもできないし、それに」
「それに?」
「あの手の男は、私は大嫌いだ」
 はじめは、千夏と不良のやりとりを思い返した。
 酉島さんは、最初からあいつらに対して挑発的な態度だった。
 あの態度は不良の男達が嫌いだったからなのか。
 あれ? 待てよ?

「どうした、はじめ。私の顔に何かついているか?」
「いやさ……ちょっと疑問に思って」
「なにをだ?」
「酉島さんの、嫌いな男のタイプってどんなのかな、と思って」
「ううん……難しいことを聞く。そうだな、勘のようなものか。
 近寄りたくない、近寄って欲しくない相手というのがなんとなくわかるんだ」
「じゃあ、好きなタイプって?」
 はじめは軽い好奇心で質問した。
 純粋に千夏の好きなタイプがどんな人間なのか知りたかった。
 そこに深い意味はない。はじめは腹の探りあいができるほど器用ではない。
 即答してくるかと思いきや、千夏は神妙な顔になって腕を組んだ。
224 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:19:42 ID:bFdMd0Jq
「なぜそんなことを聞く?」
「え、えっと。酉島さんのことを知りたいと思ったからなんだけど」
「何故好きなタイプを聞くんだ? 他にも質問はあるだろうに」
「うーん……参考にしようかな、と」
「……はぁ?」
 珍しいことに、千夏が唖然とした顔を見せた。
「はじめ、それは一体どういうつもりで言っている……?」
「えっと……」
 なんて答えよう?
 昔、マナに同じ質問をして『なんとなくそう思った』、って答えたら頭をはたかれたし。
 やよいさんに『嫌われないために』、って答えたら晩御飯がおかず抜きになったし。
 別の答えは、何かないか?
「……はじめ?」
 何かを期待するかのように、千夏は目をしばたかせていた。
 千夏の目に促されるかのように、はじめは答える。

「僕がそういうタイプになろうかなって。ほら、友達として仲良……」
 はじめの言葉は、突然紛れ込んできた音によって遮られた。
 卓也がコーラを吹いた音と、千夏が椅子を横に倒して転げ落ちた音だ。
 テーブルの上はコーラで、床の上はコーヒーでびしょびしょになっている。
 店内にいる人間は、皆がはじめ達に注目している。
 中にはわざわざ立ち上がって見てくるものさえ居た。

「カハッ、ゴハ、ゲホッ……ばじべ、おばえ……」
 卓也はテーブルに備え付けてあったナプキンで鼻をかんだ。
 もう一度咳き込んでから、卓也は口を開いた。
「いきなり変なことを言うな! 血迷ったか!」
「なんで? おかしなこと言ったか、僕」
「お前……今の、こくは……」
「コクハ?」
 わけがわからない、という顔をするはじめ。
 親友のごまかしのない顔を見て、卓也はかぶりを振った。

「いや、もーいい。勝手にしろ。お前はそういう星の元に生まれついたんだ。
 何気ない仕草や軽い言葉で女を手篭めにする男なんだ」
「卓也、何を言っているんだ」
「やよいさんやマナちゃんなら納得ができる。だが、千夏にまで手を出すとは思わなかった。
 俺としては、千夏がお前の方に行くから嬉しいんだが……。
 ああ、いいことを教えてやる。千夏は俺の知る限りで、男と付き合ったことは無いぞ」
 卓也は椅子から立ち上がると、はじめに背を向けた。
「ごちそうさん。ここで飲んだコーラ……忘れないぜ。
 ツンと鼻まで抜けそうな、いや、鼻が爆発しそうな甘さだった」
「おーーい、卓也ーーー? せめてコーラ代だけでも払っていってくれないかなーー?」

 卓也は、喫茶店のドアの前で立ち止まると振り返った。
 そして、生暖かい目をして、サムズアップ。
 後ろ手でドアを開け、卓也は外へ出て行った。
 カランカラン、というベルの音と共に、ドアが閉まった。
225 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:21:58 ID:bFdMd0Jq
*****

 はじめと千夏は、喫茶店を出たらそれぞれの自宅へ帰ることにした。
 時刻は6時を回っている。そろそろ帰らないと、やよいが心配する頃合だ。
 路地は、T字路に差し掛かっていた。右に曲がるとはじめの家に着く。
「酉島さん、僕はこっちの道だから」
「ああ、そうか……」
「じゃあ、また」
「あっ」
 右へ曲がったはじめに、千夏が駆け寄る。
 歩幅を合わせて歩く千夏に、はじめが声をかける。
「酉島さん、どうかした?」
「ん、何がだ?」
「様子がなんかおかしいよ。さっきも椅子から落ちたし。もしかして風邪?」
「いや……そうじゃない。あんなことを言われたのが初めてだったから、びっくりしてな」
「あんなことって?」
 はじめの顔を見ず、前を見て千夏は答える。

「私に好かれようだなんて男は、いないと思っていた」
「……そんなことないと思うな」
 卓也は、自分と気の合わない人間とは友達にならない。
 はじめと仲良くしているのは、気が合っているからだ。同じことが千夏にも言える。
 卓也は千夏のことを憎まれ口をたたきながらも好意的に思っている。
 これは間違いない。そこに恋愛感情が介入していないのも間違いない。
 喧嘩仲間的な、昔からの友達。
 きっと、卓也にとって千夏はそういった存在なのだ。

「荒っぽい女など、はじめは嫌いだろう?
 昨日会った家政婦の女性のような、おしとやかな女性の方が好きだろう?」
「やよいさんみたいな女性が好きだとしても、他の人を好きにならない理由はないよ。
 それに、荒っぽいっていうのは酉島さんの持つ、自分のイメージでしょ。
 僕のイメージでは、お父さんの跡を継ごうとする立派な人に思えるよ」
「そうか……そうともとれるか。実際はそんな立派なものではないんだがな」
 千夏は自嘲的な笑いを浮かべると、立ち止まった。
 2人は話している間に藤森家の敷地の入り口前に来ていた。
 はじめが自宅の玄関を見ても誰も立っていなかった。

 千夏は、はじめの顔は見ず、俯いて喋りだした。
「はじめ、さっきの言葉は……本当だな? 私を好いて、そして好かれてもいいというのか?」
「うん。僕は酉島さんと仲良くしたいし」
「……なら、お願いがある。私のことは、苗字ではなく名前で呼んでくれないか?」
「え、いいの?」
「ああ、私は最初から呼び捨てだったしな。今のままではフェアじゃないだろう」
「じゃあ、これからは千夏さんって呼ぶよ」
「呼び捨てでも構わないんだが……はじめがそれでいいなら、それでいこう。
 そろそろ私は帰るとするよ。では、また……必ず会おう」
「うん。またね、千夏さん」
 去っていく千夏の背中を、はじめは見送った。
 千夏の背中は、力強く、どこまでもまっすぐに伸びていた。
226 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 01:25:03 ID:bFdMd0Jq
第3回、投下終了です。

(早くて)あと3、4回は続きます。
227 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 02:23:29 ID:4fEZeGHc
>>226
乙!
フラグをぶち立てたか……
228 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/03(火) 08:21:47 ID:Nv2Q9mhe
>>226
乙。
卓也ではなくてはじめに立ったか・・・
229 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/04(水) 15:12:34 ID:04fv8ugu
>>226
やはりハーレムルートwww
はじめ殺されるかも分からんねww
230 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:24:16 ID:8b0dYxwI
投下しますよ
231 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:25:18 ID:8b0dYxwI
最終話『争いの果てに』

 始まりは一瞬だった。
 リリィは演奏を止め、一息吸い、
「勝ちましょう、虎蔵さん。全てを守る為に」
 告げ、超速で鍵盤の叩きを開始する。
 それに合わせ、虎蔵とDr.ペドも動いた。
 虎蔵のブースターを起動させると同時に背から一対の大翼が出現し、小さな身を瞬間的
に前方へと跳ね飛ばす。その速度は以前のものの数倍、『Type-S』に相当するものだ。
 それに対し、Dr.ペドも前に出た。それにより間合いが一気に詰まり、知覚したときは
既に距離は1mになっている。互いの刃の届く距離だ。
 虎蔵はブレードを、Dr.ペドはナイフを振る。
 互いの踏み込みは強く、そして速い。音速超過の水蒸気を背後に引きながらそれぞれの
得物を振り上げ、体のしなりを利用して振り降ろす。斬撃の中では最も力のある、相手を
一刀の元に切り捨てるという、必殺の力を持ったものだ。
 鋭音。
 ブレードとナイフが噛み合う音が鳴り、行為に僅かに遅れて大気が揺らぐ鈍い音が響く。
「リリィ、良い仕事だ」
「ありがとうございます」
 口元に笑みを浮かべ、体全体を使ってのスイングをする。
 鋭音。
 だが事前に自ら後方に飛んだのだろう、手応えは弱いものだった。
 吹き飛んだDr.ペドに追撃をかける為、虎蔵はブースターを全開に。金色の弾丸となり、
バレルロールを繰り返しながらブーケから放たれるレーザーを回避しつつ、最小限の動き
で最短距離を目標に、一直線に向かってゆく。翼で時折体のバランスを調整し、向かい風
をも推進力に変えて、生まれる速度は音速の二倍だ。
 戦えている、という実感に気持ちを高ぶらせながらも、眼前を冷静に見据える。
232 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:26:54 ID:8b0dYxwI
 来る。
 ブーケが正三角形を描きガトリング砲式にレーザーの高速連射が飛来する。しかし抵抗
を減らす為に立てていたブレードを倒してプロペラのように風を受け、超速の螺旋を描き
全ての閃光を回避を可能にした。
 抜けた先にあるのは黒の体。
 慣性のままに続く回転を味方に付け、下段からの斬撃。
 鋭音。
 間一髪で防がれたが、笑みは崩さぬままだ。
 詰まった距離を離さぬよう、刃を振れる距離を維持しながら虎蔵は追い続ける。ブーケ
による射撃が来ないだけマシだ、そう前向きに思考を変えて、腕の振りを連続させる。
 音が響く、幾つもの音が空間に満ちてゆく。
 一つは虎蔵とDr.ペドが剣撃を交すもの。
 一つは、リリィの十の指輪の起動音。
 最後の一つは、リリィが光のオルガンを弾く音だ。
 音が空に木霊する、舞踏会のようにすら見える光景の中、
『うしゃしゃ、随分良い動きだね?』
 回り、奏で、意思を振るう、それぞれの動きは止まらない。
『カメラを持ってくれば良かったよ、虎蔵君。音楽を奏でているのが年増というのが気に
入らんが、美幼女が踊っているというのは是非残しておきたいからのう!!』
「生き残るのが前提か?」
 裾を翻して虎蔵はターンを一つ、遠心力を利用した横薙ぎの一撃を放つ。しかしそれは
ブーケによって防がれ、続いてやってくるのは三条のレーザーだ。
 当たる、と思った瞬間、虎蔵の体が跳ねた。
 自動的に稼働したブースターが高速の光打撃から身を剥がし、
「受けなさい!!」
 強引に虎蔵の身を回転させてブレードを叩き込む。
「お前、いきなり動かすんじゃねぇ!!」
「虎蔵さん、結果を見ましょう。見事ブーケは残り一つです」
 虎蔵は苦い表情を浮かべたが、すぐに構えを取る。叱るのは後で良い、今はDr.ペドを
相手にする方が大切だ。しかし後で絶対にヒィヒィ言わせてやる、そう決意して前を見た。
『やるのう、しかしこれならどうかの?』
『RoseGarden:Open;(黒界展開!!)』
 スカートが膨れ、弾けた。
233 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:28:48 ID:8b0dYxwI

 虎蔵の背からもう一対の翼が出現した。
 二対の翼が羽ばたきを一つ、待った羽が周囲を包み込み、白く彩ってゆく。
 轟音。
 黒の閃光が白の羽に当たった刹那、それは対消滅を起こした。
『ほほう、もう余裕は無さそうじゃのう』
 軽い言葉だが、Dr.ペドの表情が変わった。今までのニヤついたものを完全に消し去り、
浮かべたのは真剣なもの。大戦時にDr.ペドの弟を殺したと告げたとき、モニター越しに
見たそれと同じもの。目を鋭く細め、眉根を寄せ、殺意を前面へと押し出したものだ。
『遊ぶ時間は終わりじゃ』
 感情が一気に削ぎ落とされた冷たい声。
『あの世で妻に会うと良い』
 一気にDr.ペドの速度が跳ね上がる。
 風をも起こさぬ速度での連激、秒間に百を越える速度での斬激の群だ。スピードが乗る
分重さが足りないが、運動エネルギーは多く、一撃を受けるごとに虎蔵の手に強い痺れが
走り表情を歪める。強化されているブレードは欠けこそしないが、それだけだ。腕の加速
を続けるDr.ペドの攻撃はついに秒間二百を越え、
『そら、また負けるぞ?』
 対処しきれなくなった刃が首元に迫った。
 リリィは防御のプログラムを発動させようとしたが、
「虎蔵さん!!」
 あと5cm、僅かに手指が届かない。
 しかし、その鍵盤を押す者が居た。
 白銀の髪と白銀の装甲を身に纏った幼女だ。
 彼女が鍵盤を押した直後、プログラムが発動。
『TigerWing:Open;』
 舞った羽が、ナイフを弾く。
「リリィ、あんな声を出して、心配させないで下さい。虎蔵さんが本当に死んでしまった
かと思ったじゃないですか。全く、昔からリリィは肝心なところで打たれ弱くて」
「い、いきなり罵倒って何を」
「良いですから、行きますよ」
 リィタはリリィの隣に立ち、溜息を溢しながら鍵盤を弾き、
『TwinInfintKey:GrandOpen;(二重無限鍵盤超展開!!)』
234 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:30:23 ID:8b0dYxwI
 空間に更に五段二十セットの鍵盤が浮かび、歪曲し、円列へと変化。
 完成したのは合計二千四百にもなる鍵盤によって構成された、五段の還のオルガンだ。
 ステップを踏み、リリィと背中合わせになるように立ち、鍵盤を叩きながらリィタは目
を弓の形にした。体の小ささを補う為にする移動で長い髪を大気に翻しながら、
「懐かしいですね、リリィ。これを使うのは三年ぶりですか」
「そうですね。そして、これからの使うものも」
 リリィとリィタ、二人が頷きあった直後、音が追加された。
 歌。
 伴奏に合わせ、二人の唇から声が溢れる。
 歌詞は無く、全てがラの言葉で構成されたものだが、それ故に誰でも歌えるものであり、
曲に捕われることなく自由に歌うことが出来るものだ。リィタは伸びやかな声で、リリィ
は澄みきった声で、それぞれの意思を込めながら歌を紡いでゆく。
『咏唱プログラミングか!?』
 Dr.ペドの言葉を裏付けるように、虎蔵の動きは加速した。
 指輪によるもの。
 オルガンによるもの。
 歌によるもの。
 三重プログラミングによって速度は飛躍的に増大し、振るわれるブレード先端部の速度
は先程の二倍にもなった。音速の四倍、水蒸気の糸を引くことすらしない速度だ。
 轟音。
 思考するよりも音に身を任せて刃を振るい、虎蔵はブーケを破壊する。
 連続する爆発音に負けぬよう声を張り上げ、虎蔵は言う。
「負けねぇ」
 一度目は確認の為に。
「勝てる!!」
 二度目は意思を強くする為、虎蔵は叫んだ。
 それに応えるように、空間に変化が起きる。
 最初に気付いたのは、唯一背を向けて演奏していたリリィだった。この第5監獄都市の
シンボルである、二重螺旋の塔を象ったオブジェが震えている。まるで意思を持ったよう、
動き出す直前のように振動を続けていた。
 果たして、それは意味を発揮した。
 ソの音、ファの音、それに続いてレミソシの和音のキーを叩いた瞬間、文字通りに音が
弾けたのだ。どこまでも音を広げてゆくよう、明確な音階を持った風がその場に存在すり
者全員の体を包み、そして更には付近の建造物をも震わせた。
235 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:32:20 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

『何でしょう、この音は?』
 音が、聞こえてきた。
 最初は小さなもの、しかし次第に大きなものへと変わり、それがリズムと音階を持った
ものだと理解する。そして音の発生している方向は、現在虎蔵達が交戦しているものだ。
 意識を集中させて分かるのは、
『この声、リリィさん達の』
 歌声だ。
『生きて、た』
 シオリは頷き、笑みを浮かべた。
 音が響いているというのは、終わっていないということだ。決して絶望せず戦いを継続
させているということだし、その先に繋げるものが存在するということでもある。虎蔵は
死んでなどいない、その事実が聞こえる歌声として存在しているのだから。
 音の発生源を見て、一歩踏み出した。
 小さな体での一歩は酷く距離が短く、詰まった距離は50cmにも満たないものだ。しかし
虎蔵達に少しでも近付けたことが嬉しく、その喜びを増やす為にシオリは短い歩みを連続
させる。それが、希望への歩みになると思いながら。
「シオリたん、その先は」
『分かっています、持ち場を離れるなんてしませんよ。でも、その代わりに』
 シオリは振り向き、指を振った。
『歌いましょう』
 タクトのように規則正しく、しかし流れる音に合わせ、
『世界を救う戦いをしている人に、少しでも力を与えれるように』
 シオリの眼前、『シオリたん命』と書かれた鉢巻きを巻いた局員達が頷いた。
 そして口を開く。
 発音はラだったりフだったりするものの、意味は変わらない。音程も声の質も全て違う
ものだが、男女問わずに奏でるのは戦っている物へと送る戦の讃美歌だ。ここで負けては
いけないと、自分達を勝ちに導いてほしいと、そして世界を守ってほしいと、その想いを
込めて彼ら、彼女らは音を紡いでゆく。
『勝って、下さいね』
 一言発し、シオリも目を閉じ、歌を奏で始めた。
236 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:34:06 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

『ムツエ様、ムツエ様ァ!!』
『えぇい、近寄るな!!』
『ムツエちゃん、モテモテね』
『違う、これは違うんだミク!! 某はミク一筋で!!』
 マナミから逃げながら通信機に叫びを続けていたムツエは、不意に足の動きを止めた。
その隙にマナミが抱きついて懐へと手を伸ばしてくるが気に留めず、
『これは?』
 向いた方向は西、ミクの居る方向だが意識はそれの手前に向いている。
『リリィ殿とリィタ殿か』
『歌、ですわね』
 『増量』と書いた札をマナミが投げると、音が増した。
 聞こえてくるのは虎蔵の叫びや連続する金属音、それをも楽曲の中に取り入れたような
演奏や、それに合わせて流れてゆく二人の少女の歌声だ。
『綺麗な歌声ですわね』
『そうだな』
 その場に居る存在、機械人形や人間を問わず、全ての存在が聞き入っていた。増加され、
鮮明になった音の群れを楽しむように、万を越える視線と意識が一つの方向に向いている。
余計な言葉を発する者は殆んど居らず、誰かが何かを口にしても『綺麗』などと短く感想
を送るだけだ。それ以外は無粋だと、そう沈黙で言っている。
 その中で、動く者が居た。
 動きと言っても単純で小さなもの、口の開きという僅かな動作だ。
『強く、温かいな』
 あくまでも音を邪魔しないように小さく呟いた後、発せられたのは逆に強い音。
『ラ』
 歌う。
 流れてくる音に合わせ、数小節だけ歌を紡いだ。
『いや、某も参加したくなったが、歌というのは難しいでござるな』
 振り返り、照れたように頭を掻き、
『しかし楽しく、快い。誰か、この音痴に付き合って下されよ』
237 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:35:56 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

 ミクは無線機から流れる音と歌声を聞いていた。
 東から聞こえてくる僅かな音よりも強く聞こえる同胞達の声は、今までに聞いたことの
無かったものだ。緊を無くし、伸びやかに発せられる快の声。
『考えてみれば、こうして歌ったことなんて無かったかも』
 記憶にあるものは戦の為に作られたという苦い思いや、研究所を抜け出し、大戦のとき
に暴れていたという争いの記録だ。その後も山奥で旅館を経営してはいたが仕事に追われ
だり、外敵や追っ手に警戒をする毎日で、殆んど安心する時間が無かったような気がする。
ムツエと二人で居た時間は少しは休めたものの、これとは明らかに違うものだ。
『皆さん、大変お疲れとは思いますが、もう一度働きましょう』
 視線を回し、全ての機械人形に目を合わせ、
『私達機械人形には必要のない、休みという大変重要で難しい仕事です』
 数秒。
『これは自由参加、と言うより私の我儘です』
 ですが、と前置きして、
『自由な歌、というものに参加したいという者が居たら協力して下さい』
 旅館の仕事の一つとして宴会の設定や盛り上げる為の演出があった。だがそれは仕事の
一貫として行われていたもので、機能の一つを使って歌っていたものだ。
 今回はそれが無い。
 純粋に、声と感情を使って奏でるものだ。
 それを自覚しながら、ミクは声を出した。
 人に聞かせる為のものではなく、自分が歌いたいと思い発するもの。
 それは全ての機械人形が同時に発し、いきなりの大コーラスとなった。初めてのことに
一部音程がずれている者が居る、調和を無視して飛び抜けて声の大きな物も居る。しかし
それを悪いことだとミクは思わない。寧ろそれが醍醐味だと、そう考える。
 ばらばらな音の組み合わせを楽しみながら、ミクは声を発した。
 これからも何度でも歌えると、そう信じながら。
238 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:37:24 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

「この声、リィタちゃんだよな。スゲェ、何かそこらの歌手より上手いんじゃねぇか? 
特に今のフレーズ、フフンフーンってところ。畜生、レコーダー持ってくりゃ良かった!!」
「結構良い声してるじゃん、ま、あたしには及ばないかもしれないけどさ」
「黙れアバズレ、キサマがリィタたんを越えることが出来る訳ないだろうが!! あの天使
のようなリィタたんと貴様みたいな溝鼠、比べるのも失礼だボケが!!」
「良いなぁ、リィタたん。リィタたんは俺の嫁」
「お前、それヘドロさんが親父ってことだぞ? しかも嫁なんて言った日には真っ二つに
されるんじゃねぇか? あの人、ちょっと身内を見る目が尋常じゃねぇんだぞ?」
「ほら、俺達も歌おうぜ。あんなガキが命張って歌ってるんだ、ここで俺達大人が黙って
いたら格好悪いだろ。よし、ここは第7番監獄都市管理局宴会部長の俺が」
「いや、リィタちゃんに良いところを見せるのは俺だ。そして俺に惚れて、この戦いの後
婚姻課に直行だ!! やべぇ、何がやべぇって初夜から始まるミラクルタイムだよ!! 俺の
マグナムとサイズが合わなくて……でも素股とか足コキとかでもそれはそれで良し!!」
「いえ、私よ。女の子同士の恋愛も悪くないじゃない? つうか男なんかに任せておけん、
ここは女の子同士が絶対正義の筈なのよ!! だからキンタマは皆諦めなさい!!」
「そんな下品な女にリィタちゃんが引っ掛かる訳ないだろ? つうか女の子って年か?」
「やはり、ワタクシが一番ふさわしいのではないですか? その、受けでも責めでも対応
出来る上に、性別も女なので。ふふふ、リィタは永遠にワタクシのもの」
「お前が一番アウトだよ!!」
 無数の声が飛び交っているが、結論は一つだ。
「こっちも歌わなきゃな、あの小さな空の騎士の為に」
 そして、大合唱が始まる。
239 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:40:07 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

 管理局の地下、そろそろスケッチブックを使いきろうかというところでサユリは視線を
上に向けた。軽く頭を揺らし、手に持ったクレヨンでリズミカルに紙を叩く。
「おうた」
「どうしたの?」
「おうたがきこえるの」
 薫は耳を澄ましたが、何も聞こえない。
 当然だ、ここは地下深くにある避難用のシェルターだ。地上での出来事などはこちらに
及ぶ筈もないし、大雑把にくくってしまえば衝撃波の一種である音など途中で完全に遮断
されてしまう。だから薫は首を傾げたが、サユリの目には嘘を吐いている色などない。
「誰が歌っているの?」
 疑問を解消する為に聞いたが、対するサユリも首を傾げた。
「みんな、みんなうたっているの」
 皆、とはどのような意味だろうか。
 再度首を傾げたとき、無線機に連絡が入った。
『薫さん、歌が聞こえてきます』
 その声の後ろ、まるでBGMでもかけているように大合唱が聞こえてきた。音が明確に
なったことで薫はサユリの発言の意味を理解し、サユリは満面の笑みを浮かべた。
「みんな、うたってる!!」
 音が聞こえればリズムも取れる。サユリは先程のような曖昧なものではなく、通信機を
経由して流れてくる音に合わせて体ごと揺らし始めた。音程が僅かにずれたハミングをし、
共に歌おうと視線で訴える。
「そうね、虎蔵ちゃんが頑張っているのよね。もちろん、他の皆も」
 薫が歌い始めると、それに同調するように声が広がり始めた。
 最初はシェルターの中で口を開く者が現れ、そして通信機の向こうからも声が響く。
「みんな、ぱぱに『がんばって』っていってる」
 歌詞は存在しないが、伝わるものがあったのだろう。
「ぱぱ、がんばって」
 そう改めて口にして、サユリは立ち上がり、幼いハミングを続けた。
 声が、響いてゆく。
 滅びの担い手と戦う者、世界を守る者へと向かって。
240 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:41:41 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

「音が」
 虎蔵は音が伝わってくるのを感じた。
 自分の背後、リリィとリィタが発しているものだけではない。
 右から左から、前から後ろから、空から、自らを囲むように、
「違うな」
 虎蔵を囲んでいるのではない。
 この中央地区を、否、第5番監獄都市全体を包むようにして音が満ちている。しかも、
どれもが同じようでいて全てに違う印象を受けた。ある方向の歌は勇気に満ちているし、
ある方向の歌は繋がりに満ちている。ある方向の歌は楽しんでいるように聞こえてくるし、
ある方向の歌は守っているように聞こえてきた。
 その中で一番強い意思を受けたもの、それは南から聞こえてきたものだ。
「サユリ」
 虎蔵が口にしたのは、彼の娘の名前。
 声を聞き分けることなど不可能だ。全体で六万を越える声での合唱、南に数を絞っても
人員は二万を越える人数の中での一つだ。恐らくシェルターの中で歌っているということ
を考えれば、届いているというのかという疑問すら発生する。
 だが虎蔵は、はっきりと聞いていた。
「サユリに応援されたら、こりゃもう」
 只でさえ短いDr.ペドとの距離を詰め、
「絶対に応えなきゃならねぇよな!!」
 ブレードを鎚の動きで振り降ろす。
『馬鹿な、応援で力が増すなど』
「馬鹿じゃありませんよ」
 答えたのはリリィだった。
「このオブジェ、音叉だったみたいですね?」
 震えているオブジェを五段の光環が囲うように、リィタとリリィは移動していた。
「これ、共振しているんですよ。音を広げたり、そして集めたり」
 注意深く見れば気付いただろう、オブジェが曲に合わせて振動の強弱をつけていた。
「音声プログラミングは当然知っていますね? 声質や音程、強弱によって対応したキー
を打ち込むものです。まぁ、これは言うまでもないでしょうが」
 リィタの声をBGMに、リリィは声を続ける。
241 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:43:10 ID:8b0dYxwI
二千のキーを同時に叩いているということだ。
「これを組み合わせれば出来るのは」
 二人の運指はテンポアップ、それは視認不可能な程になっていた。
 そして高速配置による声の群れで出来るのは、膨大な量のプログラムだ。
 実行のキーを二人同時に叩いた瞬間、再び押されて始めていた虎蔵の動きが、とうとう
Dr.ペドを凌駕した。降りかかる閃光の嵐を身の反らしで避け、ナイフの連撃をステップ
を踏むような足運びで回避。虎のようにしなやかな動きで出来るのは、光のワルツだ。
「リリィ、リィタ、ちょっと格好良いとこ見せてやるぜ?」
「私達の協力のお陰でしょう?」
「虎蔵さんもリリィも、こんなときまで妙な強がりは止めて下さい」
 挑発、呆れ、苦笑。
 だが全員の顔に共通して浮かんでいるのは勝てるという意思と、油断のない余裕だ。
「征くぜ、変態幼女」
 振り降ろされたナイフを右へのサイドステップで避け、その勢いを利用してのターン。
腰だめに構えたブレードをターンの勢いに任せ、遠心力を利用してぶち当てる。
「刻め!!」
 刻む。
「穿て!!」
 穿つ。
「響け!!」
 響く。
「鳴らせ!!」
 鳴る。
「時の記憶に名を残せ!!」
 倒す、という意思を前面に押し出した刃を、力と流れを利用して強引に放つ。そこから
生まれてくるのは、空白や隙という時間の存在しない、光の速度での超連打だ。
 止まらない。
『おのれ』
 止まらない。
『虎蔵め』
 一歩踏み込み、
「これで終わりだ」
 間を開けて放たれたのは袈裟掛けの一刀。
『まだ、終わらんよ』
『LastNight:Open;(終夢展開!!)』
 Dr.ペドが叫んだ直後、その体は崩壊した。音もなく崩れ、細分化した黒の体は暗闇の
中へと溶け込んでゆく。夜の結晶が、元の場所へと返るように。
242 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:44:19 ID:8b0dYxwI
「これで」
 余韻を残してキーをゆっくり停止させながら、リィタは呟いた。
「勝った……んですね」
「いや、まだみたいだ」
 何故、という疑問の表情をリリィとリリィが浮かべたとき、轟音が響いた。
 発生源は頭上、星の光が消えた空だ。
「これは……!!」
「あの爺、最後にとんでもないモン残していきやがった」
 星の光が消えたということは、遮蔽物が出来たということだ。普通なら雲や霧のような
ものだが、空にあるものを見て虎蔵は表情を苦いものへと変えた。
「この都市ごと消すつもりか?」
 天葢のように見えるそれは、全長を捉えきれない程の巨大な浮遊基地だ。
「おい、俺の残りは何秒だ?」
 突然の言葉にリリィは頭を傾げ、
「残りは……まさか!?」
「止めて下さい、無茶です!!」
「良いから答えろ」
 一拍。
「残り、十秒です。目標の高度は千五百」
「そんだけありゃ、充分だな」
 震える声とは対照的に、虎蔵の声はあくまで明るいものだ。不安など無いのだと、そう
示すように。だがこれからの行動は、決して楽なものではない。それはリリィもリィタも、
何よりそれを行おうとしている虎蔵自身が理解していた。生き残る確率は限りなくゼロだ。
 しかし虎蔵は、
「必ず帰ってくるからよ、待っててくれや」
 笑みを浮かべ、ブースターを稼働。
「待っ……」
「俺が嘘吐いたことあったか?」
 リリィは首を振り、しかし、
「でも、そんな」
 制止の言葉を打ち消すように爆音を響かせて空へと向かい、一瞬で虎蔵の姿は見えなく
なった。残っているのは二人の月の魔女の影だけだ。
 数秒。
 夜の闇を払拭するような、強い虎毛色の光が二人を照らし出した。
243 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:46:00 ID:8b0dYxwI

 ◇ ◇ ◇

 先日の戦いから三日、リリィはオブジェの前に立っていた。戦闘の余波で地面は捲れ、
付近のものも全てが壊れている。唯一、辛うじてではあるが形を保っているオブジェだが
全体にヒビが入り、砕けていないのが不思議な状況だ。それ故この場に近寄る者は皆無で、
その小柄な影を空間に強く浮かび上がらせていた。
「虎蔵さん、いつまで待たせるつもりですか?」
 空を見上げ、呟く。
 軽音。
 小枝を踏む音に一瞬だけ笑みを浮かべたものの、音の主を見て、表情はすぐに落胆した
ものへと変わった。吐息する力も無いのか、リリィはただ目を背ける。
「リリィ、もう帰ってきて下さい。皆心配してますよ」
「虎蔵さんの心配はしないんですか?」
 冷たく吐き出された言葉に、リィタは頭を掻いた。
「生きていると信じていますが、ここに居てどうなるというものでもないでしょう?」
「目印になります」
 子供のようなつまらない理屈に、リィタは舌打ちを一つ。
「ダダをこねないで帰ってきなさい!! 碌に食事も取っていないみたいですし、そのクマ
を見ると一睡もしてないのでしょう? ほら、早く帰りますよ!!」
「嫌です。私は『一人でも』大丈夫ですし、『一人でも』待ってますから。あ、皆さんに
心配は要らないと伝えて下さい。それと、食事は私と虎蔵さんの二人分用意して下さい」
 皮肉めいた、しかし素直な感情の発露に、我慢の限界が突破した。
 リィタはリリィの腕を掴み、
「良いから、帰りますよ!!」
 理屈すら用いず、動かそうとする。
 しかし、動かない。
 三日間の疲労と空腹が体を弱らせている筈なのに、それどころか身体能力自体がリィタ
と比べて遥かに低い筈なのに、足に根でも生えたかのように微動だにしないのだ。
 それでも無視を出来ずに腕を引こうとし、
「待ちます!!」
 腕を振り払われ、オブジェに激突する。
244 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:47:51 ID:8b0dYxwI
 リィタが涙を浮かべ、強打した後頭部をさする中で、動くものがあった。衝撃を受け、
崩れかけだったオブジェが完全に崩壊しようとしている。
 それは、二人を狙うように倒れ込んできた。
 鈍音。
 鉄の雪崩が二人を押し潰そうとした刹那、響いた音がある。何者かが瓦礫を強く打ち、
吹き飛ばした音だ。逆光に照らされたシルエットは刀を構えた背の高いもの。
「馬鹿野郎、こんな危ない場所に立ってんじゃねぇよ」
 視界に入ってくるのは見慣れた姿。長身の体は黒スーツに包まれているが、その上から
でも鍛え込まれているのが分かる。その上に乗っているのは刈り込んだ黒髪が生えた頭部、
その少し下には眉根を寄せ、唇の端を歪めたシニカルな表情が浮かんでいる。
「とら、ぞうさん?」
 リィタの呟きに、虎蔵は軽く頷いた。
「虎蔵さん、虎蔵さん!!」
 名前の連呼に一々応えるように頷き、三十回目をカウントしたところで虎蔵はリィタの
頭を乱暴に撫でた。わ、という声を出しながらも虎蔵にされるがままになっていたが、
「あ、そうです。今サユリちゃん呼んできます!!」
『MoonBrea:Enter;』
 言うや否や、リィタは装甲を展開。リリィに僅かに目配せをした後、高速で飛び去った。
 後にはただ、静寂と二人の人影が残される。
 沈黙。
「サユリか、早く会いてぇな。禁断症状で死にそ……何だよ?」
 未だに言葉を発しないリリィだが、一つの意思表示を見せていた。
 俯き、顔ごと視線を反らしているが、掌が白くなる程に強く裾を掴んでいる。
「しかし、お前も薄情だな。せっかく戻ってきたのに、挨拶も無しか」
 分かりやすい挑発だが、それでもリリィは口を開かず、ただ 拳の力を強くするだけだ。
どうしたものかと虎蔵は頭を掻き、煙草を取り出して火を点ける。そう言えばDr.ペドと
戦う前に煙草でも何か言われたような気がしたが、リリィはそれにも口を何も出さない。
 煙草の火が進み、燃える小さな音すらも聞こえる程の静寂の中、
「どれだけ」
 それにすら負けそうな声で、ぽつりと声が落ちた。
245 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:49:17 ID:8b0dYxwI
「どれだけ、人を心配させれば気が済むんですか?」
「心配してくれたのか?」
「しましたよ」
 戦闘のときとは違い何の照れも挟まずに出てきた言葉、それに驚いてくわえていた煙草
を落とした。まだ半分も吸っていなかったが、それよりも今はリリィの言葉が頭にある。
「どれだけ、もう、この駄目中年!!」
「すまん、あの爆風で知らない場所まで飛ばされてな。聞いたら何と第7番監獄都市近く
まで行ってたらしくてよ、ワープ装置使おうにもこっちの都市のは封鎖されてるだろ? 
だから近くまで送ってもらった後で必死こいて山を歩いたり野生の獣と戦ったりしながら」
 衝撃。
 脇腹を殴るリリィの目尻に浮かんでいたのは、大粒の涙だ。
「そんな、だったら連絡の一つくらい」
「すまん」
「でも、虎蔵さんが帰ってきてくれただけで私は……」
「ぱぱー」
「おう、サユリ!!」
 無理矢理リィタの腕を振り切ってきたのだろう。リリィが恨みがましい目を向けると、
リィタは気不味そうに頬を書いて露骨に目を反らした。
「ぱぱー、おかえりなさーい」
「おう、ただいま」
 リリィの存在を意識から消し飛ばしたかのように娘と戯れる虎蔵を見て、リリィは足を
強く地面に打ち付ける。しかし虎蔵は気付くことなくサユリを抱き締め、振り回し、頬を
擦り付けては娘の見えないところで瞳をヘドロのように濁らせるだけだ。
「あぁ、もう。何でこんな!! 決めました、決めましたよ!! サユリちゃん、今から良い
ものを見せてあげますからしっかり見ていて下さい!! 大事なことです!!」
 大きく腕を広げ、リリィは深呼吸を一つ。
 サユリの体を挟むように虎蔵の体に密着すると、ネクタイを掴んで首を固定した。逆の
手で目付きをして強引に瞼を閉じさせ、また自らも目を閉じて背伸びをする。
「何をしやが……」
 『る』の発音をする前に、声が途切れ、代わりに鳴ったのは前歯のぶつかる固い音。
 慌てて虎蔵が飛び退くと、耳まで紅潮させ、目を背けた少女の姿があった。
「おま、これ、な!?」
「もう、居なくならないで下さいね?」
 数秒。
 青空の下、虎蔵は絶叫した。
246 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:51:17 ID:8b0dYxwI
セ「『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』質問コーナー、今回は八個のレスと一枚の葉書
を紹介するわよ……これも最後ね。ゲストはDr.ペド、弟さんは最悪だったわ」
ペ『儂も気分は最悪じゃ、もっと若い娘を出さんか』
セ「はい、鏡」
ペ『うっひょう!!』

>>194
セ「このアイディアは、似たようなものがあったのよね?」
ペ『うむ、病弱進化サユリちゃん型じゃの。しかし遺伝子的に虎蔵君が半分入っていると
気付き、こりゃ無しだと判断したのじゃ。あんな中年、もう嫌じゃ』
セ「あなたは爺よ?」
ペ『儂は良いんじゃよ、自分のことじゃしの』
セ「そうなの……自己中ね」
ペ『ふん、爺は正義』

つ[]全てを壊す〜
セ「これもアリか、って話だったのよね?」
ペ『うむ、最初のローリィちゃんが多数砲頭キャラだったしの。最初と最後の敵を被らせ
完結させるのも悪くないからのう。その名残がブーケじゃの』
セ「でも某キャラはビットみたいなの使わないのよね」
ペ『グレネード砲を使う花嫁はアニメで見たがの、しかも幼女』
セ「あれは年齢的にアウトじゃないの?」
ペ『見た目が幼女だったから良いんじゃよ』

>>209
セ「熱い、と言うか王道ね」
ペ『作者それしか書けんからのう』
セ「『監獄都市シリーズ』では意識しているから余計にね」
ペ『そんな設定があるから仕方ないかもしれんな』
セ「滅びの担い手の話ね?」
ペ『うむ』
セ「こんなのに滅ぼされなくて良かったわね」

>>210
セ「思い出すわね、虎蔵さんと出会ったときのこと。あのときはチンピラに絡まれて……」
ペ『ババアはすぐに浸るから困る』
セ「そのとき颯爽と登場したのが虎蔵さんだったわ、格好良かった」
ペ『話を聞け』
セ「今でも格好良いわ、それをあんな小娘に」
ペ『おーい』
セ「誰が悪霊よ!!」
ペ『儂にキレんな!!』
247 名前: 『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』 [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:52:17 ID:8b0dYxwI
>>211
セ「どんな曲かしら?」
ペ『儂は知らん』
セ「因みにBGMと言えば、エピローグの辺りからは決めてあるのよね?」
ペ『作者的には、melody.のLoveStoryらしいの』
セ「連載を決めたときから決定していたのよね?」

>>213,214
セ「作者に代わって、どうもありがとうございます。頑張りました、何度会社で朝焼けを
見たことでしょうか? でも、貴方達の励ましのお陰で完結出来ました。待って下さった
分に応えることが出来る内容だったら、とても嬉しいです」

>>215
セ「職人さんが増えるのは嬉しいことね」
ペ『そうじゃの』
セ「これも終わって『ツルとカメ』も終盤へ。このスレの未来を支えるのは貴方よ!!」
ペ『安い煽り文句じゃの』
セ「冗談は抜きにして、頑張って下さい。期待してます」

>>226
セ「GJ!!」
ペ『千夏さんの喋り方は、作者のツボじゃからの』
セ「強くて誇り高くて、みたいなキャラもね。あと照れ屋で」
ペ『続き、期待しているぞい』セ「今回は、と言うかこれで全部終わりね。以下は作者のコメント」

長く続いた『暗黒刑事ヘドロの魔法幼女大作戦』も終わり
最初は只のネタ企画だったのに、気付けば1クールも書いてしまいましたね
これまでのレス、とても励みになりました
稚拙なお礼しか出来ないのが心苦しいですが、これを感謝の言葉とさせて頂きます
次からは『ツルとカメ』、ラストに向けて頑張ります
248 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:53:57 ID:8b0dYxwI
終わり!!


劇場番、書きたいなぁ
249 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 00:58:04 ID:8b0dYxwI
>>233
うわ、失敗
最初に下が入ります


 そこから表れるのは無数のブーケだ。
 散ったそれらは天体状に虎蔵を囲み、爆音と共に放つのは黒の光による貫きの力による
一斉総射だ。それらは夜の空間を更に黒く染め、虎蔵を包み込む。
「させませんよ!!」
 リリィの運指が加速し、
『TigerWing:(虎壁改展開!!)』
250 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 01:02:16 ID:8b0dYxwI
>>241
これも失敗
最初に下が(ry


「現在歌っているのは六万程の局員と、二千を越える機械人形。合計して六万二千の声が
存在し、そしてこのオブジェの力によって私達のところへと集まってきています。貴方程
の方だったら、これが何を意味するのか考えなくても分かりますね?」
 それはつまり、同時に六万
251 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 01:43:38 ID:6daY+4qV
>>248
一番槍GJ!
長い間お疲れ様でした。劇場版是非やっちゃってくださいwww

「太陽は昇る」ですが、これに収録されてる曲です。
どれが一番良いかはちょっと選べませんでした。
ttp://www.youtube.com/watch?v=hfBl5UyFLOk
ttp://www.youtube.com/watch?v=ugxLyzAqLgM
ttp://www.youtube.com/watch?v=VaqaeHE-Ci8
ttp://www.youtube.com/watch?v=VnDJRHf5_Mw
252 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/05(木) 01:50:37 ID:r3epHhs6
燃え上がってしまうから困る


GJ!!!
253 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/07(土) 02:07:35 ID:LTKVtJ1s
GJ!!!!!!!!

ロボ氏らしさが全開なラストに燃えた
エピローグの目突きをするリリィにも萌えたww
ぶっちゃけツンデレ要素薄かったけど、個人的には楽しかった
『ツルとカメ』にも期待してます
254 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/07(土) 06:42:53 ID:qF8F0BcQ
保守
255 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/09(月) 02:24:13 ID:oPLd+SgQ
ツルカメが楽しみage
256 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:40:26 ID:9hVyJK2A
投下します。第4回です。
257 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:42:03 ID:9hVyJK2A
 藤森家の庭は、庭の入り口から母屋の玄関まで石畳が続いている。
 石畳の長さははじめの歩数にして20歩、約10メートルほど。
 石畳は庭全体を覆う芝生を真っ二つに分けるように存在していた。
 はじめは石畳の上を歩き玄関までつくとドアを開けた。
 ドアはかなり大きめに作られている。縦にも横にも長い。
 成人女性2人分の肩幅ほどにドアの横幅はあった。
 はじめの父親が言うには、玄関が広くて綺麗な家は福を呼び込みやすいらしい。
 その言葉に倣って玄関は広い。だからドアも大きめに作られている。

 今でこそ難なく開けることができるが、小学生のころのはじめにとってこの玄関を開けるのは
なかなか重労働だった。
 ドアノブまで手が届かない小学校低学年だった頃はドアが鉄壁のように見えていた。
 親が留守にしているときなどは大変だった。
 ドアに鍵がかかっているから、開けようとしたら自分の手で鍵を解かなくてはいけないのだ。
 さらに悪いことに、はじめの両親は昔から家を留守にしがちだった。
 結果的に、小学生だったかつてのはじめは家に帰ってくるのが億劫になってしまった。
 もっとも、今では億劫になることなどない。
 家に帰ったら同居している使用人であり従姉であり恋人である女性が待ってくれているからだ。

 藤森やよいの髪型は、肩まで伸びる艶やかな黒のショートヘアーだ。
 動くたびに滑らかに動く髪は、統率のとれた部隊のように一本たりとも乱れない。
 頭を下げたらやよいの顔を隠し、頭を上げたらまた元の状態に戻る。
 着ている服は、一般的に言うメイド服というものだ。
 はじめやはじめの両親に言いつけられたわけでもないのに、やよいは女中服を身にまとっている。
 もしかしたら、はじめが作った服だから気に入って着ているのかもしれないが、真相ははじめも知らない。
 はじめは、自分の作った服を誰かが着ている事実があればそれだけで嬉しいのだ。
 変なことを言って、二度とやよいのエプロンドレス姿を見られなくなっては困る。
 きっと、卓也も同じ事を言うだろう。

「おかえりなさい、はじめくん。今日は結構遅めでしたね」
「ただいま。今日はちょっと買い物に行っていたから遅くなったんだ」
「7時になったらご飯ができますから、部屋へ呼びに行きますね」
「うん」
258 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:44:54 ID:9hVyJK2A
 やよいとのやりとりの後で、はじめは部屋に向かった。
 部屋のドアの前に立ち、ドアノブを見る。
 ドアノブとセットになっていた鍵穴は、今はもう存在しない。
 鍵穴があった場所は木製のドアの一部になっている。
 数ヶ月前、はじめを連れ出すためにやよいが鍵ごとドアの一部を破壊したからだ。
 それまで、はじめの部屋のドアには鍵をかけられるようになっていた。
 年頃の男子高校生なら隠したいものがあるというのも理由のひとつだが、
もっとも大きな理由は誰も部屋に入れたくない、というものだ。
 プラモデルに限らず、趣味を持っている者は自分の領域を荒らされたくないと思っている。
 はじめも例に漏れず、部屋に誰も入れたくない人間だった。数ヶ月前までは。
 今ではやよいとマナ、どちらかが突然部屋に入ってきても何も言わない。
 鍵をかけないほうが、逆に開き直れて気分が楽だとはじめは思っていた。

 はじめはドアを開けて、部屋の中にいる人物を確認した。
 同居している使用人であり幼馴染であり恋人でもある女性、古畑マナだ。
 はじめがいつも使っているベッドの上で横になり、寝息を立てていた。
 マナの髪の毛は、やよいとは比べ物にならないくらい長い。
 普段リボンを使ってポニーテールにまとめている髪の先端は、腰を過ぎる位置まで伸びている。
 今のようにベッドに寝ていると、長い髪は小柄なマナの体を大きく見せてしまう効果を発揮する。

 マナが着ている服もやよいと同じデザインのメイド服だ。
 同じ人間が作ったのだから同じになるのは当然だが、サイズは全く違う。
 全体的にマナの方がサイズは小さい。特に差のついているのが胸囲だ。
 はじめは2人のメイド服を作ったとき、やよいとマナに身長だけ聞いた。
 あとのサイズは目測だ。だが、完成した服は2人の体にぴったりのサイズだった。
 そのときのやよいの胸囲は、マナのものとは大きな差を開けていた。
 例えるなら、プチトマトとみかん。
 一回りも二周りも大きい、というやつだ。
 当然、はじめは2人のスリーサイズを把握している。
 しかし、誰にも教えたことはない。これからも言うつもりはない。
 特に卓也には土下座されても脅されても言わないだろう。

 はじめはかばんを床に置いて、椅子に座りながらマナの寝顔を観察した。
 自分より2歳年上だとはとても思えないほど幼い顔立ち。
 服で隠し切れない部分から見える肌は白く、閉じられた瞼から伸びたまつ毛は長く、
薄く開いた上下の唇は小さかった。
 ときどきうめきながら体を揺する。そのむずがるような動きは愛玩犬にも見える。
259 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:47:16 ID:9hVyJK2A
 ずっと見ていたくなる気持ちを戒めて、はじめはマナの肩を揺すった。
「ただいま、マナ」
「ぅ……ん……みゅぅ……」
 マナは、はじめに抵抗するように眉根を寄せて小さな声をだした。
 はじめはまたマナの肩を揺する。今度は声をかけながら。
「起きろって、もうすぐ夕食の時間だぞ」
「うー……ん……。あ、おはよ。……じゃなくておかえり、はじめ」
「ただいま」
 はじめが返事をすると、マナは寝ぼけ眼のままはじめの顔を見つめた。
「んん……? なんではじめが私の部屋にいるのよ?」
「それはこっちの台詞。なにやってるんだよ、僕の部屋で」
 マナはゆっくりと首を動かして、周囲の状況を確認しだした。

「ここ、はじめの部屋だね。私なんでここにいるんだっけ……」
「それは僕が聞きたい」
「あ。そうそう、はじめの部屋の掃除をしてたんだった」
「そうだったのか。ありがとな、いつもいつもやってくれて」
 はじめの部屋の掃除はマナが担当している。
 もっとも、マナが入ってくるとわかっている以上部屋を散らかすことはできない。
 そのためあまり汚れていないのだが、マナは毎日はじめの部屋を掃除する。
 今日のように、帰ってきたらマナがベッドに寝ているのはよくあることだった。

 はじめが礼を言うと、マナは体を起こしてベッドから下りた。
「気にしなくていいわよ。仕事仕事。そうじゃなきゃ誰がこんなシンナー臭い部屋を掃除するもんですか」
「やっぱりシンナーの匂いする? ちゃんと換気扇を回しているんだけど」
「室内の物にも匂いは染み付くの。……ま、やめろとは言わないけどね。言っても無駄でしょうし」
「うん、無駄だね」
 断言を聞いて、マナは俯いてため息を吐きだした。
 リボンでまとめられた髪を揺らしながら、呆れたようにかぶりを振る。
「それでさ、あんたこの趣味をずっと続けていくつもり? 止めろって意味じゃないからね、ただの質問」
「まだ考えているところだけど……できたら模型に携わる仕事に就くつもり」
「ということは、さらにこの部屋はシンナー臭くなっていくわけね……」
「うん。けど、もし嫌だったらこの部屋は掃除しなくてもいいよ。僕が……」
「だめ」
「僕が掃除をしても」
「不許可」
「だけどマナが」
「駄目と言ったら駄目!」

 マナが語気を荒くして、はじめに言葉を投げかける。
「この部屋は私が掃除するの!」
「そ、そっか。じゃあ、これからもマナにお願いしよっかな……」
「うん、それでよし」
 マナは満足したのか、部屋から出て行こうとする。
 扉を開けようと手を伸ばしたとき、勝手にドアが開いた。
260 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:51:52 ID:9hVyJK2A
「はじめくん。ご飯ができましたよ……あら、マナ?」
「あ……やっば……」
 マナがたじろいで、目の前に立つやよいから離れる。
 気まずそうな顔をするマナの顔を見て、次ににこにこと笑いながらも肩を震わせるやよいを見て、
はじめは首を傾げた。
 2人とも顔を合わせただけなのに、なんで変な顔をしているんだろう。
 もしかして喧嘩でもしたのか?

「マナ。昨日は、誰の番でしたか?」
「えーっとね、私だった」
「それでは、今日は誰の番だったかもわかっていますよね?」
「……はい」
「わかっていてやったということですか?」
「あの、これははじめの部屋を掃除していたら寝てしまったわけであって」
「マナの夕飯のおかずは抜き」
「ええっ?! やよい、私に死ねって言うの? やよいのご飯を食べなかったら私、死んじゃうじゃない!」
「では、その代わりに今から36時間はじめくんに接触するのを禁止します」
「えっ……それだったらご飯は食べられるけど……」
 マナは後ろでやり取りを見守っていたはじめを見た。
 ショーウインドウの向こうにあるおもちゃを見つめるような目がはじめに向けられている。

「どうかしたのか、マナ?」
「くぅぅっ……」
 数十秒かけて苦渋の決断を下したマナは、やよいと向き合った。
「今晩、おかず抜きでお願いします……」
「はい、よろしい。それでははじめくん、ご飯にしましょう」
「……あ、はい」
 突然話を振られて、はじめは生返事を返した。

 やよいとマナが揃って廊下を歩く。
 2人の後ろ姿を眺めながら、はじめは廊下を歩いていく。
 やよいの優雅な足運びとは対照的に、マナの足取りは重りでもついているかのように重かった。
 うなだれて、視線を床の木目に向けながら、マナは口を開いた。
「ねぇ……やよい。今日のおかずは何?」
「アジのから揚げ野菜あんかけです」
「あぁ、ぅぅぅ……今日に限って魚料理だなんて……」
 今にも涙を流しそうな顔をして、マナが呻く。
「はじめくん。今日はマナの分が余っていますから、たくさん食べてくださいね」
「はい」
 2人のやりとりに混じろうとして、マナは口を開いた。が、開いただけで声は出さない。
 やよいがおかず抜きと言ったら絶対におかず抜きになることは、よく分かっていたからだ。
261 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:53:43 ID:9hVyJK2A
 夕食後、はじめはやよいの淹れてくれたお茶を飲んでいた。
 居間に同席しているのはやよいだけ。マナはいない。
 マナは夕食の後ですぐに風呂に入り、自室に篭ってしまった。
 やよいの作った料理を食べられなかったのがよほど悔しかったのだろう。
「ねえ、やよいさん」
「なんですか?」
「マナが部屋に入っていただけで夕食おかず抜きって、なんで?」
「女同士で交わした約束があるからです」
「約束ですか」
「はい。約束です」

 はじめはやよいの言葉を聞いただけで、それ以上追求する気がうせた。
 やよいとマナが約束という言葉を持ち出したとき、たいていが自分に関わっていることがわかっているし、
2人の間で交わされている約束はあまりにも多い。
 藤森家の暗黙のルールのようなものだ。
 なので、はじめはあまり気にしないことにしている。
 できるなら、はじめも2人と約束を交わしたかった。
 『3日に1日、自分1人で眠らせること』。これがはじめの欲しているルールだった。
 しかし、はじめは2人に話を持ちかけられない。
 おそらく断られるだろうし、食い下がったところで2人の強硬な姿勢を見せられては
どうにもできないとわかっているからだ。

「はじめくん。聞きたいことがあるのですけど、聞いてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
 テーブルの上に湯飲みを置いて、はじめはやよいとテーブル越しに向かい合った。
 感情を抑えろと言われたように平坦な調子で、やよいは喋りだす。
「昨日会った酉島さんのことですが」
「ああ、千夏さんのこと?」
「……え?」
「え?」
 はじめはおうむ返しに聞き返した。
 やよいが何かに驚いている。やよいが驚くなど滅多にない。
 見ればやよいの表情は少しだけ固くなっていた。
 若干、本当に若干、親しい間柄の人間だからわかる程度に眉根を寄せている。

「今、酉島さんのことをなんとおっしゃいましたか?」
「千夏さんって言ったけど……どうかしたの?」
「いつのまに名前で呼ぶほどの関係になったのですか?」
「今日から」
 正確には数時間前からだが、そこまでは言わない。
「そう……ですか。只者ではないと感じていましたが、まさかここまでだとは……」
「? やよいさん?」
「はじめくん。私はじめくんを……」
「はい」
 やよいは軽く身を乗り出して、はじめを見つめた。
 勢いに押されるようにしてはじめが体を後ろにそらす。
「……いえ。なんでも、ありません。お茶を片付けてきますね」
 やよいは何かに耐えるように表情を固くして、お盆に急須と湯飲み茶碗を乗せて台所へ向かった。
262 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:55:47 ID:9hVyJK2A
*****

 一夜明けた翌日の朝。はじめは少しだけ緊張していた。
 なぜかというと、大学に向かって歩いているはじめの3歩後ろにやよいがついてきているからだ。
 いつも通りの格好、はじめが作った女中服のままで。
 カジュアルな服装で出歩いてくれればいいのに、メイド服という目立つ服装をしているせいで
はじめの方から声をかけることができない。
 声をかけても問題ないだろうが、やよいがこんな奇行を行うのは初めてなので、
なんと言って声をかけたものかわからなかった。
 怒っているのか、それとも喜んでいるのか。
 はじめを尾行しているつもりなのか、何か用事があってそうしているのか。
 大通りに入って何気なく振り向いたときに見たやよいは、素の表情だった。
 やよいの無表情は長い付き合いのあるはじめにも感情を読み取らせない。
 もちろんやよいの目的などわかるはずもない。
 昨日から一週間前まで記憶を辿ってもやよいに何かした覚えのないはじめは、
やよいが無言で後ろからついてくるという状況に言いようの無いプレッシャーを感じていた。

 はじめが大学の正門前についたとき、やよいが駆け寄ってきた。
「はじめくん、今日もしっかりお勉強してきてくださいね」
「うん。……あの、なんで今日やよいさんがついてきてるの?」
 はじめの問いに対して、やよいは即答しなかった。
 じっとはじめの目を見つめ、しばらく無言で立ち尽くす。
「あの、やよいさん?」
「お買い物に行くついでに、はじめくんを見送っていこうかと思いまして。
 はじめくんの通う大学を見てみたかったですし」
「それならちゃんと着替えてからにしてほしいな……」
 はじめは周囲の好奇の視線と囁き声を感じながらそう言った。

「この服で出かけないと、わからないじゃありませんか」
「なにが?」
「あの人はまだ、私のこの格好しか見たことがないでしょうし」
「あの人って、誰?」
「この格好で出歩かないと、牽制になりません」
 珍しくやよいと会話が成り立たない。
 無意味にはじめを尾行してきたわけではないらしいが、それでも動機は不明だった。

 校門の周囲で、はじめとやよいを取り巻くようにして人が集まりだした。
 周囲の視線はやよいに7割、はじめに3割ほど割り当てられていた。
 やよいに向けられているのは羨望の眼差し。
 抜群のスタイルと整った容姿、さらにメイド服。
 注目が集まらない方がおかしい。
 はじめに向けられているのはいかがわしいものを見る視線だった。
 恋人にメイド服を着させるなんて。さらに大学に連れてくるなんて。
 といった感じのメッセージが視線に込められている。
 気まずくなり、汗までかきはじめたはじめは大学へ避難することを決意した。
「じゃあ、気をつけて帰ってね」
「はい。行ってらっしゃい」
 やよいは惚れ惚れするような仕草で、大学へ向かうはじめの背中に礼をした。
263 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:57:23 ID:9hVyJK2A
*****

 今日受講する講義をはじめが全て受け終えたころ、時刻は正午を差していた。
 普段ならばやよいの作ってくれた弁当を卓也と一緒に食べる時間だ。
 しかし卓也は午後からも講義を受けるらしく、1人でどこかへ向かってしまった。
 仕方なくはじめは1人で弁当を食べることにした。
 大学の敷地にはいろいろな場所にベンチが設置してある。
 食べる場所には困らないが、一人だけでベンチのある場所を占領するのは他の人に悪い。
 はじめは大学の外で弁当を食べることにした。

 大学を出て10分ほど歩くと、公園に到着する。
 今日は平日だから、公園の遊具で遊ぶ子供たちの姿はない。
 小さい子供たちがここに来るには、あと3時間ほどかかる。
 公園のベンチに座って食事を取ることに決めたはじめは、日陰になっているベンチに向かった。
 ベンチには先客がいた。
 はじめは人の姿を見た瞬間引き返そうかと考えたが、座っている人物を確認して考え直した。
「千夏さん」
「ん。ああ、はじめか。どうした、こんなところで」
「今日は大学が昼までだったから。ここで弁当を食べようと思って。隣いいかな?」
「ああ」

 千夏と少しの距離を開けて、右側にはじめは座った。
 バッグを開けてベージュの布に包まれた弁当箱を取り出す。
 布を解いて弁当箱を開けると、今日の昼食と対面だ。
 昼食の中身はサンドイッチだった。
 たまご、野菜とハム、鳥のから揚げがそれぞれ別のパンに挟まっている。
「酉島さんも食べる?」
「いや。私はいいよ」
「そう」
 はじめは手を合わせて礼をしてから、サンドイッチに手をつけた。
 たまごサンドから食べる。美味い。
 野菜とハムのミックスサンド、から揚げサンドも美味い。
 昼食を食べるたび、はじめはやよいに感謝する。
 美味しいお弁当を作ってくれてありがとう、と。
 やよいに料理を教えてくれた父にも、はじめは少しだけ感謝した。

 弁当の中身を空にしてから、はじめはペットボトルでお茶を飲んだ。
 そのころになって、ようやく千夏の様子がおかしいことに気づいた。
 さっきから千夏が一切話しかけてこない。
 千夏は両肘を腿の上につき、下を向いていた。
「千夏さん、どうかした?」
「いいや、どうにもしていないぞ」
「何か悩みごとがあるんなら、僕でよければ聞くけど」
「そうか」
 千夏ははじめの顔を見ずに短く応えた。
264 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/10(火) 23:58:18 ID:9hVyJK2A
「はじめ。父親の跡を継ごうと考えたことはあるか?
 仕事、地位、財産、なんでもいいが、どれかを継ごうと思ったことはあるか?」
「父さんの、跡……」
 はじめはペットボトルのキャップを閉めて、空を見た。

 この空のどこか向こうにはじめの父はいる。
 もしかしたら日本にいるかもしれないし、海の向こうにいるかもしれない。
 母親と再会して2人一緒にどこかでのんびりしている可能性もある。
 はじめの両親は、はじめにあまり連絡を入れない。
 最後に連絡があったのは大学に入学した4月で、それ以来何の音沙汰も無い。
 息子としては心配だからせめて月1回のペースで連絡がほしいとはじめは思っている。

 はじめの父親の職業は料理研究家だ。
 藤森家ではずっと前の先祖の代から料理の技を受け継いできているとやよいから聞いている。
 事実の裏づけはない。
 息子を金で雇った男達にさらわせるような父親だから嘘をついている可能性もある。
 だが、父親が優れた料理の腕を持っていることだけは事実。
 はじめ自身、父が料理番組に何度か出演しているのを見たことがあるのだ。
 父の跡、父の料理の技を継ぐことになったのはやよいだ。
 それははじめが父の跡を継ぐことを拒んだからだ。
 はじめはそのことを後悔したことは一度も無い。
 それだけは確かだった。

「僕の父さんは、料理人なんだ。本当は僕がその跡を継ぐはずだったんだけど、僕から断った」
「なぜだ?」
「理由は僕が模型にしか好奇心を見出せなかったから」
「他に、何か理由はないのか?」
「無いかな。僕は父さんのことを……うん、尊敬している……と思う。
 反発心とかそんなもので父さんの跡を継がないことにしたわけじゃないよ」
「そうか……」
 千夏は地面を向いたまま返事をした。
「では、はじめが父の跡を継がなければならない立場にいたとして」
「うん」
「……あ、すまん。そうじゃなくて、父の跡を継がなければ自分が駄目に、いや違う。
 父がはじめに強制をしてきたら……でもない。ああ、もう!」
 千夏は頭を抱えて首を振った。
 はじめは下を向いている千夏の顔を覗き込んだ。
 そこには、千夏の凛々しい顔つきはなかった。
 苦悶の表情。見えない痛みに耐えているようにはじめには見えた。
265 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/11(水) 00:00:30 ID:9hVyJK2A
「千夏さ――――」
 はじめが口を開くのと、千夏が立ち上がるのは同時だった。
 千夏は立ち上がるときにベンチから一歩離れていた。
 そのせいではじめに千夏の顔は見えていない。
「すまん、はじめ」
「? なんで謝って……」
「これから、私に会わないでくれ」

 千夏の言葉ははじめを突き放すものだった。
 振り返らずに歩き出す千夏を止めようと、はじめは立ち上がった。
「待って、千夏さん。なんで――」
 いきなり、どうして。
 友達になれると思っていたのに。
「ついてくるな! ついてこないでくれ!」
 千夏はそう叫ぶと、駆け出した。
 はじめも千夏の後を追いかけるが、足の速さでは千夏の方が圧倒的に上だった。
 はじめが公園の出口についたときには千夏の姿はすでに見えなくなっていた。

 追いかけることを諦めて振り返り、ベンチに戻る。
 さっきまで隣に千夏がいて会話をしていたというのに、一方的に絶交されてしまった。
 こめかみと顎の辺りに圧迫される感覚を覚えた。
 わけがわからない。悲しい。いきなりなんなんだ。腹がたつ。
 そんなとめどもない感情が湧き上がる。
 落ち着かなくて、座っていられなくなった。
 はじめはバッグを持ってベンチから離れた。
 太陽は雲に隠れることなく空に浮かんで地面を照らしていた。

 こんなときこそ雨でも降ってくれればいいのに。


------
第4回はここまで。次回へ続きます。
266 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/11(水) 00:41:52 ID:SqbH4MH1
wktkして待ちます。
267 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/11(水) 02:22:43 ID:PFLfzcc2
いつも通りに期待させてくれるなぁ・・・
超GJ!


これは千夏は道場を継ぐから〜〜みたいな感じか?
続きを楽しみにしてます。


だがこれハーレム以外のルートなら修羅場になる可能性が・・・
268 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/11(水) 13:11:59 ID:egWAekuv
er...
269 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:14:14 ID:hYQ/Dpug
投下しますよ

‐注意‐
百合
オウ先輩視点で進行
270 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:16:58 ID:hYQ/Dpug
 雀の鳴き声が聞こえて目が覚めた。
 体を少して感じるのは肌とシーツが擦れる滑らかな感触。次に来るのは人間の温度で、
それが伝わってくる意味を理解してボクの思考は完全に覚醒した。
「……そうだった」
 何故直接素肌にシーツが当たるかといえば、
「……昨日、そのまま寝ちゃって」
 随分とだらしなくなったな、と少し自己嫌悪。以前は、そう少なくとも半年程前までは
線引きがはっきりしていたような気がする。こんな風にエッチをすることは何度もあった
けれど、終わったら部屋に戻っていた。一緒に寝るなんて考えたことも無かったし、主人
とメイドっていう感覚もはっきり自覚していた。ホウ様は対等な友人として扱ってくれた
けれど、それでもケジメみたいなのは存在していた。さっき考えた通りに寝る場所は別に
したり、ご飯を食べる時間や内容そのものが別物だったり、数えていけば、それこそキリ
がないくらいに。対等なもの、と言ったら部活くらいだったかもしれない。
 しかし今は違う、部屋の中を見ると以前との差がよく分かる。
 脱ぎ散らかされた服、行為に使った道具、改めてだらしなくなったと思う。悪くはない、
と思う部分もあるけれど、ちょっと違和感のようなものがあるのも事実。以前はエッチを
した後は、物を片付けたり服を着たりと後始末をしていた。ボクとこんなことをしている
ことがバレないように、という意味合いもあったけれど、それ以外のものがあったのだ。
ジレンマや切なさに起因するそれを、何て言ったんだっけ。
 ダメダメ、また悪い方に思考が進んでる。
「……片付けなきゃ」
 隣で寝息をたてているホウ様を起こさないように、そっとベッドを抜ける。既に早番の
人が暖房を着けているので寒くないけれど、体を冷やしちゃいけないので布団を直した。
ホウ様も軽く体を丸めただけで、特に変わった様子はない。安らかに目を閉じている姿は
マリア様みたい、どんな夢を見てるんだろう。
271 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:18:37 ID:hYQ/Dpug
 いけない。
 そのまま眺め続けたいと思う衝動を抑え込み、取り敢えず自分の服に袖を通す。長年の
経験から行為は一瞬、これはボクの数少ない特技の一つだ。それを誇りに思うと同時に、
心も引き締まってくる。メイド、って仕事の自覚も沸く。これで後は服の皺が無かったら
完璧なんだけど、全裸で部屋を出る訳にもいかないし。ボクにはそんな変態チックな趣味
は無い。最近ホウ様は少しアブノーマルな方向に進んでいるけど、まさか、露出系の趣味
は無いよね。訊くことは出来ないけど、また寝顔を少し見る。
 数秒。
 いけない想像をしてしまった自分の悪い部分を戒めてから、掃除に戻る。まずは昨日の
プレイで使った道具、これは見られると本格的にマズいから最優先で。双頭ディルドーや
ローター、これは最初に見たときは驚いたけど今となったら可愛いものだ。音をたてない
ように、しかし手早く拾ってバッグに詰め込んでゆく。洗うのは後でも出来るから良い。
それにしても大きなバイブだ、こんなものがボクやホウ様の中に入っていたなんて、素に
戻っている今だと照れや羞恥よりも驚きの方が大きい。
 次に向かったのは手錠や荒縄、痛くないのかなと思ったけどホウ様は気持ち良さそうに
していた。ちょっと興味があるけど自分で使う勇気は無いし、何だか怖い。終わった後に
どんな状態になるのか、そんな自分が想像出来ないからだ。乱れるホウ様は綺麗だけど、
だからこそ恐くなってしまう。でも、これもまだ可愛い方。
 横を見ると転がっているのは鞭やロウソク、ボンテージ服。これは見ないでバッグへと
強制突入させる。あまり使用頻度は高くないけど、割とお気に入りみたい。ボクはあまり
好きじゃない、ホウ様の綺麗な肌に傷が付くのは嫌な感じ。
272 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:19:32 ID:hYQ/Dpug
「……でも、無傷でも」
 最後に控えた大物を見た。
 タライと、リッター型の大きな注射器。これは最近、殆んど毎晩登場するようになった
ものだ。何に使うのかは言わなくても分かる、けど言葉には出しにくいもの。この部屋に
トイレとお風呂があって良かったなと思う、そうじゃなかったら大変なことになっていた。
逆に言えば、この部屋にあったからこそ出来たプレイなのかもしれないけど。
 ダメダメダメダメ、思い出したら負け。
 専用のタオルで放出部分を拭ってポケットへ。アルコールを何度かスプレーしてタライ
ごとクローゼットの中へしまい込む。バッグを隠したら道具は終了。
 頭の中からエッチなものを無理矢理排除して、次の作業に向かう。床に散らばった服や
下着を拾い集めて、これを誰にも見付からないように洗濯場へ持っていくのだけれども、
何気にこれが一番難しい。このお屋敷は朝の四時からフル稼働するから、本当の意味で人
が居ない場所というのは少ないからだ。もしボクがホウ様の服を持っているのを見られて
しまっても変に思われることは無いと思う。ボクはホウ様の専属メイドだし、朝から働く
なんてことは少なくないからだ。だからと言って油断出来るものではないし、そう考えて
コソコソしても妙に思われる。それにエッチをした後の独特な匂い、分かる人は分かる。
そんなこと全てに気を遣いながらの仕事は、ある意味ではさっきのタライよりもキツい。
 それでも苦にならないのは、
「……ホウ様のことが、大好きだからだね」
 自分で言って、少し恥ずかしくなった。
 聞く人も見る人も居ないのに照れて俯けば、視界に入ってくるのは、
「……ぱんつ」
 どうしよう、匂い、嗅ごうかな。
 ダメダメ、それじゃあ変態になる。
 ホウ様が身じろぎでもしたのか、背後で衣擦れの音がして、心臓が一段高く鳴った。
「……セーフ?」
 数秒。
 答えが帰ってこないことに安堵をしつつ、下着に近付いていた鼻を上げた。振り返って
ボクは会釈を一つ。両手が塞がっているからスカートを摘むことが出来ないけれど、礼の
角度に気を付けて出来たので自分に及第点。
「……それではホウ様、また後程」
 頑張らなくちゃ。
273 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:21:24 ID:hYQ/Dpug

 ◇ ◇ ◇

「ちょっと値が張りますけど、出来れば2LDKくらいは欲しいですわね」
 ホウ様はお部屋のカタログとにらめっこ中。2LDKって、そんなにお部屋があっても
使わないと思うんだけどな。あ、でも使用人のお部屋とホウ様の個室ってことを考えたら
必要かもしれない。ボクもお屋敷では個室を貰っているし、今朝考えたケジメってものの
こともある。ボクは自分のプライバシーをあまり気にしないタイプだけど、ホウ様だって
見られたくないものもあるだろうし、線を引き直すには丁度良い機会かもしれない。
 ボクはメイド。
 ボクは恋人。
 その二律背反するものを両立させるという意味では、このルームシェアは絶好の機会だ。
「オウ、聞いてますの?」
「……はい、しっかりと」
 最初は少し頬を膨らませていたけれど、すぐに笑顔になって頷く。可愛いなぁ、ホウ様。
生徒会に居たときは立場上カメ君に注意をしないといけなかったけど、馬鹿なことばかり
していた気持ちは良く分かる。きっとカメ君もツルちゃんに対して同じように考えていて、
その結果エッチなことばかりしちゃったんだろう。ボクだって、そんな気分になる。
「オウはどの部屋が良いんですの?」
「……ボクは、ホウ様が好きなものを」
 決まりませんわね、と言うと溜息を吐き、ホウ様はソファに横になる。スカートが大胆
に捲れ、青い下着やすらりとした太股が見えた。こんな姿も以前までは考えられなかった。
二人きりのときでも、学校に居るとき程じゃないけれど凜としていたのに。
「……ホウ様、はしたないですよ」
「良いじゃありませんの、他には誰も居ませんわ」
「……そうじゃなくてですね」
 スカートを直して、さっきのホウ様のように吐息。
 さて、ここからどう言おうかな。
「……ホウ様にとって、ボクは何ですか?」
「愛しい人ですわ」
 目を細めて、囁くように言う。これはヤバい、あまりの色気に鼻血を出しそうになった。
今まで何度も裸や喘ぐ姿を見てきたからエロ耐性はかなり付いていたと思っていたけれど、
まだまだだったみたい。でも、今はそれよりも大事なことがある。
274 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:23:32 ID:hYQ/Dpug
「……ボクはメイドです」
「それも分かってますわ。だからこそ耐えてきたのだし、二人で頑張っているのですわ。
あ、カメ君にも後で改めてお礼を言わないといけませんわね。オウを勇気付けてくれて」
 分かってない、そう叫びたくなった。
 ホウ様は好きだけど、それこそ愛しているけれど、今のホウ様は何だか違う。どの辺り
が違うかと言われたら困るけれど、違和感のようなものがある。何だろう、上手く言葉に
出来ないのが、とてももどかしい。言わなくちゃいけない筈なのに、それが出てこない。
とても、とても大切なことだと分かっているのに。
「どうしましたの?」
 首を傾げるホウ様の頭を抱いて、深く息を吸った。
「カメ君じゃありませんけど、オウの胸って気持ち良いですわね」
 そう呟き、ホウ様は腰に腕を回してくる。
 まるで幼子が甘えるように、自分のだらしない姿を気にもしないで。思いきり頭を胸に
押し付け、ときたま細い声を漏らす。見下ろせばまたスカートが捲れていて、下着も脚も
剥き出しの状態だった。盛りの付いた猫みたいだな、なんてかなり失礼なことを一瞬だけ
思ってしまった。酷い人だね、と自分のことなのに悪く言ってしまう。
 でも、そう思ったのも事実で。
「オウとの大学生活も楽しみですわね」
 そうか、そうだったんだ。
 違和感の正体が、やっと分かった。
「……もっと」
 息を吸う。
「……もっと、ちゃんとして下さい。このままだとボク、ホウ様嫌いになります」
 ビクリ、と腕の中の体が震えた。
「……こんなの、嫌です」
 胸から顔を離し、見上げてきたのは泣きそうな顔。『甘やかして』あげたくなったけど、
心を鬼にして視線を真っ向から受け止める。ここが勝負時、ここで引いてしまったら後で
絶対に後悔するだろうし、後戻りも出来なくなる。カメ君にも申し訳ないし、ホウ様にも
申し訳が立たなくなる。これは、ボク達の為に大切なことだから。
 何が駄目だったのか、それはきっとボクとホウ様両方のスタンスだ。
275 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:25:13 ID:hYQ/Dpug
 最初に誘ったのはボクの方、崩れたのは二人の責任。最初はとても楽しかった、二人で
悩んで迷って考えて、そして答えを模索していた。でも答えが出たら、それこそ酷いもの。
幼馴染みだから気安いというものもあったんだろう、性別が同じだから隠すものも少ない
ものだった。それまでの繋がりを一歩踏み出してホウ様に近付いていたと思っていたけど、
それは間違いだった。逃げていた、と言っても良いかもしれない。ホウ様は答えの結果に
溺れて甘えて、ボクは答えの結果に溺れて受け止めて、そこから二人でグダグダになった。
素の自分を見せるというのは、気取らないとかダラダラするというのと違う。そんなもの、
甘えているだけだ。そう、今のホウ様のように。
 こんなもの、ボクは望んでなんかいなかった。
 もっと楽しくて、充実していて、そして何より、
「……ずっと、笑っていられるような」
 それには今のままじゃ、駄目なんだ。
 辛いことだけど、嫌われても良いとさえ思える。一方通行なんて知ったことじゃない、
そんなのは女の子でありながらホウ様を好きになったときに覚悟していた。好きになって
から十年以上、ずっと言えずに耐えてきた。だからそれが伸びるだけなんて、全然平気。
こんなホウ様を見ている方が、ずっと痛くて辛くて切なくなってくる。
「オウ?」
「……もう一回言います、今のホウ様は嫌です」
 言っちゃった、と頭の中の感情的な部分がボクを非難する。こんな素敵な人とは、もう
二度と出会えないかもしれないのに。それをわざわざ棒に振るなんて馬鹿みたい、ずっと
後悔するかもしれないよ。良いじゃない、ホウ様が一緒に居てくれるんだから細かいこと
にこだわらなくても楽しく暮らしていけるんだよ、と。そう何度もボクの心を責める声を
振り払い、ホウ様の頭に手を伸ばす。
276 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:26:45 ID:hYQ/Dpug
「……ホウ様」
 肩を震わせて目を閉じるホウ様の髪に指を滑らせ、逆の手で背中を撫でた。
「……何でボクが、こう言ったか分かりますか?」
 無言。
 返事は来ない。
「……ボクはホウ様が大好きです、大好きで大好きで堪りません。……でも、今のホウ様
を見ていると、嬉しくないんです。前は見ているだけで幸せでしたし、今も少し幸せです。
……でも、それ以上に嫌な感情が止まらないんです。……ホウ様が、壊れていってるから。
……確かに楽かもしれません、対等なのかもしれません。……でもそれは絶対に悪い意味
での楽や対等で、だから今のままじゃいけないって思うんです」
 疲れた、こんなに喋ったの久しぶり。でもまだ足りない、ボクが本当に言いたいことは
まだまだ伝えきれていない。これも大事なことだけど、その奥にある言葉が出てきてない。
「……ホウ様」
「この場合、この言葉が正しいのか分かりませんけれど」
 更に言葉を続けようとしたのを遮り、
「ありがとうございます」
 そう言って、ホウ様は唇を重ねてきた。
「目が覚めましたわ。今まで辛い想いをさせて……って言葉にすると嘘臭いですわね? 
でも、もし許してくれるなら、もう一度チャンスを与えてくれるのなら、頑張りますわ」
 一拍。
「二人の関係を、大切にする為に」
 ホウ様の唇から溢れた簡潔な一言、それを聞いた瞬間、目頭が熱くなるのが分かった。
伝わっていた、言葉に出さなくても一番大切なものを理解してくれていた。それが何より
嬉しくて、ぎゅっとホウ様を抱き締める。
「……ホウ様、二人で頑張ろう。二人でもっと、二人がもっと良くなる為に」
 頷き、返ってくるのは再度のキス。
 それは唇を横に滑り、頬に辿り着く。
「……あの、汚いですよ?」
「オウの涙ですもの、汚いことなどありませんわ」
 オウの味がします、と言葉を続けてホウ様は音をたてながら吸ってきた。柔らかな舌が
ぬるりと頬を撫でて擽ったいけれと、それ以上に感じるエッチな感触が体を火照らせて、
頭が白くなってくる。カメ君としたときとは違う感じ、そのときよりもずっと凄い。
277 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:28:25 ID:hYQ/Dpug
 そのまま手が伸びてきて、ボタンを外し始めた。
「……や、ちょっと、ホウ様?」
「オウがいけないんですのよ? こんなに可愛いから」
「……可愛いって!?」
 そんな、誉められると抵抗出来なくなる。それに可愛いって、ボクが、そんな、ホウ様
の方がずっと可愛くて綺麗で格好良くて素敵でマグナムでアルティメット何とかで凄くて
エクセレントでエレガントで、もう何が何だか分からなくなってくる。
 その間にもホウ様は作業を続けていたらしく、気付けば下着だけになっていた。
「……落ち着きましょう、ホウ様。何だかカメ君みたいになってますよ?」
「私はあんなに変態じゃないですわよ? これは愛です」
「……そうですか。……カメ君も同じ言い訳してますよ?」
 嘘!?、と退け反るホウ様の隙を突いて、ボクも服を脱がせてゆく。襟を開いてゆく度に
白い肌が大きく露出して、半分程ボタンを外した辺りで大きな胸が姿を現した。綺麗だな、
という感想と、羨ましい、という気持ちが沸いてくる。肌はキメが細かくてすべすべだし、
胸も大きいだけじゃなくて形も良い。アラブ系の血が入っているボクの肌は、ホウ様とは
対照的だ。自分の血が嫌いな訳じゃないけど、ホウ様の白い肌は羨ましい。血は関係無い
けれど、胸も羨ましい。平均より少しだけ小さいボクは、ちょっと劣等感を感じてしまう。
 ふと頭に浮かんだのは、知り合いの女の子の姿。
「……ツルちゃんも大変だね」 近くに胸がとても大きな娘が二人も居るし、カメ君はおっぱい大好きだし。
「……ボクは、違うよね?」
 好きなのは、ホウ様のおっぱいだし。
 上半身の服を全て外し、ブラも取ると桃色の先端が見えた。人のことを言えないけれど、
そこはもう既に固くなっていた。指で転がすと、鈴が鳴るような澄んだ声が聞こえた。
278 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:30:00 ID:hYQ/Dpug
「……ホウ様、エッチ」
「オウこそ、こっちは」
 ホウ様の手がボクの下半身に伸ばされ、
「こんなに濡れてますわ」
 下着の中にまで指が侵入してきた。
「これは、何の液かしら?」
 耳元で囁かれ、顔が熱くなる。
 恥ずかしくて答えられないけど、それに構わずホウ様の指の動きは続いてゆく。入口の
周りを指でなぞられたり、敏感な部分を摘まれたり、まだ中に指が入っていないのにイキ
そうになってくる。でもイキそうになった瞬間に弱くなったり止められたり、絶妙な加減
で調整しているみたいで、どうしてもイクことが出来ない。
「……今日は、Sモード、ですか?」
「早く質問に答えなさい、これは何の液?」
 指の動きが、ゆっくりと再開する。
 霞んだ視界でホウ様の顔を見ると、それは愉悦で歪んでいた。気高くて、誇り高くて、
そして誰よりも人の上に立つ姿が似合う表情。怖いものの筈なのに、ホウ様からはそんな
恐怖は全く感じられず、寧ろ永遠に眺めていたくなってしまうもの。
「ほら」
 逆らえない。
「……あい、え、きです」
 恥ずかしい、こんなエッチなこと言っちゃうなんて。
「よく出来ましたわね、ご褒美です」
 指が割れ目に侵入してきて、動きが激しいものに変わった。深くて、えぐるような動き。
僕の中身を全部掻き出してしまうんじゃないかと思うくらいのピストンに合わせて、股間
から水の音が響いてくる。数秒、それとも数分だったのか、気付いたらボクは達していた。
ずるり、と引き抜かれた指が目の前で、透明な糸を引きながら開かれる。
279 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:31:12 ID:hYQ/Dpug
 それを口に含むと、丁寧にしゃぶる。男の人のものを舐めるように舌を絡ませ、わざと
大きな音をたてるのがホウ様の好み。あまり頭を動かさず、舌と唇の動きで全体を味わう。
自分の愛液、というのが妙な気分だけど、薄い塩の味とホウ様の指の味が混ざったそれは
麻薬のように思考をとろけさせてゆく。
「オウ、私にも」
 喋れない代わりに頷いて、ホウ様の下着の中へと指を滑り込ませた。そこはもう、洪水
のようになっていて、濡れた生地が指に張り付いてくる。更に奥に指を進めると、お尻の
穴の方までベトベトになっていた。ボクの舌でこんなに感じていてくれた、それが嬉しい。
 唇から指が引き抜かれ、ホウ様の唇が重なってくる。伸びてきた舌がボクの舌に絡み、
抜かれた指は再び割れ目の方に入ってきた。上下の両方から責められて、体全体が溶けて
いくような錯覚を覚えた。腰が抜けて、体に力が入らなくなる。それなのに手だけは元気
にホウ様の股間を弄っていて、自分の体の部品なのに別の生物のようにすら思えた。掌を
開いて、前と後ろの穴を同時にこじる。あまり深くは差し込めないけれど、どちらも同時
に責めると快感が堪らなく強いらしい。ボクの指が痛くなるくらいに、腰が淫らに動く。
 ホウ様は息を荒げ、
「もう、オウは本当に可愛いわね。それに、いやらしい」
 覆い被さるようにして、押し倒してきた。そのままボクのブラと下着を外して、自分も
下着を脱いだ。ボクもホウ様も、今着ているのは靴下だけ。ボクの胸の先端が露になって
乳首同士が直接擦れて、もっと気持ち良くなってくる。
 膣内の肉が指を強く締め付けてきて、ホウ様の限界が近いのが分かった。同時にボクの
限界もどんどん近付いてくる。ホウ様の指の動きは激しくなるし、それはボクも同様だ。
280 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:32:18 ID:hYQ/Dpug
「オウ、一緒に、重なって、最後まで」
「……はい」
 お互い指を引き抜き、唇を重ねて舌を絡ませる。流れ込んできた唾液を飲み込んでから
腰を僅かに上げると、割れ目にとても柔らかな感触が来た。最近は道具を使ってばっかり
だったから忘れかけていた、ホウ様の感触。お互いの大切な部分が擦れ合う感触は、ただ
それだけで気持ちが良い。膣内にものが入ってくることは無いけれど、他のどんなプレイ
よりもボクはこれが大好き。直にホウ様と触れ合っている、そう実感出来るから。
 体全体を揺らすと、もう達しそうになった。我慢の限界が近かったからという理由だけ
じゃない、溶け合う感触みたいなものがある。唇から、舌から、押し合って潰れるお互い
の胸から、その先端の部分から。擦れるクリトリスも、割れ目も。絡んだ指先や脚すらも
余すところなくボクの脳髄に快楽という信号を与えてくる。触覚だけじゃない。ホウ様の
甘くて良い匂い、口の中に広がるホウ様の味、ホウ様の喘ぎ声や割れ目が擦れる水の音。
雪原に立っているとさえ思えるような肌の色と、太陽の光を反射する金色の髪。五感全て
がボクを包み、刺激し、限界に導いてゆく。
「……や、ホウ様、もう」
「私も、私も、もう」
 ぎゅっとお互いに強く体を抱き締め合って、そしてボクとホウ様は同時に達した。
 は、と吐息。
「……ホウ様、そろそろカタログの続きを。……それと、きちんと脱いだ服を」
「……もう少し、こうしていません?」
 ダメダメ。
「……ちゃんと、ケジメを」
 仕方ないですわね、と言ってホウ様が立ち上がろうとして、
「……やっぱり、このままで。……このままでもカタログは読めます」
 つい引き留めてしまった。
「良いんですの?」
「……ボクが道を間違えそうになっても、今度はきっとホウ様が正してくれますから」
 二人で歩いて、どっちかが道を間違って、それでも正しく歩こうとお互いに頑張って。
「……大切に、しましょうね」
「勿論ですわ」
 そう言って、ホウ様はダイブしてきた。
281 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:33:40 ID:hYQ/Dpug
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!! 今回出番無かったな」
水「そうだね。はい、今回は五つのレスと一枚の葉書を御紹介!!」
亀「今回はスペシャルゲスト、虎蔵さん!! まぁ、今回は全員出番無いけど」
虎「おう、実に嫌な感じの面子だな」
水「それを言ったらオシマイですよ?」

>>170
亀「百合百合、だった筈なんだけどな」
水「活字だと、あんまり百合っぽく見えないね」
虎「話のテーマも百合は無関係だったしな」
亀「そうですね」
虎「タイトルも無関係だしな、今回は」
水「『ツルとカメ』が殆んど関わってなかったね」
亀「僕が少し、ツルが少しだけって感じで」
虎「まぁ、たまには良いんじゃねぇか? 俺だって魔法幼女にならない話があったしな」

つ[]カメの優しさに〜
亀「嫌だ」
虎「だろうな。だがお前も男だ、ケツの穴を引き締めろ。物理的に」
亀「論理的に嫌ですよ」
水「言ったら駄目だって分かってるけどさ」
虎「?」
水「あたしもカメも、実はお尻体験済みじゃない?」
亀「僕のあれはノーカンだ!!」
虎「そうだな、分かってる。だが結論を言えば、寄るな変態ズ」
水「あたしは変態じゃないよ?」
亀「変態は皆そう言うんだ」
水「カメにだけは言われたくないよ!!」

>>251
亀「劇場版、あるんですか?」
虎「いや、暫くは無理らしい」
水「個人的には出たいですか?」
虎「ンな訳無ェだろ。大体、あんなイカれた設定でそう長く続いてたまるか」
亀「でも1クール続きましたよね?」
虎「そうなんだよなぁ、途中から順応してた自分が嫌になるぜ」
亀「ドンマイです、きっと良いことありますよ」
282 名前: 『ツルとカメ』×44 [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:34:52 ID:hYQ/Dpug
>>252
虎「楽しんで貰えたみたいで何よりだ。頑張って戦った甲斐があったってもんだな」
亀「最後は死んだと思いました」
水「海を見にいく、なんて死亡フラグまで立ててましたしね」
虎「あぁ、俺も正直ビビった。言った後で愕然としてな」
亀「他の死亡フラグまで立ってましたよね。あの突攻前の台詞とか」
水「あれもヤバいですよね?」
虎「ま、愛の力だな」
亀「リリィへの?」
虎「サユリへの」
水「酷い話、こんなに報われないメインヒロインもそうは居ないよね」

>>253
亀「そんなに誉めたら駄目だ、作者が着け上がる」
水「でも、嬉しい言葉だね」
亀「ところで、キスはどんな感じでしたか?」
虎「いや、あのときは目突きのせいで他の何も感じなかった。事実だけ理解した」
水「その結果?」
虎「セリスの墓の前で一週間土下座し続けた。こんな有給の使い方は初めてだったな」
亀「でしょうね」
水「ある意味男らしいですね」
虎「その後は、まぁ、楽しく暮らしてるさ」
水「ラブコメしたりですか?」
虎「してねぇよ。特に俺が金色復活する前のあれ、本当にセリスが見えた」
亀「ハードなラブコメですね」

>>255
亀「実際はツルカメじゃなかったけどな」
水「ホウオウだったね」
亀「文字にすると、さっぱり内容が把握出来ないタイトルだな」
虎「『ヘドロさん』よりはマシだろ?」
亀「あれも大概酷いタイトルだよな」
水「そうだよね、ヘドロとか」
虎「もう言うな、斬るぞ?」
亀「すみません」

亀「さて、来週の『ツルとカメ』はバレンタイン編」
水「時候ネタは違和感大爆発だね」
亀「リアルだと夏だからな」
水「季節のズレは恐ろしいね」
亀「話を戻して、バレンタインと言えば?」
水「チョコ?」
亀「そう、チ○コ。ツルのチ○コ、良い響きだな」
水「何で下品な伏せ字にすんのさ!?」
亀「定番ネタだからな、仕方ない」
水「嫌な気分でまた来週、『ツルとカメ』でした。次も見てね!!」
283 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:35:46 ID:hYQ/Dpug
今回はこれで終わりです

反省はしていない
284 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 02:48:14 ID:cod79d69
誰もGJしないのか!?
俺がしちまうぞ!?ってことでロボ氏GJ!
285 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/12(木) 17:10:13 ID:EYQXeSpX
2番槍GJ!
久々のツルカメはホウオウだったけどオウが良かった
片付けるオウに萌えたのはここだけの秘密

つ[]カメがいつ「マッガーレ」って言うのかが楽しみで仕方ありません

※詳しくはニコニコあたりで
286 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/13(金) 03:27:27 ID:+ljP4vNJ
カッ!(読んでる間ため込んだ感動爆発)
神GJェェェェェ!!!百合だァァァ百合百合ィィ!!レズヒアーン!!ヒャッホーー!!!


ハアハアハア疲れたぁ・・・百合+名作のコンボくらって平常心保てませんでした。
つ[]カメ×虎ぞ(ry
これはいつか実現しますか?無論そのままの状態で。
287 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/13(金) 03:32:03 ID:+ljP4vNJ
アゲ忘れ保守
288 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/15(日) 01:11:14 ID:TuBzhMD9
GJ!

ひさしぶりにツルカメ成分補給完了
褐色属性の俺はオウ先輩は大好きだから楽しめた
でもカメの奇行が無かったから、少し物足りなかった

つ[]まんこきたねぇ。ちんぽきれい
   でもまんこなめたい、ちんぽなめたくない
   ふしぎ!

   でもツルにちんぽはえてたら?

   ちんぽなめたい! ふしぎ!
289 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:18:51 ID:oRad3wie
第5回、投下します。
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 卓也はスキップでもしそうなほど浮かれていた。
 これほど上機嫌になれたのはいつ以来だろう。卓也は過去を思い出すため、しばし黙考した。
 しばらくして、思い出した。あれは、卓也とはじめが高校2年生だったころ。
 はじめが趣味で作ったプラモデルを見にいこうと思い立って、藤森家へ行ったときだった。

 卓也ははじめの住んでいる家を見て驚いた。
 芝生に覆われた庭、庭を囲むよく剪定された木、そして異常に思えるほど大きな玄関を持ち、
さらに卓也の家の4倍はあろうかという大きさの家。
 それまでに友人の家に行って、家の大きさに驚いたことがなかったわけではなかった。
 不本意ながら幼馴染のようなポジションにいる、千夏の家に行ったときも驚いた。
 しかしはじめの家はそれ以上に大きく、綺麗だった。
 卓也は、藤森邸の大きさと、はじめが実はいいところの育ちだということに気づいてしまい、ショックを受けた。

 けれど、この時点で受けたショックは軽いものだった。
 はじめの家に上がって、メイド服を着ていかにもメイドという雰囲気をかもし出している女性と、
メイド服を着てメイド喫茶にでもいけばたちまち人気ナンバー1になれそうな愛らしさを持つ女の子を見たときの
衝撃に比べれば軽いものだった。
 脳天から串刺しにされて地面に固定されたように動くことができなかった。
 はじめが卓也の肩をゆすっても反応しなかった。
 金縛り状態に陥った卓也を開放してくれたのは、お客様をもてなすための言葉だった。
「ようこそ、いらっしゃいませ。はじめくんのお友達ですか?」
 うやうやしく頭を下げるやよいを見て、卓也の心臓は大きく波うった。
 外から胸をハンマーで力強く叩かれているようだった。
 頭の中では、実際に太鼓を叩く音が響いていた。お祭り状態だった。
 今までにもテレビや雑誌や街中でメイド服を着た女性を見たことはあった。
 しかし、やよいとマナの2人に比べれば幼稚園のお遊戯とミュージカルの演技ほどの差があった。
 ここまでメイド服の似合う女性などどこを探してもいないだろう。
 その日以来、卓也の心に花が咲いた。
 雑草よりも強く、樹木よりも地に深く根付く花だった。

 それからいろいろあって、卓也はやよいとマナに恋心を抱くことはやめた。
 やよいとマナがはじめに惚れていることを知ったからだ。
 卓也は3人の邪魔をしなかった。
 親友がいいやつだと知っているから邪魔をする気にならなかったというのもある。
 しかし、本当は別の理由があった。
 自分が惚れていたのはやよいとマナ自身ではなく、彼女達がメイド服を着ているからなのではないかという
疑念を抱いてしまったのだ。
 そんなことはない、と何度も思い直した。
 だが結局、卓也は自分の心に根付いた不信感を消し去ることはできなかった。
 はじめとやよいとマナが付き合いだしたのは、卓也にとって喜ばしいことだった。
 これで恋の悩みから開放される。これで自分を疑わなくて済む。親友の嬉しそうな顔も見られる。と思っていた。
 実際は、はじめはやよいとマナの2人と付き合いだしてからどんどん痩せていっているのだが、
卓也はそのことに気づいていない。
290 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:20:39 ID:oRad3wie
 卓也が今日浮かれているのには当然理由がある。
 今朝大学へ向かう途中、女性から手紙を渡されたのだ。
 その女性は大学の周りを囲む塀にもたれかかって卓也を待っていた。
 昨日卓也とはじめが不良たちから逃がした女性だった。
 卓也が差し出された手紙を受け取ると、女性は何か喋ろうとして、しかし何も喋らずに走りさった。
 手紙の中には便箋が一枚入っていた。
 綴られていたのは、短い文章だった。けれども、率直な文章だった。
 簡潔に言えば、ラブレターだった。
 3行程度の文章だったが、かえってわかりやすかった。
 最後の行に書かれていたのは、女性の名前と、女性と初めて出会った本屋の名前と、『待っています』という文字。
 卓也は、もう一度あの本屋で会いましょう、という意味だと受け取った。

 そのようなことがあって、卓也はたった今浮かれているのだった。
 付き合うとか、そういうことまでは考えていない。
 ただ、女性とどこかで待ち合わせをしたり、どこかへ行ったりするということが久しぶりだったから、
どうしても嬉しくなってしまう。
 ちなみに、卓也にとって千夏は女性として認識されていない。
 千夏に性的な魅力を一切感じたことがない、というのがその理由だ。
 だというのに、卓也が一緒にでかけたことのある異性の人間は千夏しかいない。
 それは卓也の女性の趣味が偏っているせいなのか、女性と仲良く話すことはあっても交際の申し込みをしたことがないせいなのか。
 いずれにせよ、卓也には恋人がいたことがない。

 しかし、今日は昨日助けた女性から誘われているのだ。
 さらにわざわざ手紙で告白までされてしまった。
 ここまでされて浮かれるな、期待するな、というほうに無理がある。
 付き合うかどうかは女性の言動をよく観察してから決めることにした。
 告白までされても簡単に交際まで持っていかないのは卓也の性格だ。
 その性格ゆえに今まで恋人がいなかったのかもしれない。

 浮かれ気分の卓也は待ち合わせ場所の本屋に向かって路地を歩いていた。
 路地は左側にある大学の塀に沿ってずっと続いている。
 右側には花壇があって、等間隔で木が植えられている。その向こうには車道が走っている。
 道幅は2メートルにも満たないほどしかない。それでも人と人がすれ違えるくらいの幅はある。
 卓也は路地の左側、大学の塀の近くを歩いていた。右側にはスペースが空いている。
 だから、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえても卓也は警戒しなかった。
 走ってきた人は右側を通っていくだろう、と考えていた。

 しかし、走ってきた人物と卓也はぶつかった。それはもう見事な衝突だった。
 周りから見ていれば、どう考えてもあれは無傷じゃすまないだろう、と思うほどの衝突だった。
 卓也はぶつかってきた人物の下敷きになって、アスファルトで舗装された地面に倒れた。
 突然ぶつかられたというのにかすり傷ひとつ負わなかったのは奇跡か、
それとも空手女とのスキンシップで鍛えられた反射神経があったからか。
 地面に叩きつけられた衝撃にうめきつつ、卓也は身を起こした。
 文句を一つ二つ三つ言ってやろうと思い、自分にぶつかってきた人物を見る。
291 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:22:02 ID:oRad3wie
 そして、卓也は固まった。
 自分の体の上に乗っている人物が忌々しくも長い付き合いをしてきた酉島千夏だったことと、
その千夏が自分の着ているシャツを掴みながら泣いていたことの二つの事実に驚いて。
 特に驚きだったのは後者の事実だ。
 卓也が千夏の泣き顔を見たのは初めてのことだった。
 だからだろうか。泣いている千夏を、不覚にもかわいいと思ってしまったのは。
 おそるおそる右手を伸ばし、泣いている千夏の頭を撫でる。
 卓也はこの瞬間、人生で初めて千夏の髪の毛に触った。
 いや、触ろうと思ったことすらないのだが、触ってしまった以上はどうしようもない。
 ともかく千夏の髪の毛が意外と柔らかいということを、卓也はよくわかってしまった。

 千夏の頭に手を乗せて、さて次はどうしようと考えているうちに、千夏の目が卓也を捕らえた。
 2人の視線は、千夏が2回嗚咽を漏らす間だけ交錯した。
 次の瞬間には、卓也は千夏の拳を顎に受けて、そのまま押しやられて塀に頭をぶつけた。
 痛かったのは塀にぶつけた右頭部だった。顎はあまり、というかまったく痛みを覚えなかった。
 それでも頭が痛いことには変わりない。
 卓也が目を回している間に、千夏は卓也に追撃を仕掛けてきた。
 しかし、卓也にとってナイフや金属バットよりも恐ろしい対象だった千夏の拳には、力がこもっていなかった。
 卓也は泣いている千夏を慰めるべきか、泣きながらも攻撃を仕掛けてくる千夏の攻撃に痛がる演技を
するべきか、とても困った。
 卓也の逡巡は、自分達を見物する野次馬が周囲を取り囲んでいることを自覚するまで続いた。

*****

 卓也は千夏を大学の構内に連れて行き、人目のつきにくいベンチに腰を下ろした。
 続いて、千夏もベンチに腰を下ろす。
 卓也は自販機で買ってきたお茶の入ったペットボトルを千夏に渡した。
 千夏の手が力なくペットボトルを掴んだことを確認してから、卓也は自分用に買ってきた缶コーヒーの
蓋を開けて、甘ったるいコーヒーを飲んだ。
 千夏はすでに泣き止んでいたが、お茶を飲むことなくぼーっと地面を見つめていた。
 そして一向に口を開こうとはしない。

 卓也は正直参っていた。
 まさか千夏の泣き顔を見る日が来るとは。さらに泣いている千夏の近くに自分しかいないとは。
 この状況では、泣いている千夏に対して慰めるなり何なりできるのは自分しかいない。
 はじめ、頼む。ここに来て俺を助けてくれ。
 卓也のテレパシーはもちろんはじめに届くはずもなく、風に卓也の頬を撫でさせるだけの効果しかもたらさなかった。

 意を決し、卓也は口を開いた。
「なあ、一体何があったんだ?」
 問いかけに対し、千夏は応えない。
「……何も言いたくないのか? なら、俺は帰るぞ」
 卓也は缶コーヒーを飲み干して、ベンチから腰を上げた。
 しかし不意の力によって再びベンチに腰を下ろすことになる。
 卓也の腕を引っ張って無理やりベンチに座らせたのは千夏だった。
292 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:23:12 ID:oRad3wie
 不機嫌な顔をして、卓也は千夏の虚ろな顔を見た。
 なんとなく勢いを削がれた形になりつつも、卓也は再度問いかけをした。
「何かあったんだろ? はじめと喧嘩でもしたか? ……それとも、親父さんと?」
 千夏は、卓也の最後の言葉を聞いたときにようやく反応をした。
「ああ、父と……いや、父に家を追い出された。しばらく帰ってくるな、と言われた」
「なんで?」
「昨日あの男を倒したとき、右手にかすり傷を作っていて、それを父に発見された。
 理由を正直に話したら、この通りだ」
 千夏の右手を見ると、甲に引っかいた跡があった。
 おそらく、昨日作った傷というのはこれのことだろう。

「よくわかるもんだな。こんな小さな傷に」
「昔から、父はそういったことに対して鋭いんだ。道場の外で怪我をしたときは必ず理由を聞いてくる」
「空手をやってる娘なら、日常的に怪我をしてもおかしくないと思うんだけどな」
「父は道場の外で一切怪我を負うな、と私に言いつけているんだ。
 それを破った場合は、しばらく家に帰ることを禁じられる」
「ってことは……昔お前が俺の家に突然来たりしたのは、それが理由か?」
 千夏はあっさりとうなずいた。

 ここ3年ほどなかったが、それ以前は千夏が卓也の家に突然やってくることがあった。
 卓也が学校から家に帰ってゆっくりしているとき部屋にやってきたり、時には卓也が居ないときに部屋に上がっていることもあった。
 卓也の両親は千夏の顔を覚えているので、簡単に卓也の部屋に通してしまう。
 しかも何か勘違いしているようで、千夏がやってきたときには両親揃ってどこかにでかけることがあった。
 どんな勘違いをしているのか聞くのが怖いので、両親を問い詰めたことはない。
 千夏が泊まりに来る理由の答えを聞けたのは、今日が初めてだ。
 今までははぐらかされたり、無理やり口を封じられたりしたせいで答えを聞けなかったのだ。

 ここにきて、ようやく千夏は卓也の顔を見た。
「すまないが、今日泊めてもらってかまわないか?」
「それは別にいいけどな……」
「なんだ?」
 卓也は、今日千夏に会ってから覚えていた違和感を千夏にぶつけることにした。
「お前、今日はいつもより落ち込んでるだろ」
 千夏ははっとして、卓也から目を逸らした。

「図星か」
「……うるさい」
「はじめと何かあったのか?」
「黙れ」
 千夏は低音の声を出し、卓也を威嚇する。それにかまわず、卓也は言葉を続けていく。
「お前、俺をなめるなよ。何年付き合ってると思ってんだ。
 そういう態度をとるとき、だいたいお前は言い当てられて焦ってんだよ。
 正直に言ってみろ。もしはじめと何かあったんなら、俺がなんとかしてやるから」
 卓也は精一杯の優しさを込めて、そう言った。
 背中のむずがゆさを覚えずにはいられなかった。
 まさか自分が、千夏に優しい言葉を向ける日がくるなんて。
293 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:24:32 ID:oRad3wie
 千夏は卓也の言葉を聞いて、うつむいていた体を少しだけ起こした。
 言いにくそうに、つぶやくように、言葉を紡ぐ。
「さっき、はじめに会った。昼ごはんを一緒に食べないかと誘われた。
 けど、私は断った。お腹は空いていなかったし、食べる気分でもなかったからだ。
 食べ終わってから、はじめは私に何かあったのか、と聞いてきた」
 ここから、千夏の言葉は涙まじりになっていく。
「正直に言えばよかった。父に追い出されて、落ち込んでいると言えばよかった。
 けれど、私は何も言えなかった。それどころか……はじめにひどいことを言ってしまった。
 もう会わないでくれ、と言ってしまった。本当はそんなことを言うつもりじゃなかったのに。
 これでは、もう私ははじめに会うことが……」
「できるだろ」
 はっきりと、卓也は断言した。

「もう会わないでくれ、とか言われただけではじめはお前に会わなくなったりしねえよ。
 むしろ積極的に会おうとするだろうな。あいつの性格なら」
「しかし、いきなりあんなことを言われたら、はじめは怒っているに違いない……」
「だったら、謝ればいい。許して欲しいと思ってるんならな。
 はじめの家に押しかけて、何度も頭を下げればいいんだ。
 お前が謝れば、女に甘いはじめならすぐ許すに決まってる。
 もしはじめがそれでも許さないとか言ったら、俺があいつを怒ってやるよ。
 いちいち小さいことで怒ってんじゃない、ってな」
「……小さいこと?」
「ああ、小さいことだね。俺からすれば。
 友達やってりゃ、絶交だとか喧嘩だとか、そんなことは当たり前にやり合うもんなんだよ。
 はじめだってそのへんのことはわかってる。わかってないのは……お前ぐらいだ」
 卓也は厳しい目で千夏を見つめた。
 千夏は何を言われているのかわからない、という顔をした。

「お前さ、昔っから友達少なかっただろ。仲良くしてたって言えば……俺ぐらいか。俺にとっちゃ不本意だけど」
「私だって不本意だ」
「お前はわかってないんだよ、友達づきあいの仕方が。
 何でも深く考えすぎてる。それがかえって問題を大きくしてる。親父さんのことでもそうだ。
 親父さんに家をしばらく追い出されたくらいで捨てられたみたいな気分になって、自暴自棄になってる」
「自暴自棄? そう見えるのか、私が?」
「俺の家に泊まりにくるときのお前の顔、酷いもんだぞ。
 目だけはギラギラしてて周りを威嚇するような感じのくせに、他のパーツはだらしなく脱力してて。
 あの顔を見たら、誰も近寄りたがらないだろうな」
 千夏は自分の顔を手で触った。
 指で頬をつり上げ、眉をしかめ、歯をかみ締め、何度もまばたきをする。
「そんなに酷い顔をしているか、今の私は」
「酷いというより、変な顔だ。面白い百面相だな」
「……馬鹿にしているのか、お前は」
 千夏が卓也の襟首を掴み、顔ですごむ。
 しかし卓也はひるむどころか、笑顔まで作ってみせた。
294 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:27:16 ID:oRad3wie
「何を笑っている」
「いんや。なんでもねえよ」
 ふん、と鼻で笑うと、千夏は卓也の襟を解放した。
 シャツの襟を直しながら、卓也は口を開く。
「話を戻すぞ。お前が家を追い出されたときの話までな。
 つまり、自暴自棄になる必要なんかないんだよ。親父さん、お前のことを心配してんだぞ。
 俺の家に電話をかけてきて、うちの娘がそちらにお邪魔していませんか、って言うんだ。
 そんで、今うちに千夏さんはいますよ、って言うと親父さん一気に声のテンションがあがってな。
 どうかうちの娘をよろしくお願いします、って言って電話を切るんだよ」
「……嘘だ」
「本当だ。俺がお前の親父さんについて嘘を言うわけ無いだろ。後が怖いんだから」
「……そういえば、そうか」
「お前の周りにいるやつは、お前が思っている以上にいいやつが揃ってんだよ。
 はじめも、親父さんも、俺も、みんないいやつ揃いだ」
「ああ。そうだな……お前を除いてな」
 ここで、ようやく千夏は笑顔を見せた。
 ペットボトルのキャップを開けるて、お茶をごくごくと飲んだ。
 卓也は千夏に顔を背けながら、奇妙に顔をゆがめた。
 なんで俺千夏にこんなこと言ってんだろ。馬鹿か、俺は。ああ、寒い寒い。
 このときの卓也は、心で思っている言葉が表にあらわれたかのような、変な顔をしていた。

*****

 卓也は大学を後にして、本屋へ向かうことにした。
 もちろん、手紙をくれた女性に会うためだ。
 何時に会うか決めていないので今の時刻にいるとは限らないが、行かないよりはいい。
 もしかしたら来るまで待っているかもしれないし、と卓也は思った。
 卓也の心の中では万歳三唱が繰り返し起こっていたが、その気分を顔にだすことはできなかった。
 周りの目があるというのもある。しかしそれ以上に顔に出せない理由があった。

「今からどこにいくつもりだ。早くはじめの家に向かうぞ」
「1人で行けよ。俺は用事があるんだから」
 本屋へ向かう卓也の後ろを、何故か千夏がついてきているのだ。
「そんなことは後にしろ。とりあえず私の用事を優先しろ」
「あのなあ、はじめに謝りに行くんなら1人で行ってくればいいだろ。まさか、怖いのか?」
 卓也は千夏の反発心を煽るつもりで口にした。
 しかし。
「ああ、怖い。だからお前も来い」
 しれっとした顔の千夏の切り返しを受けてしまった。
「……謝るんなら、お前1人のほうがいいぞ。その方がはじめの受けもいい」
「なら、はじめの家の前まででいい。付き合え」
「ちぃっ……」
295 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:29:35 ID:oRad3wie
 卓也は焦っていた。
 どうする。待ち合わせ場所まで千夏がついてきたら、誤解されるかもしれない。
 逃げるか?いや、千夏の足は俺より速い。逃げられない。
 なら、無理矢理ねじ伏せて……はもっと無理か。
 頭を捻って思いつく限りの対策を練るが、いずれも失敗の映像しか浮かばない。
 2人の足は本屋へ向かっている。次の信号を渡って少し歩けば、待ち合わせ場所の本屋だ。
 横断歩道の信号は赤になった。卓也と千夏は歩道で立ち止まる。
 このままでは千夏が本屋までついてきてしまう。早急になんとかしなければ。
 卓也が諦めつつも周囲を見回したその時。
 救いの友が現れ、卓也の暗い心を照らしてくれた。

「はじめ! こっち来ーい!!」
 卓也たちが歩いてきた方角から、はじめがやってきていた。
 卓也は大きく手を振り、親友を呼ぶ。
 暗い顔をしていたはじめは、卓也の傍に立つ千夏を見た途端に走り出した。
 卓也と千夏の傍まで来ると、はじめは停止した。
「あの、千夏さん」
「……な……なんだ、はじめ」
 はじめが千夏に声をかけると、千夏は逃げるように顔を背けた。
 しかし顔は笑っていた。軽く涙目になっていた。

「ごめん、千夏さん」
「なぜ、はじめが謝るんだ」
「もしかしたら、僕がなにか悪いことをしてしまったんじゃないか、って思って」
「はじめは……はじめは何も悪いことなどしていない。
 悪いのは……卓也……でも、父でもなく、て……その……」
 俯いて途切れ途切れの言葉を千夏は紡ぐ。
 その様子を、卓也は半分だけ真剣な気持ちで見守っていた。
 もう半分は野次馬の気分だった。
 
 千夏が言葉を探し、はじめが千夏の言葉を待ち、卓也が生暖かく見守っている間に、
歩道の信号は青になっていた。
 3人を遠巻きに見ていた人たちも、信号を渡っていく。
「千夏。早く言えって」
「わかっている。……その、あの…………は、……はじめ、私は!」
 千夏が覚悟を決め、はじめの顔を見た。
 その時のはじめは、横合いからやってきた腕に頭を押しやられているところだった。
 倒れはしないものの、押された勢いで車道まで進んでしまっている。
「はじめ!」
 卓也がはじめの傍に駆け寄る。
 千夏は咄嗟のことで動けなかった。唖然として、はじめを押した人物を見る。

「おい、早く行けよ。いつまでもンなとこにいられると邪魔なんだよ」
 そこにいたのは、千夏にとって大嫌いなタイプの人間の不良少年たちだった。
 絶妙のタイミングで謝ることを邪魔されて、千夏の顔が不快に歪んでいく。
 彼らは千夏の目の前を通ろうとする。
 そして、先頭を歩いていた少年が倒れた。
 千夏の出した足にひっかかり、こけてしまったのだ。
296 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:30:56 ID:oRad3wie
 倒れた少年は即座に立ち上がると、千夏を睨んだ。
 千夏も負けじと少年を睨み返す。
「てめえ、今足ひっかけただろ!?」
「ああ。足がこっていたのでな。すまないな、足が長くて」
「てめえ、ぶち殺されてえのか? ああ?!」
「お前達が言う言葉は全て同じものばかりだな。できもしないことばかりだ」
 千夏は不良少年達全員に視線を向けて、そう言った。
 当然、少年達は激昂する。

「この女! もう許さねえ!」
「殺す! ボコボコにして殺す! ぶっ潰してやる!」
「おい、携帯で人呼べ! 全員でフクロにしてやる!」
 口々に叫ぶ少年達を、千夏は上から見下ろす。
「何人来ても同じことだ。お前たちが束になろうと私にはかなわない」
 拳を鳴らし、千夏は戦闘態勢をとる。不良少年達はナイフや警棒を取り出してそれぞれに構える。
 一触即発の状態。今は牽制しあっているが、このままでは確実に喧嘩になってしまう。

 卓也とはじめは揃ってその光景を見ていた。
 はじめは不安そうに。卓也は呆れたように。
「卓也、どうする。このままだと千夏さんが……」
「千夏は昔から、群れている奴らが嫌いだからな。不良なんかその最たるもんだ」
「のんきなこと言ってる場合じゃないだろ! なんとかしないと……」
「まあ、そりゃそうだな。仕方ない。はじめ、足をほぐしとけ」
 そう言うと、卓也は千夏のほうへ歩いていった。
 千夏の手をとり、軽く引っ張る。
「何をする、卓也。邪魔する気か?」
「なんだ、てめえは。この女の仲間か? あ?」
 千夏と不良少年が同時に不機嫌な声を出す。
 卓也は一度車道の方を振り向いた。
 横断歩道の信号は青の点滅を始めている。間もなく、赤になる。
 そのことを確認した卓也は、千夏の手を握ったまま、横断歩道へ向かって走り出した。
「卓也! 何をする!」
「うるせえ! いいかげんに成長しやがれってんだ!」

 卓也と千夏が走っていくのを見て、はじめはようやく走り出した。
 足をほぐす時間はなかった。そのうえ昨日の逃走劇のせいで足は筋肉痛だった。
 慢性的な痛みに耐えながら、はじめは卓也と千夏の後方についた。
 後ろからは不良少年達の怒号と足音が聞こえてくる。
 3人が反対側の歩道についたとき、少年達はまだ横断歩道を渡りきっていなかった。
「二手に分かれよう。俺は左。千夏とはじめは右に行け」
「何? 私とはじめが一緒に?」
「その方がいいだろ。逃げ切ってからじっくり話せるんだから」
「……わかった。はじめ! 行くぞ!」
 はじめと千夏が走っていったことを確認して、卓也は2人に背を向けて走り出した。
297 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:34:08 ID:oRad3wie
*****

「どうにか、逃げ切ったか」
 少年達をどうにかまいた卓也は、はじめの自宅前にやってきていた。
 はじめが今不良に追われている、ということをやよいとマナに知らせるためだった。
 正直に言うと、事実を2人に伝えるのは恐ろしい。
 自分のせいでないとはいえ、はじめを危険にさらしてしまったこと。
 たった今、はじめと千夏の2人と別行動をとって1人で逃げてきてしまったこと。
 しかし、気が重くても知らせないわけにはいかない。
 もし、はじめが本当に危ない目にあったら、事実を伝えなかったことで、やよいとマナからの信用を失うに違いない。
 正直にいったところで2人からの心証がよくなるわけでもないのだが。
 ともあれ、ハイリスクノーリターンだということを自覚しつつも、卓也は藤森邸の玄関前にやってきていた。

 卓也が玄関のチャイムを押した。チャイムの音が鳴るのを壁越しに聞いた。
 続いて、澄んだ声が玄関のインターホンから聞こえてくる。
「はい、藤森です。どちら様ですか?」
「やよいさん、卓也です。ちょっとお話したいことがありまして」
「卓也さん? どうかされたんですか?」
「実は、はじめが……あの、直接喋れませんか? ここからじゃ上手く説明できそうにないんで」
「切羽詰ったご様子ですね。わかりました。少々お待ちください」
 プツッ、という小さな音が鳴って通話が終わった。
 
 卓也が玄関前で待っていると、遠くから声が聞こえてきた。
 声は、だんだんと近づいてくる。
「こっちに来たのか?」
「ああ。このへんの家に入ったのを見たんだ」
 誰かを追っている様子の声。不良少年達の声だと卓也は見当をつけた。
 まずい。ここにいることがばれたら、やよいさんとマナちゃんが……。
 卓也は男達に見つからずにこの場から離れる方法を考えた。
 家の裏か、家の中に隠れるか、真正面から突破して逃げるか。
 しかし、事態は卓也にゆっくり思考している時間さえ与えない。
「いたぞ!」
 不良たちが卓也を発見してしまった。
 道路の向こうから、卓也を捕らえるために藤森家の庭へと入ってくる。
 追ってきたのは2人。ぱっとしない男と、昨日千夏に倒された男だった。
 卓也より二周り大きい男は、卓也の前にやってくると見下ろしてきた。
「お前、昨日のやつだろ。……今日はあの女はいないみたいだな」
「ああ、残念だったな。お礼参りのつもりだったんだろうが」
「ふん、馬鹿言え。俺の目的はな」
 男がそこで言葉を区切った。
 嫌な予感を覚えて、卓也は両腕を交差させた。
 大男は握り締めた拳を卓也の腕目掛けて振り下ろした。
 体格に比例したように重い拳の一撃。
 どうにかそれに耐え切ると、男の言葉の続きが聞こえてきた。
298 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:35:23 ID:oRad3wie
「俺の目的は、お前を人質にすることよ」
「なに?」
「お前を人質にして、あの女を倒す。俺を馬鹿にした女は許さねえ」
「はあ? ……お前、馬鹿か? 俺を人質にしたって、アイツは構うことなく打ち込んでくるぞ。それに……」
 卓也は右足を半歩踏み出した。
 突き出されたままの男の腕を逸らすと、男の懐に潜り肘を打ち込んだ。
 ひるむことなく振るわれる男の左フック。これを卓也は予測していた。
 腰を落として避けると右に移動し、男の左脇に拳を打ち込む。
 打ち込んだ後、卓也は男の手の届かない位置へと飛び下がった。
「でかいだけの男じゃ、俺は倒せない」
「このガキ……てめえも俺を馬鹿にするってのか」
「事実だろ、それ。お前でかいだけじゃん」
 あからさまな挑発。しかし、この挑発は大男には有効だった。
 右腕を大きく振りかぶった、隙だらけの攻撃をしかけてきた。
 卓也は右腕とのカウンターのタイミングを合わせるため、避けようとしない。
 男の拳が卓也の目前に迫る。卓也が拳を避けるため、体に命令を送った。
 まさにその時。

「お待たせしました、卓也さん。お話を……?」
 突然鼓膜を震わせたやよいの声に聞きほれて、卓也は殴り飛ばされた。
 やってきたのは浮遊感。
 男のパンチは千夏ほどの鋭さは持ってはいないが、それなりに威力を持っていた。
 卓也の体を2メートルほど吹き飛ばすほどの威力はあった、ということだ。
 地面に叩きつけられた卓也は、やよいの顔を見ながら意識を薄くしていった。
 逃げてください、やよいさん。この男に捕まったら、何をされるかわかりません。
 必死に卓也は腕を伸ばす。しかし、その腕がやよいに辿りつくことはなかった。
299 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:36:51 ID:oRad3wie
 卓也が目を覚ましたとき、そこは叩きつけられた芝生の上だった。
 ああ、俺は負けたのか。やよいさんを守りきれず、負けたのか。
 卓也の目尻に、涙が浮かんだ。
 千夏に打ちのめされる日々に負けないために体を鍛えてきたのに。
 千夏に対抗するために空手を自己流で勉強してきたのに、それは何の役にも立たなかった。
 やよいさんを守るには、俺の力じゃ足りないんだ。
 無力感を味わいつつ卓也が首を横に向けると、そこにはしゃがみこんで卓也を見つめる愛らしいメイドさんがいた。
「ああ……マナちゃん。ここは天国かい……?」
「ようやく目が覚めたと思ったら、何馬鹿なこと言ってんの?
 あとさ、私のほうが年上なんだから、ちゃん付けで呼ぶのやめてよね」
「おおう! そのツンっぷり、まるで本物のマナちゃんみたいだ。
 そうだ……現世で今まで手を出せなかった分、天国にいるマナちゃんに……」

 マナに向かって手を伸ばした卓也の顔面に、モンキーレンチが打ち下ろされた。
 続いて金属製の四角い箱が卓也の頭上に現れた。整備用具の入ったツールボックスだ。
 もちろんやっているのはマナ。無表情のままでツールボックスの中身をひっくり返す。
「痛い! 痛いって! ってこれなに? 歯ブラシとか落ちてきたし、しかも毛先が黒!
 こんなんで歯を磨いたら真っ黒になっちゃうじゃないか!」
「バイクのチェーンを洗うときにそれを使うとやりやすいのよ。だから箱の中にいれてたの。
 欲しいんならあげるわよ。私ので、しかも使用済みだし」
「なんだって、使用済み?! しかし、これを使用したら俺の歯が真っ黒に! ああ、どうすれば……」
 卓也は頭を抱えて悩みだした。このときばかりは真剣に悩んでいた。
 しかし、その悩みはすぐに吹き飛ぶ。
 自分の左側に、やよいのいつもと変わらぬ姿があったことに気づいたからだ。

「やよいさん! 無事でしたか!」
「当たり前です。私はこの家の家政婦。そして藤森家の料理の技を継ぐもの。
 後世にそれを伝え、そしてはじめくんの…………を残すまでは、死んでも死に切れません」
「あの、さっきの男達は?」
「丁重にお帰りいただきました」
「え? ……本当に?」
「はい。一言二言交わしただけで、快く帰ってくださいました。
 まだまだ青いですわね、あの方は。私も人のことは言えませんが」
 やよいは自分の右手の甲を見つめてそう呟いた。
300 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 03:41:23 ID:oRad3wie
「はあ……よかった……」
 卓也は安堵のため息をついて、地面に伏せた。卓也の体を睡魔が蝕んでいく。
 眠ろうとする卓也を起こしたのは、マナだった。
「あの、マナちゃん。頬をそんなに強くひっぱると痛たたたたたたたたたたた!」
「あんた、何か用事があってきたんでしょ。しかもはじめ絡みで」
「あ! そう、そうだった。忘れるところだった。あの、実は……非常にいいにくいことではあるんですが……」

 卓也の説明を聞き終わった2人は、緊迫した面持ちで立ち上がった。
 2人は顔を見合わせると、頷き合った。
 そして2人揃って家の裏、車庫のある方向へ走っていく。
 卓也がいまだ痛みを残したままの頭に邪魔をされているうちに、バイクの音が聞こえてきた。
 重低音は辺りの空気を響かせ、卓也の心臓を揺さぶる。同時に地面もわずかに揺れているような感覚を覚えた。
 排気音は、一際大きな音を響かせると遠ざかっていった。

 卓也には、やよいとマナが突然どこかへ出かけていった理由がわからない。見当すらつかなかった。
 その方が幸せなのかもしれない。イメージはいつまでも美しいままで存在しているにこしたことはない。
 これから、やよいとマナが何をするつもりなのか、もし卓也が知っていたらどうしただろうか?
 いや――事実を知っていたとしても、2人を止めることはできなかっただろう。
 なぜなら、やよいとマナのはじめを助けようとする意思は固く、何者にも邪魔できるものではないからだ。

------
第5回はここまでです。
301 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/16(月) 06:09:17 ID:lVX+tnwo
一番槍GJ!
卓也は千夏とひっつくと思ってたんだが、恩返しに来た子フラグも建ったし、どうなるか分からない展開にwktk
302 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 12:16:17 ID:7fHEA6KA
これだろ?!
http://jggj.net/fbi/
http://jggj.net/7878/
http://jggj.net/papapan/
303 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/16(月) 23:35:56 ID:c+3pyrBp
>>302
はいはい、業者乙業者乙

>>300
二番手GJ!
卓也も二人か……
304 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/19(木) 02:38:58 ID:hBxQWNCF
保守
305 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/19(木) 06:23:03 ID:LWKIsrlE
ここって倉庫ないの?
306 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/19(木) 19:52:34 ID:GKNilSoC
ツルカメまだー?
307 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:00:53 ID:UhTh/4xu
遅れてすみません
投下しますよ
308 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:02:44 ID:UhTh/4xu
「おはよ……どうしたの?」
 開口一番、挨拶を途中で止めると水樹は眉根を寄せて僕を見た。次に僕の隣、目を細め
ムッツリとしているツルを見て、その次には疲れたような顔をしている一真を見た。
 そう、空気が重いのだ、それも半端じゃなく。
「ツル」
「何よ?」
 短く、しかし機嫌が悪いのが分かりすぎる程に表に出ている声を出して、舌打ちを一つ。
こんなに苛々としているツルも久しぶりだ。普段のような愛らしさは欠片も残っておらず、
ジョークの一つでもかましたら即座に殴られそうな、まるで付き合う以前のような状態に
なっている。どうして今のような状態になったのか、理由はよく分かる。だからと言って
どうこう出来るような問題でもないので、こうした膠着が続いている訳だ。
 要は、嫉妬なのだ。
 付き合い始めの頃から、その嫉妬深さには気付いていた。エロ本などは片っ端から燃やされ、買うのも禁止されていた。
他の女の子の乳を揉めば殴られたし、尻を愛でれば罵倒をされた。恐ろしいことに、一度
ならずチンコを切られそうになったこともあるのだ。それだけ嫉妬深さと独占欲の強さに
定評のあるツルだ、今朝からのことには、さぞやヤキモキしていただろう。僕も油断して
いたことは否めないが、まさかこんなことになるとは思っていなかったのだ。
 鞄の中を見ると、そこには大量のチョコ。
 貰えたとしてもツルからのものや、コイなどいつもの面子からのものばかりだと思って
いたのだが、その予想は大きく外れた。朝はまず郵便受けにチョコ、その時点ではツルは何も言わなかった。物好きな人
も居たものね、一番の物好きはツルだろう、なんて素敵な会話をしていた。帰宅してきた
ミチルが僕にチョコを渡しても、複雑そうな顔をしたものの大きな反応を見せなかった。
だが話はここで終わらない。登校中に見知らぬ生徒から渡され、下駄箱や机の中に入って
いたチョコを鞄に納め、教室にまで渡しに来てくれた人からのチョコを受け取っていると
次第にツルは苛々し始めた。
309 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:04:35 ID:UhTh/4xu
 怒りが決定的なものになったのは、水樹が来る直前に渡されたものだ。
 殆んどの人に対して平等に接する主義のツルだが、水と油と言うか、どうしてもソリが
合わないらしい人が何人が居る。ホウ先輩とチーちゃんだ。
 ホウ先輩が来たときには睨み合い、チーちゃんが来たときには聞いている僕が泣きたく
なる程に辛辣な言葉が飛び交う悪口合戦になった。一真が疲れて机に突っ伏しているのは
その為である。妹と一緒に教室に入るや否や修羅場が発生したのだから、それはもう酷い
気分になっただろう。僕もまさか、チーちゃんがあそこまで黒化をするとは思わなかった。
そして怒りは冷めやらぬまま、現状に続いているのだ。
 どうしようか。
 考えていると、また一人教室に人が入ってきた。
「……ツル、何でそんな朝から怒ってんの? そこの腐れチンコが何か犯罪行為した?」
 朝から随分と失礼な言葉を吐きながらコイは鞄に手を突っ込み、
「はいチョコ。どうせツル以外から貰ってないだろうし、憐れだから恵んであげる」
 丁寧にラッピングされた手作りらしきチョコを僕に渡し、コイはさっさと席に向かう。
きっと気付かなかっただろう、ツルがまるで地獄の鬼のように険しい表情を浮かべていた
ことに。照れ隠しにキツいことなど言っていたが、頬など真っ赤に染まっていて、まるで
隠れていなかったことに。それが親友の怒りの火に、ガソリンをぶっかけていたことに。
「ツル?」
 舌打ち。
 今度は言葉すら返ってこない。
「あの、ツルさん?」
「何よ、私は今、とっても忙しいの。暇なんだったら私なんかを相手にするより、チョコ
をくれた他の娘達に構って貰えば良いじゃない。沢山居るから相手には困らないでしょ?」
 そう言ってツルは唇の端を吊り上げ、冷たい目線を投げつけてくる。侮蔑という感情を
多分に含んだそれは、ふンと鼻を鳴らしたことで余計に強いものになった。
「ツル」
「うっさいバカ」
 来た、これだ。
 一番恐れていたことが来た。
310 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:05:25 ID:UhTh/4xu
 ツルの態度は大きく三段階に分かれる。嫉妬、怒り、そして脛ねだ。今の段階、つまり
脛ねまで来たら機嫌を直して貰うのは難しい。何をしても罵倒され、殴られ、拒絶され、
弾かれる。取り付く島が無いという訳ではないのが、その残酷さに輪をかけていた。
 しかも悪いこととは連続で続くもの。
「おはようございマス」
 にこにこと笑みを浮かべ、センスが教室に入ってきた。センス自体は悪くないのだが、
今は何ともタイミングが悪い。しかも、只でさえそうなのに、悲しいことにセンスは僕の
脳内巨乳四天王の一人なのだ。おっぱい蟻地獄のツルにとって、それは存在自体が敵。
そんなセンスが鞄の中から取り出したのは、やはりと言うかチョコの包みらしきもの。いつも通りの優しい笑顔を浮かべ、
それを僕の方へと差し出してきた。
「カメさん、日本式バレンタインはアメリカとは逆なんデスね」
 今日は、せめて今くらいはアメリカ式でやってほしかった。
 ツルは虚ろな目で立ち上がり、
「おっぱい」
 手を伸ばした先は豊かに実った二つの果実。
「センスのことだから、おっぱいの谷間からチョコを出すと思っていたわ。それとも何?
チョコがおっぱいの形をしているのかしら、この米国産の巨乳ビッチ!!」
 いかん、とうとうツルがブッ壊れた。
 奇声をあげながら、ツルはセンスの乳を揉んで揉んで揉みしだく。涙目で必死に抵抗を
しているが基本のスペックが違うし、僕と違ってツルに打撃を与えられることも憚られる
らしく、それは地獄のような光景になっていた。こんな汚れた二人を見るのは辛いらしく
コイは視線を携帯の方へと向けているし、一真達はわざとらしく連れション宣言して教室
から出ていった。ミチルが起きていれば物理的な意味では何とかなったかもしれないが、
疲れているらしく朝食を食った後から僕のポケットの中で睡眠中だ。
311 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:08:17 ID:UhTh/4xu
「おい、そろそろ止めろって」
「うっさい、元はと言えばカメが悪いんでしょ?」
「ヨゴレは嫌デスよぉ!!」
「夏のビキニ辺りから定着してるんだし、フタナリのときは元気だったんだから今更よ!!」
 そんなことは大きな声で言ってほしくなかった。
 そのままツルの手がスカートの中まで伸びて、センスの頬がぴくりと動いた辺りで僕は
無理矢理に引き剥がした。これ以上は見ていられない、と言うか、倫理的にも視覚的にも
完全にアウトだ。ここは聖なる教室、乳を突発的に揉んだりなどのエロ行為をしても良い
場所ではない。もっと節度を持って、清く正しく生活をすることを心掛けるべきだ。
「カメにだけは言われたくないわよ!?」
「落ち着けツル、心拍数が普段の三倍だ」
 乳を撫でれば心臓が酷く脈打っているのが分かる。これはいけない、すぐにでも対策を
たてなければ。対策を立てるには、現状を正確に把握することが肝要だ。だから僕は制服
の中へと手を滑り込ませ、正確にツルの脈を計り、正確に乳を擦り、正確に頷き、
「ツル、怒るのは良くない」
 正確にアドバイスをした。
「ふざけないで」
「ごめんなさい」
 思わず土下座、今日のパンツは黄色か。
「……馬鹿にしてるの?」
 それは違う。
「まぁ、つまらない話はここまでにして。ツル、大事なことを忘れてる」
 一拍。
「僕はまだ、ツルからチョコを貰ってない。なのに嫉妬して苛々して暴れて乳を揉むのは
筋違いだろ。勿論嫉妬してくれるのは嬉しい、その分僕のことが好きだってことだろうし、
僕も何だか我慢ならなくなって寧ろ揉むのは僕のチンコ辺りを激しく情熱的に、どうだ!?」
 無言で股間に蹴りを入れられた。
「あ、足コキは」
「もう一発要る?」
 要らねぇ。
 地獄のような痛みを堪えながら立ち上がると、頭二つ分以上低い位置にある髪に手指を
通してゆく。すぐに掴んで離されようとするが、構わずに何度も。嫌そうな顔をしたまま
だが漸く抵抗が無くなったところで僕はその掌を引っ込めた。あ、と少し寂しそうな声が
漏れるのを愛しく思いながら、ゆっくりと体を抱き締める。
「なぁ、幾ら怒っても構わないからさ。まずは僕にチョコをくれないか?」
 我ながらキザだと思いながら顎を抓んで視線を上げさせ、涙で潤んだ瞳と目を合わせた。
312 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:09:37 ID:UhTh/4xu
 小さく瞬きする仕草が何とも可愛く、再び辛抱堪らなくなり、このまま早退けでもして
一緒に家で過ごそうかと思ったが我慢する。僕は全校生徒の模範たる生徒会長だ、そんな
ヤンキーなことをしていては他の者に示しがつかなくなる。その代わり素晴らしい理性を
持った僕へのご褒美という意味も込めて抱く力を強くした。後は、そうだ、匂いを嗅ぐの
くらいならセーフだろうか。いや、剥かなければお触りもセーフか。
「カメ?」
 パンツの中に手を突っ込むのは。
「ちょっと」
 いかん、公然プレイを決め込むところだった。
「その、離してくれないとチョコが取り出せないんだけど」
 それは更に駄目だ、慌ててツルを離して愛しのチョコを待ち構える。
「ちょっと待っててね、今出すから」
 さて、ツルは僕にどんなチョコを用意してくれたのだろうか。スタンダードな超巨大型
ハートチョコか、それともおっぱい型のチョコか、股間型の素敵タイプか。意表をついて
僕のフィギュアチョコか、逆に1/1スケールのツルフィギュアチョコか。もしそうなら
とても楽しみだ、全身を余すところなく舐めたりなどして楽しみたい。勿論下品な勘違い
をしてはいけない。噛んだら痛そうだし、巨大なサイズになるから溶かして摂取するのが
最適だという判断からだ。色も気になる。もし忠実に再現するならホワイトチョコだろう、
乳首と股間は苺チョコを使っているか。フタナリ魔改造をしてあるのも捨てがたい、乳首
やチンコの先端からホワイトチョコが出てくれば尚楽しい。しかしツルのホワイトチョコというのは実にいやらしい。
 そうワクワクしていると、不意にツルの表情が変わってきた。最初は首を傾げて、次に
疑問のようなものが浮かんで何かを思い出すように視線を上に向け、最後に何故か申し訳
なさそうな顔になった。諦めずに鞄の中をあさっているものの、なんとなく予想がつく。
 ツルは上目遣いで見上げてくると、
「ごめん、家に忘れてきた」
 溜息を吐く。
 電子音。
「ほら、皆席に着け。それとカメ、これは秘密の話だがチョコを渡したいから職員室まで
取りに来い。それと明日辺り飲むぞ、予定を空けておけ」
 何か色々とマズいカミングアウトをアズサ先生がした直後、
「カメの馬鹿あぁァッ!!!!」
 ツルが爆発した。
313 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:11:18 ID:UhTh/4xu

 ◇ ◇ ◇

「ただいま!!」
 学校が終わってから爆チャリを漕いで約五分、こんなにも運動をしたのは久し振りだ。
まさか自分でもこれ程のタイムを出せるとは思わなかったが、これも愛の力だろう。
「さぁ、ツル!! ギブミーチョッコレイ!!」
「はいはい」
 溜息を吐きながら冷蔵庫に向かう姿も可愛い。特に左右に揺れる小さな尻や、綺麗な線
を描く膝の裏や足首など見ていて全く飽きがこない程だ。見返り美人という言葉があるが、
これはツルの為に作られた言葉なのではないかと思う。前面を見ると乳の辺りが悲しい女、
というハンディキャップを乗り越えてしまう魔力めいたものがある。
「はい、あったわよ」
「ツル、もう一度後ろを向いてくれないか?」
「何で?」
 不思議そうな表情を浮かべるツルに頷きを一つ、
「後姿の方がエロ……痛ぇ!!」
 ぶん投げられたチョコが顔面にヒットした。確かに歩いて渡すよりも早い、流石はツル、
見事な判断だ。出来るなら手渡しの方が良かったが、性急に運ぶ姿勢を僕は評価したい。
だから僕は性急に箱を破り、それにかぶりついた。
「不思議な味だが、美味い!!」
 これはどう表現したら良いのか。やけに塩味が濃く、そしてスパイシーな感じがする。
色も黄色が混ざった茶色で、例えるのならカレールーのようだ。成程、他人との差を明確
にする為に敢えて妙にするなんて、何といじらしいのだろうか。パッケージにまで注意を
払っていて、織濱食品の定番カレールー『英国インド激甘』にそっくりだ。
「ごめん、ちょっとした嫌がらせだったんだけど。カメ、肝臓悪くするわよ?」
 本物か!?
 ツルが言いながら持ってきたのは巨大なハート型の茶色い固形物。
「はいこれ、あんまり自信無いけど」
 表にホワイトチョコで『カメへ』とペイントされたそれは、食べなくても愛情たっぷり
だと分かる出来だ。受け取り、それを一口食べる。あまり甘い洋菓子が好きではない僕の
為だろう、ビター風味のチョコ味が口の中に広がった。
314 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:12:58 ID:UhTh/4xu
「美味い!!」
「本当に? 味見したときは、少し苦かったけど」
 首を傾げるツルを抱き寄せ、唇を重ねてチョコを直接送り込む。数秒かけてそれを飲む
音を確認して顔を離し、視界に入り込んできたのは複雑そうな表情だった。
「苦しょっぱい」
「そりゃビターチョコとカレールーの味だからな」
 言って僕はもう一口、だが中々カレーの味は消えてくれない。やけに後味がしつこく、
ミチルがそこが好きだと言うので買っているものだが、今回はそれが仇になってしまった。
「カメ、もう一口頂戴。味が消えないわ」
 チョコを差し出したが、ツルは手に持った方を選ばずに直接唇を重ねてきた。歯を割り
舌を潜り込ませ、僕の口の中を味わうように丹念になぞり上げてくる。そうして口の中に
残っていた味が完全に消えたところで、漸くツルは距離を取った。唾液の橋が切れ、唇の
周りに付いたものを親指で拭いながら、
「マズ」
 短く言って、だが指に付いた唾液を舐め取った。
「今日はやけに積極的だな?」
「別に、いつもと同じよ」
「何だ、てっきり独占欲が暴走したかと思って心踊ってたのに」
 図星だったのだろう、そっぽを向いていたツルの顔が一気に耳まで赤く染まった。
「……文句あるの?」
 朝から押さえていた理性が、ぷっつりと音をたてて切れた。
 今度は僕の方から唇を重ねて、ソファに小さな体を押し倒す。新しく親父が送ってきた
三人座っても尚余裕のあるそれは、スプリングの音を軋ませながらも柔らかく僕とツルの
体を受け止めた。僅かな間舞い上がった黒髪が羽のようにゆっくりと降り、対照的な白い
クッションの上に広がってゆく。
 僕はまたチョコをかじり、それを舌でツルの唇の間に押し込みながらシャツのボタンに
手をかけた。全てを外すのは僅か数秒、ブラも一瞬で外せば準備は完了だ。
 寒さのせいか、それともキスが原因だったのか。僕はツルと重ねていた唇を下げると、
固くなり始めていた桃色の突起に舌を滑らせる。それだけで声が漏れてくるが、口に物を
入れているせいか少しくぐもったものだ。それもまた舌足らずな感じに聞こえて可愛い。
315 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:16:49 ID:UhTh/4xu
 少しして物を噛む音が聞こえ、続いて胸の辺りが少しだけ動いた。
 飲み込んだ、と理解して僕は愛撫を続行する。
 胸を吸いながら太股の間に手を滑り込ませ、指をかけて下着を降ろしてゆく。急ぎ過ぎ
かもしれないが、これを汚す訳にはいかない。盗聴機のデータが正しいなら、これはつい
先日、ツルがかなり気に入って買ったものの筈だ。同じ黄色のものでもこのデザインのは
一週間前に確認したときは他に無かった筈だし、間違いないだろう。汚すのも駄目だが、
無くすのも良くない。しっかりとポケットにしまい込んで、改めて割れ目をなぞる。
 そうしていると、不意にくしゃみを一つ。
「カメ、暖房、つけない? 少し、寒いん、だけど」
 気が付かなかったが、確かにそうだ。只でさえツルは寒さに弱く、更に今は半裸の状態、
これでは風邪を引いてしまうかもしれない。おまけに変に悪い方向に悪化などでもしたら
将来的に僕の元気な子供を産んでもらえなくなるかもしれない。しかし、暖房をつけても
すぐに部屋が暖まる訳ではない。ならばどうすれば良いのか、答えは一瞬で思い浮んだ。
「安心しろ」
 不思議そうな顔を浮かべたツルから一旦離れると、両足を閉じさせて抱え込んだ。僕は
ジッパーを下げて肉棒を取り出すと、その柔らかな太股の間に差し込んでゆく。いわゆる
素股というものだが、最初から激しいペースで抜き差しを繰り返す。こうすれば摩擦熱で
暖かくなる筈だ、特に水分が多く冷えやすい股間を中心としているので効果もかなり期待
出来るだろう。かなり冴えている僕の頭脳に驚きながらも、しかし否定意見が出てきた。
「そうか、これだけじゃ駄目だ!!」
「え?」
 結論し、僕は目の前で揺れていた足の先端をくわえ込んだ。靴下越しではあるが丹念に
指の間までしゃぶり、足の裏やふくらはぎまでもをマッサージするように舌で押しながら
舐めてゆく。こうしたら、下半身の冷えは完全に防げるだろう。
 ツルは血気盛んな癖に、末端冷え症だ。二月初めの頃に冷たい手指での手コキに興味が
湧いてを頼んでみたところ、酷く冷たいパンチを受けたので実証済みだ。
316 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:18:08 ID:UhTh/4xu
 ついでにその後、節分のとき、ツルのお豆に手を出したところ『福は内、カメは外!!』
と閉め出されたのは素敵な思い出となっている。正に鬼だ、土下座して頼みまくり穿いて
もらった僕自作の虎柄パンツが異常に似合っていた訳である。因みにあれはデジカメ保存
済みで、来年のカレンダー作りの際にバレンタイン仕様のツルとどちらにしようか迷い、
「カメ、口から漏れてるわよ?」
「どっちが良い?」
「その前の部分に突っ込みなさいよ!!」
 ツルからの要望があったので僕は足を割り開かせ、割れ目へと肉棒を埋めてゆく。冬の
寒さなど消し飛んでしまいそうな程にそこは熱く、溶けてしまいそうな錯覚に襲われる。
そのまま動かず体温を感じるのも良いが、腰が自然に動いた。引き抜くと蜜が冷えた部屋
の空気に冷やされて、そしてまた埋めると熱い肉の壁に包まれる。言葉で表すのは難しく、
だが不快な感じは全くしない。それどころか、平均よりも高いツルの体温がとても快い。
素股で充分な刺激を受けていた僕に、この感触と温度は気持ちが良すぎた。
「ツル、もう出そうだ」
「早く、ない?」
 直接的な表現は傷付く。
「おね、がい。今日、は、外で」
「露出プレイか!?」
 衝撃。
 半マグロで喘ぎっ放しだというのに、相変わらずツルの打撃は強力だ。
「分かってる、冗談だ」
 今日は危険な日だ。その辺りはもう完全に把握済みだし、だから暴発しても良いように
という理由もあって素股を選んだのだ。最近は素股が少なかった、という理由ではない。
 もう我慢も出来そうになかったので、一気に全部引き抜いて、白く滑らかな腹の上へと
射精した。呼吸に合わせ上下に揺れる腹の中心部分、臍の辺りに少し溜ったときにツルが
呟いた『アツい』という言葉が何故か、やけに強く耳に入ってきた。
 は、と息を吐きながらツルの隣に倒れ込み、
「ところでツル、ホワイトデーのお返しなんだが」
「精液でホワイトなんて言わないでよ? しかもクリスマスのときの二度ネタだし」
 先に言われ、どう反応しようか迷っている内にツルの腹から先程僕が出したものが流れ
落ちててきた。新品のクッションに染みが広がるのをツルは嫌そうな目で見ながら吐息。
こっちを恨みがましい目で見上げながら髪を掻き上げて、
「クッションが良いな……冗談よ」
 小さく笑い、
「期待してるから」
 呟いて、うつ伏せになった。
317 名前: 『ツルとカメ』×45 [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:20:32 ID:UhTh/4xu
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!! MCは久々に主人公してた僕、カメと!!」
水「チョコを渡すホモっぽい役じゃなくてホッとした水樹でお送りします!! 今回は一個
のレスと、三枚の葉書をご紹介!!」
亀「ゲストはエロチューが素敵なヒロインのツル!!」
鶴「うっさい」

>>284
亀「まぁ、時間が時間だしな」
水「こんな時間に投下しても、即反応は来ないだろうしね」
鶴「寧ろ次の日も仕事なのに投下した作者が馬鹿よね」
亀「でも、あまり時間が経ってない内にレスしてくれたのは嬉しい話だな」
鶴「そうね。ありがとう」
水「健康に気を付けてね?」

つ[]カメがいつ〜
亀「マッガーレ、って何だろうな?」
鶴「ニコニコ動画って言われても」
水「作者はパソコンに触るの会社の中だけだしね、家に無いから」
亀「ニコニコ動画モバイルも対応してないしな」
鶴「憐れな話よね」
水「ところで、カメはパソコンでニコニコ動画使うの? エロい話とか」
鶴「使わせないわよ」
亀「そういう訳だ、残念ながら」
鶴「残念?」
亀「ごめんなさい」

つ[]カメ×虎ぞ(ry
亀「無い」
鶴「虎蔵ってヘドロ? あれってゲームとかアニメの中の話でしょ?」
亀「いや、キャラとして言ってるんだろうし、実際に存在するけどな」
鶴「そうなの?」
水「生きてる時代が違うからね。あの人は別シリーズのキャラだし」
亀「虎蔵が出てくる時代まで生きてたら、僕はもう四千歳を越えてるし」
水「という訳で、無理なカップリングです」

つ[]まんこ〜
亀「ふしぎ!!」
鶴「不思議でも何でもないわよ!!」
亀「つまり、舐めたくなるのは当然だと」
鶴「あぁもう、話が通じない」
水「それにしても下品な話だね」
亀「全くだ」
鶴「カメは人のこと言えないでしょ?」
亀「ふしぎ!!」

亀「さて、今回はこれで終わりか。次のヒロインはミチル(幼女)」
水「わざわざ幼女って付けなくても」
亀「ミチル編最後なので、取り敢えず幼女にしたらしい」
水「作者は幼女大好きだからね」
亀「それ以外にも意味はあるんだけどな」
水「そうなんだ。ま、次を見てのお楽しみだね。『ツルとカメ』でした、来週も見てね!!」
318 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 01:22:06 ID:UhTh/4xu
今回はこれで終わりです
319 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 03:41:13 ID:dhpDaX9k
>>318
ちょっと遅れて誰GJ!
久しぶりだな、ツルのツンっぷりとデレっぷり。
そしてカメの狂人っぷり。口からダダモレだ。

つ[]<アズサ先生、酒だったら俺が付き合ってあげるよ。
つ[]<カメよ、ツルには尋常じゃないくらい愛されてるんだから、絶対に幸せにしろ。
320 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/20(金) 23:10:33 ID:/xk5bNm7
ロボ先生
あっちで花束の続きを全裸で待機し続けていたら風邪引きそうです
肺炎になる前に投下してください
お願いします
321 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/21(土) 03:39:53 ID:2DFcj/r1
>>318毎週お決まりGJ!

だが・・・これは・・・・いつもの5倍位の破壊力があった。

つ[]アズサ先生今更ながら教師としてかなり危ない所に追い詰められてません?まさかクビとか・・・
322 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/21(土) 13:49:31 ID:i4CFoMkv
>>318
GJ!
「茶色い固形物」でまずいモノを連想したのはヒミツ。
323 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/22(日) 06:21:10 ID:tZ3PA1rC
>>322スカrywwwwwwwww


保守
324 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/22(日) 18:00:58 ID:Yq/XXSZt
「べ、別に…アンタのチンコなんて舐めたくないんだからッ!」

「ちょっと松茸しゃぶりたい病が発症して近くにあったアンタのチンコで代用しただけなんだからねッ!」
「ちょっと!髪、撫でないでよ…わたしがまるでアンタの恋人みたいじゃない…」

そんな妄想を今してました
325 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/22(日) 20:10:10 ID:tgRWWUVg
初期症状です
326 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/23(月) 02:16:20 ID:Gp/Y4xU8
ここに書き込んだ時点でステージ2だろ
327 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/23(月) 18:41:05 ID:PIlO8Yzn
さぁ、ステージ3へ!!
328 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/25(水) 04:26:25 ID:DGXcwKNa
「いつも松茸を俺のチンコに見立ててオナニーしてたのか?」

「ばっ・・・馬鹿!そんな事するわけないでしょ!


は・・・初めてはあんたのためにとっといてやったのよ////」

ステージ3移行完了
329 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/25(水) 22:33:22 ID:Qjz1RTxi
ちっちっち、それじゃあまだまだ2番目だ。
330 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 01:26:18 ID:nhl58JGR
もうそろそろかな?
331 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:33:11 ID:0lXXV5Gn
投下しますよ
332 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:34:08 ID:0lXXV5Gn
 生徒会の仕事も漸く終わった帰り道、携帯で時間を確認してみると表示されているのは、
「もう八時過ぎか」
 空を見上げると満天の星、大きな月がこちらを見下ろしている。月面ではバニーガール
がおっぱい餅をレズビアン的にこねているのだろう、そう考えると何ともロマンチックだ。
そう言えば夏の十五夜の際にツル専用バニーガール服を作ったが、あれはどこにしまった
だろうか。確か捨てられてはいなかったとは思うが、どうにも思い出せない。相変わらず
乳を重点的に体のサイズは変わっていないのでもう一度着てほしい、家に帰ったら探して
みようか。網ストッキングは買って帰らないといけないが、今の時間だと遅くなるか。
「どうしたの? あ、月が綺麗ね」
「ツルの方が綺麗だよ」
 無言で背中を叩かれた。月に向いていた視線をツルに向ければ、頬を赤く染めて視線を
背けられた。照れている仕草が何とも言えない、バニーにしなくても充分にイケる。
「しかし今日もまた疲れたわね、視力落ちそう」
 露骨に話題を反らされたが、確かにこれも重大な話だ。
「そうなった暁には、是非眼鏡を頼む。出来れば、こう、アズサ先生みたいな奴を」
「顔射はさせないわよ?」
 いきなりの飛躍発言だが、間違っていないだけに何も言い返せなかった。しかしエロい
ことだけを考えていると思われるのも酌だし、新しい面を見せて僕の良い部分を認識して
もらうのも悪くない。そうしたら惚れ直して抱きついてベロチューまでしてくるだろうか、
実に素晴らしい。その素晴らしい結果を求める為に真面目に考え、結論し、頷きを一つ。
「眼鏡スタイルのときは是非とも言葉責めを頼む」
 これなら半マグロのツルでも出来るし、今までとは違ったものが得られる筈だ。過去の
経験からしたら才能はそれなりにある筈だし、何も問題はないだろう。
「どうだ?」
「馬鹿じゃないの? 気持ち悪い」
333 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:37:25 ID:0lXXV5Gn
 まだ眼鏡をかけていないのに予行練習とは真面目なツルらしいし、しかも蔑んだ視線は
作ったものとは思えない程にクオリティが高い。やはり僕の見込みは間違いではなかった。
だが何故距離を取ろうとするのだろうか、不思議なこともあるものだ。
「カメ、大切な話をするわよ?」
「大丈夫だ。こんなこともあろうかと、ちゃんとツルのサイズに合う女教師風のスーツも
買ってある。もちろん普通のスーツもあるから、どちらでも」
 距離が倍になった。
 その奇行に首を傾げていると不意に電子音が響いた。携帯のカメラレンズの隣、ドット
の荒い小型液晶画面に表示されているのは『ミチル』の文字。そう言えば最近働き始めた
バーガー屋の新商品を店員割引きで食わせてくれると言っていたので、一緒に帰る約束を
していたような気がする。さっきまで山のような書類を相手にしていたせいか、すっかり
約束を忘れていた。仕事が多いということは皆が活発だということなので良いことだが、
忙殺されるくらいに忙し過ぎるのも却って良くないかもしれない。今度何か、良い対策を
ホウ先輩にでも聞いてみた方が良いかもしれない。
 基本スペックが違うから、と言われたら嫌だなと考えながら通話ボタンを押して携帯を
耳に当てると、何故かミチルのものではない女性の叫び声が聞こえてきた。
「どうした?」
『気にするでない、いつものことじゃ。それより、今どこに居る?』
「雀大通りの辺りだけど、もう上がりか?」
『うむ、暇だからのう。人件費の問題で上がらされた。店長も随分悩んどるらしくての、
ついさっきも計算が上手くいかなくて泣きそうになっておったところじゃ』
 絶叫は店長さんのものだったのか、可哀想に。
『それでは、待っておるでの』
 通話を切ると距離が元通りになったツルの方を向き、ついでに写メを一枚。フラッシュ
を受けて眩しそうに目を細めているのが実に素敵だ、良い角度に自分でも満足する。
「ツル、ミチルはもう上がりみたいだから」
「そうなんだ。まぁ、最近働き過ぎみたいだし良いかもね」
 まだ目が眩んでいるのか手指で瞼を擦るツルの腕を引き、僕はミチルの店へ向かった。
334 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:38:01 ID:0lXXV5Gn

 ◇ ◇ ◇

「どれにしようかな?」
 新商品は四種類あったのだが、ツルはひたすら迷っていた。コイなど友達との付き合い
ではファーストフード店やファミレスも使用するが、仕送りの金額も決まっているので、
僕もツルも基本的には自炊である。贅沢をさせないではなく、贅沢を出来ないような状況
なのだ。今回のことだって、ミチルからの誘いが無かったら普通に見過ごしていただろう。
店の人には悪いと思うが、どうせ同じ値段を払うのならば自分で材料を買って作った方が
腹一杯食えるし味も好きに変えられるし、得というものだ。器も普通の飲食店では女体など存在しないし、考えてみれば
家で食うのが一番なのではないだろうか。デザートはやはり、ツルだろう。
「カメ、食べ物売ってるところで下品な話は止めてくれない?」
「それよりもツル、早くせんか」
「分かってるわよ」
 ミチルにせっつかれ、しかしツルは首を傾げたままメニューと向き合ったままだ。
「分かっとらん。良いか? 今は二人で回しているんじゃ。つまりレジで商品を決めずに
悩んでいるということは、労力の半分を無駄に止まらせているということじゃぞ? 他の
客にも迷惑がかかるし、その分大変になるのはお主じゃのうて店員なのじゃ」
 流石働きまくっている亀は言うことが現実的だ。そう言えば携帯で話をしていたときも
人件費がどうとか言っていたし、貫禄も出てきた気がする。今の外見は幼女モードだが、
それを感じさせない程の仕事オーラが大放出中だ。今のまま突き進んでいけば、将来は
やり手のキャリアウーマンにでもなったりするだろう。
 一つだけ、大切なものを思い出せばの話だが。
「ほら、早くせんか。混んできたじゃろう」
「うっさいわね」
 呟き、舌打ちを一つ。
335 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:40:45 ID:0lXXV5Gn
 案の定、雲行が怪しくなってきた。ミチルが労力どうたらと言っていたときにこうなる
のではないかと予想していたが、見事に的中した。瞬く間に空気が重くなり、張り詰め、
そして凍りついてゆく。普段は呑気なミチルも珍しく眉根を寄せ、額には青筋まで浮かべ
ツルを睨んでいる。流石に殴るまではしないが、握り込まれた拳は細かく震えていた。
 そして緩慢に一歩踏み出し、
「うっさい、とは何じゃ?」
 地の底から響くような声で呟いた。
「人が親切で言ってやったものを、うっさいとは何じゃ?」
 そうね、と答えた後で、はン、と鼻を鳴らし、
「ミチルは知らないだろうけどね、人間の世界には大きなお世話って言葉があるのよ? 
選ぶのも楽しみの一つなのにそう横から口を出されたんじゃ、選ぶのも楽しめないわ」
 何じゃと、とミチルが答えたところで僕は割り込んだ。このままでは駄目だ、せっかく
楽しい食事だってのに嫌なものになってしまう。ミチルも僕達に喜んで貰おうと呼んだの
だろうし、ツルだって楽しもうとしただけなのだ。それなのに価値観の違いなんかで退屈
な結果になってしまったら、それこそ無惨というものだ。
 そんなものは、誰も望んでなどいない。
「何よ? 私よりミチルの肩を持つの?」
「この小娘に味方するのか?」
「どっちも落ち着け」
 息を深く吸い、そして吐き、
「ツルは苛々しすぎだ。ミチルに悪いだろ、せっかく呼んでくれたのに」
 次に僕はミチルに向いた。
「ミチルもさ、善意でやったのは分かってる。やっと仕事って目標が出来て、一生懸命に
打ち込んでいるのも分かる。一番側で見ていた僕は、よく分かってる。でも」
 一番近くで見ていたからこそ、気付くことがある。
「こうしてて、楽しいか?」
 言うと、ミチルは押し黙った。
 ミチルは一番大切なことを忘れている、楽しむということを。ミチルは元々何も無い、
ただ超能力が使えるだけの亀だった。僕が拾って人の世界というものを知り、自分に何も
無かったと悟って人の世界に焦がれるようになった。仕事を始めたのは世話になるだけと
いうのが嫌だったからだが、結果として自分の中に何かを見付けて、そして楽しむように
なっていった。そこまでは良かったが、しかし無くしたものがある。かつては存在せず、
しかし手に入れて、そして現在再び失いかけているもの。
336 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:42:29 ID:0lXXV5Gn
 人の世界を味わうという、純粋な志だ。
「どうだ、人の世界は?」
 無言。
 それが数秒続いた後で、
「難しいのう」
 そう、ミチルは顔を上げた。
「楽しい、か。そうだった、筈なんだがのう」
 浮かんでいるのは苦笑。眉根を寄せ、しかし口元を三日月型にした表情。悪いものだけ
ではないが、それに似たものを混ぜて出来た表情だ。顔全体に力は無く、ミチルはそれの
代わりと言うように吐く息に感情と力を込めて、ゆっくりと吐き出した。
「バイトは手段だった筈なのに、いつの間にか目的に変わっていたんじゃな。やれやれ、
偉そうに説教垂れてたのが的外れなんての。良い歳をして情けない話じゃ」
「仕方ないだろ」
 ミチルはまだ、こっちの世界の経験が浅い。僕の何倍も生きているが、それはあくまで
野生の世界での話だ。こちらの世界で言うなら赤子も同然、例えるなら今のミチルの姿の
ようなもの。自分という存在を自覚したばかりの、それこそ幼女のようなものだ。今まで
馴染んだり進んだりするのが早かったので事実を見失いがちだったが、それは変わらない。
無理に頑張らなくても良い。仕事の量という意味ではなく、自分の速度で進めば良いのだ。
納得出来るように、自分で自分の姿を見ることが出来るように。
 軽く頭を撫でてやると、歳には似合わないが外見相応の幼い笑みを浮かべ、その小さな
体を掌に委ねてきた。は、と息を吐き、そしてツルに向かって頭を下げる。
「すまんかったの」
「……別に良いわよ、こっちも言い過ぎたし」
 終わりが良ければ全て良し、と言うが、正にその通りだと思う。最後に皆が笑えれば、
途中で起きた喧嘩など些末なものだと思えてくる。それにしても疲れた、最近は真面目な
状態になるのが多すぎて何だか僕らしくない。僕は常に超真剣だが、そのベクトルが違い
すぎる。出来ればこう、もっと乳とかについての意見を出したいところだ。
「カメ、何か一気に台無しじゃぞ?」
「あの、それより早くご注文を」
 店員の声に、ツルは慌てて新商品『緑茶バーガー』を注文した。
337 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:43:56 ID:0lXXV5Gn

 ◇ ◇ ◇

「二人だけでするのも久しぶりじゃのう」
「そうだな」
 現在、僕とミチルはベッドの上で二人きり。目的は言うまでもなく、不思議パワー補給
の為の夜間大運動会だ。いつもならばツルが同伴しての3Pなのだが、つい二時間程前の
喧嘩で思うところがあったらしい。不本意そうな表情だったが今日だけは貸し切りにして
あげるとツルは言い、今は銭湯で大好きな長風呂を一人で満喫している。コイ達に収集を
かけていたから、今頃はきっとお湯に浮かんだ乳を眺めているのだろう。
「こりゃ、他の女のことを考えておるじゃろう?」
「すまん」
 答えることもなくミチルは立ち上がり、身に纏ったバスタオルを豪快に脱ぎ捨てた。
「ほら、カメもさっさと脱がんか」
「やけに張り切っているな」
「二人きり、というのが嬉しくての」
 随分と嬉しいことを言ってくれる、これに色気があったら不味かった。恐らく僕は一撃
でやられていたことだろう。しかし実に残念なことに、今のミチルには致命的な程に色気
が足りていないのだ。同年代モードやお姉さんモードならば堂々全裸でも股間は反応した
のだろう。だが幼女モードで、しかも恥じらいが足りていないので、どちらかと言うと裸
と言うよりも意味的にハダカンボという感じなのだ。
「バイーンは無理か?」
「そう言うな、儂はこれでしたいのじゃ。初めてお主としたときと同じ、この姿での」
 不覚にも股間が反応した。
 それを見て嬉しかったのだろう、ミチルは舌なめずりを一つ。外見には似合わない程に
しなやかな手指の動きでバスタオルを剥ぎ、ゆっくり股間に顔を埋め込んできた。小さな
唇を限界まで開き、喉の奥まで一気にくわえ込む。温かな口内の感触が僕のものを包むが、
しかしそれは途中で止まった。顔が小さすぎるからだ。
338 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:46:10 ID:0lXXV5Gn
「無理するなよ」
「ひゃまふな」
 構うな、と言っているのだろうか。喋った動きに合わせて舌が跳ね、弱い力で歯が竿を
いじってくるのが気持ち良い。そのまま更に顔を進て少し苦しそうに咳をするが、それで
動きを止めることなく、今度は一気に引き抜いてくる。子供の姿に似合かわしくない程の
ディープスロートだが、そこは何度も繰り返した功だろう。一度呼吸を整えると、連続で
首の振りを連続させてくる。その度にぬめる粘膜が擦れ、意思を持つように柔らかな舌が
動き、速度からは想像出来ない程に丹念にものをしゃぶり上げてくる。回数を重ねている
ことで僕のツボはしっかりと分かっているのだろう、腰を引きたくなるくらいに重点的に
弱い部分ばかりを責めてくる。しかもツルが居ないせいか普段のそれよりも激しい動きで、
僕の清を積極的に貪ろうとしているのが分かった。
「ちょっと、待て」
 頭を掴んで一旦外そうとしたが、軽く歯を立てられて力が抜けてしまった。カリ首へと
小さな歯が当たって、えぐられるように擦られているので、ものを抜こうとしても受ける
快楽の方が強くてどうにも出来ないのだ。そして鈴口をこじるようにする舌の動きに手を
離してしまえば、再びミチルは深く顔を押し進めてくる。喉の奥でしごくようにするなど、
どこで覚えたのか分からない動きに、瞬く間に達してしまった。口の中にぶち撒けると、
それをミチルは喉を鳴らして飲み込んでゆく。その動きの度に、また敏感になった先端が
扱かれてゆくのが何とも気持ち良い。
「はは、また沢山出したものだのう。溢れてくるぞ」
 言葉通りに溢れ、唇を彩っていた白濁液を舌で舐め取りながら、僕を押し倒してくる。
幼女の体とはいえ、それはミチルの力だ。それだけでなく、僕も先程の余韻で力を入れる
ことが出来ず、されるがままに仰向けになった。
339 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:48:17 ID:0lXXV5Gn
「さて、頂くかの」
 そのままミチルは僕の上に乗り、腰を深く落としてくる。簡単に根元まて呑み込まれた
けれど、締め付けは恐ろしく強い。いつもの成熟した体ではない、ツルよりも更に小さく
幼い体でしているが故の締め付けだ。しかし、この姿ですることも少なくないが、今回は
どこか違和感のようなものがある。ものを包む感触と言うか、全体的な感じが普段と少し
違うのだ。いつもならば全体を押さえ込むような感じだが今回は根元部分の締め付けだけ
がやけに強くて、他の部分は温かく弱い、ひだの動きよりもぬめりが強い感じだ。
 軽く上体を起こして接合部分に目を向ければ、それの理由に気が付いた。
「たまには良いじゃろう?」
 思い浮かぶのはツル、アズサ先生、ホウ先輩、チーちゃん、水樹、女体化をした僕の姿。
共通点は一つで、それが今の行為。竿を呑み込んでいたのは前の割れ目ではなく、後ろの
穴だった。腰を動かすと何も入っていない前の穴から蜜が溢れ、そして物欲しそうに動く。
今までじっくりと見たことがなかったが、それは独特の雰囲気を持っていた。
「何を驚いておる? こちらでするのは、お主初めてではないじゃろう?」
 それは、僕が受けに回ったのもカウントすれば合計六人にもなる。ツルともたまにでは
あるがすることがあるし、普通と言えば普通かもしれない。しかしミチルとこちらの穴で
するのは、何故か不思議な感じがした。初めてなのに、初めてではないような、感触とは
別の不思議な違和感のようなものがある。あまりにもハマり過ぎているように見えた。
「しかし妙な感じじゃのう、こちらは」
 だが気持ち良い、そう言って笑いながら腰を跳ねさせてくる。意外にも動きはスムーズ
なもので、痛みも無いらしい。いつも通りに腰をグラインドさせ、そして捻りも加えてくる。行為を自覚してから余裕を
持って理解したことだが、膣内のような細かいひだの感触は少ない代わりに、口内でする
ものとは違うぬめりの感触が気持ち良い。腸の中を傷付けないように存在する粘度の強い
膜がとろけるように全体を擦ってくるし、身長に合わせた浅い膣とは違い全てを包むので、
その分刺激が増しているのだろう。
340 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:49:31 ID:0lXXV5Gn
 不意に、新しい水音が追加された。
「これは、良いな。癖に、なりそう、じゃ」
 ミチルが自分の割れ目に指を伸ばし、擦っていた。縦筋に合わせ、なぞるように手指を
動かしたり、クリトリスを摘んだり、あるいは激しく膣内へと指を差し込んで掻き回す。
その指の動きが変わるごとに締め付けや腸の動きも変化して、様々な刺激を与えてくる。
うねり、痙攣し、締め付けが強くなり、弱くなり、また強く排泄する動き。不規則に変化
するそれは決して休まることなく、僕のものを排出するのが目的の筈なのに、精液だけは
貪欲に絞り取ろうとしてくる。体の反射であるものだが、まるで口でしていたときの意思
が移行したような、性に飢えた動物の膣と変わらない動きだ。
 先程出したばかりだというのに、再びの射精感が競り上がってくる。
「もう、出そう、だ」
「出せ出せ、それが目的じゃ。孕む心配なぞ無いが、孕ませるつもりで来い」
 ただでさえ中の動きが激しかったのに、ミチルは腰の動きまでもを更に激しいものへと
変える。思いきり腰を上げ、カリ首が菊座に引っ掛かったところで動きを止めると、次に
尻と腰骨がぶつかるまで腰を降ろす。狭い菊門は食い千切るような密度で全体を扱き上げ、
摩擦を無視したミチルの内部は熱さを増して全体を舐める。
「こうしたら、どうかの?」
 体を弄った反応ではなく、自ら締めたのだろう。動かすことすら困難な程に強く全体が
包まれ、それでも無理に動かされた摩擦で、僕は奥深くに射精した。
「二度目だというのに、随分出たのう。腹が熱いわ」
 引き抜き、菊門から溢れてくる精液を見て、不意に疑問が浮かんできた。
「ところで、口と前の穴で補給出来るのは分かってるが、尻でも補給は大丈夫なのか? 
この穴は基本的に入口と言うよりは出口だと思うんだが」
 尋ねると、ミチルは面白い表情になった。
341 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:52:26 ID:0lXXV5Gn
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は三枚の葉書と三つのレスをホンダラカンダラ!!」
亀「何だかなぁ。ゲストはヤバい意味じゃないペット、ミチル!!」
満「超久しぶりじゃの」
亀「でもコイ達に比べたら出番は多くて優遇されてるだろ?」
満「それもそうじゃの」

つ[]アズサ先生、〜
亀「相変わらずモテるな」
満「寂しい話じゃの」
水「飛躍してるけど正論だね」
亀「でも、実際一緒に飲むとキツいぞ?」
水「そうなの?」
満「いつも酒と煙草とゲロの匂いさせて帰ってくるからの」
亀「毎回ゲロを吐くヒロインなぞ、そうは居ないだろうな」
水「うわ、酷いキャラ付けだね」

つ[]カメよ、〜
亀「してるさ」
水「してるね」
満「最近は泣かないしの」
水「でもキレてるね」
満「いつものことじゃ」
亀「あれは良いんだ、個性だから。それに可愛い」
水「殴るのは?」
亀「可愛いから我慢」
満「平気、じゃなくて我慢か」
水「言っちゃ駄目だって!!」

>>320
亀「先生、とはまた大きく出たな」
水「て言うか、作者酷いね」
満「すまんのう、本当に」
亀「投下ペースが恐ろしいことになってるしな」
水「なのに妙な短編ばっかり書いて」
亀「まぁ、期待してくれるのには応えたいらしいから、もう少しの辛抱で」
342 名前: 『ツルとカメ』×46 [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:53:08 ID:0lXXV5Gn
つ[]アズサ先生〜
亀「だよなぁ」
満「他人事みたいに言っとるが、カメもヤバいぞ?」
亀「いや、何と言うかさ」
水「無意識に口説くからね、カメは」
亀「そんな、人を天然ジゴロみたいに言うな」
満「儂も今回は本気でキュンときた」
水「ほらね」
亀「冤罪だ!!」

>>322
亀「スカネタは……」
満「流石に作者が馬鹿でも書かんぞ?」
水「うん、これはアウト」
亀「実は候補があってだな」
水「嘘でしょ!?」
亀「ほら、誰とは言わないけど、あのH先輩が」
水「あぁ、洗面器とか注射器とかそう言えば」
満「もう止めい、胸糞悪い」
亀「スカネタなだけに?」

>>324
亀「良いな、そのネタ」
水「そう?」
満「そんな奇病を患ったと言い張る娘に萌えるかの?」
亀「可愛くないか?」
満「難しい質問じゃの」
水「コメントしにくいね」
亀「是非そのネタでSS一本頼む」

亀「さて、今回はこれでオシマイ。次のヒロインはセンス」
水「真面目な話?」
亀「それ以外に何がある?」
水「今のセンスって汚れっぽいって言うかさ、どこを取ってもアレな感じが」
亀「乳を揉まれたり、大晦日に一人徹ゲーしたり、フタナリレイプしたり」
水「思い返してみると酷い話ばっかりだね」
亀「そこを真面目なラストに運ぶのが『ツルとカメ』だ」
水「そうかな? そうだね多分。はい、『ツルとカメ』でした、来週も見てね!!」
343 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:54:11 ID:0lXXV5Gn
今回はこれで終わりです

ビバ金髪巨乳外人!
344 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/26(木) 02:57:58 ID:nhl58JGR
>>343
RT誰GJ!
ビバ金髪巨乳外人!
だが俺は黒髪貧乳日本女性も大好きだ!!
具体的には貞子たん!!
345 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/27(金) 03:16:09 ID:zCcXY0XW
ツルカメ超GJ!!


センスがまともに扱われていた記憶が既に久遠の彼方に飛んでいってしまったのでシリアスパートを楽しみにしています。

つ[]さて・・・とあるサイトでこんな言葉を聞いたんだが・・・
つ【鼻の穴プレイ】
世界一・・・いや銀河一の変態カメはまさか実践済み・・・?
346 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/28(土) 23:13:42 ID:ngJ6aj0q
遅くなりましたけどGJ!
ミチルエロいよミチル

センスは最初、カメを物凄く嫌ってたんだよな…

つ[]センスへ「同じ金髪キャラのホウ先輩どう思う?」

つ[]カメへ「こんなに順風満帆なのは死亡フラグじゃね?」
347 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:22:53 ID:p+fnwqan
投下します。今回で6回目になります。
348 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:24:03 ID:p+fnwqan
 はじめと千夏は、追いかけてくる不良たちから逃げ回り、バスに乗り込んでいた。
 2人が追いかけてくる不良たちから走って逃げているときに、たまたま停まっていたバスを見つけた。
 どこへ向かうバスなのか、そこまでは考えずに乗り込んだ。
 バスに乗り込むとき、男達の姿は周囲に無かった。
 もし見られていたとしても、バスと人間の足では比べ物にならないから追いつくことは不可能。
 ここまですればさすがに追いかけることは諦めるだろう。

 乗り込んでからすでに10分が経過。
 空手で鍛えていた千夏の呼吸はとうに静まっている。
 はじめは呼吸こそ普段どおりに戻っていたが、喋ることもままならない状態になっていた。
 走り過ぎて、バテたのだ。
「そろそろ喋れるか? はじめ」
 バスの通路側に座っている千夏が、窓際に座ってうなだれたはじめに声をかけた。
 はじめは燃え尽きたような感じで頭を垂れて、返事をしない。
 力なく、浅く、首を横に振るだけだ。

 千夏は、はじめとバスに乗っているという今の状況を楽しんでいた。つまり、上機嫌だった。
 千夏はこうやって異性と一緒にいるという経験が少なかった。
 長い付き合いである卓也とも、一緒にバスに乗り合わせたことはない。
 不良たちから逃げ回るというのは、千夏にとってはゲームのようなものだ。
 昔から足に自信を持っていた千夏は、並以上の男にも負ける気がしなかった。
 仮に男達に取り囲まれても、包囲網を突破するのは簡単。
 拳も蹴りも繰り出すことなく、軽くいなしてまた逃げ回る。
 暴力を振るうと父親から家を追い出されるからだ。

 しかし、千夏は好き好んで不良たちを挑発したりしない。
 先ほどのような、理不尽な理由で暴力を振るったり、マナーを守らない人間を見たときに限って口出しする。
 挑発する時点ですでに子供と変わらないわけだが、千夏のこの癖は18歳になった今でも変わらない。
 千夏は、大きな小学生、数歩譲って少し大きい中学生みたいなものだった。
 昔から空手を習っていたせいで、千夏は同年代の男女とは話が合わなかった。
 それをずっとひきずってきたせいで、人付き合いをあまりしてこなかった。
 事実、高校を卒業してから会話した人間は卓也、はじめ、父親、空手で知り合った知人とその他少数。
 高校で会話をする人間もいたが、友達はあまりできなかった。
 卒業してからも連絡を取り合うような人間というと、皆無だった。

 少ない人付き合いの経験は、千夏の人格形成に大きな欠陥をもたらした。
 精神が、年相応に成長しなかったのだ。
 言葉遣いこそ大人っぽいが、中身は寂しがりやの子供。
 それが酉島千夏という女の正体だった。
349 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:24:54 ID:p+fnwqan
 けれども、自分が傷つけてしまった、と思った相手に対して謝ることを忘れるほどに子供ではない。
 千夏ははじめが顔を上げるのを待っていた。
 はじめに先ほど言ってしまった、二度と会わないでくれ、という言葉を取り消すために。

 ようやくはじめが顔を上げた。
 顔に気力を感じられないが、目の焦点は合っている。
 謝るなら、今しかない。と、千夏はわかっていた。
 しかし、2人きりになると上手く言葉を紡げない。
 ごめん、という謝罪の言葉が、どうしても出ない。

 千夏が覚悟を決められないでいるうちに、はじめが千夏に向き合った。
 千夏は、声を出せずに固まった。
 はじめは、まず頭を下げた。
「ごめん。千夏さん」
 そして、千夏に謝った。
 はじめが頭を下げるのは、今日は二度目だった。
 千夏は狼狽した。
 はじめは悪くないのに。謝らなければいけないのは自分の方なのに。

「はじめは悪くない。だから謝る必要は無い。悪いのは――」
 ひどいことを言ってしまった、私の方だ。
 という、続きの言葉を言えなかった。
 プライドが邪魔をして言えなかったわけではない。
 千夏は、怖かったのだ。
 はじめに怒られるかもしれないと思って。
 言ってしまったら、今度こそ口も聞いてくれないのでは、と思って。

「悪いのは……その……わ、わ……」
 はじめの顔色は変わらない。千夏が続きの言葉を言うのを待っている。
 千夏が、空手着を着た父親の懐に飛び込むような、追い詰められた心境で、
「悪いのは――」
 謝罪の言葉を言おうとしたとき。 
 
 プシュー、というコンプレッサーの音と共に、バスのドアが開いた。
 続いて、運転手のアナウンスの声が聞こえてくる。
「ご乗車ありがとうございます。ここは――」
 アナウンスが言ったバス停は、はじめの家の近くだった。

「千夏さん、ここ、僕の家の近くのバス停だよ」
「え……ああ、そう、なのか。いや、そんなことより」
「話なら僕の家でゆっくり聞くから。今は降りよう」
「いや……あの」
「いいから、早く早く」
 渋る千夏を椅子から押し出し、2人分の料金を払うと、はじめは千夏を連れてバスを降りた。
350 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:26:34 ID:p+fnwqan
 バスを降りてから藤森家の庭の前につくまでの道を歩きながらも、千夏は口を開かなかった。
 一度謝るタイミングを逃してしまうと、誤りにくくなるものだ。
 ましてや、千夏は空手と無関係の知人に謝ったことは一度もない。
 さらに緊張し、言葉を発することすら難しくなっていた。

 そんなふうに歩いているうちに、2人は藤森家の目の前にやってきていた。
 はじめは普段家に帰る通りに庭の門をくぐった。
 しかし、千夏はその後をついていかなかった。いや、行けなかった。
 脚が竦んでいたのだ。
「あの、はじめ……やっぱり私はここで帰るよ」
「ええ? でも、僕だって言わなきゃいけないことがあるのに」
「いや、いいんだ。なんでもなかった。すまない」
 千夏はきびすを返して、立ち去ろうとする。
 だが、一歩進む前に歩みは止められた。はじめが千夏の手をつかんで止めていた。
「なんでもない、なんてことないでしょ」
「いや、本当に、本当になんでもないんだよ。だから、手を離してくれ」
「いやだ。千夏さんが話をしてくれるまで、この手は離さない」

 ここにきて、はじめが強情な姿勢を見せた。
 千夏が手をふりほどこうとしても、はじめは掴んだ手を離さない。
「離せ! 離せって言っているだろう!」
「いやだ」
「なんで離してくれないんだ。なぜ放っておいてくれないんだ!
 私には、仲のいい知り合いなんていらないんだ! だから仲直りなんてしなくっていいんだ!
 空手の強い父がいて、空手を習っている門下生がいれば、それで!」
「じゃあ、卓也は?」

 ぴたり、と千夏が動きを止めた。
 畳み掛けるように、はじめが言葉を続ける。
「卓也は、千夏さんの友達じゃないか」
「あいつは……そんなやつじゃなくて」
「友達じゃないの? 全く知らない、他人?」
「……違う。あいつは、知らない奴でも、仲のいい友達でも、ただの昔からの知り合いでもない」
「悪友でもない?」
「……そうだ」
「それじゃあ、どんな存在なの?」
 真剣な表情に、少しだけいたずらの色を混ぜて、はじめは言った。
 庭の中に立つ、男の存在に気づきながら。

 このときの千夏は、すでにかなり追い詰められていた。
 だから、後々後悔することを言ってしまった。
 大きな声で。半径200メートル以内にいる人間なら、誰でも聞き取れそうな声で。

「卓也は、私のものだ! だから、そんな軽い関係じゃないんだ! あいつを殴っていいのは、私だけなんだ!」

 圧倒的な声量に押されて、思わず耳を押さえながらはじめは後ろに下がる。いや、左斜め後ろに下がった。
 そうすると、先ほどまではじめの背中に隠れて見えなかった光景が見えることになる。
 そこに千夏が見たのは、巨大な建物である藤森邸と、嫌そうに眉をひそめ、口元をひくつかせている卓也だった。
351 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:29:45 ID:p+fnwqan
 次の瞬間に起こったこと。
 まず、千夏が卓也を震える指で差した。開いた口ががくがくと小さく揺れ動く。
 そんな千夏の様子を見て、卓也が口を押さえた。笑ったのだ。
 一瞬で鬼の表情になった千夏は、はじめの手を強引に振りほどき、卓也へ向けて猛ダッシュ。
 当然、卓也は動いた。バッタのような瞬発力で左へと飛びのく。
 だが、千夏の反射神経は卓也以上だった。
 全力疾走の状態から慣性の法則をねじまげたような、90度の方向転換。
 卓也の顔が驚愕の色に染まる。
 獲物をしとめる鷹の目をした千夏が、卓也の眼前に迫る。そして。
「カハアァァッ!」
 という短い気合と共に、突進の勢いの乗った正拳突きが、卓也の腹に突き刺さった。
 踏み込みもタイミングも狙いもバッチリの一撃。
 卓也は2メートルほど宙に浮いて吹き飛び、背中から着地し、1回転、2回転、さらに半回転し芝生の上にうつぶせになった。
 ここまで、わずか8秒。
 初めてリアルで秒殺劇を見せられたはじめは、恐怖を抱くよりも、むしろ感心した。
 卓也はというと、芝生に顔面を伏せていた。
 その顔は、青かった。芝生の青さとは別の、本物の青色だった。

*****

「おーい、卓也ー。起きろー」
 どことなく間延びした声に導かれ、卓也は目を覚ました。
 卓也は地面に仰向けになっていた。目の前には親友である、はじめの顔がある。
「はじめ……今度こそ俺は、天国に来てしまったのか?」
「……何言ってるんだ? それに、今度こそ?」
「だって、さっき俺は鬼に……鬼に……ひいいっ!」
 卓也は体を起こすと、頭を抱えてうずくまった。
 ぶるぶると震える。本物の恐怖を味わった、と言わんばかりの震え方だった。

 そんな卓也を見下ろす人物が1人いる。
 卓也の頭を踏めそうな場所で、腕を組みながら立っている。
「鬼だ……あれは本物の鬼だった。そうじゃなきゃ、あんなに目が尖っているはずがない」
「おい」
「いや……あの顔はどこかで見たことが。あれは、あれは確か……」
「卓也」
「なんだよ、さっきからうるせえな……」
 と、卓也が顔を上げた。
 ひっ、と声にならない悲鳴をあげると、卓也は腰を抜かした体勢のまま後ろへと下がる。

「ちちち、ち、千夏!」
「情けない声を出すな。近所迷惑だ」
「すまん。笑ったのは謝る。ただ、ただ俺はお前の驚いた顔が面白かっただけで」
「……さっきの言葉」
「ん?」
「さっき私が言った言葉は、忘れろ」
「さっき? ……どの時点での?」
「しらばっくれるつもりか?! ……聞いて、いたの、だろう……?」
 千夏の勢いが、少しずつ弱くなっていく。
 そんな千夏の様子に、卓也は疑問符を浮かべた。
352 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:32:48 ID:p+fnwqan
「悪いけど、さっきのお前の攻撃で、記憶が曖昧なんだ」
「……なに? 本当か?」
「なんつったっけ、お前。たしか……俺を殴っていいのは私だけだとかほざいて……軽い関係じゃないとかなんとか。
 あと、その前に何か言っていたような……なんだっけ?」
 首を傾げる卓也。演技をしている様子は見て取れない。
 さっきの千夏の渾身の一撃で、卓也の記憶は飛んでいたのだ。
 なにせ空手道場の跡取り娘の正拳突きだ。定着する前なら記憶の一つや二つ、飛んでいてもおかしくない。
 千夏は、ほっと肩をおろした。そして一変、強気ないつもの表情に戻る。

「そんなことは気にするな。だいたい私は何も言っていないぞ」
「そうか? それならそれでいいけど」
「さっさと立て。あれぐらいの一撃なら、痛くもかゆくも無いだろう?」
「……まだ腹筋に突き刺さるような痛みがあるのは気のせいか?」
「気のせいだ」
 立ち上がった卓也に背を向け、千夏は立ち去ろうとした。
「ちょっと待ちな。千夏」
 と、兄貴ぶった口調で喋りだしたのは卓也だった。
 しかし千夏も負けてはいない。普段の凛々しい口調を意識して男らしく変え、卓也に返事をする。
「なんだ。さっさと帰るぞ」
「一部記憶は飛んでるけどな。お前とはじめのやりとりははっきりと覚えてんだぜ。
 お前、まだはじめに謝ってないのか?」
「うっ……」
「やっぱりな。はじめ、ちょっとこっち来い」

 手招きする卓也に誘われて、いぶかしげな顔をしながらもはじめは歩き出す。
 卓也は後ずさる千夏の肩を掴み、そしてはじめの肩を掴むと、二人を向き合わせた。
 千夏の顔色が赤になる。はじめの顔色は変わらない。
 助けを求めるように見つめてくる千夏に、卓也は言う。
「ほれ。言いたいことあるんだろ」
「う……いや、もう、それは」
「いいから言えって。大丈夫だ。心配すんな」
 卓也は千夏の肩を2回、軽く叩いた。そして、2人を残して後ろに下がる。

 はじめは、千夏が喋りだすのをじっと待っている。
 千夏は、自分から喋りださなければいけないことをわかっていた。
 だが、どうしても言葉がでない。
 なにか、なにかきっかけがあれば。
 その祈りは、天に昇った、いや、天に昇ったが引力に引かれて地上に向かい、軌道を描いて一人の男に届いた。
 その場に居る、卓也のもとに。
「おらあ! 行ってこーい!」
 何を思ったか、卓也が千夏の背中を、まるで恨みでもあるかのように力強く押した。
 あまりの勢いに、千夏は前のめりになる。そうすると、当然。
「うわわっ! 千夏さんっ!」
「んなっ!」
 という感じで、千夏がはじめを押し倒す形になる。
 図らずも押し倒してしまった千夏と、押し倒されてしまったはじめ。
 2人は、体と体を密着させている。もちろん、顔を向き合わせている。
 こんな状況になっては、いくら女性に慣れているとはいえ元がシャイなはじめは、顔を紅くするしかない。
 男性に慣れていないうえそもそも友達がろくにいない千夏も、顔をリンゴのように紅くするしかない。
353 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:35:52 ID:p+fnwqan
「ふはははは! そういうわけで、上手くやれよ、千夏! 俺は俺を待ってくれている人のところへ行くからなー!」
 2人をこんな赤面させる事態に置かせた張本人の卓也は、2人を置いてその場から立ち去った。
 あとに残されたのは、はじめと千夏だけ。
 状態は、体を密着させ、千夏がはじめを押し倒している。
 しかも、周りには誰もいない。千夏が助けを求められる人間は、誰もいない。
「くそっ、卓也のやつめ……」
 と言ってはみるものの、本当はきっかけを作ってくれた卓也に感謝していた。
 あとは、最後の一歩を踏み出すだけだ。
「はじめ……」
「は、はい……?」
「あ……ぁ……ぅ……ん、んん。……はじめ、え…………私、は……」
 千夏は色っぽい声をだした。
 理由はない。そもそも色仕掛けなど、千夏は覚えていない。
 それ以前に、謝らなければいけないときに色仕掛けをする意味がない。
 途切れ途切れの言葉が、たまたま色っぽくなっただけなのだ。

「はじめ……さっき、私が……会わないでくれ、と言ったのは、嘘、なんだ……」
 こくり。はじめは無言で頷く。
「お前に、本当は弱音を吐きたかったけど……そうしたくなくて……だから……あんなことを言ったんだ」
 すがるような千夏のまなざしを受けて、はじめは参っていた。
 今日は気温が高いから密着していたら暑いし、それに体の芯までが熱い。
 今にも愛の告白でもしそうな顔で見られては無理も無い。
 それでもどうにか暴走する熱を抑え、千夏の言葉を待つ。

 千夏は、とうとう覚悟を決めた。
 今まで誰にもさらけ出したことのない感情を込めて、言葉を口にする。
「すまなかった。はじめ。許してくれ」
 たったこれだけの言葉。
 しかし、これだけの言葉を言う勇気すら、千夏は持っていなかったのだ。つい、さっきまでは。

「すまない、はじめ……」
 千夏は、はじめの言葉を待った。
 己の体を支える腕が震えているのは、疲労か、はたまた拒絶の恐怖か。
 その答えは、後者だった。
 声を殺して笑うはじめを見て、千夏の腕の震えが止まった。
「おい? なぜ笑う」
「いや……おかしくって……」
「なにがおかしい! これでも、私は真剣に悩んだんだぞ」
「いや、千夏さんがおかしいんじゃなくて、とばっちりを受けた卓也がおかしくって。
 さっきなんか、2メートルも吹き飛んで2回転半したし」
「あ、あれは! 卓也が自分から吹き飛んだんだ。私の拳ではあそこまで吹き飛ばないぞ」
「それに、告白までしてたし」
「んなっ!」
「卓也、愛されてるなあ。ちょっとうらやましいかも」
 顔を紅くしながらも、千夏は反撃に出る。
 少し怖い、だがどうしても聞きたい、はじめの言葉を聞くために。
「――ええい! そんなことより、どうなんだ! …………私を、許して、くれるか?」
 こんなときにはじめが返す言葉など、一種類しかない。
「うん。これからも、仲良くしてね。千夏さん」
354 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:38:24 ID:p+fnwqan
 その言葉を聞いて、千夏は脱力した。緊張の糸が切れたのだ。 
 思い込みすぎて強く張られた糸は、千夏の体から全ての力を奪い取った。
 そうなると、当然。
「千夏さん? あの、体がくっついてるんだけど」
「ん、ああ……すまない。少し気が抜けてしまってな」
「そ、そう。で、どれぐらいで回復する?」
「ん……はじめの体の上は寝心地がいいな」
「千夏さん? なに言ってんの?」
「もう少し、あと5分だけ……」

 千夏ははじめの体の上に乗ったまま、目を閉じた。
 はじめの胸の上には千夏の頭が乗っている。
 豊かなふくらみが無いせいで局所的な柔らかさは感じないものの、やはり女の子の体。上質な枕のように柔らかい。
 千夏の手ははじめの頭の左右にだらりと伸ばされている。
 脚はというと、はじめの股間のちょうど上のあたりに乗っていた。
 固くなっているわけではないが、もしかしたらジーンズの生地のせいで誤解されているかも、とはじめは思った。
 はじめは、あと数分の辛抱、と思いながら首を横に向けた。
 空を見ようと思ったのだ。
 しかし、見えたのは――青い空ではなかった。

「ちっ、ちちち、千夏さん!」
「ん? なんだ、卓也の真似か?」
 はじめの視線の先に居たのは、2人の女性。
「違うって! まずいんだってば!」
「何がまずい? 何もやましいことなどないだろう?」
 1人は、百合の花を思わせるようにしとやかな顔をしている、細い体に女中服をまとった女性。
「そりゃ、やましいことなんか何一つないよ!? うん、絶対にない!」
「やけに必死だな。言い訳でもしてるみたいだぞ」
 もう1人は、フリフリのスイートピーのようにかわいらしい、メイド服を着た小柄な女性。
「いや、言い訳じゃないんだって! 違うからね、2人とも!」
「はじめ、さっきから誰に言っているんだ?」
 2人は立ったまま、芝生の上に倒れているはじめと千夏を見下ろしていた。

 小柄な方の女性が、口を開く。彼女は怒りに頭全体を小刻みに揺らしていた。
「はじめ、ただいま。無事だったんだ、よかったぁ。でもぉ……」
 続いて、家政婦のような女性が口を開く。彼女の両手は、固く握り締められている。
「心配して損しました。まさか、先に家に帰っていて、それもこんなことをしているなんて」

 はじめは自分の置かれている状況がどれだけ絶望的か自覚しつつも、希望は捨てなかった。
「違うんだよ、これは。卓也が千夏さんを後ろから押して、それでこんなことに――」
「はじめくん」
 家政婦の女性が握り締めたままの両手を前に持ち上げた。拳を開く。
 手からこぼれ落ちてきたのは、無数のピアス。中には万力で潰されたような指輪まであった。
「今日は、久しぶりに――」
「三人で遊ぼっか? はじめ?」
 言うまでも無く、そこにいたのははじめの恋人にして藤森家の使用人。
 藤森やよい、そして、古畑マナの、2人だった。
355 名前: グレーゾーンのメイドと家政婦2 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日: 2007/07/30(月) 23:42:33 ID:p+fnwqan
つづく。

次回、やよい・マナ連合VS千夏、女同士の戦い。
356 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/31(火) 00:54:46 ID:xfaA1MeW
一番槍GJ!
しゅーらばーしゅーらばー。
357 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/31(火) 03:17:41 ID:rzWhUBWh
>>355
第二のGJ。
シュラバ☆ラバンバ
358 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/07/31(火) 04:38:29 ID:nRlPwZDf
三番槍GJ!!!

これほど死に近い修羅場を見てもwktkしちまう俺はヤバいのかもしれんね。
359 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/31(火) 05:14:20 ID:gxGGk+sx
よんばーん


卓也フラグ死亡wwwwwwwww
360 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/31(火) 05:41:48 ID:XJ5wEHa6
5番頂き! GJです!

やっぱしここの保管庫あると良いなと考えてしまう
361 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/07/31(火) 18:13:55 ID:rzWhUBWh
>>360
過去スレが落ちてる以上、●持ちしか作れないな。
「管理人が蒸発して更新停止」なんて悲しい事態の再発を避けるにはwiki系が良いかも。
管理人やる人が覚悟完了してれば話は別だが。
俺?俺は携帯だから無理。
362 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/01(水) 21:46:27 ID:mh/aUb5e
最近このスレに来た者なんだが俺も保管庫が欲しい
ツルカメもグレーゾーンも1話目を知らないんで、
このスレの作品は面白そうと思っても読めない
363 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/01(水) 22:46:56 ID:uj09BVcd
保管庫の存在って、エロパロでは重要だな。

読み手は前回の話を読み返せる。
書き手は保管庫があると続き物を躊躇なく書ける。
読み手はウハウハ。書き手は集まる。


俺は●持ってるが、レイアウトのデザインができねえ……
誰かツンデレスレ保管庫のwikiを作ってくれんか?
364 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/01(水) 23:12:22 ID:7XSrkbLO
とゆーか79氏の作品を渇望


望むだけでは手に入らないのはわかるが、それでもッ!!
365 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/01(水) 23:46:31 ID:ffoernGZ
>>363
とりあえずSSだけまとめて、レイアウトその他は後からみんなでいじったら良いんじゃないか?
「誰でも編集できる」がwikiの強みなんだし。
366 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 00:07:52 ID:RGmejfhr
おk。
他にいないんだったら俺がやってみるわ。
ただwikiの使い方とか全然知らないから、数日はかかると思うんでそのつもりでよろしく。


すでに作り始めていたり、作りたいって人が居るなら今のうちに言ってくれ。
367 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 00:23:11 ID:3uHFejjk
過去スレのdatならたぶん全部持ってるけど
それとは違うのね
368 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 01:05:14 ID:PkO/1WWS
誤字脱字の補填は任せてくれ。編集だけなら出来る。
369 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/08/02(木) 04:23:53 ID:dMM9dVFC
ついにまともな保管庫ができるか・・・・



べっ・・・べつにぜんぜん嬉しくないんだからね!!!

だっ・・・だいたい保管してるSS見てどうするつもりなのよ!!一人セックスでもする気!?変態!!不潔!!馬鹿!!


・・・・それでも苦労してわざわざ私の為にやってくれてるのかしら・・・





・・・・ありがとね
370 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 14:51:25 ID:G8r10UI9
>>369
何と言うツンデレ
是非俺の嫁になってくれ・・・
あっ、でもセンスは俺の嫁な?
371 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 15:59:31 ID:3uHFejjk
>>370
殺してでもry
372 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 17:56:20 ID:4NuMI3Hm
>>370
多重婚は日本の法律では認められていない。
>>369はやるから、俺はセンスと結婚する。
373 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/02(木) 22:50:49 ID:UY2MGNhy
じゃあ水樹は俺が幸せにするね。
374 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/08/03(金) 00:21:36 ID:bjDXl0ak
すいません
今日の今頃に投下の予定でしたが、仕事の都合で今週は無理そうです

最近休止が多くて本当に申し訳ないですが、
きっちり責任持って最後まで書かせて頂きますので、
もう少しお付き合いして頂けると嬉しいです
375 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/03(金) 00:30:35 ID:7BPfOgsj
>>374
一番槍ドンマイ。
ここまで来たら最後まで待ちますよ。
延期に次ぐ延期で3年待たされたりしない限りですが。
376 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/03(金) 00:34:55 ID:HASra3dD
>>374
俺は三年超えても待ってみせる。
だから、先生を嫁にくだs
377 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/03(金) 02:10:02 ID:HqfLSQnJ
>>374
一万年と二千年前から待ってる
八千年過ぎた頃からもっと待ち遠しくなった
一億と二千年後も待ってる
貴方を知ったその日から俺の地獄に音楽は絶えない

というワケでいつまでも待ちます。
378 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/03(金) 07:08:29 ID:xBa8Dfiq
10年以上某小説を待っている俺からすれば、1年なんて屁でもないぜ!


という事でロボ氏はお仕事頑張って下さい。
379 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/04(土) 04:06:10 ID:H4WZ4DGK
ロボさん+保管庫期待

ほしゅ
380 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/04(土) 21:41:21 ID:FCRwwKLa
作ってみた。レイアウトの出来は期待しないでよねっ!

ツンデレのエロパロ保管庫
ttp://www37.atwiki.jp/tunderesure/

過去ログを全て見て、投下されていたものは全て保管した。抜けがあったら修正ヨロ。
イラスト・79氏のLe Souhait(しのた編、たると編) のzipは持ってないので保管せず。

SSだけまとめてみたから、質問コーナーは保管してない。
その辺をどうするかは、みんなで決めてくれ。
381 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/04(土) 22:44:48 ID:tmwIrn1Z
>>380
よくやった、同志380。
俺の処女と俺の童貞、好きな方を選べ。

さて、質問コーナーの処遇をどうするかの議論を始めよう。
俺はあった方が良いと思う。
地味に本編の重要な話もあったりするし。
382 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/04(土) 23:41:31 ID:VQqmH/83
>>380
あなたが神か。ありがとう。

質問コーナーも欲しいな。少し手を加えないといけないが。
例えば、省略された[]内をちゃんと書くとか。
383 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/08/05(日) 06:37:17 ID:batCgCXW
>>380「ようやく出したわね、この遅漏!!!あんたはいつも遅いのよバカ!!ノロマ!!へたれ腐れちんこ!!不能予備群!!」


「・・・もっと早く出してくれないと一緒にイけないじゃない・・・バカぁ・・・」


「次は・・・一緒に・・・イってね?」


「大好き!愛してる・・・」



こんな妄想が大爆発するほど嬉しかった。
>>380 1兆と2千億年前から愛してる。
384 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/05(日) 15:49:59 ID:Z1WRkD+E
>>380
ちょっと思ったんだが、ハーレムスレやオカルト娘スレの保管庫みたいに、スレが丸ごと貼ってあったりしたらどうだろう?
これなら、●無くても編集出来るし、当時の空気を感じる事も出来ると思うんだが。
だいたいこんな感じ。

ハーレムスレ保管庫
ttp://marie.saiin.net/~mcharem/harem.htm
過去ログ
ttp://marie.saiin.net/~mcharem/haremlog01.htm

オカルト娘スレ保管庫
ttp://tsukinowa.s1.x-beat.com/occult/
過去ログ
ttp://ascii2d-dr.s3.x-beat.com/occult/11.html
385 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/05(日) 17:05:21 ID:kMtxCWaD
wikiは1ページあたりの容量が大きすぎると保存できないみたいだぞ。
以前、20レス分のSSを1ページにまとめようとしたらエラーになった。
386 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/05(日) 23:39:14 ID:Z1WRkD+E
http://www1.atwiki.jp/guide/pages/137.html
こんな感じらしいが、俺にはよくわからん。
実際にやるとしたら分割して収録って事になるのかね。
幸い、ページ数に関しては規制が無いらしいから、やろうとしてやれない事は無さそう。
かなり七面倒くさいだろうがな。
387 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/06(月) 00:32:29 ID:WhwAQtmx
まあ、出来ただげでもおk。
html化された奴とか張るぐらいならなんとかならんかね?よくわからんが。

とりあえずツルカメ2話に間違い発見したからそのうち直すか。
388 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/08/08(水) 05:26:15 ID:CWX8CGvg
アゲ
389 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:06:18 ID:jfT22OlG
投下しますよ
390 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:07:49 ID:jfT22OlG
「ニンニクとニラとレバーとマムシドリンク、赤ワインと。あぁ、その前に」
 先に本屋に寄らないといけないか。三階の本屋は通路が狭いから、荷物を持って歩くと
他人の邪魔になるだろう。それにしてもツルも妙なものを読むと思う。今日頼まれた本も、
新感覚推理小説自滅探偵シリーズ『えぇい、儂は部屋に戻るぞ!! こんな誰が殺人犯かも
分からん状況なのに一緒の場所になど居られるか!!』というものだ。以前に一度、ツルに
勧められて読んでみたのだが序盤に探偵が殺されるのはどうかと思った。このシリーズは
他のものも似たような内容らしく、毎回探偵役が死ぬので新刊が出る旅に主人公が変わる
のだという。僕の理解している推理小説と違う、と言うかこれは推理小説の中に分類して
良いのだろうか。だから新感覚なのだとツルは主張していたが、どうにも難しい問題だ。
 そう考えながらエレベーターを待っていると、聞き慣れた声がした。
「あ、カメさーん!!」
 呼ぶ声に振り向けば、緩やかに波打つロングの金髪を持つ少女が満面の笑みを浮かべ、
大きく手を振っているのが見える。その度に豊かな乳が上下に動いて存在感を強く放ち、
周囲の男共の視線を釘付けにしていた。こんな人混みの多い場所で揺れる乳を見せ付ける
など、実にけしからん。センスには見られて喜ぶような妙な性癖は無いだろうから、その
恥ずかしい状況を僕が解決してやるしかないだろう。僕はセンスに近付いて乳が揺れない
ように鷲掴んで固定、だが次の瞬間、いきなり頭部に強い衝撃が走った。その痛みに振り
向けば、またしても巨乳の女性が立っていた。センスと同じウェーブの金髪を肩口で切り
揃えたその人は、垂れ目がちなセンスとは対照的な鋭い釣り目をこちらに向けている。
391 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:09:57 ID:jfT22OlG
 年は三十の手前だろうか、どことなくセンスと似た顔をしているその人は、
「お姉さんですか?」
「あ、ママ。いきなり殴ったら駄目デスよ」
「母親だと!?」
 馬鹿な、どう見ても高校生の娘を持っているようには見えない。それにアメリカ的母親
といったらビア樽のような体型の穏やかな人物相場が決まっているというのに、根底から
概念が崩されてしまったような気がする。それにしても良い乳だ、大きさはセンスよりも
上なのに垂れていないし、全体的な雰囲気が何ともエロい。露出が少ない服装なのに体の
ラインが分かるし、特にロングスカートで覆われた両足は抜群の曲線を描いている。
「センスに聞いていたよりも頭がおかしい男の子ね。会っていきなり体を見るのは失礼よ」
「すいません、つい。あまりにも美しかったので、目を奪われてしまいました」
 言うとママさんは余裕の笑みを浮かべ、こちらの頭を撫でてくる。
「口説いても何も出ないわよ?」
 これが年上の力か。
 このまま胸に顔を埋めたくなってしまったが、人妻に手を出すのは御法度というものだ。
それに相手はアメリカ人、下手をしたらアメリカ仕込みのマーシャルアーツを叩き込まれ
てしまうかもしれない。それだけなら痛いだけでなくエロさもあるのでまだ耐えられるが、
これがいきなりピストルでも出されようものなら即日アウトだ。日々ツルやセンスの打撃
に耐え続けている僕でも、流石に鉛弾を受けたら生きてはいられない。
「ところでカメさんは買い物デスか?」
「そんな感じ、晩飯が楽しみだ。そっちは服でも買いに来たのか?」
 尋ねると、驚いたように目を丸くした。
「どうして分かったんデスか?」
「最近また乳が大きくなってきただろう。だから下着でも」
 センスとママさん、二人に殴られた。
「ママ、やりすぎデスよ?」
「センス、一つ教えてあげるわ。人間下を見たらキリが無いのよ?」
 センスも僕を殴ったとかママさんも初対面なのに随分と失礼なことを言うとか言いたい
ことは山程あるのだが、ママさんの迫力に負けて何も言えなかった。親子でこんなに差が
あるのは珍しいと思うが、よく考えてみたら僕も人のことは言えないことに気が付いた。
ツルは叔母さんにそっくりだが、僕の方は両親のどちらとも似ていない。
「それでカメさん、せっかく会ったんデスし、一緒に回りまセンか?」
 僕は頷き、
「いざ下着屋に」
 また殴られた。
392 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:15:20 ID:jfT22OlG

 ◇ ◇ ◇

 食品売り場や本屋に寄ったりとデートと言うには地味過ぎるコースを回った後、センス
の強い要望で向かった先はゲーセンだった。ワンコインで最新のシューティングをクリア
したホクホク顔のセンスを見ていると、こちらも和やかな気分になってくる。
「満足したか?」
「はい、それはもう」
 にへら、と笑みの形に崩れた表情でジュースの缶を傾けるセンスを見て、一つ気付いた
ものがあった。ミチルのように食べ物を扱う場所でバイトをしている者は例外になるが、
この年頃の殆んどの女の子は爪がそれなりの長さを持っている。勿論それが全ての女の子
に当てはまる訳ではないが、男のように短く切る者は多くない。ごつごつした男の手とは
違って華奢で繊細な指を持つ女性の手は、指先の丸さが出ると少し不格好に見えることが
あるからだ。指が太く見えたりもするので、爪を少し伸ばし指先を隠していることが多い。
だがセンスは真面目という性格を抜かして考えても、少し短いような気がした。若干では
あるが普通よりも深く切っているし、また空手などをしていることもあり、意識して手を
観察してみると男の手のように見えないこともない。それは僕のものと比べると、やはり
女の子のものだ。だが雰囲気というか、細かな部分で女の子のものとは違っている。
「どうしたんデスか?」
「いや、珍しい手だなって」
「あんまり見ないで下サイ、恥ずかしいデスよ」
 頬を赤らめて手を下ろしてもじもじと指を動かす、その細かい仕草は女の子のものだ。
では何が理由かと考えて視線を巡らせ、一つの篋体を見たときに気が付いた。
393 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:20:01 ID:jfT22OlG
 それは先程センスが頑張っていたシューティングの篋体で、今は別のプレイヤーが巨大
なボスを相手に連打を重ねているところだった。左手でレバーで自分の機体を振りながら、
右手は高速でのボタンの押しを連続させている。上下に指を動かして叩くのではなくて、
パネルに指先を当てたまま左右にスライドさせて、だ。摩擦を減らす為なのか、指先の肉
ではなく爪を当てての行為。普通ならば爪が割れるような行動だが、そのことへの躊躇い
が無いのは注意深く見てみると気付く爪の短さ故か。なんとなしに他の篋体を見てみても、
激しく指を動かすプレイヤーの殆んどが自分の指先をあまり気遣わない動きでキャラなど
を暴れさせていた。それら全員に共通している部分と言えば、やはり短く切り揃えられた
爪だった。そうした視点で見ていて気付くのは、一つの事実。
「センスも、本当にゲームが好きなんだな」
 訊いた訳ではなく実感の意味を込めて言っただけなのだが、その言葉にセンスはこちら
の瞳を覗き込んできた。意図的にしたのだろうか、真正面から合わさってきたサファイア
のような二つの澄んだ青が、強い意思を持って視界の中心へと固定される。
 数秒。
「大切にしたいから、デスよ」
 間を置いた後に、センスは言葉を続けた。
「わたしが何で空手をしているか、知ってマスか?」
 僕の記憶が確かなら、エクササイズとして空手をしていると言っていたような気がする。
その他に剣道長刀弓道とあらゆる距離に対応出来るように学んでいたのを聞かされたとき
は驚いたものだが、それがゲームと何の関係があるのだろうか。ベクトルも内容もゲーム
とは全く違うものだし、共通点と言っても、センスが夢中になっているということ位しか
思い浮かばない。その僅かな共通点とて、センスのことを知らない存在からしてみたら、
消えてしまう程度のものなのだ。
394 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:22:44 ID:jfT22OlG
 首を傾げる僕から目を反らして空中を見上げると、友達の証なんデスよ、と言葉が続く。
「エクササイズが理由っていう理由は、まだ半分なんデス。わたしが11歳のとき、パパが
テンキンゾクになりまシタ。そのときにわたしは一杯泣きまシタ、大好きな友達と別れて
しまうのが嫌だったんデス。そのときの友達の一人のエミリィちゃんが、わたしに教えて
くれたのが空手でシタ。いつもカメさんに使う、あの正拳突きデス」
 成程、これを覚えていれば、いつでも思い出せるという訳か。チーちゃんが僕と一緒に
よく行っていたエロ本墓場のことを気にしていたのと似たようなものだろうか。
「剣道はコロラド州のアリスちゃん、長刀はテキサス州のマレッタちゃん、弓道はユタ州
のクリスちゃんから教わりまシタ。後はヨークシャー州でカポエィラをエミリアちゃんに
教わったり、バージニア州ではテコンドーをシェイラちゃんに教わったり」
 ちょっと待て、何で全員格闘系なんだ。
「どれも毎日、練習を欠かしたことはありまセン。大晦日のときも」
 寝不足でそんな練習をしたら、それは確かにブッ倒れるだろう。だがそれだけの価値が
あるものだ、ということでもある。だがゲームとそれと、どこに繋がりがあるのだろうか。
「カメさんと仲良くしようと思ったきっかけ、分かりマスか?」
「いや、何か気付いたら馴染んでいたような」
「最初にカメさんの家でやったゲームデスよ、とても楽しかったデス」
 思い出した、確か操作を教えたときに偉く喜んでいたような気がする。
「皆と共通の遊びが出来て、とても嬉しかったんデス。だから、こっちでの思い出として
続けよう、と思ったんデスよ。嫌がって泣いて拒絶していたわたしにも変わらずに接して
くれたカメさんとも仲良くしていこうって、そう決めたのもそのときでシタ」
 そんな理由があったのか。
「そして、カメさんに教えて貰ったものがもう一つあるんデスけど」
 はて、何だろうか。
395 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:24:38 ID:jfT22OlG

 ◇ ◇ ◇

 ここはデパートから徒歩数分のラブホテル、その中のランクが高めの一室だ。出来れば
こんな展開は避けたかったのだが、『どうしても』と乞われて、こうして来てしまった。
それだけなら何とか説き伏せたのだが『これが最後になるかもしれないデス』と言われて
無視出来る程、僕は悪人ではなかった。センスの性格からして狙った訳ではないだろうが、
ゲーセンでの『繋がり』の話を聞いた後では、それは尚更だった。
「わぁ、広いデス。それにベッドもフカフカで、それにカラオケまでありマス!!」
 随分なはしゃぎようだ、そんなに珍しいのだろうか。僕はアメリカに行ったことがない
ので向こうの内装がどうなっているのかはAVの中でしか知らないが、こちらの国の方が
充実していると聞いたことがある。センスは向こうの国に居たときは入ったことが無いと
いうが、それを抜かしても楽しいことには変わりないようだ。ここにどれだけの差がある
のか少し興味があるが、分からないのは少し残念だ。
「あ、冷蔵庫がありマスよ。ジュース付きデス!!」
「勝手に抜くなよ、抜いた時点で料金が発生する。テレビは無料で見放題だが」
『Oh, ohh!! I'm come'ing!!』
 言うなりセンスはテレビを点けたが、いきなりのハメ映像に涙目になってこちらに振り
向いてきた。アメリカの深夜番組では毎日のように流れていると思ったのだが、どうやら
センスは耐性が低かったようだ。過去にも何度かしているし、これから同じことをすると
いうのに何とも不思議な娘だ。だがそこがセンスの長所かもしれないとも思う。どこまでも
純粋で純朴で、現実を有りのまま理解し、そして受け止めている。反応は様々なものだが、
共通している部分は『素直』というところだ。
「カラオケは無料デスか?」
「ここは無料だった筈だけど、残念なことにアメリカ国歌は無いぞ?」
 また涙目になったが、何を見付けたのか再び笑みを取り戻す。
「凄いお風呂デスよ!! ジャグジーやバブルバスも出来るみたいデス!!」
396 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:26:42 ID:jfT22OlG
 そう叫んで風呂場に駆けてゆくと、楽しそうに蛇口を捻る。鼻唄に合わせて尻が揺れ、
短いスカートの中の下着が見えそうになっていた。あくまでも見えそうで見えないのだが、
そこが逆に良い。自分から覗きに行く場合は別だが、受動的な立場の場合は露骨にパンツ
が見えるなど邪道以外の何物でもない。寧ろパンチラどころか、見えない方が良い。
 数秒。
 これはいかんと思い、
「ところでセンスよ」
 つい眺め続けそうになっていたが、思考を真面目なものへと切り替えた。少し残酷かも
しれないが、じっと待っているのは性に合わないしタイミングを図ってばかりいたら前に
進めないような気がしたからだ。それにこれは僕だけでなくコイやツルなど皆にも関わる
大事な話だ、はっきりとさせておいた方が良い。
「ここに入る前に話していただろ?」
 それはホテルに入る前から、ずっと気になっていたこと。
「最後かもしれないって、どういうことだ?」
 びくりとセンスの背が震え、こちらに向けられていた顔がバスタブに戻る。センス自身、
あまり意識したくなかったことかもしれない。だがこれは、意識して見なければいけない
問題なのだと思う。それ故に、僕とセンスはこんな場所まで来たのだから。それに素直と
いう言葉を体現したかのようなセンスがする誤魔化しの行動は、はっきり言って違和感の
塊のようになっている。どこまでもセンスらしくない。
 沈黙。
「わたしがこっちに来た時期を、覚えてマスか?」
 確か、五月の初めだ。
「わたしが覚えている格闘技の数、少し計算してみて下サイ」
 ゲーセンで聞いたのが全てなら、確か六つ程。
「あ」
 何と無く、センスの言おうとしていることが理解出来た。センスがこれまで回ってきた
土地はここを合わせて計七ヶ所、平均すると一年間で一ヶ所を回ったことになる。そして
ここに居た期間は約一年程、つまり今までのパターンから考えると後数ヵ月でこの土地を
離れることになるかもしれないのだ。
397 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:28:34 ID:jfT22OlG
「分かりまシタか?」
 振り返った表情は辛うじて笑みの形になっているが、いつもの明るさや強さが足りない
ものだった。その表情のままセンスは立ち上がると、服を脱いでゆく。
「思い出作り、には少し早いかもしれまセンけど」
 僕も無言で服を脱ぎ、センスへ近付いてゆく。そして薄く目を伏せた彼女に近付いて首
を掴み、そのまま一気に捻りを加えて投げた。ずぶねり、という相撲の技だ。別に格闘技
ということにこだわった訳ではなく、キスをすると見せかけるには、と考えたときに思い
付いたのがこれだったというだけだ。深い意味は無い。
 バスタブには湯が溜っていたのが見えたので、打ち身などの心配はなかった。二人分の
体積と重量を受けた湯は、大きな音と水柱を上げ、僕達の体に降り注いだ。
「馬鹿だ、お前は馬鹿だ」
 本当に馬鹿だ。
「これから確かに別れるかもしれないけどな、でも、今生の別れじゃないだろ? それに
先のことばかり考えて不安になって、それでヘコんでたって意味ないだろ!!」
 数秒。
 暫く呆気に取られていたような様子だったが、センスは顔を自然な笑みへと変化させた。
背を震わせて小さな笑い声を漏らし、続いて僕の頬を両手で挟んで固定するとアメリカ的
にキスを連続させてくる。頬に、鼻の頭に、首筋に、唇に、躊躇わずに何度も何度もキス
を重ね、あるいは甘噛みするようにして喜びの感情を示してくる。
「そうデスよね、ありがとうございマス!! だからカメさん、大好きデス!! ところで」
 何だろうか。
「その、固くなったおちんちんが当たってるんデスけど」
「馬鹿野郎、こんなエロい状況で立たない方がおかしいだろうが」
「さっきまで真面目なお話をしてまシタよね?」
「思考と体の反応を一緒に考えるな」
398 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:30:25 ID:jfT22OlG
 どうしてこんな質問をするのだろたうか、不思議な娘だ。しかし疲れて論理的な判断が
出来なくなっていたんだろう、センスに罪はない。これからのことで不安もあっただろう、
これ以上責めるのは酷というものだ。
「因みにカメさんの思考は?」
「センス転校乳乳尻乳尻乳乳」
 無言で殴られた。
「まぁ、そんなカメさんも含めて好きなんデスけどね」
 嬉しいことを言いながら、センスは股間に顔を埋めてくる。プール嫌いな上に泳げなく、
また体も小さいなど様々な理由がありツルでは不可能だった潜望鏡だ。湯に顔の下半分を
沈め、こちらを上目遣いで見上げながらセンスはストロークを開始する。これは湯が鼻に
入ってきたりもするし、簡単に息継ぎが出来ないので実は結構慣れが必要らしいのだが、
流石は優等生のセンスなだけのことはある。開始の数秒間は少し手間取ったようだったが
すぐにコツを掴んだらしく、大して苦しそうな顔をすることもなく舌の動きを連続させる。
頭を上下に動かすと目に湯が入ってくるらしく、基本の動きはストロークを止めて舌での
刺激に重点を置いたものになった。たまには深く飲み込んできたりもするが、舌で擦って
くるのが殆んどだ。その代わりに、余すところなく全体をねぶってくる。
「気持ち良い、デスか?」
 頷き、センスを見つめて気付いた。
「随分とエロいな」
「せっかくなので、もっとアグレッシブになろうかと思いマシて」
 本場の出身だから言葉の意味を間違えることは無いだろう。アクティブ『積極的』では
なく、アグレッシブ『攻撃的』らしい。言いながらも、センスは自らの股間を指で慰め、
ツボに来たらしいタイミングで尻を揺らして大きく湯を揺らしている。水中の行為なので
粘度のある独特の水音は聞こえてこないものの、しかしフェラをしていたときよりも強く
なった波が体全体に、確かに行為を伝えてきた。
399 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:32:17 ID:jfT22OlG
「あの」
 不意にそれが止み、
「そろそろ、入れてほしいデス」
 その性格上、はしたない、と思っているのか湯船に入っていること以上に頬を赤らめて、
可愛くおねだりをしてくる。そして一旦体を離すとこちらの肩に手をかけて目を伏せて、
ゆっくりと唇を重ねてきた。それに応えるべく、僕もセンスの頬を挟んで舌を唇の間へと
割り込ませてゆく。今度はずぶねりなどをせず、ただセンスを求める為にキスをする。
「嬉しいデス」
 えへへ、と小さな声を浴室にリバーブさせ、センスも舌を伸ばしてきた。互いに口内を
貪り、舌を絡ませ、存在自体を味わうようにしてキスを続ける。別れてもまた会えるし、
日常としての部分を言うならば明日学校でも会うことが出来る。しかし離れたくないと、
言葉にはしていなくても、そう言っているように感じた。
 息継ぎに唇を離したのを合図に肩から胸、脇腹を通って細い腰へと両腕を伸ばし、
「入れるぞ?」
 浮力で普段より軽く感じるセンスの体を抱えると、肉棒の先端を割れ目に当てがった。
抱き締めるようにして腰を手前に引き込みながら、僕も腰を突き出して一気に深いところ
まで埋めてゆく。何度か経験もしているし、湯の中なので普通にするよりも幾らか負担も
少ないだろう。そう考えて、湯の抵抗を無視するようにやや激しくグラインドを開始した。
腰を跳ねる度にワンテンポ遅れて逆方向の波が作られ、水面に浮かんだ豊かな二つの胸が
それに合わせて左右に揺れる。見ていて何とも気分の良い光景だ。
「や、あんまり、見ないで、下サイ」
 成程、揺れるのを見られるのが嫌か。
400 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:33:40 ID:jfT22OlG
 センスの意見を尊重し、腰を抱いていた腕の片方を離して胸へと移動させた。揺れない
ように掴んで固定すると、ゆっくりと指を食い込ませてゆく。布越し状態で何度も揉んだ
ものだが、やはり生は一味違う。すべすべとした感触や、いつもよりも少ない力を込める
だけで形が変わるのが堪らない。それを堪能しながら、反対の胸へと顔を埋めた。両手を
腰から離すと自由に動かせなくなるので、代わりに唇と舌で胸を固定する。固くしこった
乳首を吸い、甘噛みし、丹念に周囲をなぞりあげてゆく。その度にセンスの腰がびくりと
震えて、膣内の肉も淫らに踊り狂う。体勢上表情は見ることが出来ないが、途切れること
なく響く甘い声。唇から垂れているのだろう、不規則な感覚で降りてくる透明な糸のお陰
でなんとなく予想は出来た。僕以外が見ることはない、いつもの雰囲気を裏返したような、
寒気を感じる程に艶やかなものだ。それを脳裏で思い描くと、背筋が震えた。
 は、という声が聞こえ、頭に細い腕が回される。見た目は華奢な普通の女の子の腕だが、
伝わってくる感触はしなやかなもの。アズサ先生のものに似ていたが、それよりも脂肪は
少なく、鍛えられたものだと感じることが出来るものだ。それとは対照的な感触の胸へと
顔を強く押し付けられ、気持ち良いと言うよりも不思議な気分になってくる。その行為で
更に気持ち良くなったのか喘ぐセンスの声が一段と高くなり、膣内が痙攣して締め付けを
強くする。僕も少しタイミングが遅れる形になったが、ほぼ同時に絶頂に達した。
「いっぱい、出まシタね」
「……出ましたよ」
 今日のセンスは危険日と記憶していたのに、対面座位で押し付けられていたので膣内に
出してしまった。そのことに後悔があったが、出された本人は悪い気分ではないらしい。
鼻唄を歌いながらセンスはバスタブから上がり、垂れてきた白濁液を流そうとシャワーを
股間に当てて悶えている。それを僅かばかりの希望と思いながら少し面白い光景を眺めて
いると、不意にこちらに振り向いた。しかし眺めていた僕を咎めるのではなく、瞳にある
のは純粋な、いつもの気軽な質問をするときに浮かべる疑問の色だ。
「あの、わたしが言うのもアレなんデスけど」
 何だろうか。
「買い出しは大丈夫デスか?」
「あ」
 晩飯を作れずに苛々しているツルの姿が脳裏に浮かび、僕はバスタブから脱出した。
401 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:35:22 ID:jfT22OlG
亀「『ツルとカメ』質問コーナー!!」
水「今回は三枚の葉書と、十一個のレスを御紹介!!」
亀「ゲストはセンス!!」
扇「お久しぶりデス」
亀「本当にな。だから今回はサービスとして他のヒロインが出なかった訳だが」

>>344
亀「確かに黒髪と貧乳は相性が良いな」
扇「着物とかデスね?」
亀「水樹とかな」
水「何で!?」
亀「でも作者は幼女は好きだが貧乳はあまり好きではない、と」
扇「水樹さんは良いんデスか?」
亀「ちんこ付いてるからセーフ」
水「何でさ!?」

つ[]さて…〜
水「してるの?」
扇「と言うか、あのサイズって鼻に入るんデスか?」
亀「無理だろう、普通に。それに個人的に変態プレイは好きじゃない」
扇「確かにセックスの時は比較的まともデスね」
水「それでもたまにブッ壊れるけどね」
亀「失礼な。ユーモアを大切にしたいだけだ」

つ[]センスへ「同じ金髪〜
扇「尊敬してマスよ、少し怖いデスけど」
亀「最初の印象の問題か」
水「呼び出されたカメに着いて行ったのがファーストコンタクトだしね」
扇「でも、とても良い人デスよ?」
水「そうだね」
亀「レズでSでMだけどな」

つ[]カメへ「こんなに〜
亀「いや、それは無い」
水「うん、プロットには書いてないね。今のところ」
扇「今のところ!?」
水「いや、作者の気まぐれで話が変わったことは過去にも何度か」
扇「残念な話デスね。カメさん、成仏して下サイ」
亀「死んでねぇよ」
402 名前: 『ツルとカメ』×47 [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:36:24 ID:jfT22OlG
>>370-372
亀「モテモテだな」
扇「そんなに言っても何も出まセンよ?」
水「意外とクールな反応だね」
亀「慣れてるだろうからな、実は校内でも結構モテるし」
水「そう言えば何気に『ツルとカメ』の中で一番スペック高いしね。アメリカの力?」
亀「いや、作者の金髪巨乳外人補正だ」

>>373
水「あたしは男だよ!!」
亀「久しぶりだな」
水「そうだね」
扇「わたしはどう反応したら良いんデスか?」
亀「気にするな、いつものことだ」
水「残念だけどね」

>>375-379
亀「まとめてですみませんけど、ありがとうございます」
水「平仮名ばっかりだね」
扇「それよりも、作者さんを嫁って」
亀「見たら駄目だ」
水「改めて言うけど、作者は男だよ」
亀「たまに腐女子臭いけどな」
水「言ったら駄目だって」
扇「腐女子って何デスか?」

>>380
水「ありがとうございます!!」
扇「ありがとうございマス!!」
亀「作者は嬉しさのあまり失禁脱糞して、泣きながら掃除したらしいな」
水「嘘だよね?」
亀「…………」
水「何、その無言は?」
扇「嘘、デスよね?」

亀「さて、今回の『ツルとカメ』も終わり。次回の主人公は一真」
水「主人公?」
亀「ヒロインは円谷さん」
水「お隣さん?」
亀「作者恒例の思い付きネタ話だ。個性は強いのに空気だから、主人公にしたかったとか」
水「良いのかなぁ?」
亀「次回一真の純情恋物語、乞う御期待!!」
水「来週も見てね、『ツルとカメ』でした!!」
403 名前: ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:38:11 ID:jfT22OlG
今回はこれで終わりです

もう残り五回とか、月日が経つのは早いですね
404 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 01:40:24 ID:MCRJ6bzm
>>403
一番槍GJ!
カメも種撒きすぎて刺されたりすんじゃねえぞ。

>亀「確かに黒髪と貧乳は相性が良いな」
大好物です。
黒髪・長髪・貧乳 二見さん万歳!
405 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 03:08:54 ID:QsOpQ9g2
センスハァハァ

しかしeは省略するんじゃないのか
406 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/08/09(木) 03:33:20 ID:LtqK8DzY
GJGJ!!!センス最高だよセンス

つ[]>>対面座位だったので〜〜危険日に〜〜

カメ、お前はもちろんセンスも妻にするんだよな?
こんなにセンスに愛されて幸せな奴だな。
407 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 05:50:29 ID:DaAjkahX
>>403
四番エースGJ!

つ[]<カメ、ハーレムルート逝け。誰も悲しませんな、みんなを幸せにしろ。
408 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 19:03:00 ID:I1BOj/pH
5番ファースト清原GJ!

センスの印象がかなり変わった俺変態><;

っ[]<レインボーブリッジ封鎖できません!
409 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 22:56:13 ID:ZZ+wf+1g
大丈夫、エアメールで
「日本で産みます」
ってお腹の大きいセンスの写真付きで届くから
410 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/11(土) 00:32:43 ID:eVyCN3qZ
センスはかなり腹ボテが似合いそうだなww
逆に他のヒロインは恐ろしく似合わない印象だが、俺の脳内では
特に合法ロリのツr(ry

それとロボさんの作風もあるんだろうけど、なんとなく
カメにはハーレムルートは似合わないと思った

つ[]真子タソはもう出てこないの?
411 名前: 名無しさん@ピンキー [age] 投稿日: 2007/08/13(月) 04:26:49 ID:iTVN28j2
上げ
412 名前: 79 ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:19:44 ID:1Hq0/YT2
|ω・`)ジー
413 名前: 79 ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:32:26 ID:1Hq0/YT2
|ω・`)ダレモイナイ・・・トウカスルナラ イマノウチ
恐ろしく長いです。リドル○ナ大灯台並に長いです。

しかも濡れ場二つしかないです。連投規制ごめんです。
テーマは日曜洋画劇場(うそ)。テーマ曲は天体観測(たぶん)。
414 名前: 79 Le souhait last_escape(1/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:33:48 ID:1Hq0/YT2
俺の名前は江口 遥(えぐち はる)。あだ名はハロ。
誰が自己紹介しろって言ったよ。いちいち思い返してみなくても名前は変わってないよ。頭でも打ったか。
「だーっ!」
布団を跳ねのける。
夏の朝。性懲りもなく今日も快晴。そして猛暑。とても寝てなどいられない。
暑さで目が覚めるというのは本当に嫌だ。
まだ鳴っていない目覚まし時計のアラームを止める・・・まだ五時だ。
部屋は熱気が充満していて暑い。更に、カーテンを貫通する日光も相まって、灼熱の空間を形成している。
ラクダも干からびる。体感温度としては七、八千度ぐらいだろう。
とりあえず部屋を出る。
「シャワー浴びよう」
このままじゃ死んじゃう。まだ若いのに。

寝汗を洗い流しさっぱりした後に、予めつけておいた冷房のつめたいいきが迎えるという連鎖関係は神。
リビングは天国、いや、神と化していた。
ううん。ここはリビングなんかじゃない。花と緑のサンクチュアリ。
などという妄想を抱きながらタオルで頭を拭いた後、ソファーに体を沈めるのであった。
チャ。
「あ、おはよぅおにいちゃん。早いね・・・」
と、朝から三文の損をして起きてきたのは、義妹の由梨。
寝るときの抱き癖が治らない彼女は、
「枕置いて来いよ」
「へ?・・・あっ!」
などと言って舞い戻る事がたまにある。
「若年寄って若いの?」などというわけの分からん質問をする彼女は、いわゆる天然である。
――両親の不和が原因で、俺が一人この家に残るかどうかというところで、「一緒に残る!」と言って
聞かなくて、それで現在はこの家に二人で暮らしている。考えてみると、大分不思議な話だ。由梨も、
父は違うとは言え妹も居るし、ああしなければ今頃は江川の実家で恙無く過ごせたろうに。毎日
ごはん作ったり洗濯したり大変だなあ、と。それで嫌そうなそぶりも見せないんだけど。
そんな由梨と出会ったのは・・・って、それはまた別の話。
由梨が戻ってきた。
「シャワー浴びたらどうだ?」
そしてさっぱりするがいい。
「それじゃあ朝ごはん遅くなっちゃうよ?」
ここで「じゃあ俺が作るよ」なんて気の利くこと言えたらかっこいいけど、でもそれは憧れなんだぜ。
「別に、遅くなっても構わないけど?」
ハロは にげだした!
「んー、じゃあ浴びてくるね・・・」
眠たげにそう言って、由梨はリビングを出た。
「さっきまでの同情はどこへ」
と呟きながら、テレビをつけた。強くなれ、由梨。

炎天下。
直射日光。
照り返し。
このサ○゙系ゲームのような夏の連係プレーに見舞われたら、いくら強靭な戦士でもひとたまりもない。
帰りたい。
家を出て数十メートルの地点でそう思っていた。
という事は数百メートルも歩く頃には、家どころか無に還りたいと思うかもしれない。
この暑さに、存在すら脅かされている。
ふらふらと歩道を行く。
「?」
何かの気配に気付いて頭を上げると、何かがぴゃっとブロック塀の陰に隠れた。
415 名前: 79 Le souhait last_escape(2/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:34:45 ID:1Hq0/YT2
まあ、それが何なのかはよく知ってますけど、走る気にはならないのでそのまま行く。
蝉がうるさいなあ。カメムシの仲間のくせしていい気になんな。全身日焼けして死ね。
何だよミンミンミンミンと個性の無い。そんなんだから一生童て
「遅い!!」
と、目の前に現れたツインテールの少女。
この少女こそが、ツンこと、月岡 秋奈(つきおか あきな)である。
一時期、筆者の趣m・・・都合で桃色になってしまった髪の毛の色も、今はすっかり栗色。
白いリボンが今日は一段と日差しに映える。
「はい、これ」
言って、怒り狂うツンの眼前に、半分凍った麦茶入りのペットボトルを差し出す。
「え?」
「あげる」
「そのために持ってきたの?」
「そう」
ツンはすこし固まった後、やや乱暴に麦茶を受け取った。
「・・・こんな事ぐらいで許してもらえると思ったら大間違いだから」
とか言いながらキャップをはずす。
「はいはい」
今日みたいに暑い日じゃ、もし待ってるとしたら気の毒だよなあ、と思って持ってきた麦茶は心からの
お詫びであった。
「っていうか、こういう心があるならもう少し急いできなさいよ!バカ!」
ひと飲みして、ツンは再び怒号を飛ばす。
「以後、気をつけるであります」
締まりのない敬礼をして答える。
「ふん・・・」
ツンは怒っているようではあったが、満更でもないような様子で歩き出した。
当然俺も歩き出すが、その前に一瞬ツンの後姿をチェックさせてもらったがそれは故意ではない。
やっぱり、こう暑い日は髪を上げたほうが涼しいよな、とも思った。
けど、それでもニーソックスを欠かしていないのは多分俺のせいだと思います。けどもう時効だ。
「今の麦茶さ、」
「?」
「今日、暑いでしょ?」
「そうね」
「だから、ここに来る前にすこし飲んだんだけど」
「・・・ふーん」
数秒間、間があった。
「これって間接キスだよな」
「あー、言うと思った!絶対言うと思った!」
つかつかと歩き出すツン。
「何よ、子供みたいな事言って。大体今どき、かっ、間接キスなんて流行らないわよ。死語よ死語。
バカみたい。何ニヤニヤしてんのよ。ふん・・・」
だんだんフェードアウトしていく。
それにしても日差しが強いな。ソーラービ○ム撃ち放題だ。
間接キスなんて真に受けるのもツンぐらいなもんだと思うけど。でも意識する姿は可愛い。
「確かにまともなキスもしてないし・・・」
独り言。
「えっ!?///」
ツンの素っ頓狂な声に、ちょっと驚く。
「え、何?」
「な、なんでもないわよ!それより暑いんだからもう少し早く歩きなさい!早く学院に行って
涼みたいから!」
急に早足になるツン。
416 名前: 79 Le souhait last_escape(3/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:35:28 ID:1Hq0/YT2
「ちょ待てよ」
誰にも伝わらなくて封印していたものまねが、今何気に復活した。
――ツンとは幼馴染で、本当に小さかった頃から一緒で、ツンは気の強い子だった。
小学校から中学校に入るくらいのときかな、ツンが今のような性格になったのは。典型的なアレ。
向こうがあんまり意識するから気になってしょうがなくなったな。それから今は正式に付き合ってるけど、
ツンに色々な技術を試させて上手にしてしまったのは間違いなく俺の罪であって、バカそんなもん時効だ。
だって寝相が悪いから・・・いやいやそんな昔の事!知ってる人は少ないから大丈夫だ。

半死半生になりながらも、俺たちはようやく学院に辿り着いた。
始めのうちはそれなりに会話も弾んでいたのだが、後半は殆どお互い無口になってしまっていた。
現に今も、玄関を睨みつつ驀進する二人の姿がある。
「ハロ」
突然、ツンが口を開いた。
「あの車、もしかして・・・」
ツンの向いている方向を見ると、見るからに高級そうな車が、日光を受け黒光りしながら、こちらに
向かって来るのが見えた。
「んなアホな。敷地内だぞ」
俺の手首を掴み、玄関へと走り出すツン。
「オイ、そんな露骨に避けなくても・・・!」
相手が車だとは言え、玄関は目前。
当然俺たちが玄関に至るほうが早かった。ガラス戸が押し開けられ、中の冷たく快適な空気が
俺たちを包み込んだ。
「何とか逃げ切れたわね」
「遥君!」
「ぬわっ!?」
一息入れる間もなく、何者かが背後から抱きついてきた。この感触は、理緒だ!
「理緒!何でここに!?」
「理緒はいつもハロ君の傍に駆けつけますわ!」
言いながら、俺にぴったりと体を寄せる。
ツンの目の前とは言え、背に当たる柔らかい感触と、髪から香る芳香に、この俺が抵抗できるわけもなく。
「ちょっと、離れなさいよ!」
ようやく状況を把握したツンが、理緒を制止する。
「あら、居ましたの?」
などとわざとらしい事を行って、ぱっと体を離す理緒。こと、輝青院 理緒(きしょういん りお)。
――幼い日、俺とツンと理緒はよく一緒に遊んだものだった。
理緒の俺を独占しようとする態度が、ツンには昔から気に入らなかったようで、このやり取りもテンプレです。
とは言え、理緒は高校に上がる前に引っ越してしまったから(そのため、理緒は蕪雲がつけたあだ名『ハロ』
を使わない)、最近ここに戻ってくるまでは何の音沙汰もなかった。ちなみに、俺を調教したのも理緒である。
言うには、決められた結婚を断るために、俺と結婚しに戻ってきたとか。・・・って、それはまた別の(ry
「オトリを使うなんて卑怯よ!」
「手段は選びませんの」
と、茶色がかったブロンドを掻きあげる。
「こんな日に抱きつくなんて、暑苦しくて迷惑するに決まってるじゃない」
「そんな事、愛があれば関係ございませんわ。遥君も嫌がってませんでしたし。ね、遥君?」
にこ、と理緒は笑顔を向ける。
「ああ、いや、うん、別に・・・」
ギロ、とツンが怒りのまなざしを向ける。
「そう、だな。勘弁して欲しいな」
目こそ合わせなかったが、ありゃあ鬼の目だ。おらぁびびっちまっただよ。
「お嬢様」
「ぬわっ!?」
417 名前: 79 Le souhait last_escape(4/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:36:25 ID:1Hq0/YT2
「お鞄をお持ちしました」
「ありがとう、緋柳」
緋柳と呼ばれた女性は鞄を渡すと軽く会釈をし、足音も立てずに外へと出て行った。
あの人はいつも無表情だ。そしていつもメイド服だ。その服のまま車を運転し、理緒を送り迎えしている。
よく覚えてないけど、昔は従者は違う人だったような。
っていうか、あの服で暑くないんだろうか。
「さ、行くわよ。ハロ」
グイ、と左の手首を引くツン。
「行きましょう?遥君」
グイ、と右の手首を引く理緒。
「朝から全国的に真っ二つの予感」
俺は二人に引っ張られて右往左往しながら教室に向かった。
周りに人がいなかったのがせめてもの救いだったな。

が、更に朝早い連中(約二名)が教室で待ち受けているのも、いつもの事だった。
三人並んで教室に入る。
「お、おはよう」
約二名、すなわち別府 蕪雲(べっぷ ぶうん)と日暮 毒男(ひぐらし どくお)は、何か言いたげにこちらを見ていた。
こいつらの妙な連帯感は、俺も未だに少々理解しがたいものがある。決して悪いやつらではないんだけど。
「歌舞○町であんなの見たことある。行った事ないけど」
「たぶん嫌がらせだお」
ツンの席は俺の隣、理緒の席は蕪雲の隣である。
理緒が席に鞄を置いてくるまでの間、二人は黙っていたが、またなにやら話しはじめたようだ。
俺は二人に板ばさみになっていたから、悪友二人には気を配らずに居た。
「漏れのターン!」
と言って、携帯を取り出す蕪雲。
「こいつで一矢報いてやるお」
「何か秘策があるんですか隊長」
「智途様を招聘して昼ドラのようにしてやるお」
「電話番号知ってるん('A`)?」
「なんと、この前直に教えてもらったお」
入力した後、携帯を耳にあてる。
「珍しい事もあるもんだ」
殆ど疑ってはいたが、毒男は携帯に片耳を向けた。
「なーに、ようやく漏れのみりきに気がついたんだお」
数回、呼び出し音が鳴る。
ガチャ。
「漏れだが」
「はい、警察と消防です」
ピッ。
「・・・いや」
蕪雲は首を傾げた。
「道理で桁が少ないなー、とは思ったんだけど、」
「アホの子ですか('A`;)っていうか『だが』って何?」
「きっと番号聞く前の日に留守番電話に四十二件メッセージ入れたのがまずかったんだお」
「暗に『自首しろ』って言ってんじゃね?」
「一件にひとつずつ都道府県名を入れてみた。反省はしていないお」
「ガチで通報しますた。しかも一県足りねえし」
遠くで蕪雲が沈んでいるように見えるが、何かあったんだろうか。
418 名前: 79 Le souhait last_escape(5/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:37:35 ID:1Hq0/YT2
俺たちが通っている熾惺学院は、その名のとおり(?)私立高校だ。
数年前、それはもう何も無かったこの街に、現学院長が「故郷への恩返しをしゅる」と言って、周囲から
ハイリスクノーリターンだのなんだのと騒がれながらも建てられたこの学院には、学院長がそのツテで
集めた優秀な人材と設備のお陰で大発展を遂げた。
それからは鉄道を引くやら店舗が進出するやらと町の景観が大きく変わっていった。
その目まぐるしい変化が、当時小学生だった俺にとってどれほど衝撃的であったかは計り知れない。
その頃理緒が居た事を考えると、家のほうで進出を狙っての下見が目的としてあったのかもしれない。
だが、表にある学院長の金ピカの像(もちろん金色はメッキ)は、ちょっとウザい。
そのウザさにもかかわらず、像にはかすり傷一つついていない。噂ではプロが手入れしているらしい。
陽の光を存分に浴びて輝くそれを窓の外に遠目に見ながら、俺はボーっとしていたのだった。
キーンコーンカーンコーン・・・
「うむ、キリがいいのう。今日はここで終わりにしよう」
などと麻呂のような話し方をするのは、我らがてんてーこと、東雲 泉(しののめ いずみ)である。
童顔で、背が低くて、いつも着物を着ていて、扇子を常時携えている。
見かけは子供っぽいが、話してみると大人としてちゃんとした考え方や意見を持っていることがわかる。
ので、皆『てんてー』と呼ぶなど侮った感じではあるが、心の中では敬意を持っている。
そんなてんてーの担当科目は国語である。英語だったら逆に許せない。
とにかく、昼メシの時間だ。ハデにな。
「俺、なんか買ってくるわ」
「また?もう、ちゃんとした昼ごはん食べないと体壊すわよ」
そう言われても面倒くさいこと風のごとし。
「どうしても、って言うなら」
ツンがためらいがちに切り出す。
「弁当ぐらいなら、つ、作ってきてあげてもいいわよ?」
「マジで!?」
ツンはこくりと頷いた。
「どうせ、一人分作るのも二人分作るのも変わんないし」
「一人分って、じゃあツンは自分の弁当自分で作って来てるんだ。偉いなー」
俺なんか由梨に頼りっぱなしだからな!でっひゃっひゅwwww
「そんなの当然よ。それに、将来、お嫁さんになった時のために、・・・///って、あるでしょ?だからその、
ああもういいから、早く何か買ってくれば?」
ツンは紅潮した顔をそっぽに向けながら、手をひらひらと払うジェスチャーをする。
「ん、じゃあ行って来る」

学院の昼は賑わう。
食堂こそ無いが、購買があるからそこでいつも買い食いをする事にしている。だがそれも今日で終わり。
終わりなのだ。もう手遅れなのだよ何もかも。君との付き合いもこれでゲームオーバーなのだ。
「ハロ」
廊下。誰かが俺の名を呼ぶ。振り返ると、智途が居た。
「今日も買い食いなのか?」
「どうかな?」
「違うのか」
「そうだ」
「・・・何なんだ」
呆れる智途。
長岡 智途(ながおか ちと)。
――話し方こそ女らしくないが、その長く美しい黒髪、凛々しい顔立ち、豊満なバスト、そして美脚。
しのたのように、彼女に憧れる女性とも少なくない。蕪雲にとってはかなり内角高め直球ストライクらしい。
そんな彼女には、更に優れた姉、雪花(せつか)さんが居る。うん、まあ二人にはよく可愛がられました。
姉妹には何か複雑な事情があるようで、なんでも組織がらみで生死に関わる抗争が続いているとか。
・・・って、それはまた別の(ry
419 名前: 79 Le souhait last_escape(6/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:38:40 ID:1Hq0/YT2
「よくここの廊下で会うよな」
「ん・・・まあそれは、お前が・・・」
「俺が?」
「や、なんでもない。気にするな。それより、弁当は持って来てないのか?」
「明日から作ってくることにしたよ」
なんとなくツンの名は出さなかった。
「あ・・・そうか、なら仕方ないな」
何故だか、智途は悲しげにその視線を伏せた。
「こぉらぁー!」
声に振り向くと、そこにはもうダッシュで駆けつけるしのたの姿があった。ザザッ、と俺の前に立ちはだかる。
「智途先輩をいじめちゃダメです!」
「俺は何も・・・」
しのたこと、篠田 美佳(しのた みか)。
――彼女は自分の事をボクと言う。メガネをしている。そして部活の後輩にして、智途親衛隊の一人。
よく諌め、よく動く(バスケ部だったからか)。由梨と仲が良くて、いつも二人で行動している。
そんなしのたには生徒会と縁があって、生徒会とともに、熾惺の生徒の殆どが知らない熾惺の恐怖に
立ち向かっているらしいが・・・って、それはまた別(ry
「いいんだ、しのた」
智途はしのたの肩をぽん、と叩いた。
「でも、先輩!」
「しのたん、待ってぇー!」
息を切らして、由梨がようやく追いついた。
「あ、由梨。丁度良かった。こいつらが俺のことをいじめるんだ。助けてくれ」
と、無茶振りをしてみる。
「そうなの?」
呼吸を整え、しのたの顔を見る。
「違いますよ!先にいじめたのは先輩のほうです。ボクはむしろ庇ったんですよ?」
「でもハロの場合、いじめられるのが好きだからな」
「そ、そうなの?」
俺の顔を見る。
「そんなわけないだろ」
あるけど。って言うか義理とは言え妹に何で今ここで自分の性癖を暴露せなあかんのだ。
「えっと・・・」
以上の情報を由梨の頭の中で整理させるとどうなるのであろうか。由梨はしばらくまごまごした後、
「いじめはよくないと思います!」
と、丁寧語でスローガンを掲げた。
言い放ってガッツポーズのまま固まる由梨を見て、一同はしばらく黙っていたが、
「そうだな、いじめはよくないな」「そうですね」「俺も悪かった」とりあえず合意に達した。
「よかった」
ほっとして笑顔を見せる由梨。
「あ、俺昼メシ買って来なきゃ」
「先輩は予定あります?」
「私は特に無いな」
「じゃあボクたちと一緒にお昼食べましょうよ」
そっちはそっちで話が進んでるみたいだな。じゃ、あっしはこれで。
そう思って去ろうとした時、擦れ違いざまに智途から左腕を組まされた。
「一緒にどうだ?」
ぎゅっ、と俺の腕を抱き寄せる。もし着けてなかったら二の腕の辺りはその谷間に呑み込まれていた
かもしれない。それでも心を揺らすくらいの誘惑が、その温かさと柔らかさにはあった。
「そうだよ、折角だし、たまにはおにいちゃんも一緒に食べよ?」
由梨の発言に悪気は全く無いのだが、俺はもう折れてしまいそうな気がしていた。
420 名前: 79 Le souhait last_escape(7/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:39:34 ID:1Hq0/YT2
その時、どこからかブーンという音が聞こえてきた。
「智途様ゲトォォーーー!!」
とっさに俺から体を離した智途と俺との空隙に、時代を駆け抜ける一筋の旋風がよぎった。
紛れもなく蕪雲だ。まさに風雲児。
はっと気がついた智途の表情を最後に見てから、
「また今度!」
と言って俺は超神速縮地の二歩手前でその場から逃げ出した。
呆然とする場。
智途の怒りの矛先は当然、窓枠を支点にヘの字に体を折り曲げたままほぼ静止している蕪雲へと
向けられた。
智途はその足を持ち上げ、くるりと蕪雲を窓の外へ自由落下させた。
かわいそうな蕪雲ちゃん。でもあなたは丈夫だから、落ちても平気よ。
「さ、昼飯にしようか」
「はい」
「・・・えっ?えっ??」
あまりに誰も蕪雲の心配をしなかったため、由梨には何が起こったのか理解できていなかった。
慣れとは恐ろしいものである。

放課後のことだ。
「先輩」
「ん?」
ここは、THEサンクチュアリ百式-Ver2.01-部の部室。
部員は俺、蕪雲、しのたの三人だけ。ここでは、主にプログラミングを学ぶ事を活動にしている。
ということにしておこう。
「智途先輩、怒ってましたよ。断る理由くらい教えてくれてもいいのに、って」
「・・・。ま、確かにあれじゃ嫌ってるようにしか見えなかったかな」
狭い部室に、パソコンの動作音だけが残る。
「何か理由があったんですか?」
回転椅子をこちらに向けて、しのたは聞いた。
「ツンを、待たせてたから」
回転椅子を半分だけ向けて、俺は答えた。
はあ、としのたはため息をついた。
「そうならそうと言えばいいんですよ。どうしてそう、思ってることを言わないんですか。本当のことを
正直に言ってあげるのが誠意を見せるってことじゃありませんか?相手が好きな人なら、尚更・・・」
普段ならそれは違うだろ、と軽く否定するところだが、今はなんとなく論破されたような気になった。
「悪かったよ」
「ボクに謝ってどうするんですか」
「はは・・・」
しのたに向かい合って、言い直す。
「明日、ちゃんと謝っとく」
しのたはそれを聞いて腕を組み、
「じゃあ、良しです」
と偉そうに言った。
でも俺にはひとつ気になる事があった。
「ところで、蕪雲来てないな」
「まあ、勢い余って窓から転落してましたからね」
「マジで?」
平然と頷くしのた。当然、『勢い余って』の部分は事実無根である。
「でもま、大丈夫だろ」
キィ、と椅子の向きを戻し、両者パソコンに向かう。
慣れとは恐ろしいものである。
421 名前: 79 Le souhait last_escape(8/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:40:22 ID:1Hq0/YT2
帰り道。
部活をサボらない限りは、いつも一人で帰る。サボってもいいんだけど、それだとしのたが怒るからな。
そりゃ止むを得ない場合はサボりますよ。何かの発売日の時とか。ご容赦願いたいのであります。
帰り道には、神社に立ち寄る事がある。そこには俺と奇縁のある少女が住んでいる。
日が長いとは言え、今日ももう真っ暗である。これで神社に通って今まで通報されなかったのが不思議だ。
居る居る。
石段を登った先に見える、縁側に座ってこくりこくりと船を漕いでる金髪アホ毛巫女さん。こと、ウィッシュ。
外人さんか?と思われるような名前だが、彼女は外人でなければ、人間でもない。
――数百年前、当時霊山である事で有名だった、この神社の裏手にある山のふもとを開拓するに際し、
開拓にはどうしても多くの人が山(あるいは谷)を出入りする必要があったので、当時人間の少女だった
ウィッシュ(本名、萩)が選ばれたのであった。ウィッシュが人間であった頃、俺の先祖とウィッシュは
恋仲だったようで・・・って、それはまた(ry
現在、ここは無人の神社と化していて、ウィッシュは拾ってきた三毛猫(名前はポチ)と一緒に日々を
過ごしている。無人の筈なのに常に小奇麗なのが人が置かれない原因だろうか?ウィッシュは普通の
人間には姿を現さないし。
「おい」
「はうっ!?」
素っ頓狂な声を出して飛び起きた。
「お祈りはどうしたお祈りは。願いの精なんだろ」
「むーその言い草・・・」
目をこすりながら不平を漏らす。
「ところで、ウィッシュ」
「ほえ?」
「『ほえ?』じゃない。最近は何か特別な事はあった?」
「うーん・・・最近・・・」
首を傾げる。
「あっ!そう、変な・・・嫌な感じがしたんだった!」
「嫌な感じ?」
「うん、なんだかとっても嫌な、何かが来るの」
「・・・具体的には?」
ウィッシュの深刻な面持ちに、冗談で返してやる事もできなかった。
「あはは・・・よくわかんない」
ガク、とうな垂れさせていただく俺。
ウィッシュはぽん、と手のひらを叩いて、
「そうだそうだ、それで、どうしようかなって考えてるうちに寝ちゃったんだ。思い出した思い出した。
よかったよかった」
と、足をぶらぶらさせて喜ぶ。
「全然良くないぞ」
「なー」
猫の鳴き声がした。足元に目をやると、とてとてと三毛猫が歩いてきた。その口には、何かお守り
のようなものが咥えられている。
「あっ、そうそう、これ!」
ポチからお守りを受け取る。
「これ、お守り」
言われて受け取ったそれが、『安産祈願』など関係の無いものかどうか確認してから聞いた。
「ウィッシュが作ったのか?」
「うん。厄除けのお守り」
「へえ、しっかりしてるんだな」
俺はとりわけ信心深い人間ではないが、願いの精(自称)から直接手渡しされたお守りを否定するほど
背徳的な人間では決してない。つまり、内心は心強かった。
「えへへ・・・///」
422 名前: 79 Le souhait last_escape(9/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:41:20 ID:1Hq0/YT2
「ポチは」
「なっ!」
「だって、ポチが持ってきてくれなかったら渡しそびれてただろ?」
「う。そんな事無いもん」
本気で膨れるウィッシュ。
「冗談だよ」
そっと、ウィッシュの頭を撫でる。
「ありがとう」
「・・・うん」
そんな俺たちを見て、席を外すポチ。あの猫は何気に真摯だ。見習わねば。
手を離した後、アホ毛は頑固にも再びぴょんと跳ね上がった。
「今日、暑いのかな。すごく汗かいてる」
「もう夜なんだけどな」
「・・・無理しなくていいから、帰っておフロ入ったほうがいいよ」
額から頬を伝う汗の感触が一筋。これで「無理してない」なんて言っても、ただのギャグでしかない。
汗を拭う。
「うん、じゃあ悪いけど帰るわ」
お守りは洗濯してしまわないよう、鞄に入れた。
「気をつけてね」
右手を軽く挙げて返事をした。
背中で応えたところで、暑さで目の前の石段もちょっと踏み外しそうなくらいだったから格好こそ
つかなかったけれど。
それにしても、嫌な予感か。気になるな。

翌日。

その日の朝の教室は、いつもより騒がしかった。
「何かしらね」
「さあ」
「おっおっおっおっ」
この笑い声は、蕪雲か!?と思って振り向く。
「よく生きてたな。驚かないけど」
「1うpしたから大丈夫だお」
「それで?今日は何のお祭りなわけ?」
ツンの問いに、蕪雲はまた不愉快な笑みを浮かべる。
「実は今日、転校生が来るお」
「へー」
大して驚きもしない。
「あのなぁ蕪雲。転校生が来るなんて事は早々何回もあることじゃないの。理緒が来ただけで十分じゃん。
いくら今回が特別編だからといってそんな事は許されないの」
「そういうことはお話の中のキャラが言うもんじゃないお(^ω^;)」
キーンコーンカーンコーン
「はいはい、皆席に着けい、席に!」
扇子をパチパチ鳴らしながら、てんてーが入室遊ばされる。皆大人しく席に着く。
「今日はみんなも知っておろうが、転校生の紹介をする」
ぅゎマジかよ。
「では、入るが良い」
つかつかと入って来た男は、左手をポケットに突っ込んだまま、適当な白チョークを取ると黒板にでかでかと
自分の名前を書いた。
熱血教師の初授業か。
「俺、紺野 日透(こんの ひずき)っていーます!よろしくお願いしまーす!」
えらくニコニコしたその男は、だらんと頭を下げ、挨拶した。
423 名前: 79 Le souhait last_escape(10/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:42:05 ID:1Hq0/YT2
やや癖のある茶髪、高い背(横にてんてーが居るからそう見えるのか)。いかにも今日びの池面という風貌の
男だった。周りの女子が「ちょっとカッコ良くない?」「ねー!」とか囃し立てている中、ツンは、
「まあまあね・・・」
と呟いていた。
その後も、日透は好きな食べ物やらやってたスポーツやらを続けて話していた。
激しくどうでも良かったので殆ど聞き流した。はいはいわろすわろす。
「あっ、妹も一緒に転校して来てます。日水(ひなみ)っていいます。よろしくしてやってください」
最後にそう言って、日透は自己紹介を終えた。
「うむ。では自己紹介はそれくらいに。あの席がそなたの席じゃ」
ぴっ、とてんてーが扇子で指した先の席は一番窓際だった。
「早くも窓際族かー」
頭を掻きながら席に向かう日透。
クラスでは割と受けているようだったが、毒男は肘をついて見ていたし、蕪雲なんかはDSで魔女を捜していた。
こいつが何か厄介ごとを起こすのだろうか?
いや、人間何をしでかすかわからないものだし。決して人を殺したりするような人には見えないわ。ねえ。
だってあんなに真面目な子がねえ。怖いわー。なんて、閑静な住宅街が震撼。所○郎も駆けつけるわ。
でもツンに手を出したら許さんな。フルボッコにしてやんよ。

日透は人当たりも良いようで、すぐにクラスの人気者になった。
日透の周りの人だかりを見ていると、蕪雲と毒男の視線に気付いた。
そちらを向くと、二人はなぜかニヤリとしていたが羨望の眼差しで見ていたわけではないというのに。
そんな休み時間。
「あ」
「何よ?」
「ごめん、ちょっと用事思い出した」
「ふーん?行ってらっしゃい」

廊下を駆ける少年が一人。
もう怒ってないかもしれないけど、一応智途に謝っておこう。そう、それが誠意。
俺の下げた頭をその美脚で踏みつけるがいい。だが、それがいい。それが性意。
ピコーン
超反応で、角を曲がってきた誰かを回転しながら躱す。
「おわっ、たっ、と」
だが、結局はバランスを崩して盛大にコケた。
「だ、大丈夫ですか?」
女子らしい。ニーソ穿いてるから悪い人ではないと思うんだけど、誰だろう。
「何とか」
立ち上がって、尻をはたく。
「君、もしかして江口君?」
驚いてその顔を見る。
顔立ちは整っていて、可愛いほうだとは思うけど、何がおかしいんだという感じのそのニコニコ顔。
どこかで見たような。背は小さいけど。
「なぜ俺の名を」
「ふふ。由梨ちゃんから聞いたの」
「・・・すると、あんたがヒナミちんか」
「そうそう、ヒナミちんヒナミちん。よくわかったね」
手をぱちぱち叩いて喜ぶヒナミちん。
「それはそうと、俺、今急いでるから」
「あ、大丈夫。すぐ終わるから」
「え?」
424 名前: 79 Le souhait last_escape(11/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:42:50 ID:1Hq0/YT2
ヒナミはじっと俺の眼を見た。
だがしばらく経つと、近視の人が遠くを睨むように目を凝らした。
俺の顔に何かついていたのだろうか?
「何?」
それが気になって聞くと、ヒナミははっと気がついて慌てたように、
「あ!なんでもない!なんでもないから!じゃ、引き止めてごめんね!」
と言って、そそくさと退散して行った。
まさかヒナミは霊能力者で、俺の背後に何か居たのでは。
だからウィッシュはお守りを?そんなバカな。お化けなんて無いさ。寝ぼけた人が見間違えたのさ。
「あ、急がないと」

「えと、昨日はごめん」
智途の居る教室。
なにやら数学の問題をバリバリといてるらしいその傍で、俺は両手を合わせて謝った。
智途はシャーペンを置き、合わせた両手を見、俺の顔を見、
「何が?」
と聞き返した。
「いや、昨日何も言わずに逃げちゃったから」
「何だそんなことか。それならもういいんだ」
再びシャーペンを取り、机に向かう。
まだ起こってるのか許してくれたのかよくわからない。
でも、何か他のことが気になって俺に意を介さないだけのような感じだった。
「何かあったの?」
シャーペンの動きが止まった。
「いや、姉さんがな」

家に帰ると、珍しく姉さんが先に帰っているようだった。
今を覗いてみても居ない。テレビも点いていない。
私は特に気にせずに、二階の部屋で制服から着替えようと、階段に一段、足を乗せた。
そこで考えた。
こういうときは大抵、部屋のドアを開けた途端「智途、お帰りー!」とか言って姉さんの奇襲(主にハグ)
を受ける。
季節が季節なのでやめて欲しい。
警戒しながら、再び階段を登り始めた。

が、部屋に入ったときは疎か、シャワーで汗を流し、着替え終わった後も、姉さんは現れなかった。
「姉さん?」
とうとう気になって、姉さんの部屋をノックした。
「智途、お帰りー!」
「うわっ!?」
その胸にガッチリと掻き抱かれる。
「んん?姉さんに内緒でシャンプー変えたな?ハロ君に抱いてもらうためか?ん?」
渾身の力をこめて押し返す。
「ぷはっ。いきなり生々しい話をするな!そんなつもりも無い!///」
「智途が怒鳴る・・・」
わざとらしい泣きまねをする姉さん。
「心配して見に来たのにこれか」
「姉さんだって智途のこと心配よ?だから寄り道しないで早く帰って来てね?」
「新妻か」
「いいから。真剣に聞いて。わかった?」
急に真顔になる姉さんに、圧倒されたように返事をした。
「・・・わかった」
425 名前: 79 Le souhait last_escape(12/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:43:35 ID:1Hq0/YT2
すると、姉さんは元の笑顔に戻った。
「ほら、暑くなってくると変な人が増えるでしょ?だから智途みたいな妹もつと心配で・・・」
と、色々な後付を繰り返していた。

「・・・なるほどな」
智途、シャンプー変えたのか。
「だから、ハロも、気をつけろよ?」
智途は不安げに俺の顔を見上げた。
「俺も?」
こくん、と返事をする。
聞き返すほどのことでもない。でも、雪花さんに警戒されるなんて、あの二人は何者なんだ?
「わかったよ。気をつけ――」
キーンコーンカーンコーン
「って、やばい時間が!じゃな!」
猛ダッシュで教室を出る。何の準備もしてねえっての。

既に二人とは接触したが、妹のほうが霊能力者だっただけで(勝手に断定)危険な感じはしなかったな。
「はい、これ」
ツンがハンカチの包みを取り出す。一瞬それがなんだかわからなかったが、すぐに気付いた。
「これ弁当か!」
「そうよ」
「うわーありがとう助かった!恩に着る!」
「おっきな声出さないでよ、いいからお昼にしましょ、恥ずかしいじゃない、バカ・・・///」
久々のまともな昼食に喜びもひとしお。わくわくしながら結び目を解いていると。
「ここ、いいかな」
日透が現れた!
「嫌よ」
まず、ツンが答えた。
「俺も嫌。ダメ。かたつ無理。殿下陛下却下。さっさと引越し。今日は満喫したいのだ。空気嫁」
「うーん、冷たいなあ」
断りも無視し、日透は俺の右隣(ツンは左隣)の席に座った。そしてコンビニ弁当を置き、割り箸を割る。
「君の事気に入ってたみたいだよ。俺の妹」
ツンは、むっとして俺の顔を見た。
「あの変な妹が?」
「そうそう、変な妹が、変な妹が」
割り箸を向けて笑う日透。セリフの返しかたが一緒だ。
「とにかく、今はツンと俺との愛溢れる至福の時を邪魔しn」
ドス、とわき腹に一発やられた。
「いいねえ弁当。それ、彼女が作ったんでしょ?俺もそんな健気な彼女が欲しいよ、本当」
「日透ならすぐできるんじゃないか?」
(´・ω・`)ウザス
「このタコさんはどうやって作るんだ?」
先の割れた赤ウインナーを箸で持ち上げる。
「知ってるくせに聞かないでよ」
かあっ、と顔を赤くするツン。
「ヒナミが興味を持つわけだ・・・」
日透がボソッとそう呟いたように聞こえた。
「は?」
それが気になって聞くと、日透ははっと気がついて慌てたように、
「あ、なんでもない!なんでもないんだ!じゃ、邪魔してごめんね!」
と言って、コンビニ弁当を持ってそそくさと退散して行った。
426 名前: 79 Le souhait last_escape(13/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:44:19 ID:1Hq0/YT2
「なんなのよ、あいつ」
「だな。でもあいつの妹もあんな感じだったぞ」
「いつ会ったの?」
「さっきの休み時間、偶然。なんだか意味不明なこと言って退散して行った」
「変な兄妹ね」
できればツンにも「気をつけろよ」、とは言いたいんだけども変なだけだからなぁ。
そもそも『気をつけろ』って言う時には気をつけても何ともならない事に望む時に言う言葉じゃないか?
だからここは別の言葉で補うべきだ。
「幸運を祈る」
「はぁ?」
端折りすぎたか。

「あー、うまかった。正直泣けた」
「大袈裟」
「あーっ!」
叫び声の先には理緒が居た。
「酷いですわ!理緒というものがありながら、二人で、しかも手作りのお弁当なんて・・・!」
「いつあんたのものになったのよ」
理緒はつかつかと歩み寄り、俺の机に乱暴に両手をついた。
「遥君!何かリクエストは!?」
「弁当は二個も要らないのよ!」
「じゃあマグロの手羽先・・・」
「マグロの手羽先ですわね!わかりましたわ!」
わかるなよ。
「絶対、あなたなんかに負けませんわよ!」
ビシ、とツンを指差し、理緒は嵐のように過ぎ去って行った。

翌日、理緒は『マグロの羽が用意できなかった』と断念した旨を伝えに来た。

大草原。
風は草木を優しく揺らし、舞い上がった木の葉は風に乗って、澄んだ青空の彼方へと、
あの青い山々へまでも、どこまでもどこまでも飛んで行けそうな、のどかで穏やかで、そして限りなく
広々とした空間が広がっていた。
水鳥たちが戯れる湖の近く、丘の上の、さわさわと葉を揺らす大きな広葉樹の木陰に、一人の
ウサ耳少女が寝息を立てているのが見える。
そんな少女の傍に、この場に似つかわしくない黒い影が四つ。二人は男性、もう二人は女性だ。
「たるとさーん」
黒髪の男性が話しかける。名をルシフという。
しかし、たるとと呼ばれたウサ耳少女は、その長い耳をぴくりと動かしたぐらいで、目を覚まさない。
「たーるーとーさーん!」
「だーっ!まどろっこしいな!叩き起こしてやろうぜ!」
癇癪を起こす茶髪の男は、ベルゼット。
「賛成。何がいいかしら」
痺れを切らす赤髪の女性、エルナ。
「かわいそうだよー」
一応止める水色の髪の巨乳、リュシル。
「ニンジンを下の口に突っ込んでみるってのはどうかしら?」
「寝耳に水を注いでみるのはどうかな」
「耳なんかこぶ結びにしてやりゃいいんだよ」
427 名前: 79 Le souhait last_escape(14/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:45:11 ID:1Hq0/YT2
「よくなぁーい!」
たるとが飛び起きた。
「私をいじめにきたのね」
某人魚のセリフを呟きながら目をこする。
ベルゼットが始める。
「最近、外部からの意識の干渉があったろ」
「ふい」
「俺たちがヤツから開放されたいのもやまやまだが、今、意識がお前ひとりになったら、簡単に精神の
侵害を許してしまう事になる」
「ふえ」
「って聞ーてんのかこの野郎!鍋にして食っちまうぞ!」
「いたいいたいいたい!聞いてる!聞いてるよう!」
耳を引っ張られ、泣き叫ぶたると。
「やめなよ。耳がもげちゃうじゃないか。また生えてくるけど」
「こないよ!」
そのやり取りに、エルナはため息をつく。
「つまり私たちが言いたいのは、当分は協力して誰かさんからの意識の干渉を防ぎましょう、って事」
離してもらえた耳を半べそで撫でながら、
「はぁい・・・」
と、一応答えた。
「じゃあ、もう寝てい?」
「協力しろって言ってんだろうが!早く天使形態に戻れ!」
「いたいいたいいたい!」
遥の頭の中では、この五人がまとまりなく遥の精神を形成している。
黒い四人組は、遥にエロゲの主人公になれる能力を備わせているらしい。
だが同時に、自我が強いため、宿主からの解放を望んでいる。解放された後のことは知らないが。
たるとは、精神世界では遥と一番結びつきが強いため・・・って、それ(ry

それから、数日が経った。

紺野兄妹は相変わらずだし、特にこれといった事件も起きず、平穏な日々が続いていた。
お守りはちゃんと常備しているが、危機感は薄れ、忠告など忘れかけさえしていた。
ある朝の事だった。
ピンポンパンポーン
「今日は臨時の全校集会がありますので、生徒は体育館に集まるように」
いい声で評判の教頭先生の放送連絡だった。
「何かしら」
「誰か何かやらかしたか?」
一瞬紺野兄妹が浮かんだが、なんとなく違うだろうと思った。
「行こう」
手を差し出す。
「こういうときは別に手は繋がなくていいの!」
差し出された手のひらを叩き返す。はいはい、と歩き出す。
「すぐそうからかう!」
でもやはり満更でもないように俺の後をついてくる。

生徒も職員も全員集まったが、そこには校長の姿も、さっき放送連絡した筈の教頭の姿も無い。
なかなか始まらない集会に、辺りはざわつき始めた。
「レディース!エーン!ジェントルメーン!」
突然、どこから出したかわからないマイクを手に、日透がステージ上に躍り出た。
428 名前: 79 Le souhait last_escape(15/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:45:54 ID:1Hq0/YT2
唖然とする全校生徒(+職員)。それはそうだ。
いきなりこんなことする人間が現れたら、かかりつけ医を呼んで病院に連れ戻してもらうしか手立てが無い。
シーンと静まり返る聴衆に、日透は続けた。
「俺、この学院に爆弾を仕掛けちゃいました。ほら、これ一番大きな爆弾の起爆スイッチ」
ポケットから赤いボタンのついた機械を取り出す。何ともベタなデザインだ。
少しすると、「何言ってんだー!」とか、「ふざけんなー!」とか非難の嵐が始まった。
俺も頭に縦線が何本か入るような呆れた顔をして日透を見ていた。
ドォン!!
耳を劈くような轟音が響き、体育館は大きく揺れる。外、中庭のほうからだった。
おぼつかない足元が、揺れが収まってようやくバランスを取り戻した時、皆は恐怖を自覚した。
パニックを起こした全校生徒が、叫びながら、慌てながら、一気に出口へと駆け寄る。
俺はとっさにツンの手を握った。
案の定、出口は閉まっているようだった。押さないで!、痛え!、やめろ!、開かねぇ!、助けて!、・・・!
日透はその光景を嘲弄し、続けた。
「はいはい下手に動かないほうがいいですよー!皆さんの殆どの人はラッキーな事に解放されます。
ね、俺っていい奴でしょう。今から名前呼ぶ人、体育倉庫で待ってて下さい。それ以外の人は、今から言う
経路を辿って外に出て下さい。じゃ、読み上げまーす!」
わざとらしくポケットから取り出した紙に書かれた名前を、順に読み上げる。

体育倉庫には、ツン、智途、由梨、しのた、理緒、あと蕪雲と毒男が集められた。
俺は禄に目を合わせることもできなかった。
ガラガラ、と倉庫の扉が開く。
「出て出て」
笑顔で手招きするヒナミちん。
由梨はその登場に酷く驚いていたようだが、大体グルだろうという予想はついていた。

「いやねえ、てんてーがなかなか出て行ってくれなくて、困ったよ。うん」
日透はステージの縁に腰掛けて、いつものようにニコニコしながら語りだした。
「めんどくさいから蹴っ飛ばして追い出してやったんだけど。やっぱり面白いね。こういうときになると、
普段は大人しい子なんかも大慌て・・・」
「一体、何が望みなんだ」
元ソルジャーのような剣幕で食って掛かる俺に、日透はやはり平然と答えた。
「せっかちですな。ヒナミ、皆さんを案内してあげて。兄さんは遥君とお話しがあるから」
「はーい。じゃ、ついて来てくださーい」
ヒナミについて行く七人を、俺は横目で見送る。最後に目が合ったツンには何も言ってやれなかった。
体育館の扉が閉まって、その音は静まり返った場に余韻を残した。
「俺とヒナミはねえ」
日透が始めた。
「人の心が読めるんだよ。それに、勉強もできる、スポーツもできる」
「性格は悪いがな」
「でも君の心はどうしても読めない。それが面白くてしょうがないんだよ。だからこういう、ちょっとした
ゲームの遊び相手としては最高。弱いやつと張り合ったって、つまんないでしょ?」
日透は起爆スイッチを床に放り捨てた。それはカラカラと音を立てながら回転し、止まった。
「それ、ニセモノ。笑えるっしょ」
ステージから飛び降りると同時にそれを踏み壊して、破片を足で寄せた。
「爆弾は君にとって大切な人たちに一つずつと、他にでっかい爆弾が一つ。制限時間内にすべてを
なんとかしてくれたまえ」
扉が開き、ヒナミが戻ってきた。
「丁度良かった。ヒナミ、教室で遥君の相手してやって」
「お兄様は?」
「ゲームに邪魔な人たちを何とかしてくる」
429 名前: 79 Le souhait last_escape(16/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:46:55 ID:1Hq0/YT2
熾惺学院、正門。
警察、野次馬、生徒や職員、マスコミなどでごった返している。
そこから少し離れた塀の許に、変わった服装の三人組が立っていた。
夏なのに暑苦しいくたびれたロングコートを着た男、いつでもメイド服の女、そして、麦藁帽子をかぶり
白いワンピースという一番夏らしい(って言うかまともな)服を着た女。
コートの男、渋沢 銀二(しぶさわ ぎんじ)は、毒男の叔父である。
「厄介な能力を持っているものだ」
「ここはハロ君一人じゃ荷が重過ぎるでしょうね」
「どうするんですか?」
渋沢はタバコの煙を燻らし、しばし思索に耽る。
「お前はどうする、麦わら」
雪花は渋沢が嫌いであった。
「当然三人散るべきでしょうね。助けたい人も違うでしょうし。三人で紺野姉妹の片割れを叩かなければ
ならないわけでもないわ。電波の乱れ、反響音、床や壁の振動で隠された爆弾の位置も大体わかるわ」
「身体能力においても、普通の人間の域である彼らに劣るとは思いません」
「普通の、か。どちらが普通でないかの勝負と言ったところか・・・ふっ」

教室。俺のクラスだ。
よくわからないうちに俺は縄で両手を後ろ手で縛られ、足首も縛られ、斬首寸前かのように床に正座
させられていた。
で、ヒナミはというと、教卓に腰掛けて足をぶらぶらさせていた。
日透が何をしに行ったのか、皆はどうなってしまったのか、それも十分に気になるし気が気でないのだが、
ヒナミがわざとらしくパンツを直視できる位置に腰掛けているのも気になる。
それでいて常に俺から視線を外しているのもわざとらしい。たまに足を組んだり組み替えたりするのも。
兄妹は互いにそっくりだから、どうせ後から俺のことを変態だのなんだのと嘲弄しようなどと考えているの
かもわからないが、俺としては望むところなのでむしろ直視している。
黒ニーソ、太もも、奥には暗くてもよく見える白。
「暇ね」
「そうだな」
「しりとりしよっか。しりとり、の『り』から」
「輪姦」
「・・・」
「リンカーン」
「伸ばしてもダメ。はいはい、私とは話したくないって言うんでしょ?」
「誰にでもある凡ミスだ。気にするな」
ヒナミは教卓を降り、椅子を一つ拝借して、俺のすぐ前に座った。
「くっ、お前、何をする気だ!」
是非とも教えてくれ!っていうか僕縛られてのあれは初めてだから優しくして欲しいです。
靴のまま、ズボンの上からそれを踏みにじり始めるヒナミ。
「君がマゾだって事はすでにわかってるから」
「うう・・・」
何という事だ。不覚にもおっきした(´・ω・`)
ヒナミは足を離し、両足とも靴を脱いだ。
そして今度はベルトに手をかけた。手を使えない俺はもちろん抵抗できないが、ズボンを下ろされたまま
さらし者にされるのは流石に勘弁して欲しす。
あっけなくパンツからすでに屹立したものを取り出されてしまう俺。
「ふーん」
『ふーん』で片付けられてしまう俺の息子。
観察した後、今度は足先で色々弄り回し始める。
430 名前: 79 Le souhait last_escape(17/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:47:42 ID:1Hq0/YT2
「ちょっ、無抵抗の相手に卑怯な。武士道に反するぞ」
「声、震えてるよ?」
右足を使って、押し付けるように本格的に扱き始める。
「ぁ、う、いや、マジで、やめ・・・」
「随分反応いいね。いじめたくなるわけだわ。ち○こ気持ちい?」
なん、てセリフを・・・!早く用済ませろよ日透!
汚れた制服着て助けに行くなんて助けられたほうもどんな顔していいかわからないっての。
そんな心境とは裏腹に、早くも粘着質な感じの音が立ち始める。
「ぁ、がっ、く・・・!」
体が痙攣するほど必死で我慢するが、ソックスのわずかなざらざら感に撫ぜられるのは堪らない。
「我慢しないで出しちゃえば?服きったなくしてやらしいにおいさせて皆を迎えに行けば?そうしたほうが
面白いでしょ?カッコつかなくて。観念してだらしなく射精してみなさいよ」
そう言って、ますます早く激しく足を動かし始める。
既に射精寸前だった俺がそれに耐えられるわけもなく、最後には我慢するのもやめていた。
「あー♪」
ヒナミの嘲るような声を聞きながら、俺はだらしなく射精してしまった。
足を離すと、ペニスは脈打ちながら、黒いソックスを欲望の証で白く染めていく。
「・・・うう」
俺は悔しいんだかなんなんだかよくわからない感情に、呻くしかなかった。
ヒナミが足を持ち上げると、丁度その指と指の間からどろりと落ちた精液が、制服のズボンの上に落ちた。
「ちょっ!やめろよそれは!」
「どうして?君が出したんじゃない。汚れたままにしておけって言うの?」
目の前に足を突き出す。
「そうされるのが嫌だったら、綺麗にしてよ」
「うっ・・・」
目の前にはテカる黒いソックス。先には、反笑いで見下すヒナミ。
何で、こんな事に・・・。理緒にはよくやらされゲフンゲフン。・・・今回は哀しくなってきた。
ためらう俺の口に、無理矢理足先を突っ込んで来た。
「んんっ!」
「ほら、こうされるのが好きなんでしょ?さっさと舐め――」
ヒナミはポケットから携帯を取り出した。
「にーさま?今いいとこなんだけど。え?うん」
「・・・!(足を口から抜いてから離せっつーの!)」
と思っていたら、本当に抜いた。口の中に残ったものをなぜか反射的に飲み下した。ちょっと嫌になった。
ヒナミがしゃべらなくなったと思ってその顔を見ると、なにやら真剣な顔になっていた。
「はーい」
最後にそう応えて、通話は終了した。
汚れたニーソを脱いで、言う。
「あげる」
「いらない」
言ってみただけなのだろうか。その場にそれを置くと、後ろに回って縄を解き始めた。
やっと手足が自由になった俺は、まずポケットティッシュで汚れを拭いた。
「無駄だって。君いっぱい出したもん。匂いは消えないよ」
「そこは知らないフリでカバーだ」
とりあえず拭き終える。
「今、十一時。十五時までに何とか助けないと、君の大切な人たちは学院とともに心中するわ」
制服を着直す。
「俺には爆弾解体の技術が無い。圧倒的に不利じゃないか」
「大丈夫よ」
ヒナミは、ポケットから鍵を取り出す。
431 名前: 79 Le souhait last_escape(18/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:48:46 ID:1Hq0/YT2
差し出された鍵を受け取る。
「それで爆弾はガラクタになるわ」
「嘘じゃないだろうな?」
ヒナミは微笑した。
「当然よ。そういうゲームだもの。その代わり、見つけるのは難しいと思うよ?」
「他には?」
「私からは何もないわ。じゃ、頑張ってね、変態君♪」
ぽん、と肩を叩き、教室を出て行った。
なるほど、ノーヒントってわけか。
・・・何がゲームだ。何でみんなが。何で、こんな事に。

三人は、玄関に居た。
「ここで、散るか・・・」
渋沢が呟いた。
そこで――ザッ、と三人が向きを変えた。
「おっと、みつかっちゃったか」
「忍び寄るなら、足音、呼吸音、心拍をもう少し落とす事ですね。お嬢様はどこですか?」
「本当に面白い人たちだ。それに、正直だ。でもね、邪魔なんだよ。帰ってもらえるかな?」
三人は一斉にバラバラの方向に散った。
「・・・あら?本当に帰った」
私は助走をつけ、跳躍して二階から張り出した玄関の屋根の上に飛び乗り、そこにしゃがんだ。
電磁波を感じた。おそらく遠隔操作する何かを持っている。それを使わずしても、窓の多いこの学院、
片割れがどこかから見ていれば、ヤツの合図で――。流石の私も、遠く離れてしまえばどこからの
電磁波かの見分けはつかない。人の考えが読める、っていうのは本当に厄介だ。
日透はしばらく私たちの隠れている位置をきょろきょろ見回していた。
「しっ!」
太ももに隠していたハンドガンで、スボンの左ポケットを撃ち抜く。
と同時に、ヤツから一番近い、植木の陰に潜んでいた緋柳が飛び出し、右肩に左で肘打ちをする。
怯んでいてもヤツはそれを躱したが、緋柳はその右手を地面につき、体全体を使って回し蹴りをした。
その踵は右肩をしっかりと捉え、転げるように後方に倒れこむヤツの先の渋沢が顎に一発加え、
気絶させた。
ベルトで手足を束縛する渋沢の所に、私も緋柳も歩み寄る。
「口の中にはありませんか?」
「無い。殴るときに確認した」
てきぱきと作業を終える。
「で、どうして陣形がEH(エンプティハンド)キラーだったのだ?」
「私は、せっちゃんがそう動いたから」
「TAでもDAでも良かったと思うけど、まあ一番注意を引けるのは私かなあ、と。他は並列的だし・・・」
体で覚えている技術が読めるわけないし。銃を使うとも思わないだろうし。ね?
「まあ、いい。自信過剰が仇になったな」
そう言って視線を下げると、日透は激しく咳き込み、息を吹き返した。
「はっ、俺が最後まで見れないのが残念だけど、どのみち爆弾は遥にしか解除できない」
「どういうことだ?」
「唯一の解除方法である鍵は、普通の人には見えないんだよ」

THEサンクチュアリ百式-Ver2.01-部の部室を覗くと、蕪雲と毒男が捕まっていた。
「毒男は部員じゃないだろ」
と思わず突っ込みを入れる。
432 名前: 79 Le souhait last_escape(19/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:49:38 ID:1Hq0/YT2
「救世主キタコレwwwwww」
「お前ら普段散々悪態ついておいて、現金なやつらだなあホント」
二人の縄を解き、首に下げられている黒球(爆弾のつもりか)についている鍵穴に鍵をさし、開ける。
「よし、これでいいだr」
「今から智途様助けに行くんだけど何か質問ある?」
「由梨ちゃん助けないと」
俺を差し置いて歩き出す二人。
「お前らいい加減にしろよ」

校舎の外、テニス部の部室。
何でよりによってこんな所に。智途はそう思っていた。
確かに私は、月岡とここでテニスの勝負をして、・・・負けたんだったな。
でも、それだけの場所だ。
校舎すべて捜したって、私は居ない。
「・・・」
暑い。禄に身動きも取れない。
人に気をつけろ、なんて言っておいて、自分がこのザマだ。可笑しいな。
正拳も裏拳も回し蹴りも頭突きもすべて動きが読まれていた。あんな女は見たことが無い。
目の前に腕時計を置いて行ったのは、ただの嫌がらせだろうな。
ハロは、助けに来てくれるだろうか?あの日を思い出して、ここだろうかと思って来てくれるかな。
もしハロが私と付き合っていたなら、私が好きなら、真っ先に助けに来てくれただろうか。
・・・。
まだ三時間ほどもある。きっと、大丈夫だ。
そう、思いたいものだな。
・・・。
私は泣かない。姉さんを助けられるくらい強くなりたいと思っていたけど、それは、無理だったのかな。
・・・。
・・・。
「!」
足音がする。
誰かはわからない。だが、私の心は期待でいっぱいになっていた。
ガラッ!
「智途様ゲトぉぉー!!」
身を躱す。蕪雲は部室の壁(コンクリート)にそのまま激突した。
「毒男、縄を解くの手伝ってくれ」
「よしきた」
あっという間の出来事に、私は縄と爆弾が解かれた後、すこし固まってしまった。
やがて、自然に涙が浮かび、
「ハロ!」
目の前に立つハロを、力いっぱい抱きしめた。
「な、泣くなよ。皆見てるじゃないか。っていうか折れ」
「もう会えないかと思った!本当に、良かった・・・!」
「蕪雲にとっては泣きっ面に蜂の光景だが('A`)」
「そうだ、智途。ここいるって引っ張って来たのは蕪雲なんだ。蕪雲のお陰」
「そーなのか」
涙目で見上げる智途。彼が(新しくしたシャンプーの)においを追ってきた事は伏せておく。
「蕪雲、ありがとう」
智途は珍しく素直に、倒れている蕪雲に伝えた。
「・・・や、何・・・まあ当然のことだお」
「ツレデレ('A`;)?」
よっぽど予想外だったらしい。
433 名前: 79 Le souhait last_escape(20/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:50:31 ID:1Hq0/YT2
「制汗スプレー」を取りますか?
[YES]
NO
傍にあった制汗スプレーを使って、制服の匂い消しを図った。
蕪雲や毒男はさっさと行ってしまって傍に居なかったし、智途は必死さからか気付かなかったみたいだが。
フリかもしれないけど。
「何で、制服にスプレーしてるんだ?」
「いや、別に・・・使う?」
差し出す。
「使う」
何とかごまかせたようだ。
携帯の時計では、十二時十分。あと四人(ツン、由梨、しのた、理緒)。
「携帯は全員持ってないんだっけ?」
「ああ。全部あの女に回収された」
「でも、あの時は持ってなかったな」
「あの時?」
「十一時までは、日透の命令でヒナミと教室で待ってたんだよ」
蕪雲が何か言いたげにこちらを見ている。
「何だよ?」
「それでイカくさかっ」
「おま、ちょっ黙ってろ!おい!」
助けなきゃ良かっ・・・でも智途を助けたのは蕪雲だし。
「どうかしたのか?」
「いや別になんでもない。校舎の外にまで範囲が及ぶとはな。これは厳しいかも知れない」
「けど、由梨ちゃん助けないと」
「全員だろ」
半ギレで突っ込む智途。

一階廊下。
「話の内容はわからなかったけど、ハロ君たちのグループと合流したほうが良さそうね」
「はい。地雷などのトラップの位置がわからないぶん、固まって移動するであろう彼らは危険です」
日透はとりあえず外の木陰の隅に隠しておいた。テレビがあるなら、妹に情報が伝わって、ヤケを起こされる
とかなわないからである。
「何ボーっとしてるのよ、渋沢」
「ゲーム、か・・・。まあいい。そうするなら早く電話だ。お前なら番号知ってるだろう」

同じく、一階廊下。窓際の長い廊下。
「由梨ちゃんとしのたは休み時間になるとこの先の水のみ場の辺りに居る」
毒男に導かれるまま、俺たちは一階廊下を歩いている。
「?毒男は学年が違うからここの水のみ場には用は無いだろ」
智途が言う。
「そこは愛でカバーだ」
と俺。
「そうなのか?」
「そうだお。現に漏れはいつでも智途様の傍に駆けつけるお」
「そう言えばそうだな」
「・・・(^ω^ )」
とんとん、と蕪雲が俺の肩を叩く。
「何だよ?」
「なんか智途様に殴られて会話が終わらないと物足りないお」
「それは俺も思った。まあ非常事態なんだから我慢しろ」
434 名前: 79 Le souhait last_escape(21/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:51:26 ID:1Hq0/YT2
どの道、変態か。
「あれに見えるは!」
毒男が指差す先には、縛り上げられている由梨としのたが居た。口にはガムテープが貼られている。
俺はそれを見て、直感的に気付いた。
智途も、由梨もしのたも、心の読めない俺じゃなくて、読まれている筈の蕪雲や毒男にしかわからない
場所に捕まっていた。その蕪雲や毒男も、俺がいつも立ち寄る部室に居た。つまり、俺の心が読めなくても、
今の俺たちの行動は完全に予測可能だ。
つまり、あれは罠だ。
「待て、毒男!」
駆け出す毒男を追いかける。
智途も、必死に首を振る二人の意を汲み取り、気付いて走り出す。
蕪雲は、ただ智途の後を追うだけだが走り出した。
走る毒男の右手を何とか掴み、足を軸に回転するように後ろに放る。それを蕪雲が見事にキャッチ。
だが、当然バランスを崩す俺。追いついた智途が、倒れ込む俺を抱えるようにして支える。
「ナイス連携d――」
ドン!!
轟音。
音に気付いた時には、体が浮いている事に気付いて、すぐに床に叩きつけられた。
何とか上体を起こす。舞う土煙。ぱらぱらと崩れる、壁や天井。側壁なんかは完全に穴が開いていて、
鉄心が剥き出しになっていた。派手にやってくれたな。本当。
「ゲホ、ゲホッ。みんな、大丈夫か?」
「何とか。まあ、ちょっとやってしまったけど」
飛び散った破片で、智途は二の腕の辺りを五センチほど切られていた。
「智途ざま゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!゙!゙」
「お、俺のせい・・・」
うろたえる毒男。それを見て、智途はフッと笑って返した。
「男ならこれくらいでうろたえるな。こんな傷、舐めておけば治る」
腕白少年か。舐めて治る傷でもないし。
「もう罠は無い筈だ。とりあえず二人を助けて、智途は水飲み場の水道で傷を洗ったほうがいいな」
俺は一応適当な事は言ってみたけど、もし毒男を引き止めなかったら、と思ってぞっとしていた。

電話があって、トラップが少ないだろう屋外(中庭)で、俺たちは最強三人組と合流した。
「智途ぉ!怪我してるじゃないの!痛いの?痛いの?飛んでいかないの?」
慌てた様子ながら、雪花さんはどこからか取り出したガーゼとテープでしっかり処置を始めていた。
「お嬢様は?」
「すいません、まだ・・・」
無表情な筈の緋柳さんの表情が、少し曇ったように見えた。
「毒男」
渋沢さん。
「('A`)?」
「帰るぞ」
全員が無言になった。
「・・・いや、危険かもしれないけど、俺は知らないフリして帰ることはできない」
「そうか」
その言葉を特にどうというわけでもなく、渋沢さんはまたタバコを咥えた。
「日透は私たちが何とかしたわ」
「何とかしたんですか!???!!」
「はい。現在、十二時五十二分です。残り約二時間で二名。これまでのペースでいけば達成は容易ですが
彼の言った事とその妹の動向を考慮に含めますと、何とも言えません。急ぎましょう」
「『彼の言った事』?」
435 名前: 79 Le souhait last_escape(22/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:52:19 ID:1Hq0/YT2
「そうだ」
渋沢さんが口を開いた。
「『爆弾は遥にしか解除できない』と言っていた。何か心当たりはあるか?」
「これのことかな」
爆弾を解除する鍵を取り出す。
「これは、俺以外の人には見えないと言ってました」
雪花さんが近付いてきて、鍵(のあるらしい空間)を見る。
「ほんとだ。あるんだけど、ハロ君以外の目には光を反射しないわ。触る事はできるけど」
俺は非現実的な事に慣れてるからどうと言う事もないけど、って言うか見えてるから不思議でもなんでもない
のかもしれないけど、やっぱり不思議なんだろうな。おそらくこれも、意識に干渉する能力の一部。

「由梨ちゃん、大丈夫だった?気絶してたけど」
「え?うん。あはは・・・私、おっきな声とか音は苦手で。しのたんと話もできないし、やっぱり怖かったかな」
「『心当たりがある』って私たちを導いてくれたのは毒男なんだぞ」
智途が口を挟む。
「よせやい俺なんかよせやい」
「そうなんだ。ありがとう!」
「・・・や、何・・・まあ当然のことだ」
「ツレデレ(^ω^;)?」
「でも腹立ちませんかあの女!縛った上に口にガムテープ!ボクもう息苦しくて・・・」
「私はテニス部の部室だった。放っておいても熱中症で死んでしまうぞ」
「ひどいですね!」
蕪雲や毒男も悪態垂れるとか死ぬかと思ったとかそういうこと言えよ。マジ現金だったぞ。

「ここからは義理とかそういうのは要らない。後二人なだけに、トラップには十分気をつけるべきだ。即ち」
一服し、タバコの煙を大きく吐く。
「遥と緋柳以外は学院の中に入る必要は無い」
酷なようだが、本気で殺す気の爆弾トラップを体験した以上、その言葉は否定できなかった。
「おにいちゃん・・・」
「大丈夫だって。ちゃんと帰ってくるから」
ぽんぽん、と由梨の頭を優しく叩く。
「智途先輩、いいんですか?ボクたち、このまま引き下がっても」
智途は俯き、ぎゅっと二の腕を押さえた。
「仕方、ないことだ」
「・・・じゃあ私たちは、安全なところへ避難しましょう」
その光景を横目で見ながら、雪花さんは提案した。
「そうだな」
渋沢さんは咥えていたタバコを捨て、足で踏み消した。
不安そうに俺を見ながら連れられていく面々と、目を合わせていた。
ツンとはもう朝から顔を合わせていない。残り時間が何分だから、とかそう言う事は言えない。
誰にも大切な人が居て、誰でも大切に思われているんだから。
「遥様、行きましょう」
「・・・はい」

時刻は、十三時半頃。
「待って下さい。そこはトラップです」
「ここもか!」
俺には何もわからないが、緋柳さんには地雷の位置がわかるらしい。
・・・輝青院家ではたかがメイドにどんな訓練をさせているのだろう?ちょっと恐ろしい。
「それ以前に、そこは女子トイレです」
436 名前: 79 Le souhait last_escape(23/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:53:16 ID:1Hq0/YT2
無表情で指摘するのが怖い。
「つらい思い出のあるところに閉じ込めたり、楽しい思い出のあるところに罠を仕掛けたり、そういう
嫌がらせが多かったからさ、理緒もこういう所に閉じ込められてないかな、と」
でも俺の教室がスタート地点で、そこには居なかったし、あと所縁のあるところってどこだろう。
「生徒会室、かな?」
生徒会室には所縁は無いと思うが、しのた救出で行く必要の無くなったそこに意表を突いて隠すかも。
むしろ所縁があるのは生徒会室というよりも、生徒会室にあるようなゴージャスなソファー(基本的に
生徒会室は豪華空間)なのだ。まだ純真だった俺にあんな事やこんな事したのはその上で。
「では、行きましょう」
理由を聞かれなくて助かった。

生徒会室の扉を開ける。
目に入ったのは、縛られてソファーに座っている理緒と、生徒会長の席に座っている――ヒナミ。
ドン!!

埃舞う中を、ヒナミは笑いながら私と擦れ違い、走って行った。
入り口付近の床に爆弾が仕掛けてあったらしい。自動ドアの電磁波かと思ったのが迂闊だった。
「遥様?」
割れた窓ガラスから煙は逃げていき、晴れた視界に見えた光景に、私は絶望した。
とっさに腕を掴んで引き下げたつもりが、十分でなかったらしく、遥様は気絶してしまわれていた。
切れた頬から流れた血が、私の頬から一滴、床に落ちた。
爆弾は遥様の持つ鍵でしか解除できず、遥様にしか見えない。
意識の回復を待つことによる時間の浪費は、遥様にとって大切な人を捜す時間に影響する。
しかも、さっき遥様が鍵を戻したズボンのポケットには、何も入っていない。
爆音に紛れた金属音は、やはり鍵の音だったらしい。
「・・・これは?」

「――はっ!」
体を起こす。ここは、生徒会室?
「遥君!理緒、理緒、怖かったですわ!」
涙ながらに抱きつかれ、そのまま力任せにソファーに沈められる。
「ぅゎ理緒!?爆弾の解除は・・・あれ?無い」
緋柳さんは手に、見えない筈の鍵を持っていた。
「血が、ついていました。それで見えました」
「そうか、よかった。って、今何時!?」
理緒が生徒会室の時計を眺めて答える。
「十三時五十分ですわ。遥君が気絶していたのは、ほんの五分程度でしたわ」
「あと、一時間・・・!理緒、そろそろどいてくれ。俺は行かなきゃ!」
理緒にはわかっていた。今ここで俺を行かせてしまうのは、どういうことなのかを。
いくら俺が普段は言いなりでも、こういうときだけは頑固になるのも。
だから、理緒は黙って体を離した。
「遥様!一人では――!」
最後まで聞くことなく、鍵を取り、ソファーから跳ね起き、どこへとも言わず一目散に生徒会室を駆け出た。
ソファーにへたり込む理緒。その頬に、涙が伝った。
「止めるなんて、できるわけありませんわ。だって、理緒は、遥君のことが好きですもの・・・」

熾惺学院、グラウンド。
「お嬢様は助かったらしい」
そう言って、渋沢は携帯をしまう。
437 名前: 79 Le souhait last_escape(24/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:54:14 ID:1Hq0/YT2
「そっか。じゃあ後は、ツンちゃんだけなんだ」
沈黙が広がる。
あと一時間あるか無いか。それが皆の心に重くのしかかった。
熾惺学院が粉々になるかもしれないこと、ハロとツン死んでしまうかもしれないことが、だんだん
現実味を帯びてきた。
「おじさん」
「ん」
「あのさ、ハロはあれでも、俺の大切な友達なんだ。だから、その、協力してやって欲しいんだ」
「・・・」
「姉さん」
「はーい!ねえ渋沢、帰りは窓飛び降りでいーい?」
聞いて、渋沢さんは微笑し、タバコを踏み消した。
「そのほうが性に合う」
言い終わるかというところで、二人は校舎に向かって駆け出して行った。

時間が無い。
理緒を捜すために立ち寄った場所に、ツンは居なかった。
しかもどこに爆弾が仕掛けられているかもわからない。一人で飛び出してきてしまったことを後悔した。
「どこなんだ・・・ツン」
「教えてあげよっか」
声に振り向くと、ヒナミが居た。
「ツンちゃんの爆弾は特別製でね、もし外せたとしても後で爆発するから気をつけてね。それも、凄い爆発」
「ツンはどこだ」
楽しそうに語るヒナミに、激しい怒りを抑えて聞いた。
「君の教室。移動させたの。思い出深いでしょ?最後はそこがいいかなって思って。ドラマチックじゃない」
最後まで聞かずに階段を駆け上がった。
「ふふ・・・物語は、ちゃあんと主役が死んで終わったほうが、すっきりするじゃない?」
ヒナミは大きな声を出して笑った。

今俺が駆け上がった階段は、罠だったかもしれない。今俺が駆けている廊下は、罠に繋がっている
かもしれない。もう十センチずれて走っていたら、地雷の餌食になっていたかもしれない。
それでもいい。早くツンに会いたい。話をしたい。朝、あの角でまた会って、一緒に学院に行こう。
「ツン!」
教室の扉を開ける。
「ハロ!」
ツンはいつもの自分の席に固定されていた。即座に縄を解く。
そして、抱き合った。抱いたツンの後頭部を一回だけ撫でて、言葉はまだ出てこなかった。
「はやく爆弾を解除して出よう!」
鍵を取り出す。
探すが、首輪にある筈の鍵穴はどこにも無い。他の人についていたものとは全く別物だ。黒い輪だ。
接合部が線のように見えるだけで、他には何にも無い。無理に外そうとするならば、きっと爆発する。
「ね、ハロ。これ爆弾だから、早く逃げたほうがいいわよ?」
自分が何を言っているのかわかっているのかいないのか、ツンは微笑んでそう言った。
「何、言ってんだよ?どこに逃げんだよ?バカ言うな」
教室の時計は、十四時四十分を指す。
「私、ハロに会えてよかった」
「はーいわけわかんないこと言わないの。ツン、君失格」
「真面目に聞きなさいよ!だってこの爆弾、外れないのよ!?」
「聞いてるよ!」
438 名前: 79 Le souhait last_escape(25/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:55:05 ID:1Hq0/YT2
怒って言い返した俺に、ツンはすこし驚いたようだった。
「でも、こんな所で終わるのなんて嫌だろ。ちっちゃいときからずっと一緒で、色々あったけど、今まで
ずっと一緒に居て、俺がこんな所で引き下がる男じゃないっていう事、わかってるだろ。普段はそりゃ、
だらしなくて優柔不断で頼ってばっかだけど、でも好きな人を守りたいと思うことぐらいできる!」
「・・・」
ツンは何も言わず、俯いてしまった。
俺も心の中では、こんな窮地に追い込まれるまでに今の言葉を言ってやれなかった事を嘆いた。
時間は過ぎていく。
あと八分では、この広い学院の玄関まで走って行くことは、殆ど不可能だ。
足音がした。
ヒナミか、と思って見てみたら、それは予想外の人物だった。
「し、渋沢さん?」
ふぅ、とタバコの煙を吐く。ちなみに、学院内は禁煙だ。
「時間が無い緊急事態、私の場合は窓から飛び降りて帰る。そのほうが私には性に合う」
俺とツンは何を言っているのかわからず、呆然と続きを待った。
「そう言えば、この学院にはプールがあった。懐かしいな。飛び込みを練習した時代は、私も若かった」
言い残し、渋沢さんは窓からひらりと脱出して行った。
「ハロ、時間が・・・!」
時計を見たツンが慌てだす。あと三分も無い。
その時、教室の俺の鞄から、ふわりと紙切れが飛んできた。ウィッシュからもらったお守りだ。
お守りは優しい光に包まれ、そして消えていった。
その時、黒い首輪はペキ、と音を立てて外れた。
――首輪は『もし外せたとしても爆発する』。その事を思い出した俺は、ツンを無理矢理お姫様抱っこ
して、窓に向かい、日透の机に乗って、窓を開けた。
眼下にはプール。ちなみに、ここは三階。勢いが足りなくてプールサイドに落下しようものなら、である。
「え、あんた、本気?」
「成功したら拍手ヨロ」
しかも助走は二歩だけ。意を決して、アルミサッシを思いっきり踏みきって飛んだ。
「おー!いけたか、これ!?」
「きゃあああああああああああああ!!」
ぅゎ内臓が浮く気持ち悪い気持ち悪い気持ちわ
近付く水面。そして――
ザッバァアアァアァアン・・・!!
飛び散った水滴が、雨のように降り注ぐ。何とか両者、水面に顔を出した。
その時だった。
ものすごい轟音とともに、俺たちの教室は炎に包まれ、窓は跡形も無くなっていた。
ガオンッ、と、元椅子がプールサイドに落下。その威力に、俺たちはしばしボーっとしていた。
「スタント無しだぜ・・・」
ようやく呟いた言葉が、それだった。その後、ツンから強く抱きしめてきた。
「ハリウッドスターみたいなことして!」
「ちょおまごぼばごぶべば」
というか、沈められた。
「ぶはっ!」
「私も、ハロの事、好き。一緒に居たい!」
「そんな素直なツン、ツンじゃないやい!」
「じゃあ、なんて言えばいいの?」
何だろう。
「『そんなに好きなら仕方ないわね、明日からもずっと一緒に居てあげるから!』とか?」
「何それ」
お前の真似だよ!!!
439 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:55:22 ID:1xQzgbnO
次スレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187117606/
440 名前: 79 Le souhait last_escape(26/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:55:52 ID:1Hq0/YT2
学院全体が爆発する事は、最強三人組が学院長の像の中にあった起爆装置を解体したため、免れた。
そのために長年無傷だった学院長の像が無残にも叩き割られたことは、全体の被害からすれば軽い。
問題の紺野兄妹だが、パトカーの中で二人とも消えるように姿を消したそうだ。
人間ではなかったのだろうか?
あとでウィッシュにその事を聞いてみた。
「わかんないけど、たぶん、熾惺学院が建ったことで潰された塚か何かの崇りかな。そういうこと、
たまにあるみたいだよ」
などと、何気に怖い事を言っていた。
読者の殆どが忘れていたであろうお守りがあの場面で役に立つとは思わなかったから、通常の三倍は
ウィッシュにお礼を言った。
崇りに抜かれた俺って一体。そんなの時効だ。気にするな。
爆弾の撤去、校舎の補修の関係で、俺たちはちょっと早い夏休みとなった。
というわけで、俺は自宅にツンを招き、冷房の利いた部屋でテレビを見ながら、のんびりと過ごしていた。
ツンは立ち上がって、俺のベッドの上に座った。
「ベッドシーン?」
「そうよ。あんたの好きなベッドシーン。早く来なさい」
ツンはそう言った後、目を伏せて言った。
「私、ハロが来てくれるまでの間とても怖かった。もうこんな事もする事無いのかなって、思って。だから、
・・・何よ?」
「いやいや」
「何ニヤニヤしてんのよ。真面目に聞いてる?」
怒ったツンの唇を奪い、二度、三度とキスをする。
「あんな非常事態に、そんな事考えてたのが俺だけじゃなくて良かった」
かあっと、ツンは顔を赤くする。
「ばっ、バカ!あんたは非常事態じゃなくてもいつも考えてるじゃない!私の場合は偶然・・・!っていうか
色々考えた後に出てきたわけであって・・・!///」
意味不明なジェスチャーを交えながら必死で弁解するツン。
「はいはい・・・」
また、唇を奪う。今回は長く、深いキス。
舌を舐めあい、唇を吸い合い、俺はゆっくりとツンを倒していった。
ツンはたたんでいた足を伸ばし、俺はその服のボタンに手を伸ばしていた。
ツンにしては珍しくマグロ状態だ。
恥ずかしいのか、服を脱がしていく俺と目を合わせないように目を伏せて、赤面したまま。
「んっ・・・///」
ブラも外し、その柔らかい乳房に口をつける。ツンはわずかな嬌声を漏らした。
左の乳房に当てている右手には、心臓の鼓動がよく伝わってきた。熱くなっていく胸を揉みほぐす。
「あっ、ハロ・・・///」
その抑えたような、思わず漏れたような声が、俺をますます興奮させる。
あまりツンがドキドキしすぎているためか、それに触発されるようにますます夢中になっていく。
下のほうに手を伸ばす。
まずはスカートを脱がす。続いて、その下も。
脱がす時に糸を引くほど、そこは濡れていた。物欲しそうに愛液を漏らしている限りなく淫靡な
それを見ているうちに、俺は理性が削られていった。目を離せずに、ただベルトを外し始める。
「今日は、ハロでいっぱいにして・・・よね?」
脱ぎ終わると、痛いほど勃起したそれを秘所にあてがう。濡れきったそこへのペニスの侵入は、
実に容易だった。
「あ、ああぁっ!///」
ツンの強気な顔は快楽に乱れた。
「もっと、ハロ、近くに・・・!///」
差し出されたツンの両手を取り、抱き合った。
441 名前: 79 Le souhait last_escape(27/27) ◆sKDRdae3Hs [sage] 投稿日: 2007/08/15(水) 03:57:00 ID:1Hq0/YT2
華奢なツンの肢体を全身で感じながら、俺は本能に任せて動く。
膣内の襞の感触がペニスに絡みつき、奥へ奥へと吸い上げるようだ。
気持ちよくて、だんだん射精しそうになってくる。
「あっ、はろ、いい、はろで、いっぱいにしてぇ・・・!///」
だんだん呂律が回らなくなってくるツン。
「う、あ、もう、・・・だめかも」
「へっ?あ、じゃ、しゃっさと、出しなさ、よっ・・・!///」
最後に思いっきり突き上げ、ツンの奥深くへと射精した。
「あっ、ぁあっ、出てる、ハロの・・・///」
どくどくと注ぎ込まれるそれを、ツンは震えながら受け止める。
ようやくおさまり、ペニスを引き抜く。と同時に、精液がどろりとツンの中から太ももに垂れていった。

行為の後からぐっすりだった俺は、夜、誰かが頭をつつくので目が覚めた。
「そろそろ出かけるわよ」
ツンだった。既に浴衣に着替え、髪は下ろしていた。
「祭りとかあったっけ?」
「花火大会よ」

この町が開発の嵐に晒されたとは言え、こういった土手もちゃんと残っている。
土手から見る向こうの景色は昔と違うけれども、こうして毎年花火を見に来る事は、恒例だった。
昔はよく、土手の川とは反対側のほうの林が暗くて怖いって言ってたっけ。情けない話だ。
花火は色とりどりの光彩で夜空を照らし、轟音で時を刻み、見る人の心を癒した。
「綺麗ね」
「君がね」
ぱしっ、と、持っていたうちわで突っ込まれる。
お茶目ですがな(´・ω・`)
「こうして花火が見られることも、無かったかもしれないのにね」
「おいおい、まだ言ってるよ」
「悔しいけど嬉しかったわ」
何が悔しいのか。
「学校始まったら、また弁当作ってきてくれる?」
「仕方ないわね」
「朝、あの角で待っててくれる?」
「当たり前じゃない」
「俺、もう絶対、危険な目に遭わせないから」
「・・・」
ぱたぱたとうちわで扇ぎ始める。
「でも、私はもう平気よ?危険な目に遭っても」
「え?」
「だって、あんたが助けてくれるんでしょ?」
「うん、まあ」
「おかしいわね。花火終わっちゃったわ。誰かさんが寝坊するから」
「俺、禄に見てないのに」
「せいぜい来年の花火に期待する事ね」
仰ぐ手を止める。
「・・・ハロ、私のこと、好き?」
「そりゃあ、うん。好きだ」
「『そんなに好きなら仕方ないわね、明日からもずっと一緒に居てあげるから!』」
俺は唖然とした。
「何よ、こう言って欲しかったんでしょ?///」
「・・・ああ。ツンらしい返事だな」

かくして、熾惺学院占拠事件は幕を下ろした。
いつだってデッドエンドと紙一重だった。翌日には二度と顔を合わせることは無かったかもしれない二人。
そんな二人の絆は、この事件を通して、ますます深まっていったのだった・・・。
ある暑い夏の日の事であった。